公務員試験用参考書

マクロ経済学、選択式問題8割ゲットの勉強法とおすすめ参考書

1.はじめに

公務員試験において、経済学は、民法と並ぶ攻略困難科目です。私が出会った受験生の多くが苦戦していました。

出題数が少なければ捨てることも可能です。しかし、経済学全体で以下の出題割合を占めるため、その戦略は賢明とはいえません。

経済学(ミクロ経済学+マクロ経済学)の出題数

・国家一般職:10問/40問

・東京都特別区:10問/40問

・地方上級:11問/40問

・市役所上級・中級:11問/40問

そこで、本記事では、マクロ経済学に絞って、どのように学習をしていけば、8割程度の得点ができるかについて解説していきます。公務員試験は6~7割の得点で筆記試験を通過できる年が多いので、8割取れるということは、得点源科目化(≒得意科目化)していることを意味します。

なお、紹介する学習方法は、初学者で予備校に通っていない方を想定し、入手可能な書籍しか用いません。そのため、どのような方にも取り入れられます。是非、この記事を参考に勉強を進めていっていただき、マクロ経済学を得意科目化してください。

※本記事は、国家総合職を除く大卒公務員試験種を対象としています。
※ミクロ経済学については、下記の記事を参照ください。

【公務員試験】ミクロ経済学8割ゲットの勉強法とおすすめ参考書

2.マクロ経済学とは?

マクロ経済学は、一国全体の経済に関する理論を学びます。例えば、失業率が下がっているとき、物価はどうなっているかだったり、一国の経済モデルを設定し、財政政策や金融政策が効果があるのかだったりを学びます。

そして、公務員試験で出題されるマクロ経済学の主な範囲は以下の通りです。

(1)国民経済計算関連

一国の経済活動は国際比較可能な形で記述されています。これを国民経済計算というのですが、ここにある様々な指標を学びます。代表的には、GDP、物価指数などです。数値の現況は教養試験の時事などで問われ、マクロ経済学では各指標の定義を適切に理解しているかが問われます。いずれにせよ、理論というよりも統計の話の単元です。

(2)財市場分析(45度線分析)

モノやサービスの取引をする市場を財市場と言います。この市場における総需要と総供給を導出し、その均衡はどこになるのかであるとか、インフレギャップ、デフレギャップ乗数理論ビルト・インスタビライザーとかを学びます。

(3)貨幣市場分析

おカネに関する需要(貨幣需要)と供給(貨幣供給)に関する論点を学びます。ここでは、貨幣需要曲線と貨幣供給曲線の導出と均衡だけでなく、貨幣の定義信用創造中央銀行の役割(金融政策含む)などを学びます。

(4)ISーLM分析

(2)と(3)の市場の同時分析をIS-LM分析といいます。ここは、頻出中の頻出単元です。毎年どの公務員試験種でも1問以上問われることになります。

(5)国際マクロ

(2)は輸出入がないモデルを学習するのですが、これを変更します。海外とやりとりがあることを開放経済モデルと言いますが、そのようにします。それから、為替レートの決定理論や、国際収支曲線(BP曲線)を(4)に加えたISーLMーBP分析(≒マンデル・フレミングモデル)などが出題されます。

(6)AD-AS分析

(4)に労働市場を加えて同時分析することをADーAS分析と言います。三つの市場を含んだモデルにおいて財政・金融政策がどうなるかを問う単元です。

(7)ケインズ派以外のマクロ経済学

(2)~(6)は、ケインズというマクロ経済学の創始者並びにその影響を受け理論を発展させた学者群(ケインズ派と言われます)の考え方に基づいた理解です。しかし、マクロ経済学には、ケインズ以外の主流派経済学である古典派(新古典派含む)の考え方もあります。その論点を学びます。
また、ケインズ型消費関数以外の消費関数ケインズの投資理論以外の投資に関する理論も学習します。

(8)経済成長論

(2)~(5)は数か月程度、(6)(7)でも数年程度の期間を想定した理論なのに対し、経済成長論はかなり長期のマクロ経済学を分析した理論です。こちらも、ハロッド=ドーマー型というケインズ派と、ソロー=スワン型という古典派の経済成長論があります。また、ソローの成長会計という経済成長の要因分析もよく出題されます。

その他、インフレーションフィリップス曲線などの単元もあります。なお、赤字がよく出題され、青字がそれに続き、黒字がさらにそれに続く出題のイメージとなります

3.マクロ経済学の学習方法(参考書紹介付き)

ここからは、マクロ経済学の攻略方法をお伝えします。

(1)インプット編

まずは、公務員用に書かれた基本書での学習です。このとき、大事なことが2つあります。1つ目は、前から順番に学習をしていくということです。理由は、マクロ経済学という科目が積み重ねだからです。前の単元を引き継いで次の単元が展開されていくということです。例えば、上述「2」の(2)財市場を理解した上で、(3)貨幣市場を押さえないと、(4)のISーLM分析ができないわけです。

2つ目は、多少分からないところがあっても気にせず先に進み、後で関連したときに返り読みするということです。理由は、後になればなるほどモデルの設定が複雑になっていくのですが、そのときに以前のモデルとの比較がされますので、その時に以前の理論が分かり理解が深まるからです。

例えば、筆者が初学者だったとき、AD-AS曲線の学習する際に「ここから物価が動きます」とテキストにあったことで、「IS-LM分析って物価一定が前提だったんだ」と認識し、そこで振り返るとIS-LM分析の理解が深まりました。初学者は、筆者みたいに、最初はよく分からなかったり、重要なところだと思わずさらっと読み進めてしまったりしがちです。そして、後の記述に触れることでその点が分かってきて、理解が深まることが多い科目がマクロ経済学です。この点を含んで通読と返り読みをすると良いでしょう。

この2点を気を付けつつ、学習に使う基本書としてお勧めなのが、
公務員試験 ゼロから合格 基本過去問題集 マクロ経済学』(以下、ゼロから本と表記します)です。

こちらの本は、テキスト部分と問題部分があります。1周目は、問題を解かなくて良いので、どんどんテキスト部分を上記の2点に気を付けながら読んでいきましょう。

(2)アウトプット編

『ゼロから本』は2周目において、テキスト部分を再読した後に問題を解いていきましょう。ここから、アウトプット編がスタートします。

3周目は各章とも、問題から解いていき、間違えた場合に、復習として解説だけでなく、テキストの該当部分に立ち返える使い方をします。これで、かなりの解答力が身についたと言えます。

ただ、『ゼロから本』は、少しひねった問題などが少ない傾向にあります。そこで、仕上げとしては、問題集を使います。

問題集は、スーパー過去問も良いですが、数学が苦手な方&見開き問題が好きな方はLECの解きまくりシリーズの方が良いでしょう。

2025-2026年合格目標 公務員試験 本気で合格!過去問解きまくり! 【14】マクロ経済学

なお、問題集は、『ゼロから本』で収録されていない問題だけをやればOKです。問題集も2~3回転(2,3回転目はできなかった問題のみ行う)することで、8割の解答力がつくことでしょう。

4.まとめ

本回は、マクロ経済学の択一式を試験当日に8割正答するための方策を伝えました。お勧めの参考書と利用法は、『ゼロから合格!マクロ経済学』でインプット&アウトプットした後に、スーパー過去問か解きまくりシリーズのマクロ経済学でさらなるアウトプットとなります。

そして、インプットの時には、前から順番に行うことと、多少分からない部分があっても立ち止まらず読み進めるということが大切です。先に進んで見て、前との比較部分がきたら振り返り学習をすると良いでしょう。

以上が参考になれば幸いです。

なお、こうした勉強法をしようと挑戦したとき、どうしてもインプットがうまくいかない(分からないところが多すぎてさすがに読み進められない)であったり、アウトプットしてみたけれど全然解けるようにならないであったりの場合は、個別レッスンを受けると見通しが持てたり、改善ができたりするのではと考えます。

究進塾では、個別指導で経済学指導をしていますので、興味がある方は無料相談・体験授業などをご検討ください。お待ちしています。

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地方上級で出る、社会政策・国際関係の対策への向き合い方について解説します!

1.はじめに

公務員試験で専門科目がある方の多くは、【憲法・民法・行政法・経済原論(ミクロ・マクロ)・財政学・政治学・行政学・社会学・経営学】を学習することで、国家一般職・国家専門職(例えば国税専門官)などに備えようとします。

そして、地方上級(都道府県庁や政令指定都市の市役所)も加えて受験しようとしたとき、上記の科目だけだと、「労働法・刑法・社会政策・国際関係」も必要なのか……となります。

「上記の【】だけでも大変なのに、加えて数的をはじめとした教養試験だって大変なのに、この4科目まであるなんて! 手が回らないよ」と焦ってくる方も多いと思います。

本記事では、行政系である「社会政策」と「国際関係」に絞って、出題数、そもそも対策をすべきなのか、するなら、どのように対策をすると良いのかを解説します。「刑法・労働法」は下記の記事をご確認ください。

地方上級で出る、刑法・労働法の対策への向き合い方について解説します!

ご一読いただき、参考になれば幸いです。

2.社会政策と国際関係の出題数

社会政策と国際関係の出題数を確認しましょう。

社会政策は、基本的には地方上級でしか出ないと捉えれば良いでしょう。全国型が必須3問(40問)、中部北陸型が選択2問(40問)、関東型が選択で3問(40問)です。

※( )内が総回答数です。以下、本記事内同じ

国際関係は、国家一般職で選択することが可能です。また、地方上級は、全国型が必須2問(40問)、中部北陸型が選択2問(40問)と関東型が選択で3問(40問)です。

3.社会政策と国際関係は選択すべきか

出題数のあり方から、地方上級が本命でなければ、両科目とも選択を考えなくて良いでしょう。【憲法・民法・行政法・経済原論(ミクロ・マクロ)・財政学・政治学・行政学・社会学・経営学】をしっかりやり込むことに専心してください。

次に、地方上級が本命の方ですが、中部北陸型・関東型の方は選択ですから選ばないことができます。なぜなら、【憲法・民法・行政法・経済原論(ミクロ・マクロ)・財政学・政治学・行政学・社会学・経営学】だけで、経済学、財政学を通じて経済政策や経済事情も回答する場合、40問の回答数に至るからです。

また、地方上級の全国型は必須とはいえ、社会政策と国際関係を合わせて5問です。40問中28問(7割)を正解するように学習していく際に、基幹となる【憲法・民法・行政法・経済原論(ミクロ・マクロ)・財政学・政治学・行政学・社会学・経営学】をしっかり学習し、刑法や労働法を捨てないのであれば、捨てても良いかもしれません。

ただ、刑法は、以下の記事で紹介したように、本来難関と言われる学習内容です。そのため、法学部生以外はとっつきにくいかもしれません(いきなりスーパー過去問での学習はしづらいわけです)。

地方上級で出る、刑法・労働法の対策への向き合い方について解説します!

他方、労働法はそこまでの難易度ではありません。いきなりスーパー過去問での学習が可能です。また、労働法の法改正点などは時事的な内容です。そして、時事は教養試験対策で必ず学習した方が良いものとなります。

加えて、社会政策も労働政策や社会保障など政策的な事柄における時事的なものが出ます。つまり、労働法と社会政策は似た学習項目があります。したがって、社会政策は学習をしておくと良いでしょう。

そして、国際関係は教養世界史をベースに、国際関係に関する理論や時事が問われます。時事も教養対策で学習するかと思いますので、専門科目用におさえる部分は理論だけとなります。この意味で、国際関係に手を伸ばすことは悪くない選択といえます。

公務員試験の時事問題を突破するためのおススメ時事本を紹介します!

ただ、国際関係などは世界史なども絡むこと、学者と理論を覚えるのは政治学や行政学、社会学で手一杯だという方は苦しいかもしれません。まだ、労働法の方が馴染みがあるかもしれません。

したがって、地方上級は全国型で必須の方は、社会政策は学習しておき、国際関係か労働法のうち相性の良い方を最低でも1つは行いましょう。そうすれば、40問中35問は学習した科目を学習している状態がつくれます。頑張って刑法以外3科目を行えば、40問中38問です。そのつもりで準備しましょう。

4.選択した場合の学習方法

社会政策と国際関係の学習方法について、以下がお勧めとなります。

(1)社会政策の学習

社会政策は、労働政策や社会保障政策の時事的な内容も問われるため、必ず最新版を手にしましょう。と言いたいところなのですが、2025年2月現在、社会政策のテキストはTAC版2018年、まるごとパスワード2019年となっていますので、どちらも心許ないです。

したがって、社会政策の理論部分だけを参考にしましょう。この場合、まるごとパスワードの方がキーワードごとになっていて見やすいので良いと思います。

一読後は、地方上級用の過去問500を使って演習をしましょう(社会政策は、スーパー過去問もないからです)。

演習と合わせて、教養試験対策の時事本で労働事情、社会保障の項目を読みましょう。

まとめますと、社会政策は、①まるごとパスワードでキーワードを読み→②過去問500で演習→③時事本で最新の社会保障政策・労働政策をおさえるという学習の流れがお勧めです。

(2)国際関係の学習

国際関係の学習は、前提として教養の世界史学習を終えておきましょう。

その上で、まず、『はじめて学ぶ 国際関係(改訂版)』でさらっと流れをおさえます。次に、スーパー過去問7で演習をします。その後、教養試験対策の時事本にある国際情勢の項目を読み込みます。


 

公務員試験の時事問題を突破するためのおススメ時事本を紹介します!

5.おわりに

今回は、公務員試験の専門科目で、多くの職種で問われるわけではない社会政策と国際関係について、選択すべきか、選択する場合はどのような学習が良いのかについて解説しました。

地方上級全国型が本命の方は、社会政策>国際関係≒労働法>刑法の順で学習選択をすることがお勧めだと伝えました。

そして、学習方法は、社会政策が「まるパス→過去問500→時事本」で、国際関係は「はじめて学ぶシリーズ→スー過去→時事本」を推奨しました。

いずれの科目も試験直前に学習することが多いと思います。スピーディーに行いましょう。皆さんの学習が進むことをお祈りしています。

何か悩みがあれば、ぜひ究進塾で受講相談ください。無料体験授業を通じて、少しでも悩みの解消法をお伝えします。

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地方上級で出る、刑法・労働法の対策への向き合い方について解説します!

1.はじめに

公務員試験で専門科目がある方の多くは、【憲法・民法・行政法・経済原論(ミクロ・マクロ)・財政学・政治学・行政学・社会学・経営学】を学習することで、国家一般職・国家専門職(例えば国税専門官)などに備えようとします。

そして、地方上級(都道府県庁や政令指定都市の市役所)も加えて受験しようとしたとき、上記の科目だけだと、「労働法・刑法・社会政策・国際関係」も必要なのか……となります。

「上記の【】だけでも大変なのに、加えて数的をはじめとした教養試験だって大変なのに、この4科目まであるなんて! 手が回らないよ」と焦ってくる方も多いと思います。

本記事では、法律系である「労働法」と「刑法」に絞って、出題数、そもそも対策をすべきなのか、するなら、どのように対策をすると良いのかを解説します。「社会政策・国際関係」は下記の記事をご確認ください。

地方上級で出る、社会政策・国際関係の対策への向き合い方について解説します!

ご一読いただき、参考になれば幸いです。

2.刑法と労働法の出題数

刑法と労働法の出題数を確認しましょう。

刑法は、国家一般職・国税専門官・財務専門官・特別区・東京都IB方式では出題がありません。裁判所事務官が選択で10問(30問)、労働基準監督官が選択で3問(36問)、地方上級のうち全国型が必須2問(40問)、中部北陸型と関東型が選択で2問(40問)です。つまり、地方上級の全国型以外は選択回答となります。

※( )内が総回答数です。

労働法も、国家一般職・国税専門官・財務専門官・特別区・東京都IB方式では出題がありません。また、裁判所事務官でも出題はありません。労働基準監督官Aは1次試験で必須7問(40問)&2次の記述式1問出ますのでかなりウェイトが大きいです。そして、地方上級は、刑法と同じく、全国型が必須2問(40問)、中部北陸型と関東型が選択で2問(40問)です。

3.刑法と労働法は選択すべきか

出題数のあり方から、まず、刑法は裁判所事務官を本命の方が、労働法は労働基準監督官Aが本命の方が、それぞれ学習をした方が良いものとなります。なぜなら、出題数が多かったり、必須だったりするからです。

次に、地方上級が本命の方ですが、中部北陸型・関東型の方は選択ですから選ばないことができます。なぜなら、【憲法・民法・行政法・経済原論(ミクロ・マクロ)・財政学・政治学・行政学・社会学・経営学】だけで、経済学、財政学を通じて経済政策や経済事情も回答する場合、40問の回答数に至るからです。

また、地方上級の全国型は必須とはいえ、刑法も労働法も2問だけです。40問中28問(7割)を正解するように学習していく際に、基幹となる【憲法・民法・行政法・経済原論(ミクロ・マクロ)・財政学・政治学・行政学・社会学・経営学】をしっかり学習し、社会政策や国際関係を捨てないのであれば、捨てても良いかもしれません。

以下の記事でも述べましたが、社会政策や国際関係は時事学習を通じて点数が取れるケースもあります。そのため、刑法や労働法より、社会政策や国際関係の科目を優先すれば良いでしょう。

地方上級で出る、社会政策・国際関係の対策への向き合い方について解説します!

ただ、国際関係などは世界史なども絡むこと、学者と理論を覚えるのは政治学や行政学、社会学で手一杯だという方は苦しいかもしれません。また、法学部の学生なら刑法や労働法の方が馴染みがあるかもしれません。

したがって、地方上級は全国型で必須の方で、社会政策や国際関係よりも手を出したい方が選択すると良いでしょう。

4.選択した場合の学習方法

裁判所事務官本命の方の刑法学習、労働基準監督官本命の方の労働法学習、そして、地方上級全国型受験者で両科目を学習する方には、以下の学習がお勧めです。

(1)刑法学習

刑法は、憲法や民法に比べ学説対立も鋭く、司法試験などのためなら大変だと言われます。他方、公務員試験では、他の法律系科目と同様に、条文と判例(なければ通説)をおさえればOKといえます。
設問も判例のひっかけが多いです。そのため、①刑法の世界に慣れる→②条文を読んでみる→③スーパー過去問で演習するという学習の流れがお勧めです。
①でお勧めの本は、『マンガでわかる刑法入門』(伊藤真監修、ナツメ社)です。漫画を読みながら、難解な刑法関連の用語がおさえられ、刑法の概要も掴めます。

②はネットで「刑法 条文」とすれば出てきます。264条までしか刑法はありませんので、ざっと目を通すと、理解が深まります。

③はスーパー過去問の最新版を使って学習しましょう。2025年2月現在、『スーパー過去問ゼミ 刑法7』が最新版です。

なお、問題演習の時間は、地方上級全国型対策用の方で、設問2問に対して多くを避けない場合、頻出度Aの必須問題とダイヤマークのついているものだけを行う様にしてスピーディーに取り組みましょう。

(2)労働法学習

労働法は、いきなりスーパー過去問に取り組めばOKです。理由は、民法や刑法のような難解さがないためです。問題から入って不正解ばかりだとやる気が削がれるという方は、スーパー過去問を読む(問題を読んだら解答をすぐ読んで、知識にしていく)形で行うと良いでしょう。

注意点としては、法改正などが割合にある分野ですので、必ず最新版を使うということです。刑法のときと同様に、地方上級全国型対策用の方で、設問2問に対して多くの演習時間を避けない場合、頻出度Aの必須問題とダイヤマークのついているものだけを行う様にしてスピーディーに取り組みましょう。
『スーパー過去問ゼミ 労働法7』

5.おわりに

今回は、公務員試験の専門科目で、多くの職種で問われるわけではない刑法と労働法について、選択すべきか、選択する場合はどのような学習が良いのかについて解説しました。

裁判所事務官の刑法利用、労働基準監督官Aの労働法、地方上級全国型で社会政策や国際関係よりも選択した方が有利な方(法学部の方など)は、学習をすることを勧めました(労働基準監督官Aは労働法必須なので必ず学習すべきですが)。

そして、学習方法は、刑法が漫画本で概要を掴む→インターネットで条文に触れる→スー過去演習で、労働法はいきなりスー過去演習を推奨しました。

いずれの科目も試験直前に学習することが多いと思います。スピーディーに行いましょう。皆さんの学習が進むことをお祈りしています。

何か悩みがあれば、ぜひ究進塾で受講相談ください。無料体験授業を通じて、少しでも悩みの解消法をお伝えします。

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公務員試験の時事問題を突破するためのおススメ時事本を紹介します!

1.はじめに

SPIなどの民間就職試験でも利用される試験をつかった公務員試験を除いては、教養(基礎能力)試験として、人文科学、自然科学、社会科学、文章理解、数的処理などで構成されている試験が課されます。

そして、社会科学の中には、時事問題が出題されることが多く、時事の対策はとても重要になっています。

また、専門科目の中にも、財政学として、昨今の財政事情を問う問題が出るなど、時事要素の理解が重要な問題がでます。他にも、政治制度が変われば政治学、新しい省庁などができたら行政学なども時事要素が絡んだ問題として過去に問われたことがあります。

さらに、教養論文のテーマは、そもそも、時事的なことがフォーカスされます。例えば、令和2年の沖縄県の問題は「テレワークについて」でした。令和2年はコロナ禍となった初年度で、テレワークが増えたことを受けたと言えます。

このように、公務員試験にとって時事は重要です。そこで、本記事では、こうした時事に対応できるおススメの参考書を紹介します。

2.おススメ参考書 ①;『公務員試験の教科書 時事本』

1冊目は、公務員のライトというオンラインスクール予備校が出している時事本です。特徴としては、次の5つです。

出題カバー率92%以上を昨年たたき出しており、この1冊で時事の出題内容がおさえられる
・豊富な図表とフルカラーで、見やすいレイアウトになっている
論文を見据えた時事の解説がなされている
情報という新しい科目の解説もされている
アプリと連動し、学習した時事の定着ができる(アプリには300問以上収録)

値段は税込1,430円と、1500円を切っています。この1冊とアプリを使い倒せば、かなりの効果を上げることができるでしょう。

一方で、本だけですと、論文を見据えて丁寧な解説が展開されていることから、要するにどこが試験で問われやすいのかという点がぼやけやすいという難点はあるかもしれません。

3.おススメ参考書②;『公務員試験 時事のトリセツ』

2冊目は、公務員試験予備校の老舗であるLECが出している本です。

この本は、全84テーマを解説しています。1テーマは、テーマ内容の解説をした後に、本試験で問われそうな5肢択一問題が収録されています。問題と解説は見開きになっており、見やすいです。

そして、この問題のつくりが秀逸です。

具体的には、公務員試験時事としてよく出る2つのパターンをきちんと想定したつくりになっています。2つのパターンとは、①話題のことだけをストレートに聞く形式と、②時事を理解するのに必要な土台的な知識についても併せて聞く問題形式を指します。

①の例としては、インボイス制度についてで、この話題だけで、5つの選択肢をつくり制度理解を問うています。

②の例としては、マイナス金利解除(2024年3月)です。こちらは、近年の金融政策が振り返られる選択肢が盛り込まれています。

こうして、実践的な問題が配置されているため、アウトプットを意識したインプットができるでしょう。

難点としては、論作文への応用を意図していないこと、2色刷りで文字での情報が多いことです。また、価格が1760円と、紹介する時事本の中では最も高いことです。

4.おすすめ参考書③;『公務員試験をあてる! 時事のまとめ』

3冊目は、LECと並んで公務員試験対策予備校の老舗であるTACが出している本です。

こちらは、税込1,210円と最も安価です。しかし、内容は充実しており、12章140テーマで、ライトの84、LECの82を上回ります。

本の構成は、1テーマ1~2で、そのテーマに関する情報を載せ、ページ下に問われそうな内容を1問1答で収録しています。章末には、予想問題が5肢択一で掲載されています。これらをやり込めば、かなり力がつくかなと思います。

また、重要度のA~Cを大胆につけており、10大出題テーマも掲げていることから、学習単元のメリハリがつく利点もあります(LECの本も重要度はあるのですが、TACとは異なり、Cが少なく、Aが多いので、結局全てをやらないといけないイメージになります)。

他方で、3冊中で最も文字情報だけが多いこと、1問1答はすぐに答えが見えてしまうこと&LECよりは予想問題が少ないことから、自分がきちんとおさえたのかという確認がしづらい点が難点と言えます。

5.おわりに

今回は、公務員試験の時事本としておススメの3冊を紹介しました。

なお、受験生の方の中には、『速攻の時事』が定番ではないのかという思いもあるかもしれませんね。もちろん、同書も優れた本だと思います。ただ、演習が別冊のため、演習を揃えると2500円を超えてしまいます。なるべく安価に同じ効果を得たいと考えるかなと思い、今回は紹介をしませんでした。それだけですので、既に買われた方は、その本を信じてやり込めば大丈夫です。わざわざ、今回の3冊に買い直す必要はありません。

また、3冊のおススメ本のいずれにも、難点がついていて、結局どれが良いのかと迷われてしまう方もいるかもしれません。

そのような方には、自身の状況や志望先というのを加えて頂くと、選ぶ本がよりクリアになるかもしれません。

例えば、「普段からあまりニュースは見ないし、公務員試験対策も数的等に力を入れすぎて社会科学には自信がないよ」という方は、丁寧に解説されているライトの本がおススメです。また、隙間時間を利用しやすい方は、そこでアプリ利用ができるのでおススメです。

他方、国家公務員試験が本命で、時事の複合問題(上記3で②として紹介した形式)に対応した参考書を使いたい方は、LEC本が良いかなと感じます。

TAC本は、今まで、専門科目や社会科学などの学習をある程度してきており、時事知識を追加しておきたいという方には合うと思います。

以上を念頭に、公務員試験の時事本を選ぶと良いでしょう。

なお、究進塾では、受験生のあなたの状況を詳しくお聞きして、おススメの教材を紹介するような形で、無料体験授業を活用することもできます。学習方法に悩んでいらっしゃれば、是非とも一度ご活用ください。

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社会学、選択式問題8割ゲットの勉強法とおすすめ参考書

1.はじめに

公務員試験で国家一般職や国家専門職、そして地方上級などの行政職において、採用ボリュームが最も多い区分は、まだまだ専門試験があるものといえます。たくさんの科目を学習しなくてはならない意味で倍率も下がります。

そこで、受験を決意した際に、問題となるのが、どの科目を選択しようかということです。もちろん、憲法・民法・行政法・経済学などはどの試験種でも出題されますので、選ばざるを得ないと思います。ただ、それ以外の科目はどうしようかと悩んだりする方は多い事でしょう。

科目選択において重要なことの1つが、各科目の攻略法を知ることです。なぜなら、その攻略法を知って、実践できるのであれば選択すればよくなり、難しそうであれば違う科目を利用することになると考えられるからです。

そこで本記事では、「社会学」の攻略法をお伝えします。ちなみに、タイトルに8割ゲットとしているのは、公務員試験は概ね6〜7割の得点で合格するため、8割取れる=合格に大きく寄与できる科目=得意科目になったことを意味します。すなわち、社会学を得意科目にする学習方法を教材を紹介しつつ行います。なお、学習方法は予備校に通っていない独学者かつ初学者を想定した方法をご紹介します。

2.社会学の位置付け

まずは、公務員試験における社会学の位置づけをおさえましょう。

(1)出題数

社会学の出題は令和6年度実績で、以下となっています。
①国家一般職・・・・・・科目選択式で1科目分=5問(40問回答)
②国税専門官・・・・・・科目先選択式で政治学・社会事情と合わせて6問(社会学は2問)
③財務専門官・・・・・・科目選択式で政治学と合わせて6問(社会学は3問)
④労働基準監督官・・・・・・問題選択式で最大2題選択可
⑤法務省専門職員・・・・・・問題選択式で最大10題選択可
⑥特別区・・・・・・問題選択式最大5問(40問回答)
⑦地方上級・・・・・・中部北陸型のみ出題。問題選択式で最大2問選択可
たくさんの試験種で使えそうですが、②~⑤は同一日に一次試験があることと、国家総合職には出題がないことは、併願を考える上では注意が必要です。また、県庁の多くで出題がない点も留意しましょう。なお、記述試験で社会学を使えるのは以下の試験種です。

国税専門官・東京都・家庭裁判所調査官

(2)出題内容

以下が社会学の学習内容です。

①社会学史

社会学という学問がどのように生まれ、どのように発展していったかということが社会学史です。ここでは、コント、スペンサー、マルクス、デュルケム、ウェーバー、ジンメル、シュッツ、パーソンズ、ルーマン、ハーバーマス、ブルデューなど、著名な社会学の理論家とそのキーワードを暗記していくことになります。

②社会変動論

社会がどのような構造を持っていて、昔から現在にかけて、どのように変化しているのかに関する理論を学びます。例えば、機械的連帯社会から有機的連帯社会への変動を論じたデュルケムなどの学説を学び覚えていきます。ちなみに、デュルケムは①で取りあげた学者ですが、このように、いろいろなジャンルで同一の学者が出てくるところは、社会学の大きな特徴です。

③集団論

社会には様々な集団がありますが、それを何らかの特徴(視点)で分類した社会集団論や、集団の一つである家族に関する理論を学びます。ここでも、例えば家族論には、①で出てきたパーソンズが再び出てきます。なお、集団論は①と並ぶ頻出単元です。

④行為論

我々は、日々何らかの行為を意識的にも、無意識的にもしてます。そして、それによって(あるいはその蓄積によって)で社会が安定的に営まれたり、逆に既存社会からの変化が促されたりもしています。この行為に着目したジャンルも出題範囲です。心理学などの学問が隣接領域となります。

⑤〇〇をめぐる社会学

〇〇には、メディアと情報化、地域(特に都市化)、労働や職場、文化、宗教、大衆などが入ります。例えば、メディアと情報化であれば、その与える影響が強いか弱いかなどについての学説があるため、それを覚えていくことになります。

⑥社会調査

調査方法(適切なアンケートの作り方など含む)、調査されたものの処理方法などについて、代表的な調査として国勢調査に関する知識などが問われます。ただ、この単元は、主に国家一般職では問われますが、他の試験種ではあまり出ません

(3)難易度

難易度は、ずばり、やや難しいといえます。

理由は3つあります。

第1は、覚える学者、キーワードの数が大変多いからです。社会学は、生まれて200年ほどの若い学問ですが、大変覚える量が多いです。また、上記(2)の④のように扱う範囲も多いです。

恐らく社会学は、試験直前期に学習を始める方がほとんどです(公務員浪人やよほど早めから学習をしている方を除いて)。また、憲法・民法・行政法・経済学(マクロ・ミクロ)を先に学習することが大事ですので、それはやむを得ません。ただ、直前からの割には、上述のとおり覚えることが多すぎて、焦ってきます。そうすると、余計に覚えられなくなるという悪循環が起きやすい科目です。

第2は、社会学の特質から、理解に時間がかかる可能性が高いためです。社会学の醍醐味の一つは、我々が当たり前だと思っていることとは違う知見を得られることです。例えば、デュルケムは「犯罪がある社会は正常な社会だ」と述べました。これを試験対策として、覚えていきます。

このとき、多くの人は、「犯罪がある=治安がよくない=望ましくない社会で、どちらかというと異常事態の側ではないのか」と思うため、「ん? どうして?? 」とデュルケムの言葉を理解する前に戸惑いが発生します。もちろん、その後、きちんと説明されている本には、「何を犯罪とし、何を犯罪としないかを社会的に含意していないと、ある行為を犯罪に認定できない。その意味で、犯罪がある社会は、犯罪を社会的に認定できているわけだから、そういうコンセンサスを社会的に働かせられているという点から、正常な社会だといえる」というような趣旨の解説が書いてあるので、「あぁ、そういうことか」となります。

したがって、社会学の視点は面白いと言えば面白いのですが、一旦、自身の常識を再認識し、その後に社会学の視点で捉え直しをする分、単純な暗記より理解に時間がかかりがちです。ちなみに、「ん? どうして?? 」を強く抱いてしまうことと、第1で挙げたボリュームの多さから丸暗記するには向かないという厄介な科目です。

第3は、背景知識が理解を左右するからです。学者が、どのような時代を生き、どのような社会をみたからこそ、そのような学説を唱えたかを捉える際には、世界史などの背景知識がひつようとなります。背景知識が不足すると、学者とキーワード自体は合っているけれど、それをつなぐ文章の部分に誤りがある選択肢への正答が下がってしまいます。これも社会学を難しく感じさせる要因です。

3.おすすめの勉強法と参考書紹介

上記で、社会学がやや難しい科目だという点を詳しく述べました。選ぶのをどうしようかなと思ったことかと思います。他方、経済学のような計算がどうしても苦手であったり、民法の事例問題がどの知識を当てはめるのか分からず得点が伸びなかったりなど、いろいろな理由から、「暗記できれば得点できる社会学を使いたいから、たとえ難しい科目でも勉強頑張るぞ」と思っている方もいることでしょう。

そこで、社会学が得点源になる可能性を高める、おすすめの学習方法を以下にお伝えします。

(1)おすすめの勉強法

まず、教養の「世界史」と「思想」を先に学習するというものです。たとえ、「世界史」を捨て科目にしている方も、欧米の近現代史は概観しておいてください(市民革命以降から冷戦崩壊まで)。ここでいう概観とは、細かな年号は覚えなくて良いので、どのような歴史が展開されていたかを知っておいてください。「思想」(あるいは倫理)も、細かな知識は覚えなくても良いので、(2)のおすすめの参考書で挙げた本のいずれかを通読して欲しいと思います。

次に、社会学の学習は、(2)のおすすめの参考書でも挙げた『社会学用語図鑑 ―人物と用語でたどる社会学の全体像』を使って、ビジュアル的に人物と用語をおさえていきます

その後は、過去問集に取り掛かりましょう。

使う過去問集は、
『新スーパー過去問ゼミ7 社会学』(実務教育出版)
『2024-25年合格目標 本気で合格!過去問解きまくり社会学』(LEC出版)のいずれかが良いでしょう。


(2)その他、おすすめの参考書について

上記に挙げた過去問集以外のおススメ参考書は、以下となります。

まず、「世界史」の概観教材は
『教科書よりやさしい世界史』をお勧めします。通史的な理解がさらっとできます。

教養世界史の学習も兼ねる場合は、
『神余のパノラマ世界史』です。「古代~近代へ編」と、「近現代史編」の2冊で流れをおさえたら、過去問をやりこむと公務員の教養世界史は得点源になるはずです。


次に、倫理(思想)です。これも、社会学の用語図鑑と同様ですが、ビジュアル的に覚えてしまうと良いでしょう。ずばり、
『大学入試 マンガで倫理が面白いほどわかる本』です。
第1章のギリシア思想と、第3・4章だけでもいいので、読みましょう(もちろん、教養の倫理(思想)のためには、全章読んだ方がいいですが、社会学の準備学習としてはという意味です)。

そして、
『社会学用語図鑑 ―人物と用語でたどる社会学の全体像』です。
ビジュアルで、難解な用語をおさえられる点は望ましいといえるでしょう。

ちなみに、都庁を受ける方で、記述にも対応したい人がいることでしょう。それに対しては、
『寺本康之の公務員試験専門記述 Kindle Book 社会学 参考答案集』が唯一の対策本といえますので、使ってみると良いでしょう。なお、電子書籍です。

4.おわりに

社会学は、学習範囲が広く、覚える事柄(キーワードや人物)が多いです。直前期に、こんなにやるのは無理だと感じてしまうくらいです。ただ、教養の世界史や倫理(思想)から入って、社会学の図鑑を眺めると、試験で求められる知識の吸収がよくなることかと思います。その状態で、過去問に取り組むことで、逆に得点源といえる科目にもできます。

選択する場合は、上記が参考になれば幸いです。

皆さんの学習を応援しています。

学習上の悩みがあれば、ASK公務員・究進塾では無料での相談を1回行っていますので、ぜひ利用してみてください。

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行政学、選択式問題8割ゲットの勉強法とおすすめ参考書

1.はじめに

公務員試験で国家一般職や国家専門職、そして地方上級などの職種で専門試験がある方の中には、どの科目を選択しようかと悩む方もいるのではないでしょうか。もちろん、憲法・民法・行政法・経済学などはどの試験種でも出題されますので、選ばざるを得ないと思います。ただ、それ以外の科目はどうしようかと悩むわけです。

このとき、重要なことの1つが、各科目の攻略法を知ることです。なぜなら、その攻略法を知って、実践できるのであれば選択すれば良くなり、難しそうであれば違う科目を利用することになるからです。

そこで本記事では、行政事務に携わる試験種の専門科目として出題される「行政学」の攻略法をお伝えします。

ちなみに、タイトルに8割ゲットとしているのは、公務員試験は概ね6〜7割の得点で合格するため、8割取れる=合格に大きく寄与できる科目=得意科目になったことを意味します。すなわち、行政学を得意科目にする学習方法を教材を紹介しつつ行います。

なお、学習方法は予備校に通っていない独学者を想定した方法をご紹介します。

2.行政学の位置付け

(1)出題数

行政学の出題は令和6年度実績で、以下となっています。
◎国家一般職・・・・・・科目選択式で1科目分=5問(40問回答)
◎特別区・・・・・・問題選択式最大5問(40問回答)
◎地方上級・・・・・・全国型・関東型・中部北陸型問わず2問(全国型のみ必須)

政治学や社会学と異なり、国家専門職では出題がありませんので注意しましょう。また、記述試験で行政学を使えるのは東京都のみです。

(2)出題内容

学習する内容は、下記に大別されます。

①行政学の理論史

絶対王政期の官房学とシュタイン行政学というヨーロッパ大陸での学問的な歴史や、アメリカでどのように行政学が発展したかという点の出題です。主に、学問発展に寄与した学者から出題されます。この部分は、他の科目ではあまり聞かない人物がでてきます。行政学ならではの範囲といえます。

②行政組織

官僚制の特徴(問題点を含んだ)や様々な組織編成の原理、そして日本の行政組織がどうなっているかについての出題です。稀に、アメリカやフランスなどでは公務員の採用をどうしているかなどの話も出題されます。

なお、「官僚制」は政治学や社会学と、「様々な組織編成の原理」は経営学と、それぞれ重なります。そして、「日本の行政組織」は新しく庁が出たときなどは時事と絡んで出題されます。時事的要素もあるわけです。この単元は、他科目で学習する内容が活きやすいといえます。

③行政の活動と統制

政策過程、予算づくり、それらの評価(政策評価)、行政の責任や統制などについて学びます。「政策過程」は政治学の、「予算づくり」は財政学の、行政が責任を果たしているということで透明性ある行政の観点で情報公開している話は行政法の知識が活きてきます。また、PDCAサイクルなどを意識して行政活動している点は経営学とも関連します。

もちろん、ファイナーとフリードリヒの行政責任論争など、単元の細目によっては行政学だけの部分もあります。ただ、他科目学習のおかげで「話が頭に入りやすい」科目といえます。

④地方行政

大陸系とアングロ=サクソン系の地方行政の違いや、戦前と戦後における日本の地方行政の違いなどが出題されます。ここは、①同様に、他科目との共通点は少ないかなと思います。ただ、戦後の地方自治の状態は、一部財政学や時事とも絡みます。

(3)難易度

難易度は、ずばり、他科目から学習していたら易しいといえます。

理由は3つあります。

第1は、先の出題内容でお伝えしたとおり、他科目と関連するところが多いからです。人文科学の世界史、政治学・社会学・財政学などを学習した状態で臨むとかなり取り組みやすく、時事部分と並行して学習すればその効果は大きいものとなります。

第2は、学者を覚える数が、政治学や社会学に比べて随分少ないからです。また、この学者さんたちが、時代の流れに沿って覚えていけばいいので(同時代に沢山出てこない)、その点も暗記が楽だといえます。

第3は、就職先に絡むところなので興味を持って学びやすい単元があるからです。例えば、日本の行政組織がどうなっているか、府・省・庁の違い、行政委員会と審議会の違い、国務大臣の中の特命担当大臣とは何なのかなどをおさえる部分があります。これらは、自身が勤務したいと考えている場所についてですので、無味乾燥な暗記にならずにすむといえるでしょう。

ただ、行政学を先に勉強してしまうと、少し難しく感じる可能性がありますので、できれば、教養の世界史(捨てる人でも、19・20世紀の近現代ヨーロッパ・アメリカ史くらいはさらっとみておくといいです)→政治学・社会学・財政学と学習した後に行政学を行いましょう。

3.おすすめの勉強法と参考書紹介

(1)おすすめの勉強法

おすすめの学習法は、上のアドバイスと重なりますが、

教養の世界史→政治学・社会学・財政学の後に学習するというものです。

この順番に学習している場合、いきなり過去問集からはじめてOKです。

使う過去問集は、
『新スーパー過去問ゼミ7 行政学』(実務教育出版)
『2024-25年合格目標 本気で合格!過去問解きまくり行政学』(LEC出版)のいずれかが良いでしょう。

どちらの本でも、単元ポイントを読んでから過去問を問いて解説を読み込むことをしましょう。なお、時事が絡む単元もあることから、試験年度を意識して、最新版を使いましょう。

(2)その他、おすすめの参考書について

上記に挙げた過去問集以外のおススメ参考書としては、受験生の困りごとタイプ別に以下となります。

まず、単独で行政学だけを取るつもりの方(政治学のボリュームを嫌ってとか、社会学は他の試験種との併願上使わないので学習をしないとかの方)は、以下の本で行政学をさらっとおさえるのをお勧めします。
『行政学案内(第3版)』


この本の著者である真渕勝氏は有斐閣からもっと分厚い『行政学』を出していて、一説には、昨今の行政学問題のタネ本などと言われていますが、この本はあまりにページが多くて公務員試験で得点するだけを考えるときついと思います。

したがって、『行政学案内(第3版)』が推奨です。ページにして200ページ程度(15章は読まなくていいので、もっと実際は少ないでしょう)です。また、1ページの文字もそんなに詰まっていない上、かみ砕かれていて分かりやすく、豊富な事例もあるので頭にすっと入ってくると思います。数時間あれば読めると思います。

なお、出版社があまりAmazonに本を入れていないようですので、出版社に直注文がお勧めです。
慈学社 注文用ページ

次に、都庁を受ける方で、記述にも対応したい人がいることでしょう。それに対しては、
『寺本康之の公務員試験専門記述 Kindle Book 行政学 参考答案集』が唯一の対策本といえますので、使ってみると良いでしょう。なお、電子書籍です。

4.おわりに

行政学は、学習の順番を間違えなければ、かなり予備知識を持った上で挑むことができます。そうなると、後は過去問集をやりこむだけで得点が取りやすくなります。もしも、他科目からの学習順序を踏めない場合は、真渕勝氏の『行政学案内(第3版)』を読んでから始めると良いでしょう。

皆さんの学習を応援しています。

学習上の悩みがあれば、ASK公務員・究進塾では無料での相談を1回行っていますので、ぜひ利用してみてください。

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「2025年度版 公務員試験 すばやく解ける 数的推理・判断推理・資料解釈」レビュー

1.はじめに

数的処理は公務員試験の中核科目です。そのため、いろいろな対策本が出ています。
独学をする際に、どの対策本でどのような学習をしていくと効果的なのかはとても大切です。

今回は、表題にある『2025年度版 公務員試験 すばやく解ける 数的推理・判断推理・資料解釈』について、使用してみた感想などを予備校などで数的処理も指導してきた著者がお伝えしていきます。

皆さんの参考書選びの参考になれば幸いです。

2.本の概要並びに特徴

(1)本の概要

『2025年度版 公務員試験 すばやく解ける 数的推理・判断推理・資料解釈』は、2001年版から著者を変えながら四半世紀、新星出版社から発売されている本です。版を重ねて発売している安心感がある本ですね。

現在の著者は、「平成の資格王」と呼ばれる中村一樹氏と、公務員試験の自然科学の著作もある河野裕之氏です。

中村氏も、自身で公務員試験予備校を経営していたり、他の公務員試験の著書を書いていたりします。したがって、本書は、2人の公務員試験専門家が力を合わせて数的処理に関する対策本を書いた本と言えるでしょう。

なお、本書の対策対象公務員試験は、国家一般職初級、地方初級などいわゆる高校卒業程度の公務員試験です。

(2)本の特徴

本書は、数的処理の出題を30パターンに分類し、そのパターン毎にある解法を丁寧に解説してくれます。

その後、やさしいレベルの例題があり、続いて、その解説を通じて基本的な知識の解説をさらに行います。最後は、過去問による腕試しを通じた解法のチェックとなります。

こうして、ていねいに30パターンの実力を養っていきます。

なお、本書全体は180ページ程度の薄型で、A5判より小さい四六判くらいですので、持ち運びや隙間時間に開いて読むことが容易です。

3.本書が向く人、向かない人

(1)本書が向く人

試験まで時間がなく、スピーディーに頻出箇所を勉強をしたい人で、あまり数学が得意ではない人におススメです。

本書は、数的推理、判断推理・資料解釈という数的処理3科目に関して、30パターンの解法を紹介しています。1科目30パターンではないわけですので、どれも頻出単元のみを扱っていると言えます。また、1パターンにつき10ページもありません(全体ページ数が180ページ程度だからです)。

以上から分かるように、ここで扱われている内容はかなり最小限です。したがって、この位はおさえないと、試験当日までの準備として不安が残ります。

急に公務員試験を受けようと思ったけれど、時間がない人には、最低限の準備の到達点として本書が一つの目安になるということです。ただ、本書をこなした後に、なるべく受けられる試験種に合わせた過去問に挑むことがお勧めです。

例えば、実務教育出版には、地方初級、国家一般職など職種ごとの過去問シリーズがあります。書名の数字が問題数ですので多く感じるかもしれません。ただ、この本は全科目が収録されているため、数的処理だけの問題は十分こなせる問題数と言えます。また、受験する試験種の過去問は絶対にみておく方が良いため、その目的用に購入した本を活かして、『2025年度版 公務員試験 すばやく解ける 数的推理・判断推理・資料解釈』後の演習をすることは効率的でもあります。

ちなみに、高卒警察官を目指している方の同シリーズは以下です。
『高卒警察官 教養試験 過去問350 2025年度版 (公務員試験 合格の350シリーズ) 』

さて、数学が得意でない人にとっては、かなりかみ砕いた説明である本書は苦手意識なく読み進められると思います。なお、近年の社会人、就職氷河期の公務員試験で、従来の教養試験型の試験を課すところを受ける方で、久しぶりに数学的なことに触れる方にもおすすめです。

(2)本書が向かない人

数学にそこまで苦手意識がない人、いろいろなパターンを解いて万全な試験準備をしたい人には向いていないといえます。

まず、数学にそこまで苦手意識がない人は、いきなり過去問演習をした方が良いでしょう。例えば、以下などを利用することがお勧めです。

公務員試験 [高卒程度・社会人]初級スーパー過去問ゼミ 数的推理

公務員試験 [高卒程度・社会人]初級スーパー過去問ゼミ 判断推理

公務員試験 [高卒程度・社会人]初級スーパー過去問ゼミ 文章理解・資料解釈

次に、万全な準備をしたい人は、定評ある以下の本で学習した方が、様々な問題パターンに触れられて当日の得点力が期待できます。なお、著者の畑中氏は高卒公務員の本だけでなく、大卒用も書いており、その量と質は業界のトップランナーといえる人です。

畑中敦子の初級ザ・ベストNEO 数的推理/資料解釈

畑中敦子の初級ザ・ベストNEO 判断推理

4.まとめ

今回は、『2025年度版 公務員試験 すばやく解ける 数的推理・判断推理・資料解釈』についてレビューしました。

この本だけでは、合格十分な演習は積めないかもしれませんが、まずはどの単元が頻出で王道の解法が何なのかを知りたい人には、向いている本かと思います。

また、そのときに、数学的なものに苦手意識がある方には、スムーズな理解ができるメリットもあります

他方、数学的な苦手意識がない方でいきなり過去問演習ができる方や、試験までまだ時間があり、丁寧に多くの単元を学習して万全な試験準備ができる方には、あまり向いていないと言えます。

自身の状況を踏まえて、本書で独学するかどうかお考え頂ければと思います。

ところで、高卒試験対象の本は、大卒よりも種類が少ないです。また、高校生で目指している方の中には、通われている高校に受験情報の蓄積があまりない可能性もあります。そういう中で、受験対策をすることは大変です。

究進塾では、無料で受講相談もしておりますので、独学に必要な教材について知りたい、受験対策のスケジュール感を得たい、などがあれば是非ご活用ください。もちろん、受験直前期に、最後に分からないところだけを質問したいという使い方も可能です。

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★公務員試験の数的処理が苦手な人のための対策法

皆さんの公務員試験対策のお役にたてれば本望です。

 

政治学、選択式問題8割ゲットの勉強法とおすすめ参考書

1.はじめに

公務員試験で専門試験がある方の中には、どの科目を学習しようかと悩む方もいると思います。特に、憲法・民法・経済学・行政法などはどの試験種でも出題されるため、選ぶことが多いと思うのですが、それ以外の科目はどうしようかと悩むわけですね。

このとき、重要なことの1つが、各科目の攻略法を知ることです。なぜなら、その攻略法を知って、実践できるのであれば選択すれば良くなり、難しそうであれば違う科目を利用することになるからです。

そこで本記事では、行政事務に携わる試験種の専門科目として出題される「政治学」の攻略法をお伝えします。

ちなみに、タイトルに8割ゲットとしているのは、公務員試験は概ね6〜7割の得点で合格するため、8割取れる=合格に大きく寄与できる科目=得意科目になったことを意味します。すなわち、政治学を得意科目にする学習方法を教材を紹介しつつ行います。

なお、学習方法は独学を想定した方法をご紹介します。

2.政治学の位置付け

(1)出題数

政治学の出題は令和6年度実績で、以下となっています。
国家一般職・・・・・・科目選択式で1科目分=5問(40問回答)
国税専門官・・・・・・科目選択式で1科目=6問(40問回答)
※社会学・社会事情と併せて6問
財務専門官・・・・・・科目選択式で1科目6問(40問回答)
特別区・・・・・・問題選択式最大5問(40問回答)
地方上級・・・・・・全国型・関東型・中部北陸型問わず2問(全国型のみ必須)

(2)出題内容

学習する内容は、下記に大別されます。

①政治制度

日本や各国(=英米仏独中が中心)の立法・司法・行政の状態と作用、選挙制度などが出題されます。教養試験の社会科学政治と重なる範囲ですので、教養試験対策にもなります。

②政治的アクター

政党や圧力団体、マスコミなど、政治に登場するアクターとその影響について学習します。実態だけでなく、理論や概念化などをした政治学者を覚えておくことも必要な単元です。

③政治思想、政治意識と政治文化

自由主義、社会主義、民主主義などの政治思想を学びます。ここでは、特に時代ごとの政治学者(ないし思想家)の捉え方を理解することが求められます。社会契約説など、一部は教養試験と同一人物ですが、様々な人物が出てくるため整理が必要です。
それから、政治意識や政治文化の単元では、現代の大衆社会における政治的無関心や、現代国家の多様性が政治文化からもうかがえる点などを学習します。

④権力論、リーダーシップ論

一~三次元的権力論、リーダーシップ、支配の正当性などを学習します。ここも②や③などと同様、項目ごとに有名な学者がいいます。

⑤日本政治史

特に、戦後史が頻出です。教養の日本史や政治の歴史分野と重なるジャンルと言えます。

(3)難易度

上記の「①政治制度」と「⑤日本政治史」はそこまでの難易度でないため取り組みやすいです。また、「②政治的アクター」は、政党や圧力団体、マスコミなど現代社会に存在するものをみる視点であるため、身近なことを利用して覚えることで、比較的攻略しやすくなります。

一方、「③政治思想、政治意識と政治文化」や「④権力論、リーダーシップ論」は抽象的な概念がたくさん出てきますし、独特な用語もあり、とっつきにくいです。さらに、取り上げられる学者(思想家)の数も多いため、覚えることが多く厄介です。政治学攻略が上手くいったか否かは、この分野をおさえることにあります。

3.おすすめの勉強法と参考書紹介

(1)おすすめの勉強法

おすすめの学習法は、いきなり過去問からはじめる分野(ア)と解説本を読むことから始める分野(イ)に分けるというものです。

(ア)

アは、「①政治制度」「②政治的アクター」「⑤日本政治史」の分野です。ここは難易度も低いため、スーパー過去問などのポイント部分を読んだら、いきなり問題に取り組みつつ、解答解説を読み込む学習をしましょう。

(イ)

イは、「③政治思想、政治意識と政治文化」と「④権力論、リーダーシップ論」です。ここは、『寺本康之の政治学ベストプラス』の単元1~3、7、11~13を読んでから、スーパー過去問へ進むという形をとります。

もちろん、時間がある方は、『寺本康之の政治学ベストプラス』を通読してからスーパー過去問へいってもOKです。ただし、政治制度は最新版の方が良いので、スーパー過去問の最新版の知識を優先しましょう。

(2)その他、おすすめの参考書について

上記に挙げたスーパー過去問7と『寺本康之の政治学ベストプラス』以外のおススメ参考書としては、受験生の困りごとタイプ別に以下となります。

公務員試験 過去問攻略Vテキスト (10) 政治学
まず、スーパー過去問よりももう少し言葉の説明が欲しいが、図も欲しいという方は、TAC出版の『Vテキスト10 政治学』が整理されつつ、説明もあるのでおススメです。

■戦後日本政治史 占領期から「ネオ55年体制」まで
次に、政治史が頭に入りにくい方と、思想史が入りにくい方は、以下の参考書がおススメです。これは、日本史や思想という教養問題の攻略にも役立ちます。
戦後の日本政治史としては、『戦後日本政治史 占領期から「ネオ55年体制」まで』(中公新書)がまとまっています。なお、大学受験参考書ですと、近代史が分厚すぎて、現代史がうすいので控えましょう。

■蔭山の共通テスト倫理 改訂版 (大学受験Nシリーズ)
これに対し、思想の方は、大学受験の倫理本をおさえましょう。具体的には、『蔭山の共通テスト倫理』です。この本の西欧思想を通読しておくと、思想史的な背景が分かり、政治思想も分かりやすくなります。

■政治学 (演習ノート)
また、都庁を受ける方で、記述にも対応したい人がいることでしょう。それに対しては、『政治学演習ノート 第5版』(法学書院)がまとめられてて良いでしょう。

4.おわりに

政治学は、ベースとしての学習方法は、とっつきやすい分野ではいきなりスーパー過去問7のやりこみです。難しいものは、寺本氏の解説本を読んでから過去問に挑みましょう。その他、自身の前提知識や使い方に合わせて上記の本も参照してみてください。
スーパー過去問が8割程度できれば、当日も8割くらい取れます。また、教養試験で問われる日本史の現代史、思想、政治などに活かせます。この辺りをモチベーションに、ぜひ政治学を攻略しましょう。
皆さんの学習を応援しています。つまづいたり、悩みがあれば、究進塾の公務員講座をご利用ください。

民法、選択式問題8割ゲットの勉強法とおすすめ参考書

1.はじめに

公務員試験を知ると沢山の科目があり、どのように対策しようか悩むことかと思います。特に、塾・予備校を利用せずに独学していると、大いに悩むことでしょう。また、何とか学習を始めてみても、息詰まってくると、学習方法に問題があるのかと新たな悩みが生まれ、その検討をしていると、肝心の学習時間が減りますし、モチベーションも下がります。

そこで本記事では、公務員試験の専門科目として出題される「民法」の独学での攻略方法をお伝えします。このやり方でトライしてみて、難しい場合は、いっそのこと塾や予備校を頼った方が良いかなと筆者は考えます。その試金石に、以下の学習方法をお試しください。

ちなみに、タイトルに8割ゲットとしているのは、公務員試験は概ね6〜7割の得点で合格するため、8割取れる=合格に大きく寄与できる科目=得意科目になったことを意味します。つまり、民法を独学で得意科目にする学習方法やそのための教材を紹介しつつ行います。

2.民法という科目の特徴

学習方法を述べる前に、民法という科目の(1)出題数、(2)出題範囲、(3)難易度などをおさえましょう。

(1)出題数

2025年実施予定の公務員試験での民法の出題数をみていくと、
◎国家一般職・特別区は10問
◎地方上級全国型4問、関東型6問、中部北陸型は7問です。
◎国家専門職は、国税専門官6問(必須2問、選択必須4問)、財務専門官8問と労働基準監督官は5問です。そして、裁判所事務官が13問です

なお、必須解答となる試験種が多いのも民法の特徴です。上記の試験種のうち、地方上級全国型、国税専門官、裁判所事務官が必須回答です。沢山の試験種で使える科目であることと必須試験種が存在していることから、民法を捨てることは難しく、選択せざるを得ない科目と言えます。

(2)出題範囲

民法の出題範囲は、以下①~⑥に分かれます。
国家一般職や特別区の試験では、①~③を民法Ⅰとし、④~⑥を民法Ⅱとして出題しています。

総則……民法全体に共通して問題になる事柄を扱います

物権……不動産や動産に対してどのような権利が認められるのかを扱います。

担保物権……債権の回収をする際に、物を利用する場合における法律関係を扱います。

債権総論……人に対してどのような権利が認められるのかを扱います。

債権各論……さまざまな契約とそれに関する法律関係を扱います。

家族法……例えば相続などの家族間の法律に関する事項を扱います。

(3)難易度

民法の条文数は1050条です。憲法は103条ですから、10倍以上です。また、判例もきちんと出ます。つまり、膨大な範囲です。

そして、学習の冒頭から「権利能力」「意思能力」「行為能力」などの日常生活であまり使わない言葉のオンパレードです。さらに、事例問題なども出てくるので、丸暗記が通用しません。

したがって、民法は、経済学と並び、公務員試験で最難関科目と言われます。あるいは、「民法を制する者は公務員試験を制す」などとも言われます。

心して学習しなければなりませんね。

3.民法の学習方法&お勧め参考書

(1)学習方法

学習の流れとしては、

①民法の全体像を一気に読んで理解する

②テキスト×解説一体型で解きながら覚える

③②にはない問題も含め、演習本で周回する

④最新判例をおさえる

というものです。

①のポイントは、読みやすい文章を一気に読んでいくことです。あまり細かい点は気にせず読み進めていくのです。

その後、②にいきますが、①だけの学習ですと、ほとんど解けないと思います。したがって、②では、テキスト部分をよみながら①の理解を深めつつ、読んだ範囲にあたる問題をすぐに解いていくのがおすすめです。

その後は、③として問題集を周回していきます。④の最後は、最新判例をおさえます。というのは、最新の判例自体を知ると共に、その判例を踏まえた事例問題対応などをしていくことが大切だからです。

以下では、段階ごとにお薦めの本を紹介していきましょう。

(2)お薦めの学習本

①「民法の全体像を一気に読んで理解する」ための本

資格予備校講師が書いた本や初学者向けに書いた本などが、さらっと全体像を把握するのにお勧めです。このとき、一文一文を深く理解しようとするより、「こんな感じなのかぁ」となればOKです。また、繰り返しますが、スピードを重視して一気に読みましょう。

【ア】

TEZUKAYAMA民法入門: 親族編 (エンタメ法学)


TEZUKAYAMA民法A:総則・物権編 (エンタメ法学)


TEZUKAYAMA民法B:債権編 (エンタメ法学)


TEZUKAYAMA民法C:相続編 (エンタメ法学) 」の4冊、全て松下慎一著(Kindle版)

電子書籍で4冊800ページ程度あるものの、1ページの字数が大きいので、一般の書籍で置き換えると350頁くらいでしょう。もちろん書名から分かるように、公務員試験として書かれているわけではなく帝塚山大学生用としてのものです。

ただ、若者向けに分かりやすい言葉と具体例が書かれているので、民法の全体が分かるように工夫がされています。そして、4冊1500円以下のためコスパも大変良いです。

下記のイと見比べて、良い方にしてください。なお、コチラの場合は、1週間以内に読んでしまいましょう。

【イ】

イ;「改訂版 伊藤塾の公務員試験「民法」の点数が面白いほどとれる本


公務員試験対策と銘ってないとやる気が出ないという方は、こちらも1冊で最低限のポイントが分かるように配慮しながら書かれているので良いでしょう。10日ほどかけて読み切りましょう。なお、2024年12月から発売の「改訂版」と書かれている本を読みましょう。

②テキストと問題集の一体型の使用

さて、次の段階は、『みんなが欲しかった! 公務員 民法の教科書&問題集』です。

以前は、同じTAC出版のゼロからシリーズが優れていると薦めていました。しかし、2020年発行で、民法大改正には対応していますが、未成年が18歳以上でなく20歳以上の時代の本になっているため、Ⅰの総則、「人」における未成年のところなどは読み替えて問題にも取り組まなければならないなどの留意が必要でした。

しかし、こちらの本が発行されました。したがって、テキスト読んで問題にトライしてということができる最新版でおススメがこちらになります。解説部分を読んで、問題に取り組む学習を1日1節分進めましょう。30単元分あるので、毎日やれば1か月です。所用などで取り組めない日もあるでしょうから、概ね1か月半くらい腰を据えて行えば、知識が整理され、基本的な問題を利用して公務員試験で民法を得点源にする土台が確実に身につきます。

③演習本

以下の2冊の、好きな方を選びましょう。なお、実施の際は、②で扱っていた問題(重複問題)を飛ばしながら取り組みましょう。こちらは、2~3回転しましょう。

【ウ】

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 民法1一総則・物権・担保物権 (新スーパー過去問ゼミ7)

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 民法2一債権総論・各論・家族法 (新スーパー過去問ゼミ7)

【エ】

2025-2026年合格目標 公務員試験 本気で合格!過去問解きまくり! 【10】民法Ⅰ

2025-2026年合格目標 公務員試験 本気で合格!過去問解きまくり! 【11】民法Ⅱ

④判例集

最新の判例集としては、行政書士試験用の『みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2025年度版 [行政書士の教科書に準拠 試験によく出る重要判例を網羅!](TAC出版)』です。これの、民法部分を使う感じです。

公務員試験用を使わないのは、行政書士用は毎年改訂された新しい判例集が出版され、公務員試験と範囲も多く重なるためです。

なお、判例集は、②や③の学習をする中で、必ずしも言及がされていない事柄を知るためにも使えます。いわば、辞書代わりということです。

また、直前期にはどこの判例箇所を時事的に読んだ方が良いかは、『公務員受験ジャーナル』という雑誌から導きましょう。あるいは、憲法の学習方法を紹介したときの記事(下記)で示したように、外部模試を受けることも有益です。

憲法、選択式問題8割ゲットの勉強法とおすすめ参考書

4.おわりに

本記事では、民法についての科目の特徴や出題傾向、学習方法、お薦めの参考書についてお伝えしました。参考にして取り組んでみてください。

これで行っても厳しい場合や読み進められないという場合は、塾や予備校を使って講義を通して身につけると良いでしょう。また、読んでいても疑問点が生まれる場合は、個別指導塾などを利用し、質問しながら学べるサービスの活用を考えましょう。

究進塾では、こうした自身の疑問点を持ち込んで聞く指導を受けることができます。もちろん、講義調の指導を希望すれば、その形での利用も可能です。

体験授業や受講相談は無料ですので、一度必要な対策を計画した上でぜひ効率的な利用をご検討ください。お問い合わせお待ちしています。

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行政法、選択式問題8割ゲットの勉強法とおすすめ参考書

1.はじめに

公務員試験を学習する上で、塾・予備校で学習をするのか、独学をするのかという学習手段の検討は、しばしば悩みの種となりますよね。

このとき、重要なことの1つは、各科目の攻略法を知ることです。なぜなら、その攻略法を知って、実践できるのであれば独学で行えば良くなり、難しそうであれば、塾・予備校を使うことになるからです。

そこで本記事では、公務員試験の専門科目として出題される「行政法」の攻略方法をお伝えします。

ちなみに、タイトルに8割ゲットとしているのは、公務員試験は概ね6〜7割の得点で合格するため、8割取れる=合格に大きく寄与できる科目=得意科目になったことを意味します。つまり、行政法を得意科目にする学習方法やそのための教材を紹介しつつ行います。

2.行政法という科目の特徴

学習方法を述べる前に、行政法という科目の(1)出題数、(2)出題範囲、(3)難易度などをおさえましょう。

(1)出題数

2023年実施の公務員から行政法の出題数をみていくと、
国家一般職・地方上級・特別区で5問です(ただし、地方上級のうち、中部北陸型は8問もあります)。
◎国家専門職はばらつきがあり、
国税専門官3問
財務専門官8問
労働基準監督官は4問です。
なお、必須解答となる試験種は、上記の財務専門官のみで、後は選択解答です。沢山の試験種で使える科目であることから、選択する人は多いと言えます。

(2)出題範囲

行政法という名前の法律はありません。行政法は行政権と国民の関係を規律した法律の束といえます。そして、出題範囲は、その関係性から3つに大別したものになります。

①組織法
主に、国家行政組織法、内閣法、国家公務員法、地方公務員法などから行政の活動をする主体に関する内容をおさえる学習をします。

②作用法
主に、行政手続法、行政代執行法などから、行政の活動に関する内容を学習します。

③救済法
主に、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法などから、行政の活動によって被害を被った国民を救済する方法に関する内容を学習します。

なお、出題の割合は、③は5割程度、②は4割程度、①は1割程度ですので、③>②>①の順であり、圧倒的に③や②が出ます

(3)難易度

行政法の難易度は、資格予備校のHPや合格者の体験談などを読むと、よく「易しい」とか、「丸暗記でいける」とかと述べられているので、「何とかなる」と思われているのではないでしょうか。そして、その認識は指導経験上も、合格体験上も、そうだと執筆者も考えます。

ただし、ボリュームはありますので、その暗記となると、それなりの時間が必要となります。また、行政法はしばしば「つまらない」「よく分からない」と言われます。

これは、行政に関することなので、民法などのように日常での取引等からイメージできることに比べ、なじみが薄く具体的イメージがつかみにくいからでしょう。また、たくさんの法律を、学者の方が分類・整理した視点で捉えるため、これが抽象的な概念であり、ここから分かりづらさを助長させているといえます。

したがって、慣れるまではとっつきにくく、得点化に至るためには、そのとっつきにくさを乗り越えて、暗記できるよう何度も学習していくことが求められます。以下では、そのための学習方法をお伝えします。

3.行政法の学習方法&お薦め参考書

(1)学習方法

学習の流れとしては、

①「馴染みやすいものでさらっと全体像を理解する」

②「過去問集」を読む

③「過去問集を解く」(何回か周回する)

④最新判例をおさえる

というものです。
①によって少しでも行政法の世界を自分自身に馴染ませます。その後、②にいきますが、①しかしていないとほとんど解けないと思いますので、まずは問題を読み、そのまま解答解説を読んで理解していきましょう。

その後は、③として実際に解きます。ここでは2~3回転行って、独力で解けるようにしましょう。

④の最後は、最新判例をおさえます。というのは、行政法ではしばしば最新の判例がでるためです。

以下では、段階ごとにお薦めの本を紹介します。

(2)お薦めの学習本

①「馴染みやすいものでさらっと全体像を理解する」本

資格予備校講師が書いた本がさらっと全体像を把握するのにお勧めです。このとき、一文一文を深く理解しようとするより、「こんな感じなのかぁ」となればOKです。そのようになる本としては、次の本がお勧めです。

ア;「新谷一郎の行政法 新・まるごと講義生中継 (公務員試験 まるごと講義生中継シリーズ)

ただ、この本は2018年が最新で、少し古いのが気になる方は、以下でも良いでしょう。

イ;「面白いほど理解できる行政法 第4版 [大学の講義の予習・復習 資格・公務員試験のプレ学習 ビジネスの現場 に役立つ]

②③「過去問集」

以下の2冊の好きな方を使い倒しましょう。なお、過去問は、必ず最新版を用意しましょう(法改正を反映しているものが必要なため)。
ウ;『2024-2025年合格目標 公務員試験 本気で合格!過去問解きまくり! 【12】行政法(最新 ! 23年度問題収録)(専門試験対策) (公務員試験過去問解きまくりシリーズ)

エ;『公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 行政法 (新スーパー過去問ゼミ7)』

④判例集

最新の判例集としては、行政書士試験用の『みんなが欲しかった! 行政書士の判例集 2024年度 [行政書士の教科書に準拠](TAC出版) (みんなが欲しかった!行政書士シリーズ)』です。これの、行政法部分を使う感じです。

公務員試験用を使わないのは、行政書士用は毎年改訂された新しい判例集が出版され、公務員試験と範囲も多く重なるためです。

なお、判例集は、②や③の学習をする中で、必ずしも言及がされていない事柄を知るためにも使えます。いわば、辞書代わりということです。

また、直前期にはどこの判例箇所を時事的に読んだ方が良いかは、『公務員受験ジャーナル』という雑誌から導きましょう。あるいは、憲法の学習方法を紹介したときの記事(下記)で示したように、外部模試を受けることも有益です。

憲法、選択式問題8割ゲットの勉強法とおすすめ参考書

4.おわりに

本記事では、行政法についての科目の特徴や出題傾向、学習方法、お薦めの参考書についてお伝えしました。参考にして取り組んでみてください。

なお、「国家総合職なども受験予定だがこの学習方法で良いのだろうか」といった疑問点や、「記事通りのやり方をしても挫折しそうだ」などの不安点など、個々の状況によっては色々聞きたいことが生じるかと思います。

究進塾では、こうした受験相談にのったうえで、必要な対策を個別指導しています。ご興味ありましたら、一度お問い合わせください。

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