公務員試験情報

市役所で働きたいなら知っておきたい公務員試験や仕事のことについて

市役所で働きたい!けれどどうすれば市役所の職員になれるのだろう?

多くの人は市役所で働くために公務員試験に合格しなければいけないということを知りません。


市役所って窓口のイメージだけど実際どういう仕事をしてるの?どうせ9時5時の楽勝な仕事でしょう?

市役所というと窓口で住民票などを発行する人たちというイメージがあるかもしれません。そして決まって9時5時の楽勝な仕事だと思われがちです。

このように、市役所とは身近な施設ではあるものの、その実態は良く知られていません。
今回は市役所で働きたいのであれば最低限知っておくべきことを紹介していきますので、ぜひ一読していただき市役所で働くことのイメージを現実的なものにしてください。

1 市役所に勤めるには公務員試験を突破しなければならない

市役所の職員は地方公務員です。そのため、市役所で働くには地方公務員試験を受け、合格しなければなりません。

市役所の場合、各自治体で採用試験が行われるため、志望する自治体の採用ページから申し込みを行い受験の手続きをしましょう。

市役所試験のレベルについては、大卒程度の「上級試験」、短大卒程度の「中級試験」そして高卒程度の「初級試験」に分類されています。

「程度」となっているのは、必ずしも大学や短大を卒業していなければならないわけではなく、大学卒業程度レベルの問題が出題されるということです。そのため、年齢制限などの受験資格を満たしていれば高卒の方でも大卒程度の上級試験を受験することができるのです。

試験内容は市役所試験では「教養試験」「論文試験」「人物試験」が課されます。上級試験ではこれらに加え、「専門試験」が課される自治体もありますので、必ず志望する自治体のHPで試験内容を確認するようにしましょう。

教養試験および専門試験は以下のような科目が出題される五肢択一式の試験です。自治体によって出題科目や出題数が異なるため、志望する自治体の受験案内を必ず確認してください。

教養試験
・数的処理(数的推理、判断推理、資料解釈)
・文章理解(現代文、英文、古文)
・人文科学(日本史、世界史、地理、思想、文芸)
・社会科学(政治、経済、社会)
・自然科学(数学、物理、化学、生物、地学)

専門試験
・法律系(憲法、行政法、民法、労働法、刑法など)
・経済系(経済原論、財政学、経営学、経済事情など)
・行政系(政治学、行政学、社会学など)

人物試験は、通常の個別面接のほか、集団面接や集団討論、自己PR面接やプレゼンテーションを行う市もあります。
他には漢字や時事などの教養記述や適性試験、適性検査、体力試験を課す市もあり、実に様々な形で試験が行われているといえます。

それぞれの試験の具体的な内容については、公務員試験に出題される科目まとめ(行政・事務系)を参考にしてください。

市役所試験の特徴として、国家公務員試験や都道府県に比べ教養試験のレベルは比較的易しめで、配点もそれほど高くないということです。

教養試験が易しいというのは一見合格しやすいように思えるかもしれませんが、その代わりに面接や論文試験の配点を高くしているということです。中には教養試験が足切りにしか使用せず二次試験に加点しない自治体もあります。

つまり、市役所試験は人物重視の傾向が顕著で、勉強はできるけれどコミュニケーション力が低い人は面接や論文で足切りを受けてしまい不合格となってしまう可能性が高いということです。

なお、ここでいう「コミュニケーション力」とは、雑談やおしゃべりのことではなく、面接官からの質問に対して的確な回答をできる能力のことをいい、訓練次第でいくらでも向上させることができるので、市役所受験者は特に重点的に対策が必要です。

このように、市役所で働くためには様々な試験を突破しなければなりません。
「なんとなく市役所にでも…」という気持ちで合格するのは難しい試験となっています。これから市役所を目指す方は、どの自治体を受験し、どのように学習を進めていくかをまずは考えるようにしましょう。




2 市役所試験の日程について

市役所試験は試験の日程さえ被らなければいくらでも併願することができます。
実施される日程については自治体によって異なりますが、大卒程度の試験の場合主に以下の4パターンに分類されます。

①地方上級試験日(6月実施)
②A日程(①と同日)
③B日程(7月実施)
④C日程(9月実施)
※これらは例年の傾向であり、2020年はコロナの影響で大きな変更が出ています

各日程において試験が実施される自治体の一例を挙げます(A日程〜C日程は関東のみ列挙)。

地方上級試験 都道府県、大阪市を除く政令指定都市
A日程  市川市、船橋市、柏市、厚木市、大和市、春日部市、太田市、横須賀市、茅ヶ崎市、逗子市など
B日程  立川市、昭島市、小金井市、清瀬市、多摩市、稲城市、西東京市、成田市、佐倉市、鎌ケ谷市、印西市、秦野市、海老名市、つくば市、日立市、つくばみらい市、館林市、伊勢崎市など
C日程  八王子市、府中市、調布市、小平市、国分寺市、日野市、八潮市、和光市、入間市、越谷市、川口市、川越市、蕨市、草加市、銚子市、木更津市、我孫子市、君津市、水戸市、土浦市、日光市、小山市、那須高原市など

※政令指定都市とは人口50万人以上の都市のことで、大阪市、名古屋市、京都市、横浜市、神戸市、北九州市、札幌市、川崎市、福岡市、広島市、仙台市、千葉市、さいたま市、静岡市、堺市、新潟市、浜松市、岡山市、相模原市、熊本市が該当します

上記で挙げた市はほんの一例に過ぎません。特にC日程が最も試験を実施している自治体が多いため、あなたが住んでいる地域の周辺で採用試験がないかをHPで確認してみましょう。

また、小さい自治体の場合、例年職員を採用していたけれど今年は採用しないといったところもあります。これは、小さな自治体であればそもそも職員数が少なく、採用数もそれに応じて少なくなるためその年だけ新しい職員は必要でななくなったので採用を行わないということです。

例年採用していたから今年も大丈夫だろう、と考えずに必ずHPで採用があるかどうかを確認するようにしましょう。




3 市役所の試験は面接がとても重要

市役所の試験は倍率が高くなる傾向があるということも注意しておきましょう。特に規模の小さい自治体ほど要注意です。

例えば、都道府県や政令指定都市のような大きな自治体であれば職員の数が多いため、その分採用数も多くなります。そうすれば倍率も低くなるということは分かるかと思います。

逆に規模の小さい場合は採用数が少ないのでそれだけ倍率が高くなり、合格が難しくなります。当たり前のことを言ってますが意外とこのことを知らない方が多いので市役所ぐらい余裕でしょと思っている方は要注意です。

実際に東京都のⅠ類B(行政)と東京都調布市(上級・事務)を比較したのが以下の表です(いずれも平成27年度試験)。

東京都

採用予定者数 申込者数 受験者数 1次合格者数 最終合格者数 倍率
484 5383 3465 1249 640 5.4

調布市

申込者数  受験者数 1次合格者数 2次合格者数 3次合格者数 4次合格者数 倍率
 344 260  129  42  20  12  21.7

最終的な合格の倍率が東京都は5.4倍に比べ調布市は21.7倍と相当高くなっています。やはり最終合格者数、つまり採用者数の違いが倍率に影響していることがわかります。

ちなみに調布市は人口約22万人を有する市であり決してそれほど小さな市ではありません。

注目すべきは4次試験まで行っていることでしょう。

市役所の場合、筆記試験には比較的合格しやすいけれども2次試験以降の突破が非常に難しいという傾向にあります。
実際に東京都と調布市を比べると、筆記試験(1次試験)の合格者は東京都は約3人に1人に対し府中市は半分くらいが合格しています。
しかし最終的にはそこから10分の1まで絞り込まれているため2次試験以降がいかに厳しいかが分かるかと思います。

特に地元でない方の場合、なぜその自治体を受験するのかを厳しく問われるため、面接対策は非常に重要となります。

特に筆記試験がパスしやすい分、民間企業の経験者や勉強が苦手でもコミュニケーション能力が高い方の受験が多くなるため、競争相手は厳しくなる傾向にあります。

もちろん、コミュニケーションが苦手であっても合格することはできますが、倍率やライバルとなる受験生のことを考えると、地方上級試験や国家公務員試験に比べて難易度は上がると言わざるを得ないしょう。

これを読んで不安になってしまった方もいるかもしれませんね。
そのような方は少しでも規模の大きな自治体を受験できないか検討してみましょう。繰り返しになりますが、規模の大きな自治体ほど採用数が多くなる傾向にあるので合格の確率が高くなります。

例えば、調布市の隣にある府中市(人口26万人)では、平成27年度上級事務の最終的な倍率は7.8倍とそこまで高くありません。府中市も4次試験までありますが、各試験の合格者数は比較的多くなっています。(参考:府中市職員採用試験の実施状況

市役所を目指す方はこうしたことも踏まえ、どうしても地元じゃないと!という方以外は合格しやすい自治体を狙うという手も考えてみると良いでしょう。もちろん、合格しやすいといえどもそれなりの倍率があるので対策は欠かさないようにしましょう。

面接試験対策については以下の記事で詳しく紹介しているので、自信がない方はぜひチェックしてみましょう。

必ず抑えておくべき公務員試験の面接対策の「超」基本【解説写真付】
公務員試験の面接で聞かれる定番の質問の答え方
「伝わる」を意識した面接で良い印象を与えるための話し方




4 市役所の仕事は窓口だけではない

ここまでで市役所の試験についてある程度理解できたかと思います。
公務員を目指しているとついつい試験に合格することばかりに目がいきがちですが、合格してからがスタートなので仕事についてもある程度の理解は必要です。

まず、市役所含め公務員として働く上で以下のイメージは捨ててください。

・窓口業務がメインである
・定時退社できるのでワークライフバランスが取れる
・毎日ルーティンの仕事をこなしていればいい

これらは全てイメージで語られたものであり、現実はそれほど甘いものではありません。このようなことを言ってる公務員の人はいないでしょう。

まして最近は財政難の自治体が多く人件費を抑えようとしているため昔言われていた9時5時で楽勝な仕事をして帰れるという時代ではなくなっています。

実際これを読んでいるあなたも役所に行って住民票の発行などをしたことがありますが、対応している人は職員ではなく派遣の方のケースが多くなっています。最近対応がいいな、と思ったその人は実は役所の職員ではない可能性があるのです。

このように簡単な仕事はそのように派遣の人に任せて、職員は中で別の仕事をしているという場合が多くなっています

それは人件費の削減だけでなく、職員の業務量が増えているという背景もあります。

IT化が進み業務の効率化が進んでいる一方で、住民の目が厳しくなっていることから自治体としてはより住民が満足するための施策を考えていかなければなりません。
このような企画や政策を立案する部署は花形だと思われがちですが、業務量は膨大です。

一つの施策を作るために上司の納得する資料を作り、会議を何度も行い指摘された部分は都度修正し、議会にかけて認められればようやく決定となります。そのために作成する資料はなぜか全て紙ベースで打ち出すという非効率な方法が取られている場合が多いため、その労力は相当なものです(印刷のため遅くまで残業はザラです)。

逆に楽な部署も当然あります。毎日ルーティン業務でほぼ定時で帰れる部署も存在するのは事実ですが、数年ごとに異動になるため、異動先が激務だということもありえます。

でも、これは民間企業でも同様ではないでしょうか。

民間=キツイ、というイメージが特に公務員受験生にはありますが、会社によって、そして部署によっても全く異なるためひとくくりにすることはできません。下手すれば公務員でも民間よりもきつい部署もあるでしょう。

人によってはずっと楽な部署をぐるぐると回る場合もあります。それは「仕事ができない人」の場合が多く、その人ができなくても他の人がサポートすれば問題なく仕事が回る部署なので比較的楽なのです。

しかし、せっかく頑張って入庁した市役所でそんな扱いされたいですか?

入ったからにはバリバリと頑張って、周りに期待されながらきつい仕事も取り組んでいくと良い経験になるかと私は思っています。

5 まとめ

市役所で働くためにはそれなりに難しい公務員試験に突破しなければならないことはご理解いただけたかと思います。「たかが市役所」と思っていると合格が難しい試験ですので市役所で働きたいと思っている人は特に面接対策はしっかりと対策しましょう。

そして、仕事についても世間のイメージはあまり信じないようにし、楽な部署ならラッキーぐらいに考えておくといいかもしれません。できれば入庁してから腐らないように活躍していただくことが組織にとっても、そして住民にとっても理想であるはずです。

高卒で公務員になりたい人が最初に知っておきたいことまとめ

高卒だけれど公務員になれるのかな?
なれるとしたらどのような公務員になれるの?
また、仕事は大卒とは何か違うの?

公務員は大卒の人がなるというイメージがあるためか、高卒の方はこうした悩みを持っている人が多いように感じます。

しかし、安心してください。高卒であっても問題なく公務員になることはできます。

大卒者と同じように国家公務員・地方公務員問わず様々な試験を受け、合格すれば職員として働くことができるのです。
それは大学中退をして結果的に高卒にしまった方であっても同じです。

今回は高卒の方(卒業予定含む)に向けて、どうすれば公務員になれるかについて解説していきますので諦める前に一読し将来の仕事選びの参考にしてください。

※ここでは受験者が多い行政・事務系公務員についてのみ触れています。
警察官・消防士を目指す方は以下の記事も参考にご覧ください。

1 高卒の人は「高卒程度試験」を受験するのが一般的

まず大前提として知っておいていただきたいことは、公務員には「国家公務員」と「地方公務員」の2種類があり、それぞれについて採用試験が行われているということです。

国家公務員は「◯◯省」のような国家機関およびその出先機関で働く職員であり、地方公務員は都道府県や区市町村で働く職員のことをいいます。
多くの方がイメージする市役所の窓口で働いている人は地方公務員ですね。

どちらを目指すにせよ、高卒の方であれば「高卒程度」の公務員試験を受験し合格しなければなりません。

「高卒程度試験」とは、試験の内容が高校卒業レベルのものが出題されるということであり、必ずしも高校卒業している必要はなく。極端な話、年齢制限さえクリアすれば中卒の人でも受験することができることが多いです。

ここでは国家公務員、地方公務員それぞれにおいてどのような試験を受けることで公務員になれるのか以下で詳しく説明していきます。

なお、高校を卒業して3年以上経過している方や、ある程度仕事でキャリアを積んでいる方が年齢的に高卒程度の試験が受けられない可能性があります。
その際は公務員になりたい人必見!公務員試験の対策と勉強法を全解説をご覧ください。




2 高卒程度試験を受けるときは年齢制限に注意

高卒程度試験を受ける際は年齢制限に注意しましょう。

公務員試験は年齢制限をクリアしないとそもそも受験することができないので、必ず受験案内を確認することが重要です。

普通に高校を卒業したばかりの方が受験する際は全く問題ないのですが、高校を卒業して数年経過している方や、ある程度仕事でキャリアを積んでいる方は高卒程度試験を受けられない可能性があります。

例えば国家一般職の高卒枠の場合、受験資格として以下のように定められています(平成28年度試験)。

平成28年4月1日において高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して2年を経過していない者及び平成29年3月までに高等学校又は中等教育学校を卒業する見込みの者

前半部分を要約すると「受験する年において高校を卒業して2年以内であること」ということになります。
そのため、あなたが高校を卒業して3年以上経ってしまった場合、高卒程度試験を受けることができないのです。

また、東京都では以下のように明確に年齢の条件を決めています(平成28年度試験)。

平成7年4月2日から平成11年4月1日までに生まれた人

17歳から21歳の人しか受験できないということが分かります。つまり、想定する受験者としては高校卒業見込者や高校を卒業して3年以内ぐらいの人だと推測され、表現は違えど国家公務員と同様だと言えます。

東京都に限らず、どの自治体でもこのような年齢制限を設けていますんで、高校卒業して数年経った方は事前に確認をしましょう。

高卒程度試験が受けられない人は大卒程度試験や経験者採用試験を検討しよう

では、高校卒業して5年くらい経ってしまったという方や、高卒でずっと働いてきたという人は公務員になれないのかというと決してそのようなことはありません。

高校を卒業して社会人経験がない方は「大卒程度試験」の受験を検討してみましょう。

年齢制限については大学を卒業し数年経過した人も考慮されているため30歳前後まで受験できるところが多いですが、最近では年齢を引き上げている自治体も多く年齢制限が59歳と実質撤廃しているようなところもあります。
どうしても公務員になりたい!という気持ちがあればチャレンジしてみることをおすすめします。(詳細は年齢制限はほぼない!30歳以上でも受けられる公務員試験はたくさんあるをご覧ください)

大卒程度試験を受験する際の注意点としては、筆記試験で専門試験が課せられることが多いということです。
専門試験とは法律や経済など大学で学ぶ専門的な内容について問われるものであり、難易度は高卒試験に比べかなり高くなります。

当然、勉強時間も多く必要となりますので辛抱強く学習を続けられるかがポイントとなるでしょう。

大卒程度試験を検討している方は公務員になりたい人必見!公務員試験の対策と勉強法を全解説でどのような試験でどうやって勉強を進めていけば良いか詳しく解説しているので参考にしてください。

また、高校卒業してから正社員なりバイトなりで数年以上の就業経験がある方は経験者採用試験(社会人試験)を受験することも可能です。

この試験は、数年間の就業経験があれば受けられる試験であり、民間企業等で培った経験やスキルを業務に生かすために即戦力として採用するものです。

試験の特徴としては教養試験以外の論文や面接試験が重視される傾向にあり、中にはプレゼンテーションを行う自治体もあります。
大卒程度試験に比べ筆記試験のウェイトが軽い分、人物重視の試験となりますのでいずれにせよしっかりとした対策が必要です。

経験者採用試験については社会人が受験できる公務員試験の内容と採用後の待遇についてをご覧ください。

以下では、高卒程度試験を受ける場合、どのような試験が実施されるのか説明していきます。




3 国家公務員を目指す場合

国家公務員になって国の機関で働きたい!と考えている方は国家公務員試験を受験する必要があります。
高卒の方であれば、国家公務員一般職試験(高卒者試験)や税務職員、裁判所職員一般職などを受けるのが一般的です。

試験は一次試験と二次試験が行われ、一次試験の合格者だけが二次試験を受けることができ、最終的な合格はトータルの得点で決定されます。

国家公務員一般職試験の試験内容は以下のとおりです(平成28年度)。

一次試験

①基礎能力試験(択一式)
②適性試験(択一式、事務のみ)
③作文試験(事務のみ)

二次試験

①人物試験(個別試験)
※人物試験の参考とするため性格検査が行われる

国家公務員一般職の試験の場合、一次試験と二次試験に合格し、その間に行う官庁訪問により志望する省庁から最終的に内定をもらうこととなります。
それでは、それぞれの詳細について以下で説明していきます。

3-1 基礎能力試験

公務員試験でまずクリアしなければならず難しいとされるのが、一次試験で課される筆記試験です。
国家公務員試験の場合は「基礎能力試験」という名称ですが、要は教養科目といわれるもので地方公務員でも同様の試験があります。

高卒程度では事務系の場合、教養科目だけの出題となりますが、科目数が多いため対策が大変です。まずはこの基礎能力試験に合格するために勉強を進めていかなければなりません。出題科目は以下のとおりです(国家一般職試験の場合)。

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国家公務員一般職試験ではこれらの科目が全問回答となっているため、満遍なく勉強しなければなりません。
他の試験を受験するにせよ、科目や出題数はほぼ変わりません。ですので、これらの科目についてしっかりと対策をしなければならないおです。

とはいえ、苦手な科目を1問や2問のため一から勉強するのは効率が悪いため、頻出分野だけを集中してやったり、出題が少ない科目は思い切って捨ててしまうなど戦略的に対策を進めていく必要があります。

公務員試験全般にいえることですが、筆記試験は高得点を取らなくても問題ありません。しかし、国家公務員試験は地方公務員試験に比べて筆記試験の配点比率が高いです。
そのため、高得点を取る必要はなくとも、やはり点数が低いとハンデになってしまいますので、しっかりと対策をしておくべきです。

国家一般職試験・税務職員試験では適性試験が課される!

国家一般職試験や税務職員試験を受験する場合、適性試験も一次試験で課されます。

事務職の場合、事務業務(文書の記入や清書、照合、転記、分類、整理など)を適切かつ迅速に行わなければなりません。適性試験はこうした業務の適性があるかどうかを測るために実施される試験です。

適性試験の内容は、計算、照合、置換、分類、図形把握の5パターンがあり、そのうち3パターンが10題ずつ4回繰り返され合計で120問となります。
適性試験は時間との戦いなので、市販の問題集を使いながら回答するスピードを培う訓練を行うようにしましょう。

国家一般職[高卒]・地方初級公務員 適性試験問題集 2017年度
国家一般職[高卒]・地方初級公務員 適性試験問題集 2017年度

3-2 作文試験

作文試験も一次試験で実施されます。

作文は筆記試験では分からない受験者の考え方や意欲、日常生活を見る試験となっており、人物重視となっている近年その重要性が増しています。

評価ポイントとしては文字は丁寧か、誤字脱字はないか、といった基本的なことから、分かりやすい文章になっているか、課題に合った内容になっているか、説得力があるか、など様々な基準で採点されます。

受験生の個性を見る試験とはいえ、内容が分かりにくい、読みにくい文章は採点者によい印象を与えません。ですので、こうしたテクニック的な部分もしっかりと訓練していく必要があるでしょう。

平成25年度の国家一般職試験では「社会の一員として働くということ(50分・600字)」という内容で出題されています。
作文とはいえ、それなりの思考力が必要とされる試験でありことがわかるかと思います。

作文のテーマについては、自分のことについて述べるもの、社会人・公務員として働く上で意識したいこと、社会的・時事的な課題に対しての考え、など多岐に渡ります。

どのテーマであっても、普段からやっておくべき対策は実際に手を動かして繰り返し練習することです。
スマホやパソコンを当たり前に使うようになっている現在、実際に文章を書く機会が減っており手を使って書くのが苦手な人も多いでしょう。そのような方は早めに対策をすべきです。

また、作文は自分では出来不出来がわからない科目です。ですので、本番前に一度は必ず第三者にチェックしてもらい添削してもらうようにしましょう。

3-3 面接試験について

二次試験は面接試験性格検査が行われますが、いずれも人物評価をするための試験となります。
面接試験は社会人・公務員としてふさわしい人物かどうかを見るための試験です。形式は国家一般職の場合、個別面接(受験生1人に対して面接官数人)となります。

なぜ公務員なのか、なぜその省庁を希望するのか、学生時代に取り組んだことは何か、趣味について、どのような仕事をしたいか、などが定番の質問ですので、自分の考えをしっかりと固めておかなければなりません。

性格検査はより的確な人物評価を行うために平成24年度から試験項目として追加されました。
内容としては、性格について該当するものを「はい」「いいえ」から選択することで大まかなに受験生の正確を把握するものです。性格検査については特に対策を必要とするものではありません。

逆に対策をしすぎたり、嘘をついてしまう(いい印象を与えるためにポジティブな回答ばかりしてしまうなど)と正確な結果が測れないばかりか、面接での回答と矛盾が出てしまい悪い印象を与えてしまいますので注意が必要です。

官庁訪問について

国家公務員一般職試験で採用を勝ち取るためには避けて通れないのが「官庁訪問」です。

これは地方公務員試験や他の試験にはない独特のもので、希望する省庁に面接を通じて「私を採用してください」とアピールするものとなります。
通常、一次試験の合格発表後から最終合格発表までの期間に行われます。一次試験に合格したらすぐに志望する省庁に電話をし、業務説明会への参加や官庁訪問の依頼をすることとなります。

一次試験・二次試験に合格し「最終合格」したとしてもイコール採用ではありません。
採用されるためには志望する省庁での面接(官庁訪問)もクリアしなければいけないということを覚えておきましょう。

官庁訪問についてはこれだけは知っておきたい!官庁訪問の流れと対策についての基本で詳しく解説していますので、こちらも併せてご覧ください。




4 地方公務員を目指す場合

高卒で地方公務員を目指す場合、一般的には「地方初級試験」「Ⅲ類試験」と呼ばれる試験を受験することとなります。

最初にお伝えしたように地方公務員は都道府県や区市町村で働く公務員のことを指します。そのため、各自治体が実施する採用試験を受験し、合格しなければなりません。

例えば、神奈川県で働きたければ神奈川県が実施する採用試験を、横浜市で働きたければ横浜市が実施する採用試験を受ける、といった感じです。

東京の23区においては、各区で採用試験を行うのではなく、「特別区採用試験」という23区全体の試験を受験します。最終合格したのち区ごとに面接を行い無事合格すれば特定の区に採用される、という流れになります。

試験内容については、国家公務員試験と同様に教養試験、作文試験、面接試験が課せられるのが一般的です。
ただし、自治体によって試験の内容は異なるため必ず志望する自治体の受験案内で確認するようにしましょう。

地方公務員試験は国家公務員よりも面接重視の傾向にあるため、筆記試験に合格しても気が抜けません。

これは大卒程度試験でも同様ですが、地方公務員試験のほうがより人物重視であるため、早めの面接対策をしておくことが望ましいでしょう。そして、可能な限り、第三者にチェックしてもらうことも重要です。

5 試験の日程について

最後に高卒程度試験の日程について確認しておきましょう。

高卒程度試験は、大卒程度試験が5〜7月を中心に実施されるのに対し、9月以降がピークになります。

公務員試験は日程が被らなければいくつでも併願することが可能です。とはいえ、あまりにも併願すると幅広く対策しなければならないため、計画的に併願するようにしましょう。

平成30年度試験日程

9/1(土) 衆議院事務局(一般職(高卒程度)・衛視)
9/2(日) 国家一般職(高卒者)
税務職員
9/9(日) 特別区Ⅲ類
東京都Ⅲ類
警視庁警察行政職員Ⅲ類
裁判所事務官(高卒者区分)
9/16(日) 県警(高卒)※一部
警視庁警察官Ⅲ類
9/23(日) 地方初級(高卒)
10/14(日) 県警(高卒)※一部
1/13(日) 警視庁警察官Ⅲ類

試験の日程については変更されることもあります。必ずご自身で受験案内を確認するようにしてください。

まとめ

高卒であっても公務員になれる可能性はいくらでもあります。
まずは、現在の年齢や職歴などからどの試験を受けるのかを明確にしましょう。
そして、どの試験を受けるにせよ、公務員試験は筆記試験が最初の関門となります。
難関試験と言われていますが、きちんと計画的に勉強を進めていけば必ず合格することができますので、早めに学習を進めていきましょう。

これから地方公務員を目指す人が知っておきたい基本まとめ

地方公務員になるのはどうすればいいの?
そもそも地方公務員ってどういう仕事があるの?

こうしたことは、これから公務員を目指そうとする人はよくわからないかもしれません。

公務員とひとくくりに言っても大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」があります。
また、地方公務員も都道府県や市区町村など働く場所によって採用方式も異なるため、自分がどこを目指しているのかを決めて勉強を進めていかなければなりません。

ここでは、地方公務員を目指すのであれば最低限知っておきたいことをまとめていますので、参考にしていただければと思います。

※警察官や消防士などの公安職を目指している方は以下の記事のほうがより特化した内容になっていますので、こちらをご覧ください。
【徹底解説】警察官になるには?試験内容とその対策について
消防士になるには?試験内容について最低限知っておきたいこと

1 地方公務員とは?

まず、地方公務員とは何かについてですが、端的に言うと「地域の住民のために地方公共団体で働く職員」のことをいいます。
地方公共団体とは都道府県や市区町村のことであり、一般的に地方自治体と言われてます。

公務員というと市役所の窓口にいる職員をイメージするかもしれませんが、あれは地方公務員です。
また、市役所などの役所で働いている職員だけでなく県立や市立で働く教職員や警察官(警視正未満)もまた地方公務員です。

このように地方公務員といっても様々な職種があることを知り、自分が何を目指し、どこで働きたいのかを決めることがまずは重要になります。

2 地方公務員の仕事ついて

市役所の窓口で働いている職員の例を出しましたが、あれは役所内の仕事の中のほんの一部にすぎません。多くの方は地方公務員に限らず公務員といえば窓口で住民票を発行する、というイメージを持っているかもしれませんが、一つの自治体には膨大な数の部署があります。

仕事は窓口業務だけでなく、観光や商業の発展を考えたり、防災対策や環境対策の計画を立てたり、道路や上下水道を整備したりと、その自治体で暮らしている住民のために行政サービスを行うのが地方公務員であり、業務は非常に多岐にわたります。

一般的に、数年で人事異動が行われるため、一つの仕事をやり続けるということはなく、最初は観光の部署で観光客の誘致に励み、次に出先の窓口で住民対応を行い、その次に防災対策の部署で計画を立案したり…というように、様々な職場で幅広い仕事を経験することになるため、様々な仕事を経験したいという方には向いているでしょう。

多くの人が受験する事務職の仕事については知っておきたい事務系職種公務員の仕事内容でも詳しく説明していますので、参考にしてみてください。

3 地方公務員の職種ついて

一般的にイメージされている公務員は「一般行政事務職」となります。そして公務員になる人の多くがこの事務職として受験することになります。

しかし、先述のとおり一つの自治体の中には相当な数の部署があり、仕事も多岐にわたることから、様々な職種が存在し、それぞれが協力し合い業務を遂行していくのです。

ここでは、地方公務員として働く上に、どのような職種があるのかを説明していきます。

3−1 事務系職種

市役所などで仕事のところで書いたような業務を行うのは「一般行政事務」という分類になります。

一般行政事務は、「事務職」「行政職」など自治体によって呼び方は様々ですが、文系の人のほとんどが事務系となり、理系でも技術系ではなく事務系に進む人もおり、採用が最も多く、公務員を代表する職種といえるでしょう。

特定の部署ではなく、本庁内の各部署や出先機関の様々な職場で採用され、幅広い仕事を行うゼネラリストして活躍します。

事務系職種には他に「学校事務」「警察事務」があります。

学校事務は国立大学法人等において、施設の維持管理や教職員の給与・旅費等の管理、歳入・歳出などの財務管理といった学校の運営や学生支援、国際交流の推進など多種多様な業務を行います。

そして、警察事務は東京都の警視庁や道府県の警察の本部および警察署において警察業務をサポートし、スムーズに警察組織の仕事を運営できるようにします。

注意点としては、いわゆる交番勤務やパトロールをしている「警察官」は警察事務ではなく、3−4で紹介している「公安系職種」となります。興味のある方はそちらをご覧ください。

このように事務系職種は特定の業務を行うのではなく、幅広い仕事を行うこと、そして組織の運営をサポートするということを行っていきます。
事務系職種の仕事については、知っておきたい事務系職種公務員の仕事内容も併せて参考にしてみてください。

3−2 技術系職種

技術系職種は事務系職種とは異なり、特定の部署内で異動となり、専門知識を生かしスペシャリストとして活躍していきます。理系の方はこの技術系職種を目指す方が大半でしょう。

技術系職種には以下のような職種があります。

・土木職
・建築職
・電気、電子職
・化学職
・農業、農学職

いずれも大学で学んだ知識を生かし、インフラの整備や公共施設の設計などの仕事を行うことができます。

ちなみに、文系であっても採用試験に合格さえすれば技術系職種として働くことができるケースが多いので、興味があれば受験を検討してみるのもよいでしょう(受験の際は希望する自治体の受験要項を必ずご確認ください)。

3−3 資格・免許職種

上記2つについては資格や免許がなくても公務員になれるものでした。

しかし、中には資格や免許がなければ公務員になれない職種があります。
主なものとして以下の資格や免許があげられます。

・医師
・看護師
・保健師
・薬剤師
・管理栄養士、栄養士
・獣医師
・衛生監視
・福祉指導員
・教員
・保育士
・学芸員
・司書

医師が公務員?と思われるかもしれませんが、県立や市立で働く医師は公務員となります。
教員や保育士なども同じで働くところが公立であれば地方公務員として働くこととなります。

資格・免許職種についても技術職と同様に、大学等で専門的な分野を専攻した方がその知識や技術を生かしたいと思い受験することが一般的です。

3−4 公安系職種

公安系職種は警察官や消防官といった地域の安全を守る公務員のことを指します。
警察官と交通巡査員(駐車違反のチェックや交通指導、交通安全教育などを行う)は都道府県に採用され、消防官は市町村に採用となります。

3−5 技能系職種

技能系職種は、地方公務員だと清掃作業員やバスの運転手などが挙げられます。現在はコスト削減のため、民間に委託しているところも多く採用が減っているという現状があります。
また、これらは高卒程度の試験でのみの採用となり大学や短大を卒業した人は受験できない可能性がありますので、希望する人は必ず受験要項を確認するようにしましょう。

4 公務員試験について

ここまでで、地方公務員の仕事について何となく理解できたかと思います。

もし、「地方公務員になりたい!」と思ったのであれば、当然ですが「公務員試験」を受験し、合格する必要があります。

これは地方公務員でも国家公務員でも同じで、公務員になるためには試験に合格して初めて公務員として働くことができるのです。

公務員はコネで採用されるといった話を聞くかもしれませんが、そのような採用を行っているところはまずないと考えてよいでしょう。数十年前はそうしたこともあったようですが、これから公務員になる人は公務員試験に合格しなければならないということを知っておきましょう。

◼公務員試験の「程度」について

公務員試験の内容は、試験の「程度」や種類、自治体によって異なります。
「程度」とは、「大学卒業程度」「短大卒業程度」「高校卒業程度」というように、学歴を目安とした分類のことをいいます。
「程度」となっているのは、例えば「大学卒業程度」の場合、必ずしも大学卒業(予定含む)していなくても問題はなく、高卒の人でも受験でき、あくまで試験のレベルがその程度だということです。
まずは、あなたがどの「程度」の試験を受験するのかを確認するようにしてください。

ここでは多く方が受験する大卒程度の事務系職種で課される「教養試験」「専門試験」「論文試験」「面接」について、それぞれ詳細を説明していきます。

4−1 教養試験

教養試験は大きく「一般知能」と「一般知識」に分類されます。
それぞれについて出題される科目は以下のようになります。

【一般知能分野】
・文章理解(現代文・古文・英文)
・判断推理
・数的推理
・資料解釈

【一般知識分野】
・社会科学
政治、経済、社会、法律
・人文科学
日本史、世界史、地理、思想、文学・芸術
・自然科学
数学、物理、化学、生物、地学

教養試験は択一式(5つの選択肢から正解を1つ選ぶ)で行われます。
上記の全てを解く必要はなく、一般知能分野の場合、選択方式を採用している自治体が多くなっています(逆に一般知能分野は全問必答とするところが多いです)。

一般知能の数的処理は算数や数学的要素が強く特に文系の方は苦手とする方が多いですが、どこも出題数が多いため長期的に対策を行っていく必要があり合否の決め手となる科目といえるでしょう。

そして、一般知識は高校時代に学習する科目全般が出題されるというイメージです。そのため、大学受験の際にこれらの科目をどれくらい勉強したかによって一般知識の負担は変わってくるでしょう。

4−2 専門試験

専門試験については、多くの方が受験する行政・事務系であれば、以下の科目が出題されます。

【行政系科目】政治学、行政学、社会学、社会政策(労働経済・社会保障)、国際関係、社会事情など
【法律系科目】憲法、行政法、民法、商法、刑法、労働法、国際法など
【経済系科目】経済原論(ミクロ経済学・マクロ経済学)、経済学、財政学(公共経済)、経済政策、経済学史、経済史、経済事情、統計学、計量経済学、国際経済学など
【商学系科目】会計学、経営学
【その他】英語、教育学、心理学など

専門試験は大学で学ぶ専門的な内容が出題されます。そのため、教養試験とは違い職種によって出題科目が異なるという特徴があります。

例えば、建築系の職種であれば建築に関する内容が出題され、機械系であれば数学や物理、工学系の知識が問われます。

また、地方公務員試験では少数ですが、専門試験において記述試験を課されることもあります。

ちなみに地方公務員の場合、特別区や東京都、地方上級試験などの規模の大きい自治体の場合専門試験が出題されることがほとんどですが、高卒程度の試験や規模の小さい市役所、警察・消防といった公安系などは専門試験が課せられません。もし時間がない、専門科目まで手が回らないという場合はこうした試験を検討することもおすすめです。

勉強を始める前にあなたが志望する自治体がどのような試験を行うのかを必ず確認するようにしましょう。

4−3 論文試験

地方公務員試験において論文試験は二次試験で課せられるケースが多く、内容としては社会問題や自治体としての取り組みについて論述するものが一般的です。

【例1】
国際化の持つ影響、可能性、課題を示し、自治体としてどのような取組を行 うべきか、論じなさい。

平成27年度 千葉県(上級)論文試験

【例2】
若者から高齢者まで、全ての市民に、「広島市に住み続けたい」と思い続けてもらえるようにするため、行政としてどのようなことに取り組むべきか、あなたの意見を述べよ。

平成27年度 広島市論文試験

中には自身の経験を問うてくる自治体もあります。

あなたがこれまでに新人(新入生、新入社員など)として組織(ゼミ、サークル、職場など)に加入した時に、その組織の一員として受け入れられ、認められるために取り組んだことについて具体的に述べるとともに、その取組を通じて学んだこと等について、述べてください。

平成26年度 名古屋市(第1類)論文試験

論文試験では、課題に対する理解力のほか、文章構成力・表現力、一般常識、そして論文を通じて受験生の人物的側面まで評価されます。

論文試験は付け焼刃での対策は難しく、課題を設定し自分で手を動かして実際に書いてみて、第三者に添削してブラッシュアップしていくという作業が重要となります。

論文対策については【徹底解説】公務員試験の教養論文の基本と対策についてで詳しく解説しています。

4−4 面接試験

面接試験はすべての公務員試験で実施されます。
自治体によって形式は異なりますが、主に以下の形式で行われます。

個別面接…最もオーソドックスなタイプで、受験生一人に対し、複数人の面接官が対応します。

集団面接…受験生複数人に対し面接官が複数人で対応します。個別面接と併用して行われることが多いです。

集団討論…受験生複数人が与えられたテーマについて討論を行います。その状況を面接官が観察し、各人の知識や表現力、問題解決能力、協調性などを評価します。

最近ではプレゼンテーションを実施する自治体も増えてきており、マニュアル通りの回答による合格が難しくなってきています。

また、公務員試験はつい筆記試験ばかりに目が行きがちですが、特に地方公務員は面接重視の傾向になってきています。いくら筆記試験で高得点であっても面接試験で不合格になってしまうことはざらにあります。

せっかく一次試験に合格しても面接で落ちてしまっては勉強してきたことが水の泡となってしまいます。
面接試験も論文試験と同様、決して手を抜かず対策をしましょう。

面接対策については面接対策カテゴリを見ていただければ目的に応じた対策法を探すことができます。

※ここでは主なものを紹介してきましたが、他にも適正検査や体力検査など一部の試験で出題されるものがあります。詳しく知りたい方は公務員試験に出題される科目まとめ(行政・事務系)をご覧ください。

4−5 出題タイプについて

地方公務員の試験では、自治体によって出題される科目や出題数が異なります。これは「出題タイプ」と言われていますが、あなたが受験する自治体がどのタイプなのか知っておく必要があります。

出題方法については以下の6タイプに分類されます。

1.全国型(全国型変形タイプ)
多くの都道府県や政令指定都市が採用しているタイプです。全国型は他のタイプのベースとなるものであり、他のタイプは本タイプを変形させて出題数を増減させているものとなります。

2.関東型(関東型変形タイプ)
関東甲信越+静岡県が採用しているタイプです。
出題数50題中40題を解答というパターンが多くなっています。

3.中部・北陸型
中部地方の6県(愛知県、三重県、岐阜県、富山県、石川県、福井県)が採用しているタイプです。
教養試験は50題全問解答、専門試験は50題中40題選択解答としています。

4.法律・経済専門タイプ
広島県、名古屋市、神戸市、広島市で採用しているタイプです。「法律」や「経済」の区分があり、専門試験の出題が法律か経済どちらかが多くなっており、申込時に選択します。

5.その他の出題タイプ
神奈川県(専門試験)、札幌市(専門試験)、横浜市(教養試験)で採用しているタイプです。上記のどのタイプにも該当しませんが、全国型との共通問題も出題されています。

6.独自型
東京都、大阪府、特別区が採用しているタイプで、完全にオリジナルの問題を出題しています。

このように出題タイプが異なると勉強方法に迷ってしまうかもしれませんが、タイプが異なっても出題科目が共通しているものが数多くあり、最初は気にする必要はありません。

そのため、まずは全国型の主要科目から学習を始め、あなたが受験するタイプに合わせて勉強する科目を微調整していく、という方法をおすすめします。

公務員試験は出題科目がとても多いという特徴があり、簿記や宅建などのメジャーな資格試験とは違い短期で合格することは難しい試験といえます。そのため、しっかりと予備校等で学ぶか、独学であれば自分でスケジュールを決めて計画立てて勉強を進めていかなければ合格は厳しいでしょう。
公務員試験は難関試験ではありますが、何年もかけるような試験ではありません。なるべく一年で合格することを目標としてください。

学習の進め方については公務員になりたい人必見!公務員試験の対策と勉強法を全解説を参考にしていただくとよいでしょう。

5 難易度についてあまり考えないほうがよい

さて、ここまでで地方公務員とはどのようなもので、どのような試験が課せられるのかご理解いただけたかと思います。
これから勉強を始めようと考える人が陥りがちなのが、難易度を気にしすぎてしまうことです。

果てして自分は合格することができるのか、既卒だし試験が簡単な自治体にしたほうが良いのではないか、など不安な方もいるでしょう。
そしてネット上で公務員試験の難易度について検索し、自分が受験する試験はどのくらいなのかという情報を知ることもできます。

一般的に、地方公務員試験よりも国家公務員試験のほうが難しい場合が多く、地方公務員試験の中でも市区町村よりも都道府県のほうが難しい傾向にあります。

そのため、ネット上の偏差値ランキングなるものでは国家公務員や都道府県庁が高くなっていたりしますが、忘れてはいけないのは面接試験にも合格しないと公務員になれないということです。

よく市役所は筆記試験が比較的易しいと言われますが、その分受験生の層も広くなり、全体的に倍率が高くなる傾向になります。
特に、筆記試験とは違い面接試験で差をつけることは難しく、面接が苦手とする人にとっては逆に合格の可能性が低くなって可能性もあります。

「自分は勉強が苦手だから…」というネガティブな理由ではなく、「この自治体の職員として働きたい!」という気持ちで目指したほうが勉強のモチベーションを維持することもできるます。

また、勉強時間についても、一般的には合格のために必要な時間は1500時間とされていますが、ここまで見ていただいた方であれば分かるかと思いますが受験する試験によって出題科目は異なりますし、あなたが受験勉強をどれくらいしてきたかによっても違ってくるため一概には言えません。

勉強時間については公務員試験合格に必要な勉強時間について知っておきたいことで詳しく触れています。

6 自治体ごとに年齢制限が異なるので注意しよう

最後に、これから地方公務員を目指すにあたり注意しなければならないことがあります。それは、どこの自治体でも設けている「年齢制限」です。
いくら合格できる学力を身につけていてもこの年齢制限をクリアしなければ受験することすらできません。

例えば、平成28年度の特別区Ⅰ類試験の場合、年齢制限を以下のように定めています。

日本国籍を有する人で、次の年齢要件に該当する人
★ 昭和 60 年 4 月 2 日から平成 7 年 4 月 1 日までに生まれた人

この場合、22歳〜31歳までが受験することができます。

繰り返しになりますが、いくら勉強ができて面接が得意であっても、そもそも受験資格がないと受けることができません。年齢制限を超えてしまっている場合、不利になるとかではなく絶対に受験することができないのです。

現在大学生の方であれば問題ありませんが、卒業してから何年か経っている場合、年齢制限に引っかかってしまう可能性があるため要注意です。

もし、民間企業等で数年働いている方(働いていた方も含む)は「経験者採用」という枠で受験できるかもしれません。経験者採用枠であれば対象の年齢がかなり広くなります。
ただし、「一つの会社等で4年以上かつ週29時間以上従事」の様に要件が決まっているので、自分が要件に該当するかどうか確認するようにしましょう。

また、最近の傾向として地方公務員は年齢制限を引き上げており、中には年齢制限が59歳と実質撤廃しているような自治体もあります。
ですので、既卒で未経験であっても「自分は年齢がいってしまっているから無理…」とは思わず、まずは希望する自治体の受験要項を確認することをおすすめします。

年齢について気になる方は年齢制限はほぼない!30歳以上でも受けられる公務員試験についてを見ていただくとよいでしょう。

7 まとめ

地方公務員はその地域の住民のために働く職員です。
地方公務員になりたいと決めたら、次はあなたが貢献したい地域(自治体)を決め公務員試験に合格するために勉強を進めていきましょう。

公務員試験はそれなりの期間、しっかりと勉強しなければ合格が難しい試験です。しかし、超難関試験でもないので、計画的に対策を進めていけば合格は十分に可能です。

注意点としては、地方公務員は論文試験や面接試験に比較的重きを置いているということです。いくら勉強が得意でも論文や面接で落とされる可能性があるため、これらも含めてしっかりと対策を進めていきましょう!

社会人が受験できる公務員試験の内容と採用後の待遇について

現在民間企業などで働いていてる社会人の方で公務員に転職したいと考えている方が増えています。

近年、民間企業等で働く人を積極的に採用する「経験者採用」を実施する自治体が増えてきており、経験者採用試験は「何年以上民間企業等で勤務した経験がある」という要件さえ満たせば受験することができます。

しかし、単純に「社会人=経験者採用試験」と単純に考えるのはおすすめしません。というのも、一般の大卒程度試験や高卒程度試験に比べて、経験者採用試験は非常にハードルが高くなる傾向にあるからです。

まずは、あなたの今の状況から受験できる試験を知らなければなりません。

この記事では、社会人の方が公務員になる方法について、そしてどのような試験をクリアしなければならないか、さらに経験者採用試験に合格して公務員になった場合の待遇などについて詳しく解説します。

1 大卒程度試験か経験者採用試験どちらを受験するか決めよう

公務員に転職したいのであれば、まずはどの試験を受ければいいかを知る必要があります。そのためには、以下の2点を確認してください。

・現在の年齢は?
・民間企業等(※)の経験年数はどれくらいか?
(※)民間企業等とは、民間企業に限らず公務員や自営業でも適用される場合があります

「現在の年齢」というのは非常に重要で、全ての公務員試験では年齢制限を設けています。

もし、あなたが社会人経験がありながらも20代であれば、経験者採用試験以外にも大卒程度試験(場合によっては高卒程度試験)を検討してみましょう。

というのも、経験者採用試験の場合、採用枠が少ないことから高倍率になることが多々あります。
また、これまでの職歴も判断材料とされてしまうため、論文試験や面接試験が非常に重要となり、勉強ができれば受かるという試験でもありません。

それに比べ、大卒(高卒)程度試験の場合は、自治体にもよりますが、経験者採用試験よりも倍率が低いことがほとんどです。そのため、単純にしっかりと対策をしておけば採用される可能性は高くなります。

ただし、これも試験によりますが、大卒試験の場合は法律系や経済系などの「専門科目」を課せられることが多いため、勉強が大変になる傾向にあるます。

大卒程度試験
  • 専門科目がある場合が多く対策に時間がかかる
  • 経験者採用試験に比べて倍率が低い
経験者採用試験
  • 筆記試験の勉強の負担は小さい
  • 論文と面接が非常に重要でこれまでの経験を求められる
  • 採用数が少なく倍率が高くなる

倍率が低いほうを取るか、勉強が比較的楽なほうを取るかは人それぞれですが、「社会人=経験者採用試験」と視野狭窄にならず、視野を広げて考えてみることが大切です。

多くの人が受験する大卒程度試験(行政職)については公務員になりたい人必見!公務員試験の対策と勉強法を全解説にまとめていますので参考にご覧ください。

■基本的に併願はできない!
大卒(高卒)程度試験も経験者採用試験も両方受けられる、という人はどっちも受ければいいのでは?と思ったかもしれません。しかし、同一年度に両方の試験を併願することは基本的には不可能であるため、選択が必要です。
もし初年度に経験者採用試験を受験してダメだったら次年度に大卒程度試験を受けるということはできます。

もし、「年齢的に大卒試験が無理そう…」ということであれば経験者採用試験を検討することになりますが、これについては勤務年数が重要となります。

次にどのような方が経験者採用試験を受けられるのか見ていきます。

2 経験者採用試験の受験要件について

大卒試験は考えていない、年齢として難しい方で、社会人として数年働いている、もしくは働いていたのであれば「経験者採用試験」(社会人採用、キャリア採用などともいいます)という枠で受験を検討してみましょう。

経験者採用とは、「民間企業などで培ってきた経験や知識を業務に活かせる人材を確保するための採用方式」であり、近年、特に地方公務員では採用数が増えてきています。

これは通常、大学生などが受験する試験とは別に実施されるものであり、受験のための条件や試験内容が異なるため受験する前によく確認しておく必要があります。

では、民間で経験していれば誰でも経験者採用枠で受験することができるかというと、そういうわけではないので注意が必要です。

例えば東京都では受験資格として以下のように定めています。

学歴区分に応じた民間企業等における一定以上の職務経験がある人
・院修了…5年以上
・大卒…7年以上
・短大卒…9年以上
・高卒 …11年以上  等

つまり、大卒の方であれば7年以上の職務経験が求められることがわかります。ちなみに、現在正社員として働いていなくても、必要な条件だけ満たせば受験することはできます。

なお、ここで出てくる「7年以上」と「民間企業等」について、東京都の受験要項では以下のように定義しています。

「民間企業等における職務経歴」には社会人、自営業者等として6ヶ月以上就業した期間が該当します。

つまり、一つの会社で7年勤めていなくても、極端に言ってしまえば14社を半年ごとに転職していても受験することができるのです。

また注目すべき点は、「民間企業等」を会社員、自営業等としており、必ずしも民間企業に限っていません。

東京都は不明ですが、公務員やJICAでの勤務も経験として認める自治体もありますので、確認してみるとよいでしょう。
(※東京都は事務職であっても専門性を重視するため、経験した職種の条件もありますので注意が必要です)

また、アルバイトや契約社員は職務経歴に入らないのではないか?と心配している方もいるかもしれませんが、自治体によっては受験可能なところもあるので要チェックです。

例えば、横浜市では経験者採用の受験資格を以下のように定めています。

・「民間企業等における職務経験」には、会社員、自営業者、アルバイト、パートタイマー、公務員等としての経験が該当します。また、財団法人、社団法人、NPO法人等の経験も含まれます。

・「5年以上」とは、それぞれの企業・団体等で休憩時間を除き、週30時間以上の勤務を2年以上継続し、これらの経験が通算で5年以上であることを要します(同時期に複数の企業・団体等に勤務していた場合は、いずれか一方の勤務期間のみを職務経験とします。)。

かなり具体的でわかりやすいので見ていただければ理解できるかと思いますが、横浜市ではアルバイトでもなんでも職務経歴になります。

しかし、「週30時間以上の勤務を2年以上継続」という条件がありますので、アルバイトを週20時間1年間やっていたというのは経歴に入りませんので注意が必要です。

このように自治体ごとに受験資格が異なりますので、あなたの志望する自治体が条件を満たすかどうかをまずは確認するようにしましょう。

3 経験者採用ならではの試験に注意する

経験者採用の受験資格を満たした方は経験者採用試験のための勉強をしなければなりません。

公務員試験は大卒程度試験の場合、「教養試験」「専門試験」「小論文」「面接試験」が課されるのが一般的です。

しかし、経験者採用試験では学力よりもこれまでの経験やコミュニケーション能力が見られる傾向にあるため、地方公務員試験の場合「教養試験」「小論文」「経験者者論文」「面接試験」という内容になっているものがほとんどです。

例えば、埼玉県では一般試験と経験者採用試験では試験種目に以下のような違いがあります。

■一般試験
・1次試験
教養試験、専門試験
・2次試験
論文試験、人物試験(集団討論・個別面接)
■経験者採用試験
・1次試験
教養試験、論文試験Ⅰ
・2次試験
論文試験Ⅱ、人物試験Ⅰ(個別面接)
・3次試験
人物試験Ⅱ(個別面接)

注目するポイントとして、経験者採用試験は専門試験がなく、その代わりに論文試験と面接試験が2回行われること、そして3次試験まで行われることです。

また配点も教養試験が50点に対し、その他の合計が750点となっており、

暗記をすれば得点できる「勉強ができる人」ではなく「考えなどを表現できる人」を採用するということが分かります。

こうした傾向は埼玉県に限ったことではありません。

例えば東京都では2次試験にプレゼンテーションを含む個別面接が実施され、特別区においては1次試験で職務経歴論文というものが課せられます。
また、国家公務員の経験者採用試験においては一次試験で「経験論文試験」が実施され、職務経験について問われるものとなっています。

このように、経験者採用試験は一般試験とは異なり、筆記のウェイトが低いけれども人物の適正を図るためのウェイトが高いという特徴があるのです。
もちろん、一般の試験であっても最近は人物重視の傾向となっていますが、経験者採用試験とは比べ物になりません。

それでは、経験者採用で重視される論文試験および面接試験ではどのような内容が問われるのか見ていきましょう。

3-1 論文試験について

通常、一般試験(大卒試験)での論文試験は以下のようにある課題(社会問題等)に対し自分の考えを述べたり自治体としてどのような行動をすべきかということを問われることが多いです。

国際化の持つ影響、可能性、課題を示し、自治体としてどのような取組を行うべきか、論じなさい。

平成27年度 千葉県(上級)

人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくいという現実に直面しています。誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て、介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう仕事と生活の調和が求められています。
このような現況を踏まえ、ワークライフバランスの実現に向け、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

平成27年度 特別区Ⅰ類

経験者採用試験では、こうしたものに加え、以下のように 

職場における個人情報管理の重要性について、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて論じてください。

平成27年度 特別区経験者採用試験

川崎市職員採用試験を受験するにあたり、あなたはどのようなキャリアプランを描いて転職を決心したかを述べるとともに、(1)あなたが川崎市でしかできないこととは何か、(2)それを実現するために、これまでの職務経験をどのように活かしたいかについて、それぞれ具体的に述べてください。

平成26年度 川崎市経験者採用試験

出題の形式さえ違えど、聞いていることは同じような内容だということがわかるかと思います。

普段からあなたがこれまでの仕事でどのような目標を立て、どのような取り組みを行い、どのような成果を出してきたのかを整理しておくとよいでしょう。

論文試験についての詳細は【徹底解説】公務員試験の教養論文の基本と対策についてをご覧ください。

3-2 面接試験について

公務員試験における面接試験で評価される基本的な能力は、

  • 積極性(意欲、行動力)
  • 社会性(他者理解、関係構築力)
  • 信頼感(責任感、達成感)
  • 経験学習力(課題の認識、経験の適用)
  • 自己統制(情緒安定性、統制力)
  • コミュニケーション力(表現力、説得力)

の6つです。

公務員試験では「コンピテンシー型」といわれる面接を行われるケースが増えています。

コンピテンシーとは、「行動に表れる能力、特性」や「結果や成果と結びつく能力、特性」と定義されますが、つまりは「過去に起こったできごとに対しどう考えたのか(実施したのか)」という、過去の行動に焦点が当てられた質問をされるということです。

例えば、社会人の場合であれば「仕事において困難だったこと、それをどのように乗り越えたか」という質問はコンピテンシー型といえます。

そのため

  • これまでどのような仕事をしてきたのか
  • どういう困難があったか
  • どう乗り越えたか
  • その経験はどのように生かせるのか

といったことは突っ込まれてもいいように整理しておくのがよいでしょう。経験者採用試験に限りませんが、しっかりと自己分析を行うことが重要といえます。

また、経験者採用の場合、一般試験では課されないプレゼンテーションや自己PRなどを行うことで表現力や達成力などを見る自治体もありますので、やはりこれまで仕事で成し遂げたことなどを整理しておくことが重要となります。

また、民間から公務員へ転職する場合、「なぜ公務員なのか」といったことを非常に鋭く質問されるということも注意しておきましょう。

民間から公務員へ転職する人の本音として、「楽そう」「安定してる」といったものがあるかと思いますが、もちろんそのようなことを面接試験で言うわけにはいきません。

あなたが「なぜ公務員を目指しているのか」を、これまでの経験とこれからやりたいことと結びつけて考えなければなりません。
公務員試験の面接で聞かれる定番の質問の答え方の記事も見ていただくことで、より具体的な質問について知ることができます。

4 採用された場合の待遇について

さて、ここまでは試験の内容について見てきましたが、経験者採用は試験の内容が違うだけではありません。
実際に公務員として省庁や自治体に入庁し働くことになった場合、経験者採用の場合、一般試験で採用された人とは役職や給与が異なります(公務員は給料ではなく「給与」といいます)。

一般試験で入庁した人は末端の職員(主事などと言われます)からスタートします。

当然、社会人経験もない人に最初から役職を与えることはありえませんので違和感はないでしょう。そして給与についても、いわゆる大卒の初任給の金額からのスタートとなります。

これに対し、経験者採用では最初から役職がつくことを前提として採用される場合もあります。
例えば、特別区では職務経験の年数に応じて役職が異なります(8年以上の職務経験で主任主事からのスタートとなります)。

また、国家一般職では係長級の職員を採用するための試験となっています。

このような役職つきの採用でなくても経験者採用であればスタート時の給与に差が出てきます。公務員の場合、以下のような俸給表という表をベースに給与が決められます。

棒給表

職務年数や役職によって「級」や「号」が上がっていく(位が上がっていくイメージ)のですが、経験者採用で採用された場合、最初から高めに設定されているのです。

例えば、横浜市では受験案内において以下のような例が記載されています。

・22歳で大学を卒業し、民間企業における正社員の職務経験が6年、青年海外協力隊経験が2年あり、無職の期間2年を経て、採用時の年齢が 32 歳の場合 →256,244円
・22歳で大学を卒業し、民間企業における正社員の職務経験が10年あり、採用時の年齢が32歳の場合 →261,116円
・22歳で大学を卒業し、民間企業における正社員の職務経験が18年あり、採用時の年齢が40歳の場合 →302,528円

これはあくまで例であり、「個々の採用前の職歴の有無・内容に応じて決定するため、金額は異なります。」としていますが、どの自治体でも職務経験がある人はそれまでの経歴を考慮されるためスタートの給与が高めとなるのです。

なお、公務員の給与について詳しく知りたいという方は公務員の給料や年収について知っておきたい基礎知識まとめを参考にしていただくとよいでしょう。

そして役職や給与が高いということは当然、末端職員とは違い役職に応じた仕事が任されるため責任感が違います。入庁して1年目では通常任されないような仕事も経験者採用であれば任されるのが普通です。

それだけ仕事についてのパフォーマンスは期待されているということも認識しておいたほうがよいでしょう。

5 まとめ

経験者採用試験はあなたが仕事に対してどのように取り組み、それを行政の仕事としてどのように生かすかを伝えることが重要です。

受験のための要件は決して易しくはありませんが、一般で入るよりも責任のある仕事を任されるのでやりがいを感じることができますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

また、要件を満たさない方も地方公務員は年齢制限を引き上げしている傾向にあるのため、諦める前に志望する自治体の受験要項を確認してみるとよいでしょう。

消防士になるには?試験内容について最低限知っておきたいこと

火災の現場で消火活動や救助を行う消防士。
あの姿に憧れて消防士を目指す人も少なくないでしょう。

消防士は警察と同様に「公安職」と呼ばれ、治安維持のために従事する公務員です。
どちらも体力が勝負の仕事と思われているのですが、実際になろうと思うと筆記試験の勉強をしっかりとしなければならず意外と大変です。

また、消火活動や救助だけが仕事ではない、ということも知られていないのではないでしょうか。

ここでは、消防士になるための試験について到底すべて紹介することはできませんので最低限知っておきたいことについてご紹介します。
これから消防士を目指す方はぜひ参考にしてみてください。

1 消防士になるには公務員試験に合格しなければならない

消防士(消防官。正確には「消防吏員」)が普段消防署で勤務しているということはご存知かと思います。
その消防署は市町村の組織だということは意外と知らない人も多いのではないでしょうか。

市町村の組織ということはつまり消防士は「地方公務員」であり、消防士になるには地方公務員試験に合格しなければならないのです。

地方公務員試といっても、試験自体は各自治体で行われているので、そこで行われる消防士の採用試験を受験し、合格すれば消防士となることができます。

例えば、千葉市の消防士になりたければ千葉市が実施している採用試験の消防士区分を受験します。これはさいたま市でも名古屋市でも神戸市でもどこでも同じです。
東京都だけは市町村ではなく、「東京消防庁」という都の組織の採用となり、稲城市と島しょ地域を除く東京都全域での消防防災業務を担っています。

また、自治体によっては、「広域事務組合」「消防組合」で採用を行っているところもあります。
それぞれ「組合」とついていることから、複数の自治体が共同で業務を行っている組織をいいます。1つの自治体が単独で行うよりも複数の自治体が共同で行うことで財産面や効率面で効果的な場合にこうした形で運用されます。実際には規模の小さい市町村が行っています。

いずれの自治体においても採用試験を受験し合格することで消防士として活躍できるということをここでは抑えておくとよいでしょう。

※総務省の「消防庁」では消防士を採用していない

東京消防庁と似た名称のものとして「消防庁」というものがあります。
これは総務省の組織であり国の機関です。ホームページを見ると「総務省消防庁」とされており区別できるようになっていますが、総務省の消防庁では消防士の採用は行っていないので注意しましょう。

2 消防士試験を受ける前に「受験資格」の確認を!

消防士になるには公務員試験に合格しなければならないのはわかったから勉強しよう!と思っている方。少しお待ちください。
試験を受ける前に、そもそもあなたが受験できるのかどうか(受験資格)を確認しなければなりません。
受験資格がなければ消防士になりたくてもなれません。ここでは試験勉強をする前に知っておくべきことをご説明します。

2−1 受験資格とは?

消防士になりたいと思っても誰でもなれるわけではありません。まずは受験案内で「受験資格」を確認するようにしましょう。

受験資格として定められているもので注意が必要なのは「年齢制限」「身体要件」です。それぞれについて解説していきます。

年齢制限に引っかかると受験できない

年齢制限は自治体によって多少の差はあれど、おおよそ21〜30歳くらいまでとしているところが多いです。

ちなみに、この年齢制限については採用区分によって定められています。
採用区分というのは、例えば東京消防庁の場合、「1類」「2類」「3類」と分類されており、それぞれの区分ごとに採用試験が行われます。

ここでいう1類、2類、3類というのが採用区分であり、自治体によっては「上級」「中級」「初級」としているところもありますが、それぞれに年齢制限を設けています。

東京消防庁ではそれぞれの区分ごとに以下のような年齢の要件を設定しています(平成28年度試験)。

1類 ・昭和62年4月2日から平成7年4月1日までに生まれた人
・平成7 年4月2日以降に生まれた人で、学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)を卒業している人(平成29年)又は同等の資格を有する人
2類 昭和62年4月2日から平成9年4月1日までに生まれた人
3類 平成7年4月2日から平成11年4月1日までに生まれた人

これらはつまり、1類は大卒、2類は短大卒、3類は高卒の人たちを採用しようとしていることがわかります。
実際に試験によっては「大卒程度試験」「短大卒程度試験」「高卒程度試験」と言われたりしますが意味は同じです。

ちなみに、消防士に限らず公務員試験において「程度」としているのは必ずしも大卒や高卒である必要はありません。これは問題のレベルの目安であり必要な学歴ではない、ということは知っておくと良いでしょう。
そのため、高卒の人でも年齢の要件さえ満たせば受験できるのです。

消防士試験で課せられる教養試験は内容が高校で学習する内容なので大卒レベルというと語弊があるかもしれませんが、要は大卒レベルのほうが問題が難しいと思っておくとよいでしょう。
文章理解の文章量が多かったり、数的処理の条件が複雑だったりと求めらえるレベルは高くなる傾向にあります。

このように、採用区分においては要件さえクリアすればいいのですが、逆にいうと年齢制限に引っかかってしまうと一切受験することができなくなってしまいますので、まずは案内でそもそも自分が受験できるのかどうかを必ず確認するようにしましょう。

身体要件も要チェック

身体要件は消防士ならではのチェック項目といえます。
消防士は肉体的な仕事であり、不規則的な勤務であることから以下のような「身体要件」が定められています。これは他の行政系の公務員では見られない特徴ですので、注意が必要です。(以下は東京消防庁の場合であり2次試験で検査【平成28年度試験】)

・身長…<男性>おおむね160cm以上<女性>おおむね155cm以上
・体重…<男性>おおむね50kg以上<女性>おおむね45kg以上
・胸囲…身長のおおむね2分の1以上
・視力…0.7以上かつ一眼でそれぞれ0.3以上であること(矯正視力含む)。赤色、青色及び黄色の色彩の識別ができること
・聴力…正常であること
・肺活量…<男性>おおむね3,000cc以上<女性>おおむね2,500cc以上

身長や体重について「おおむね」となっているのは、必ずしもこれらを満たしていなくても前後1cmや1kg以内ぐらいであれば誤差とする、ということです。
他の項目に「おおむね」と入っていないのは、必ずその条件は満たさなければならないということなので要注意です。

以上のように消防士になるためには必ずクリアしなければならない受験資格がありますので、まずは希望する自治体の採用案内で確認してください。
クリアしていることが確認できたら次に筆記試験の勉強を始めましょう。

3 試験内容について

受験資格があると確認できたら試験内容を見ます。

消防士の採用試験では「教養試験」「論文試験(作文試験)」「体力検査」「適正試験」「面接試験」といった試験が実施されます。
自治体によって内容は様々ですが、概ねこれらの中から組み合わせてで出題されます。以下でそれぞれの詳細を見ていきましょう。

3−1 教養試験

教養試験は5つの選択肢から正しいもの、または間違っているものを選ぶ「五肢択一式」で行われます。
すべての自治体で実施され、一定以上の得点を取れないと二次試験に進むことができません。

出題される科目は以下のとおりです。

【一般知能分野】
・文章理解(現代文・古文・英文)
・判断推理
・数的推理(数的処理・判断推理)
・資料解釈

【一般知識分野】
<社会科学>
政治、経済、社会、法律
<人文科学>
日本史、世界史、地理、思想、文学・芸術
<自然科学>
数学、物理、化学、生物、地学

高卒試験・大卒試験いずれもこのように教養試験では多くの科目が出題されます。いずれも高校で学ぶ内容ですが科目数が多いため過去に勉強しなかった科目も対策が必要となり大変です。
特にこれまで受験勉強などをしてこなかった人にとってはとてもハードルの高い試験となるでしょう。

受験する自治体や試験によって出題科目や科目ごとの出題数が異なります。しかし、その差は小さいものであり、重要な科目は共通しているため、文章理解や数的処理などの出題数が多い重要科目をしっかりと対策し全体的にまんべんなく得点できるようにすることが大切です。

また、試験日については、一次試験日で大別すると、大卒程度の試験は「A日程(6月下旬実施)」「B日程(7月下旬実施)」「C日程(9月中旬実施)」となりC日程で実施される自治体が最も多くなっています。
また、政令指定都市はA日程と同日、東京消防庁は独自の日程で行っています。(※政令指定都市とは、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市の20市をいいます)

公務員試験は試験日さえ被らなければ併願可能です。そのため、できれば少しでも合格の可能性を上げるため併願することをおすすめします。

なお、すべての自治体が採用を行っているわけではありませんので、志望している自治体がどういう状況なのか事前に確認するようにしましょう。

独学で勉強をする人はレベルにあった問題集を選ぼう

これから教養試験の勉強を始める方は予備校に通うか独学で勉強するかのどちらかだと思います(通信もいるかもしれませんが少数なのでここでは割愛します)。

もし独学で勉強を進めるのであれば問題集選びに注意が必要です。

公務員試験対策の問題集の定番といえば「スーパー過去問」「クイックマスター」です。
しかし、これらの問題集は基礎がそれなりにできている人が問題をこなしていくためには有効的ですが、まだ基本も分からない状態で取り掛かるのは時間の無駄といえます。
というのも、こうした問題集は問題は豊富ではあるものの、その分解説が親切ではないためいきなり取り掛かるには敷居が高すぎるのです。

まずは基本的な参考書から始め基本を理解しましょう。その上で、一通り学習したら「消防士専用」の過去問題集を使うようにしましょう。国家公務員や地方上級試験対策のものではレベルが高く無駄な時間を使ってしまうことになりかねません(消防士試験は公務員試験の中では易しめです)。

自分が受ける試験のレベルにあった問題集を使うことが重要ですので、以下のような消防士の試験に特化したものを使うようにしましょう(クイックマスターは警察官試験向けですがレベルは同様なので対応可能です)。

[大卒程度]警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ 数的推理 改訂版
[大卒程度]警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ 数的推理 改訂版

警察官試験テキストゼロからはじめる! クイックマスター 社会科学 第2版
警察官試験テキストゼロからはじめる! クイックマスター 社会科学 第2版

3−2 論文試験(作文試験)

消防士の試験では論文試験(作文試験)も行われます。
論文試験は大卒程度、作文試験は高卒程度の試験で実施されるのが一般的で、試験時間は60〜120分、字数は800〜1200字程度という形式が多いです。
論文と作文に厳密な違いはそれほどありませんが、作文試験のほうが日常的で平易な課題で書く字数も少なめであることが多いです。

論文試験(作文試験)は課題に対する思考力、表現力、文章構成力などの試験を見るための試験であり、主に消防士としても心構えや、災害などの現状に対する認識や意見などについて論述します。
時間は60〜120分、字数は800〜1200字程度という形が一般的です。
東京消防庁の平成27年度の採用試験ではそれぞれ以下のような内容で出題されています。

Ⅰ類
「住民の防災への意識を高めるための現状の課題をあげ、消防職員としてのどのような取り組みが必要か、あなたの考えを述べなさい。」

Ⅱ類
「消防職員として働く上で信頼関係の重要性をあげ、信頼関係を築くためにあなたはどう取り組んでいくのか述べなさい。」

Ⅲ類
「あなたが目指す信頼される消防職員像について述べなさい。」

大卒程度試験では課題があり、それについてあなたがどう考えているかを問われることが多く、高卒程度試験では自分が普段どう考え消防士として何ができるか(したいか)を問われる傾向にあります。
高卒程度試験のほうがやや抽象的な課題が多いため、自分自身の経験や考えなどを洗い出して整理するとよいでしょう。

対策としては、ある課題を設定し(他の自治体の過去問でもいいです)、時間を測り実際に手を動かして書くことが重要です。解説だけ見て分かった気になっても実際に書こうとしても筆が進みません。必ず自分で書いてみるようにしてください。

そして、自分が書いたものを第三者に見てもらい添削をしてもらうことも重要です。人に見てもらうことで自分では気づかない内容を指摘してもらえるため、予備校などを活用してみるとよいでしょう。

なお、論文試験は「900字程度」というように字数の指定があります。これよりもあまりに少ない場合(できれば8割以上)は足切りとなってしまい、それだけで不合格となってしまうので注意しましょう。

3−3 体力検査

体力検査は一次試験または二次試験で実施されることがほとんどです。中には教養試験の成績で受験できるかどうか決まってしまう自治体もあります。
前述のように、消防士は体力仕事であり勤務も不規則になることから、職務に耐えられるかどうかが見られます。

内容としては垂直跳びや立ち幅跳び、握力、上体起こし(腹筋)、反復横跳び、持久走、シャトルランなど種目は様々です。
体力検査は受験案内に実施される種目が載っているので、事前に確認し普段から走りこみや腕立て伏せなど行い体力をつけておくようにしておけば大丈夫でしょう。

3−4 適正検査

適正検査とは、消防士として職務を行う上での適性があるかどうかを見るもので、性格検査や適正試験の名称で行われることもあります。実施しない自治体もそれなりにあるので採用案内で確認をしてください。
適性検査はクレペリン検査Y-G検査と呼ばれるものが課されるのが一般的です。

・クレペリン検査・・・たくさん並んだ1桁の数字を隣り合う数字をその答えの1の位を答えていくというものです。たとえば、「2+7+6=15」となる場合は15の一の位である「5」が答えとなります。これにより作業の能率や正確性を計ります。

・Y−G式性格検査・・・自分の性格や行動に関する120項目の質問に「はい」「いいえ」「わかりません」のいずれかで答えるものです。似たような試験を受けたことも多いかと思いますですが、これにより大まかな性格の特性の分類を行います。

適正検査は特に対策は必要ありませんので、正確に答えることを心がけましょう。

3−5 面接試験

面接試験は教養試験や論文試験では見ることのできない人物像を評価するために行われます。二次試験で実施されるのが一般的であり、すべての自治体で実施されます。

受験者1人に対し面接官が複数人で行う「個別面接」、受験者数人で行う「集団面接」、そして受験者数人である課題についてディスカッションを行う「集団討論」のいずれか、もしくは組み合わせによって行われます。

「なぜ消防士になりたいのか?」「自己アピールをしてください」「今まで何かスポーツはしてきましたか」「そこで大変だったことはなんですか?」「それを乗り越えるために工夫したことはなんですか?」といった内容がよく聞かれます。
これらは一例に過ぎませんが、重要なのは情報収集と自己分析を行うことです。

消防士がどういう仕事をしているのか、どのような組織があるのかについて情報を集め、なぜ消防士になりたいと思ったのか、消防士になって何がしたいのか、といったことを分析することで自分なりの回答を作ることができます。

本やネットの情報をいくら寄せ集めても、あなたが消防士を志す理由や過去の経験はあなたしか分からないはずです。回答例をそのまま言うのではなく、あなたの言葉で回答することで面接官に熱意を伝えることができるのです。

面接対策はしっかり行おう!

面接試験は最終的に合格できるかどうかのカギとなっておりとても重要な試験です。教養試験をパスし、いくら他の試験で得点できたとしても面接試験で失敗してしまうとそれまでの苦労が水の泡となってしまいます。
公務員試験全般に言えることですが、近年は特に人物重視の傾向となっており、いくら筆記試験が良くても面接で失敗して不合格になってしまう人がとても多いのです。

以下は平成28年度横浜市採用試験の消防区分の配点です。

二次試験に実施される面接の配点の高さが分かるかと思います。
横浜市では教養試験は足切りに過ぎず、二次試験では410点満点のものを40点満点に換算されてしまいます。そして面接では300点という配点があるのでいかに面接が他の科目と比べて重要かがわかるでしょう。
つまり、いくら教養試験や論文試験で高得点を取っても面接で逆転される可能性はいくらでもあるということです。

とはいえ、教養試験に合格しなければそもそも二次試験すら受験できないので、一次試験までは教養試験の勉強をしっかりと行い、一次試験終了後すぐに面接対策を始めるようにすることをおすすめします。

5 まとめ

消防士の採用試験は体力仕事とはいえ公務員試験である以上、一定の学力が求められます。
兎にも角にも教養試験をクリアしないことには先に進めませんので、「楽勝でしょう」とは思わずしっかりと対策をしてください。

そして面接対策も重要です。対策は不要だとは考えず、情報収集や自己分析をしながら本番に向けてトレーニングを行っていきましょう。

【徹底解説】警察官になるには?試験内容とその対策について

警察官になりたいけれどどうすればなれるだろう?
これから警察官を目指す方のほとんどはそうした疑問を持っているのではないでしょうか。
警察官に憧れている人は多いけれど、警察官になるための方法を知らない人はとても多いです。

ご存知かとは思いますが、警察官は公務員です。そのためには公務員試験に合格しなければなりません。

ここでは警察官になるためにどうすればいいのかという疑問を解消できるよう試験内容について徹底的に説明していきますので警察官を目指す方は参考にしていただけると幸いです。

1 警察官のほとんどは地方公務員である

警察官が公務員だということはご存知の人も多いかと思いますが、ほとんどが地方公務員だということを知っている人はあまりいないかもしれません。
公務員には大きく「国家公務員」と「地方公務員」に分かれます。それぞれについて簡単に説明すると、国家公務員とは「○○省」のような国の期間に勤める人で、地方公務員は都道府県や市町村役場で働く人のことを指します。

警察官はほとんどが地方公務員だとお伝えしましたが、正確に言うと、都道府県警察のうち「警視正」以上が国家公務員で、それ以外は地方公務員であり、地方公務員として採用されても警視正からは国家公務員となります。

警察官の階級は警察法で決められており、上から警視総監・警視官・警視正・警視・警部・警部補・巡査部長・巡査となっています。

都道府県の試験を受け、警察官になると最初は「巡査」から始まり、数年ごとに昇任試験を受け合格すれば昇進していくシステムです。
警視正以上の割合は全体の1%未満となっており、非常に狭き門となっています。そのため、99%は警視以下であるため地方公務員として活躍するのが普通なのです。




2 警察官になるのは公務員試験に合格しなければならない

警察官になるには「公務員試験」に合格しなければなりません。
警察官のほとんどは地方公務員だとお伝えしましたが、地方公務員になるためには都道府県で実施している採用試験を受験するし合格する必要があります。

例えば、東京都の警察官になりたければ東京都(警視庁)が実施する警察官の採用試験に、埼玉県の警察官になりたければ埼玉県が実施する警察官の採用試験に合格しなければなりません。これについては全国どこでも共通です。

公務員試験について詳細は後述しますが、決して簡単なものではありません。警察官の採用試験で関門となるのは「教養試験」「論文試験」「面接試験」です。特に筆記試験と論文試験については試験の数ヶ月前から計画を立ててしっかりと勉強しないと合格することは難しいでしょう。
警察官の試験は行政・事務系の試験よりは易しめだと言われていますが、それでも「たまたま受けたら合格した」というようなレベルではありませんので、しっかりと対策をして受験しましょう。

※警察官の採用試験を受ける前に「身体要件」に注意しましょう!

警察官は肉体的な仕事であり、不規則的な勤務であることから以下のような「身体要件」が定められています。これは他の行政系の公務員では見られない特徴ですので、注意が必要です。(以下は警視庁の場合)

・身長…<男性>おおむね160cm以上であること<女性>おおむね154cm以上であること
・体重…<男性>おおむね48kg以上であること<女性>おおむね45kg以上であること
・視力…裸眼視力が両眼とも0.6以上、又は矯正視力が両眼とも1.0以上であること
・色覚…警察官としての職務執行に支障がないこと
・聴力…警察官としての職務執行に支障がないこと
・疾患警察官としての職務執行上、支障のある疾患がないこと
・その他身体の運動機能…警察官としての職務執行に支障がないこと

身長と体重について「おおむね」となっているのは、必ずしもこれらを満たしていなくても前後1cmや1kg以内ぐらいであれば誤差とする、ということです。
他の項目に「おおむね」と入っていないのは、必ずその条件は満たさなければならないということなので要注意です。




3 試験内容について

では実際に警察官の採用試験ではどのような内容が課されるのかを見ていきます。

警察官の採用試験では「教養試験」「論文試験(作文試験)」「体力検査」「適正試験」「面接試験」といった試験が実施されます。
自治体によって内容は様々ですが、概ねこれらの中から組み合わせてで出題されます。以下でそれぞれの詳細を見ていきましょう。

3−1 教養試験

教養試験は5つの選択肢から正しいもの、または間違っているものを選ぶ「五肢択一式」で行われます。
すべての自治体で実施され、一定以上の得点を取れないと二次試験に進むことができません。

出題される科目は以下のとおりです。

【一般知能分野】
・文章理解(現代文・古文・英文)
・判断推理
・数的推理(数的処理・判断推理)
・資料解釈

【一般知識分野】
<社会科学>
政治、経済、社会、法律
<人文科学>
日本史、世界史、地理、思想、文学・芸術
<自然科学>
数学、物理、化学、生物、地学英語(警視庁のみ)

高卒試験・大卒試験いずれもこのように教養試験では多くの科目が出題されます。

警察官の試験内容は一次試験日で大別すると、大卒試験は「5月型」「7月型」「警視庁」高卒試験では「9月型」「10月型」「警視庁」となります。(平成20〜26年の情報による)

●警察官(大卒程度)試験の科目別出題数

daisotsu-police

●警察官(高卒程度)試験の科目別出題数

kosotu-police

受験する自治体や試験日によって出題科目や科目ごとの出題数が異なります。しかし、その差は小さいものであり、重要な科目は共通しているため、文章理解や数的処理などの重要科目をしっかりと対策し全体的にまんべんなく得点できるようにすることが大切です。

※専門試験について
通常、警察官の採用試験では専門試験が課されません。しかし、埼玉県警察の「国際捜査1類」のように語学力を必要とする特殊なものについては専門試験が行われますので、必ず希望する自治体の最新の受験案内を確認するようにしてください。

学習を進める上で注意すべきこと

これから教養試験の勉強を始める方は予備校に通うか独学で勉強するかのどちらかだと思います。
もし独学で勉強を進めるのであれば問題集選びに注意が必要です。

公務員試験対策の問題集の定番といえば「スーパー過去問」や「クイックマスター」です。
しかし、これらの問題集は基礎がそれなりにできている人が問題をこなしていくためには有効的ですが、まだ基本も分からない状態で取り掛かるのは時間の無駄といえます。
というのも、こうした問題集は問題は豊富ではあるものの、その分解説が親切ではないためいきなり取り掛かるには敷居が高すぎるのです。

まずは基本的な参考書から始め基本を理解しましょう。その上で、一通り学習したら「警察官専用」の過去問題集を使うようにしましょう。国家公務員や地方上級試験対策のものではレベルが高いため、以下のような警察官の試験に特化したものを使うことが重要なのです。

[大卒程度]警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ 数的推理 改訂版
[大卒程度]警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ 数的推理 改訂版

警察官試験テキストゼロからはじめる! クイックマスター 社会科学 第2版
警察官試験テキストゼロからはじめる! クイックマスター 社会科学 第2版

3−2 論文試験(作文試験)

警察官の試験では論文試験(作文試験)も行われます。
論文試験は大卒程度、作文試験は高卒程度の試験で実施されるのが一般的です。それぞれに厳密な違いはそれほどありませんが、作文試験のほうが日常的で平易な課題で書く字数も少なめであることが多いです。

論文試験(作文試験)は課題に対する思考力、表現力、文章構成力などの試験を見るための試験であり、主に警察官としても心構えや、治安・犯罪の現状に対する認識、犯罪に対する意見などについて論述します。
時間は60〜120分、字数は800〜1200字程度という形が一般的です。

大卒程度試験、高卒程度試験ではそれぞれ以下のような内容で出題されています。

【大卒程度試験】

・都民が警視庁に期待することについて述べ、警視庁警察官を志す者として、その期待にどのように応えていくか具体的に述べなさい。

平成22年度 警視庁

・東日本大震災に対しあなたは何を感じ、それに対してこれまで行ってきたことについて述べなさい。
・電車内や飲食店など、公共の場における利用者のマナーについて、あなたなりに見苦しさをおぼえた場面とその理由及びあるべき所作について述べなさい。

平成25年度 千葉県警察官

・警察官に求められる倫理観とは

平成25年度 群馬県警察官

【高卒程度試験】

・警察官として、あなたが守らなければならないものとはどのようなものか、具体的に述べなさい。

平成22年度 警視庁

・日頃から心がけていること、又は、実行していることは何か

平成22年度 茨城県警察官

・今、一番興味のあること

平成22年度 栃木県警察官

大卒程度試験では課題があり、それについてあなたがどう考えているかを問われることが多く、高卒程度試験では自分が普段どう考え警察官として何ができるか(したいか)を問われる傾向にあります。
高卒程度試験のほうがやや抽象的な課題が多いため、自分自身の経験や考えなどを洗い出して整理するとよいでしょう。

警察官になると書類を作成する機会が多くなるため、正しい文章を書かなければなりません。
そのため、論文試験(作文試験)は、内容に筋が通っていて読みやすいか、漢字が正しく使えているかということもポイントとなります。
対策としては、ある課題を設定し、時間を測り実際に手を動かして書くことが重要です。解説だけ見て分かった気になっても実際に書こうとしても筆が進みません。必ず自分で書いてみるようにしてください。

そして、自分が書いたものを第三者に見てもらい添削をしてもらうことも重要です。人に見てもらうことで自分では気づかない内容を指摘してもらえるため、予備校などを活用してみるとよいでしょう。

なお、論文試験は「900字程度」というように字数の指定があります。これよりもあまりに少ない場合(できれば8割以上)は足切りとなってしまい、それだけで不合格となってしまうので注意しましょう。




3−3 体力検査

体力検査は一次試験、二次試験のいずれか、または両方で実施されます。
前述のように、警察官は体力仕事であり勤務も不規則になることから、職務に耐えられるかどうかが見られます。

内容としては垂直跳びや立ち幅跳び、握力、腕立て伏せ、上体起こし(腹筋)、反復横跳び、持久走、シャトルラン、バービーテスト(起立状態から両手足を伸ばして四つん這いになり、再び起立状態に戻る動作を繰り返すもの)など種目は様々であり、これらの中から6種目行うのが一般的です。
中には以下のように体力検査の基準を設けている自治体もありますので受験案内を確認するようにしましょう(香川県警察の例)。

kagawa-men

体力検査は受験案内に実施される種目が載っているので、事前に確認し普段から走りこみや腕立て伏せなど行い体力をつけておくようにしておけば大丈夫でしょう。

3−4 適正検査

適正検査とは、警察官として職務を行う上での適性があるかどうかを見るもので、性格検査や適正試験の名称で行われることもあります。すべての自治体で実施されます。
クレペリン検査やY-G検査と呼ばれるものが課されるのが一般的です。

・クレペリン検査・・・たくさん並んだ1桁の数字を隣り合う数字をその答えの1の位を答えていくというものです。たとえば、「2+7+6=15」となる場合は15の一の位である「5」が答えとなります。これにより作業の能率や正確性を計ります。

・Y−G式性格検査・・・自分の性格や行動に関する120項目の質問に「はい」「いいえ」「わかりません」のいずれかで答えるものです。似たような試験を受けたことも多いかと思いますですが、これにより大まかな性格の特性の分類を行います。

適正検査は特に対策は必要ありませんので、正確に答えることを心がけましょう。

3−5 面接試験

面接試験は教養試験や論文試験では見ることのできない人物像を評価するために行われます。二次試験で実施されるのが一般的であり、すべての自治体で実施されます。

受験者1人に対し面接官が複数人で行う「個別面接」、受験者数人で行う「集団面接」、そして受験者数人である課題についてディスカッションを行う「集団討論」のいずれか、もしくは組み合わせによって行われます。

面接試験は最終的に合格できるかどうかのカギとなっておりとても重要な試験です。いくら他の試験で得点できたとしても面接試験で失敗してしまうと苦労が水の泡となってしまいます。

「なぜ警察官になりたいのか?」「自己アピールをしてください」「今まで何かスポーツはしてきましたか」といった内容がよく聞かれます。
これらは一例に過ぎませんが、重要なのは自己分析を行うことです。

あなたがなぜ(どういうきっかけで)警察官になりたいと思ったのか、自分の過去の経験で何を学び何を成果として出してきたのか。こうしたことを棚卸しすることで自分なりの回答を作ることができます。

ネットや本の回答例をそのまま伝えても面接官はプロなのでわかってしまいます。自分なりの回答をしあなたの熱意を面接官にぶつけるようにしましょう。

3−6 資格加点

柔道・剣道の段位や語学(英語、中国語、韓国語など)、情報処理などの資格を持っている方は一次試験で一定点を加点する自治体もあります。

申請の際に、取得した証明となるものの提出が必要になります(申請のときには取得済みであるということです)。また、証明となるものについてはなくさないよう大切に保管しておきましょう。

3−7 その他の試験種目

ここまでで紹介した内容について対策しておけばほとんどの自治体に対応することができます。しかし、中にはこれら以外の試験を課す自治体があるため、志望者は注意が必要です。

例えば、警視庁は「国語試験」というものが実施されます。これは、職務に必要な国語力を図るための記述式の試験となっており、具体的には漢字の読み書きが出題されます(以下の問題例(平成27年度)参照)。

( )内の漢字の読みをひらがなで書きなさい。
Ⅰ類
(1)勉学に(勤)しむ
(2)歯に(衣)着せぬ物言い
(3)(矛先)をかわす
Ⅲ類
(1)自動(制御)装置
(2)(優雅)な舞
(3)(光沢)のある紙

( )内のひらがなを漢字で書きなさい。
Ⅰ類
(1)(とくしゅ)詐欺の撲滅
(2)(こうてん)による航空機の欠航
(3)(ろうきゅう)化した橋
Ⅲ類
(1)インフルエンザの予防(せっしゅ)
(2)(しんけん)な眼差し
(3)世界記録を(こうしん)する

「読めるけど書けない」という漢字は多いのではないでしょうか。警視庁を受験する方は漢字の対策もしっかりと行いましょう。

他には「武道」区分の試験では柔道や剣道といった実技を課す自治体もあります。




4 採用試験の倍率について

ここまでで、警察官になるためにはどのような試験をクリアしなければいけないか理解できたかと思います。
次に気になるのは「どれくらい難しいのか?」ということではないでしょうか。

試験を通過できるのはどれくらいなのか倍率を知りたい方は各自治体のHPから採用試験の競争率を見ると過去の推移を見ることができます。

例えば警視庁の場合、Ⅰ類試験の倍率は以下のようになっています(警視庁HPより引用)。

●男性警察官
keishityou-men
●女性警察官
keishityou-women

警視庁の場合、女性のほうが倍率は高めですが自治体によって異なります。
それなりの倍率であるので、不安になってしまうかもしれません。
しかし、あまり倍率を気にしすぎるのはおすすめではありません。なぜならば中には「記念受験」をする人も相当数いるからです。

公務員試験は無料で受験できることから申し込みだけして受験しない人が一定数存在します。また、明らかに合格は厳しいにも関わらずとりあえず受けてみようとする人も一定数います。
経験者採用試験や採用がものすごく少ない自治体だと倍率が数十倍〜100倍超えという場合もあります。ここまでいくと合格は難しいといえますが、10倍前後であれば努力で問題なく突破できるレベルといえます。

このように、公表されている倍率が高くても実質的にはそれほど高くない(実際はきちんと対策した人同士の競争になります)ため、「自分はこの自治体の警察官として働きたい!」という気持ちをもってしっかりと対策すれば合格することができるということを知っておきましょう。

5 まとめ

警察官はスポーツができたり体力に自信があれば簡単になれるとイメージしがちですが、実際には教養試験や論文試験(作文試験)対策など筆記試験の勉強をしっかりとしなければ合格は難しい試験です。
そして面接試験も侮ることができないので、目標とする試験を決めたら合格まで全力で対策を進めていきましょう!

公務員試験に落ちたらどうする?浪人すべきかどうか悩んでいる方へ

公務員試験に落ちてしまった・・・。そのようなとき民間の就活をすべきか、それとも来年に向けて勉強をするか悩んでいる方もいるかと思います。

例年、一般的な大卒試験であれば国家総合職を皮切りに、国税専門官、都庁・特別区、国家一般職、地方上級・A日程と試験が行われ、人によってはB日程、C日程も受験するでしょう。

大抵の場合、6月末の試験、つまり地方上級やA日程の試験が終わった時点で、「筆記は大丈夫だな」と感じる人と「今年はダメだな」と感じる人に分かれます。

後者の場合、今年の残りの試験を受けつつ来年度も視野に入れるか民間の就活に切り替えるかが悩むポイントかと思われます。
浪人してでも公務員になるべきか、それとも早く就職すべきか中々決められませんよね。

ここでは、公務員試験に落ちたしまった場合、就職するか浪人するかを判断するための考え方をお伝えします。もし今不安に感じているのであれば参考にしていただけると幸いです。

1 本当に公務員になりたいかを考えよう

結論からお伝えすると、あなたが本当に公務員になりたいのであればぜひ浪人してでも目指すべきでしょう。

浪人すべきかどうか悩んでいる人は「民間でもいいかもしれない」と思っている人が大半です。残りは「とりあえず就職はしなければ」と思っている人でしょうか。そのような人は何としてでも公務員になりたいという気持ちが薄いのではと感じます。

もしくは、「楽をしたい」「なんとなく良さそう」といった軽い気持ちで目指している可能性があります。こうした方は、何も人生をかけてまで公務員を目指すべきではないと思います。
世間一般で言われるほど楽でもありませんし、待遇も特に若手のうちはそれほど良くはありません。確かに安定はしているかもしれませんが、将来的にどうなるかは不透明です。

ですので、一度「本当に公務員になりたいのか」「なぜ公務員になりたいのか」をよく考えてみると良いでしょう。

2 一度民間に入って経験を積むことも考えてみよう

民間は嫌だから公務員を目指すような方は、「ノルマに追われたくない」「営業はやりたくない」「毎日サービス残業は嫌だ」といった固定観念を持っているかもしれません。
しかし、民間企業が全て営業をやるわけではありませんし、ノルマがあるわけでもありません。当然、利益を出し続けていかなければ企業は存続できないので「数字」を意識する必要はありますが、これは税金を使い事業を行う公務員も同じです。

また、公務員であってもサービス残業は当然のようにある部署もありますし、楽な部署もあります(私は忙しい部署と楽な部署の両方を経験しましたが、その差たるや相当なものです)。

つまり、民間であっても公務員であっても、楽か大変かは「どこで働くか」で変わってくるのです。
逆を言えば、比較的楽な民間企業も必ずあります。もちろんそれは働くまではわかりませんが、先入観を持ちすぎて民間企業を拒否する考えは持たないほうが良いでしょう。

どうしても今年中に就職しなければならないということであれば一度民間企業に就職することもおすすめします。
試験にもよりますが、民間企業で4〜6年程度経験を積むことで「経験者採用」として受験することができます。
経験者採用枠であれば、筆記試験の負担が減り論文や面接が重視される傾向になるため、筆記試験で落ちた方にとっては合格の可能性は高くなります。

逆に、面接など二次試験で落ちた方はしっかりと面接対策をしなければ経験者採用での合格は難しくなります(経験者採用は民間でバリバリやってきた人が受ける試験なのでコミュニケーション能力が高い人が多い傾向にあります)。

3 どこに勤めるかで就職先を決めるのは危険

公務員試験の受験者は真面目な方が多いので、特に学生であれば「公務員か大企業じゃなければいけない」という親の意見で就職を決める人もいるでしょう。また、安定志向の方が多いため親が言わなくても公務員、民間であれば誰もが知るような大手企業がいいと考えるかもしれません。
就職ランキングを見ても名だたる企業が名を連ねているため、いかにこうした考え方を持っている人が多いかがわかります。

もちろんこうした考え方は素晴らしく、将来的にお金に困るというリスクを減らすことはできます。しかし、公務員であれ大企業であれ「リスクがないことはない」ということは念頭に置かなければなりません。

最近ではシャープが7000人もの人員削減を行う可能性があると発表し、企業自体も台湾の企業に買収されました。
他にもソニーやJT、電通といった名だたる企業が人員削減を行っています。
これらの企業は学生にも人気であり、将来的な不安など感じるような企業ではないのではないでしょうか。企業の競争が激化しているこの時代、今がよくても将来どうなるかは分かりません。

公務員も財政破綻をしてしまう自治体もありますし、コスト削減のための採用抑制を行っているところもあります。人員が不足することで職員の業務量は増え、給料に見合わないと感じることも増えるかもしれません(当然、給与も削減の方向になります)。

多少不安を煽ってしまいましたが、企業ブランドや公務員というネームバリューだけで選んでしまうと将来的にはリスクが高まる可能性があるということです。
どうしても就活などをするときには「どこで働くか」という基準で選んでしまいがちですが、「何がしたいか」という視点が重要です。

何がしたいかが決められない!という人もいるかもしれませんが、問題ありません。公務員・民間いずれも専門職でない限り自分のやりたいことなどできない人がほとんどです。働くうちに見えてくるかもしれませんので、あくまで修行の場だと割り切って言われたことをやってみるのもいいかもしれません。

そして、大手企業がやはり人気ですから、こだわりすぎると公務員を諦めたにも関わらずいつまでも就職が決まらないという最悪のパターンに陥る可能性が高いので絶対にやめましょう。

4 多浪はどこにも採用されないリスクが高まるのでよく考えよう

ここまで読んでもどうしても公務員になりたい!という気持ちがあるのであれば1でお伝えしたように公務員を目指すべきです。

しかし、2年3年と浪人を続けていくべきかどうかはよく考えたほうがよいでしょう。
というのも、やはり年齢を重ねると新卒に比べ不利になるのは事実です。特に民間企業の場合、新卒一括採用方式のため卒業してしまうと既卒扱いとなってしまいます。

公務員試験であれば職歴なしでも20代後半ぐらいであれば採用をしてくれるところもあるかと思いますが、面接でなぜ浪人してまで公務員を目指したのか納得のいく説明が必要になるでしょう。
しかし、30歳を過ぎてもなお職歴がなく公務員試験に挑んでいくことは相当のリスクがあるかと思います。

民間企業は第二新卒やポテンシャル採用という形で職歴がなくても採用する枠はありますが、対象となるのは卒業後3年以内ぐらいまでが一般的です。それ以上は経験者でないと採用される可能性が低くなるので民間への就職も厳しくなります(もちろん、企業の数は山ほどありますので、どこでもいいというのであればどこかに引っかかります)。

このように、浪人の年数が長ければ長いほど公務員・民間問わず採用されないというリスクがあるので、どこかのタイミングで腹を括って民間へシフトすることをおすすめします。

5 まとめ

公務員試験に落ちたとき、将来どうするかを決めなければならずとても不安になるかと思います。
しかし、民間企業について調べることで興味が湧いてくるということは多々ありますし、やはりどうしても公務員でなければ働きたくないという人でなければ一度就職し、再度挑戦という手を考えることでリスクを減らすことができますので検討してみるとよいでしょう。

公務員試験の倍率と知っておくべき対策について

公務員を目指そうと思ったときに気になることとして倍率が高いと難しいのかどうか、逆に倍率が低いほど受かりやすいのか、といったことではないでしょうか。

最近は民間企業を辞めて公務員を目指す人たちも多くなっており、倍率は高い水準を保っています。

しかし、自分の目指す役所の倍率が100倍超えでは人生のリスクが大きいですね(実際に100倍を超える試験種も存在します)。
学生でも公務員を受験する場合は勉強と日程の都合上、民間企業との併願が難しくなるので倍率は気になるところでしょう。

そこで今回は、主要な公務員試験種(主に大卒程度公務員)の倍率についてどのように考えれば良いか、そしてどのような対策をとれば良いか説明してますので参考にしてみてください。

1 地方公務員(大卒程度)の倍率と考察

地方公務員の中でも全国からの申込みがあり受験者数も圧倒的に多い(1)東京都、(2)特別区、(3)横浜市の倍率について平成27年度および平成26年度を比較しながらみてみましょう。
試験種は行政(事務)のほか、理系に人気の土木等について紹介します。

1−1 東京都

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※参照HP 「東京都職員採用」

http://www.saiyou2.metro.tokyo.jp/pc/selection/pass27.html

Ⅰ類A採用試験について

東京都Ⅰ類A採用試験は24歳~31歳の方を対象とした採用試験で、Ⅰ類Bとの併願ができますが、事務職では約12倍(H27)と地方公務員の中ではかなり高い倍率の1つになっています。H26は採用予定数が少なかったため17倍とかなり高い倍率になりました。

Ⅰ類A採用試験では、専門記述試験において相当高度な内容を出題しているため、大学院や予備校などでかなりしっかりと勉強をしてきた人が多く受験します。例年、東大院卒や偏差値の高い法科大学院卒の人、公認会計士の受験生も受験していますので、実際の競争率もかなり高いと覚悟しましょう。

一方、土木等の技術系は他の公務員試験種と変わらず約3倍で、事務職に比べ格段と低くなっています。もっとも、受験者層の筆記試験のレベルは事務職と同様に高いと考えられますので、3倍程度の倍率でも油断は禁物です。

東京都Ⅰ類B[一般方式]

tocho-b※参照HP 「東京都職員採用」
http://www.saiyou2.metro.tokyo.jp/pc/selection/pass27.html

東京都Ⅰ類B[一般方式]採用試験は、22歳~29歳の方を対象とした採用試験で、Ⅰ類Aとの併願ができ大卒程度の多くの方がこの方式で受験しています。

行政区分については例年、採用予定より100名程度多く合格者を出していますが、これは辞退者を見込んでの数字になります。実際に、東京都は非常に人気が高い試験ではありますが、国家総合職や司法試験、公認会計士、民間企業の大手企業と併願する受験者が一定程度おり、その場合は東京都が滑り止めという形になります。

このように考えると、行政区分の5〜6倍の倍率は比較的受験しやすい倍率ではありますが、受験者層のレベルもある程度高くなると覚悟しておきましょう。

この一般方式には土木や心理、福祉など数多くの専門的な職種があり、中には獣医・薬剤などの専門職試験があります。
採用予定数が年度によって大きく変わり、倍率も連動して変動しますが(たとえば心理職はH27は約4倍、H26は約11倍)、これは実際に結果が出るまでは予測がつかないので、前年度の採用が少なかったとしても最初から諦めずに挑戦してほしいと思います。

獣医・薬剤については24歳~29歳で各免許を持っている方を対象としているので、専門試験ではほとんど差がつかないでしょう。なぜ行政機関である必要があるかを明確にして面接に挑んで下さい。

東京都Ⅰ類B[新方式]

tocho-b-new※参照HP 「東京都職員採用」
http://www.saiyou2.metro.tokyo.jp/pc/selection/pass27.html

東京都Ⅰ類B[新方式]採用試験は、22歳~29歳の方を対象とした行政・土木・建築区分の採用試験で、Ⅰ類Aとの併願ができます。
新方式は、民間企業に流れる優秀な方を少しでも取り込もうと専門試験を廃止し、教養試験・プレゼンテーション・グループワーク・個別面接で合格者を出す方法です(土木・建築ではフィールドワークも課されています)。

行政区分では倍率が10倍を超えており難関になりますが、①大学や大学院、予備校等でしっかりと教養試験やプレゼンなどの訓練を積んでいる学生、②既に民間企業で多くのプレゼンをこなしており自信をもって受験する既卒者、③民間の就活の流れでとりあえず受験する人のタイプなどに分かれます。

プレゼンをほとんどしたことのない学生やフリーターが、とりあえず受けて最終合格するほど易しい試験ではないので、実際の倍率はもう少し低めに見積もってもよいでしょう。

なお、土木については新方式であってもそれほど倍率は高くありません。大学や企業、学会等でプレゼンテーションに慣れている方は是非受験してほしいと思います。

東京都のまとめ

行政区分はいずれも倍率が高くなっており、実際の受験層のレベルも相当高いと予測されるので万全な準備をする必要があるでしょう。

一方、土木などの技術系区分は専門職区分は、採用予定数は少ないが受験者数も少なく倍率は低めであり、筆記試験は大学の専攻と重複することが多いので行政区分に比べ負担は少なくなります。
民間企業と併願して受験してみるのもおすすめです。

1−2 特別区

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※参照HP 「特別区人事委員会採用試験情報HP」
http://www.tokyo23city.or.jp/saiyo/27nen_ji/1_jisshi.htm

特別区の試験は例年、東京都と同日に行われます。東京都も特別区も原則として都内で勤務できるため両方とも非常に人気が高い自治体です。

行政事務については採用予定数が約900人、実際の合格者も約1700人と非常に多く1700人の中になら入れそうと思えるのではないでしょうか。倍率も5〜7倍と比較的受験しやすい倍率といえます。

もっとも、特別区を第1希望とする受験者はかなり多いので、近年では最終合格したものの採用漏れの事態に陥る合格者も発生していることに注意してください。

なお、受験者層については、学力に自信がある受験者が同日試験の東京都に流れることも多いため、筆記試験だけでいえば特別区は東京都よりは受験しやすい傾向にあります。

しかし、特別区の場合は東京都という土地柄、全国から受験者がやってきます。決して都内在住もしくは都内の大学生のみの闘いではないということは意識しておきましょう。

土木造園や建築などの技術系、福祉職、保健師などの専門職は約2〜3倍となっておりこちらも受験しやすい倍率です。

しかし、たとえば福祉職や保健師などは、大学での専攻が同じで全員が学業・実地研修などを経ているため、「みんなよくがんばっている」という感じでなかなか差がつきません。

したがって、実際の倍率以上に、内定を勝ち取るためには筆記も面接もかなりしっかりと準備をして挑む必要があるでしょう。

特別区のまとめ

合格者数が非常に多く、倍率も5〜7倍(行政事務)と比較的受験しやすい基礎自治体であるといえます。
東京都と縁もゆかりもない人でも受験して最終合格しています。

しかし、近年最終合格しても、採用されなかったという合格者(採用漏れ)も発生しているので、できるだけ高い順位で合格することを意識する必要があります。

1−3 横浜市

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※参照HP 「横浜市職員採用案内」
http://www.city.yokohama.lg.jp/jinji/daigaku/dai-kekka.html
※注意:倍率について公表されていないため、公表データの中から「1次受験者数÷合格者数=倍率」として算出しています。

横浜市も東京都や特別区同様、人気が高い基礎自治体です。地元以外の方も横浜に憧れて受験するため、事務職の倍率は8倍とやや高めになっています。

筆記試験については、東京都・特別区とは重複しないため、これらと併願する受験生も相当数います。実際に、申込者数は行政については例年3000名超えと高い数字になっています。

もっとも、1次試験日が6月末になるため、すでに東京都や国家総合職等で手応えを感じている人は、申し込みをしたものの実際に受験しないこともあります。
こうしたことから、申込者数に対して実際に受験する1次受験者数が2500名程度と落ち着き、受験者層の筆記試験のレベルが極めて高くなるということはあまりないでしょう。

横浜市では市長がリーダーシップを存分に発揮し、様々な行政改革を推進していく傾向があります。また、横浜愛が強い地元受験生も多いため、面接試験ではそれ相応の準備をしないとなかなかライバルには勝てないという意識をもつとよいでしょう。

土木などの技術系は、他の自治体等と同様に2〜3倍と受験しやすい倍率です。

横浜市では「学校事務」の区分で平成27年度は42倍という倍率になっていました(平成26年は9倍です)。教育機関の人員削減等の問題はニュースでも大きく話題になるところですが、自治体単位でも採用人数が大きく変化しますので、学校事務の採用を考えている人は注意を払っておきましょう。

横浜市のまとめ

人気が高い基礎自治体の1つで行政区分の倍率もやや高めとなっています。特に面接対策については念入りに行いましょう。試験区分によっては年度によって採用人数が大きく増減するので、受験申込時にしっかりと確認することが重要です。

1−4 その他の地方公務員について

その他の地方公務員(大卒程度・行政)の倍率について、たとえば平成27年度試験の場合以下のような倍率となりました。

千葉市(行政A)・・・5.4倍
川崎市(行政事務)・・・6.8倍
札幌市(行政)・・・9.5倍
など、行政事務については概ね5〜10倍の倍率となっています。

首都圏については人気都市が集中し受験者が分散しやすい傾向にあるからか、5〜6倍と受験しやすい倍率になっています。

一方で地方の政令都市(例えば札幌市)では、近隣に大きな都市がなく、また転勤の幅が大きい道府県庁よりも基礎自治体の方が人気が高くなるため、倍率が高くなることがあります。地方では地元出身者が多く受験するので、「地元に恩返しをしたい」では当然他の受験生と差別化できないことを意識しておきましょう。

技術系や薬剤師などの専門職については人気自治体であっても1.5倍〜3倍という低い倍率であることがよくあります。理系の人は大学・大学院で勉強したことが試験内容にほぼ直結しますので、民間企業の就活と併願して公務員という選択肢を検討することもおすすめします。

みなさんの興味ある自治体の採用状況及び日程をぜひ確認してみてください。
「自治体名 採用状況」でたいてい検索できます。

2 国家総合職(大卒程度)の倍率と考察

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※参照HP 「人事院 採用情報」
http://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/top_siken.htm
※注意:倍率及び1次受験者数について公表されていないため、公表データの中から「申込者数÷合格者数=倍率」として算出。

最終合格(内定ではない)までの倍率

国家総合職(大卒程度)は公務員試験の日程の中で1番最初の試験になるため、本命受験者と記念受験者の2タイプに大別されます。筆記試験(特に記述試験)の難易度から記念受験者が筆記試験で合格することはあまり少ないので、実際の競争倍率はもう少し低いといえるでしょう。

国家総合職では試験科目の内容によって区分が分かれます。「政治・国際区分」は倍率が90倍(平成26年ですら50倍)と信じられないほどの倍率になっています。
どうしても官僚になりたい人は、無難に「法律区分」や「経済区分」で受験する方がよいかもしれません。

「法律区分」では相当数の合格者数を出しますが、受験者数も1万人程度とかなり多いため倍率も高くなっています。前述の記念受験者も一定数いますが、本命受験者層は、東大法学部生、司法試験受験者など、専門科目についてはかなり高度な知識を備えていますので、見た目の倍率どおり最終合格をするのは狭き門だと覚悟して勉強に励んでいただきたいと思います。

もっとも、いわゆる大学偏差値がそれほど高くない大学からも多くの合格者が出ています。公務員試験の対策をしっかりと行えば、出身大学は関係ないことを注意してください。

「平成27年度総合職(大卒)採用状況(h27.4.1現在)」の一部抜粋
※( )内は女性の内数。

官庁訪問〜内定

国家総合職は後述の国家一般職と同様、最終合格=内定ではありません。最終合格を前提に、希望の省庁に官庁訪問をして内定を勝ち取る必要があります。

上記表をみると、最終合格者数の半分以下しか実際には採用されていないようです。国家総合職の場合は第1志望の受験者が多いので、最終合格は当然で、その先の官庁訪問が肝になります。

上記平成27年度の採用状況では、「政治・国際区分」からの内定者はたった1名となっています。各府省ともに欲しい人材の傾向がありますので、どの府省で働きたいかを考えてから、受験区分を確認する必要があるでしょう。法律区分や経済区分は比較的多くの府省で採用しているので、汎用性があります。

国家総合職のまとめ

最終合格は単なる通過点です。実際の内定を勝ち取るまでにはかなりの倍率となるということを知っておきましょう。

3 国家一般職(大卒程度)の倍率と考察

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※参照HP 「人事院 採用情報」
http://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/top_siken.htm
※注意:倍率及び1次受験者数について公表されていないため、公表データの中から「申込者数÷合格者数=倍率」として算出。

最終合格(内定ではない)までの倍率

国家一般職(大卒程度)の行政区分は全国で3万人程の申込者がある人気のある試験です。

しかし実際には、国家公務員自体は第2、第3希望であることも多くなっています。国家公務員は広域の転勤があるとか、給与が大都市の地方公務員より低いとされているとか様々な理由があげられるでしょう。

国家一般職では実際にどの管轄で働きたいかによって受験地域が異なります。本省(霞ヶ関)を中心に関東甲信越内で働きたい人は、受験時に「関東甲信越」区分で申し込むことになります。

首都圏で勤務したいという受験生は当然多いので申込者数も例年1万人を超えています。しかし他の管区よりも採用予定数が多いため、競争倍率自体は6〜7倍とそれほど高くありません。

地域によってはばらつきもみられます。人口も大学も多い近畿圏では倍率がやや高めの一方、たとえば北海道はH27年度においては3倍とかなり低い倍率となっています。

なお、国家一般職の専門科目はいくら科目選択制とはいえ、その科目数が多く(8科目選択)、また教養試験の英語や数的処理系は難易度が高めになっており、筆記試験の合格レベルに達していない受験生も相当数受けています。

そのため、筆記試験が得意な受験生は自信をもって受験すれば比較的合格しやすいのではないでしょうか。

さらに土木等の技術系区分は2倍〜3倍の倍率とかなり低くなっていますので、民間企業との併願も十分に可能でしょう。

国家一般職では最終合格後の官庁訪問がポイントになりますので、まずは筆記試験で得点をしっかり稼いで官庁訪問への切符を手にいれてほしいと思います。

「H27年度一般職(大卒)からの採用予定(行政区分)」の一部抜粋

官庁訪問〜内定

ところで国家一般職は前述の国家総合職と同様、最終合格=内定ではありません。最終合格後、希望の省庁に官庁訪問をして内定を勝ち取る必要があります。

国家一般職の場合は、本省(霞ヶ関等)で勤務するのか、地方で勤務するのかをまず考える必要があります。

たとえば「北海道」区分で受験した人が本省で内定を得ることも可能ではありますが、受験要領には、本省を希望する人は「関東甲信越」区分で受験することをおすすめする旨記載があります。

さて、霞ヶ関周辺にはたくさんの府省が集中しており、その雰囲気に憧れる人も多いかもしれません。

本省では国家一般職(行政区分)からそれなりの人数を採用しています。総務省は57名、厚生労働省はなんと125名も採用予定となっているので、これならどこかに内定をもらえそうだと思いたいところですが、人気の省庁にはたくさんの受験者が押しよせます。
たとえば文部科学省や財務省などは毎年人気なので、かなりの倍率になることを覚悟しておきましょう。

近年は安倍政権の「女性の活躍推進」政策によって、女性の数を一定数確保するために、女性に人気のない分野については女性がやや入りやすいということもありえるでしょう。
理不尽に思う男性もいると思いますが、これまでは男性優先に採用してきた省庁もたくさんありますので、時代の変革期にあるということで納得するしかありません。

本省に対して地方ではどうなっているか確認してみます(上記表では「北海道」区分のデータを掲載しました)。

北海道では最終合格者に対して採用予定数が比較的多くなっています。
しかし、人事院北海道や行政評価局は例年人気があるうえ、採用人数はそれぞれ1名、4名(毎年同じくらいの人数を採用しています)と非常に少なくなっています。

人気の省庁としては検察庁もあげられますが、北海道の場合は採用が札幌・函館・旭川・釧路と非常に広域に及びます。検察庁で働きたいのか、それとも札幌や地元で働きたいのかをよく考える必要があるでしょう。

地方の場合は政令指定都市等(たとえば札幌市)が本命で、国家一般職は第2志望以下であることがよくあり辞退者も多くなります。したがって、もし国家一般職しか合格しなくても、また第1希望の官庁でうまくいかなかったとしても、どこかが拾ってくれる可能性がありますので、最後まで諦めずに様々な省庁への官庁訪問を続けてほしいと思います。

国家一般職のまとめ

国家一般職は辞退者も多いため、倍率や採用人数に惑わされずに最後まで官庁訪問をしっかりと行うこと。

4 国家専門職の倍率と考察

ここでは国家専門職(国税専門官・財務専門官・裁判所事務官・家裁調査官補)についての倍率および対策について説明していきます。

4−1 国税専門官

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※参照HP 「人事院 採用情報」
http://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/top_siken.htm
※注意:倍率及び1次受験者数について公表されていないため、公表データの中から「申込者数÷合格者数=倍率」として算出。

平成27年度は国税専門官の1次試験日と東京都・特別区の試験日が重複したため、前年度より申込者数が減少し、それに伴い倍率も下がりました。しかし、首都圏受験者に限っては例年と異なり「東京都・特別区よりも国税専門官になりたい!」という本命度が高い人が受験したことになりますので、倍率の見た目ほど合格が簡単ではなかったのではないかと思います。

公務員試験では近年、試験日程が大きく変更されることが多くなっています。本命の試験種については前年度の倍率に引きずられることなく、しっかりと対策をとっていきましょう。

4−2 財務専門官

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※参照HP 「人事院 採用情報」
http://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/top_siken.htm
※注意:倍率及び1次受験者数について公表されていないため、公表データの中から「申込者数÷合格者数=倍率」として算出。

平成27年度は国税専門官と同様、財務専門官の1次試験日と東京都・特別区の試験日が重複したため、前年度より申込者数が減少し、それに伴い倍率も下がりました。しかし国税専門官と同様、首都圏では本命度の高い人が受験したことになりますので、例年と変わらないレベルだったと考えられます。

財務専門官の試験は最近出来た専門職試験ですが、仕事の内容に大きな魅力を感じる人も多く国税専門官よりも人気が高くなっています。今後もその傾向が続くと思われます。国税と財務は試験日程が同じのうえ、同じ問題も多く出題されています。

できるだけ早い段階で説明会などに参加し、自分のやりたい業務はどちらなのか、またどの範囲で転勤があるのか等を職員に伺うなどして、どちらを受験するかを見定めてほしいと思います。

なお、国税専門官も財務専門官も、本命のすべり止めと考える受験生も多いのが原状です。したがって、たとえば2次の面接日が他の試験の面接(県庁・市役所や裁判所と重なることが多い)で重なってしまった場合は、国税・財務の面接を辞退する人もいます。したがって、実際の倍率よりもやや低めと考えてもよいかもしれません。

4−3 裁判所事務官(一般職)

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※参照HP 「裁判所職員採用試験」
http://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/top_siken.htm

裁判所事務官(一般職)は希望勤務地の高裁管内に受験を申し込み、その中で採用者が決定されます。管内によって、採用予定数も倍率もばらつきがあるので、まず自分が受験する管内をしっかり把握する必要があります。

たとえば東京高裁管内の受験申込者は6000名を超えていますが、裁判所は転勤を伴うこともあり本命の滑り止めとされ、実際の1次受験者は大きく減って4000名代になっています。これは各管内でも同様に大きく減少していますので、1次試験日前に申込者数が公表された場合でも決して焦る必要がありません。

そうはいっても「1次受験者数÷合格者数」で算出される倍率は10倍前後、福岡管内においては20倍前後となっており、倍率だけをみるとやや高い水準とはなっています。

福岡管内の倍率が高い理由は定かではありませんが、九州地方に法学部の偏差値の高い大学やロースクールがあること、福岡の経済発展や地元愛から、進学で関西や東京の大学・ロースクール等に進学した人が就職先として九州に戻ってくること、など複数の理由が上げられると思います。

どうしても福岡管内の裁判所事務官になりたい人は、試験科目に特徴のある裁判所対策を重点的に行い、とにかく筆記試験で差を付けられないように努力してほしいと思います。

東京管内では、ロースクール自体の数が多くロースクール卒業生が司法試験の滑り止めとして受験することもよくあります。東京管内では筆記試験の「上位層」が一定数いることを覚悟しておきましょう。
ただ、あくまで筆記試験の「上位層」の数が多くなるだけで、中間層や下位層は他の管内と変わらないでしょう。様々な人が受験するということで、むしろ下位層は他の管内より多くなるかもしれません。

なお、裁判所事務官の場合は最終合格=内定ではありません。
たとえば東京管内で385名の最終合格者を出して、実際に採用されるのは160名程度です。採用漏れがたくさん発生するように見えますが、実際は、希望しない地域への配属であったり、合格順位が低いと内定の打診が年末近くになることも多いため、辞退者がかなり発生します。

したがって、まずは最終合格をすること。そのあとは、順位がやや低めでも希望を捨てずに内定の電話を待つことが必要となります。

4−4 家庭裁判所調査官補

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※参照HP 「裁判所職員採用試験」
http://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/top_siken.htm

家庭裁判所調査官補は待遇等が国家総合職レベルとなっています。
試験科目が複数あり、他の行政職試験とは異なる専門的な分野から出題されるので、ほとんどの受験生が家庭裁判所調査官補が本命と考えてよいでしょう(併願先に国家総合職の人間科学区分を選ぶ人がよくいますが、両方合格した場合に家庭裁判所調査官補を選択する人も結構います)。
その分受験者層のレベルも高くなり、その中での倍率が10倍を超えていますので、狭き門といえるでしょう。

しかし、1次受験者数は全国で490名と公務員試験の中ではかなり少ない一方、最終合格者数は41名も出しますので、超難関試験とまでは言えません。
試験科目に特徴があるので、家庭裁判所調査官補に少しでも興味をもったら、できるだけ早く試験情報を調べて受験の決意を固めることをおすすめします。

国家専門職のまとめ

国税専門官・財務専門官・裁判所事務官は、1次受験、面接、最終合格後内定前の段階でそれぞれ辞退者が多い。さらに試験科目が特殊なため、しっかり対策さえとれば本命受験者が合格する可能性が低くはない。

家庭裁判所調査官補は倍率が高く、しかも受験者層の筆記試験のレベルが高いので、早め早めの対策を行うこと。

5 まとめ

公務員試験はこれまで、国家政策で直前に採用予定が半減するような年もあれば、団塊の世代の大量退職で採用予定をかなり増やすという年もありました。
このように受験年度によっても倍率は大きく影響を受けます。

また、倍率が高くても本命の人が多かったり滑り止めの人が多かったりなど、試験種によってさまざまな特徴があります。

しかし、今回紹介しなかった院卒区分や社会人経験者採用などでは、倍率が100倍を超えることもありますが、大卒程度区分ではそのような異常な倍率になることはほとんどありません。

したがって、公表されている倍率は参考程度にして(知らなくてもよいくらいです)、本命試験種の対策を万全にしたうえで、併願先の対策も怠らないようにしていきましょう。

薬剤師の公務員を目指す際に知っておきたい基本情報

薬剤師で公務員を目指す人の中には、大学を卒業してすぐに公務員になりたいと思っている人だけでなく、現在病院や薬局などの民間の機関で働いていて何となく公務員になりたいと思う人さまざまかと思います。

しかし公務員になってもどんな仕事をするのだろう、給料はいいのかな、など気になる部分は多いのではないでしょうか。

薬剤師の仕事と言えば病院や調剤薬局で調剤・服薬指導などの業務を行ったり、製薬会社などで新薬の研究をするのが一般的ですが、公務員は公務員ならでは仕事があります。また、給料は民間に比べて低かったりするなど事前に知っておくべきことは多々あります。

この記事では薬剤師が公務員になった場合、どのような仕事をするのか、給与はどうなのか、また公務員試験対策についても解説していきますので、薬剤師の公務員として活躍したいと考えている人は参考にしてみてください。

薬剤師の公務員として活躍できる場所と仕事内容

国家公務員(薬系技術職員)

国家公務員の薬剤師は厚生労働省を始めとした中央省庁で総合職として働くことになります。
業務内容はとても幅が広く、医薬品・食料品の安全を守る部署、麻薬の取り締まりを行う部署、健康保険に関する部署、医薬品の開発に関する部署など様々な部署があります。
詳しくは厚生労働省の資料を参考にしてください。
(参考:http://www.mhlw.go.jp/general/saiyo/kokka1/kokka1-yakugaku/05.pdf
http://www.mhlw.go.jp/general/saiyo/kokka1/kokka1-yakugaku/06.pdf

どの部署でも基本的に企画立案や監査などの事務仕事を行うことになります。
調剤業務など実際に薬を触る仕事はないため、薬剤師らしい仕事とは程遠いかもしれません。現場での仕事より、大きな仕事をしたい方に向いているといえるでしょう。

薬の知識だけでなく、法律や化学の知識などかなり幅広い知識が求められるため、常日頃の勉強は欠かせません。
国全体に影響力のある責任重大な仕事なので、やりがいは大きいでしょう。

ちなみに異動は全国各地になります。
厚生労働省だけでなく、他の省庁の機関へ出向となることもあり、出向先によっては海外赴任となる場合もあるようですので転勤が苦とならない方やアグレッシブに仕事をしたい方には向いているかと思います。

地方公務員

都道府県や市区町村といった地方公務員の職員になった場合、配属される可能性の高いのが衛生部局(保健所など)か環境部局(環境関係の部署)です。

ただし、自治体によっては採用枠や配属先の種類が異なるため、ここに挙げているものが必ずしもすべての自治体に該当するとは限りません。また、仕事の内容も多少異なることもありますので自分の志望する自治体のホームページなどで薬剤師としてどのような職場に配属されどのような仕事を行うのかを確認することをおすすめします。

また、特定の部署に希望して受験するのではなく、いずれも都道府県や市区町村に採用されたあと、異動先としてこれらの職場に配属されることになります。そのため、どこに配属されどのような仕事を任されるかは採用されるまではわからないということに注意しましょう。

以下では地方公務員として採用された際、配属される可能性のある部署での仕事について説明していきます。

保健所

保健所で行う薬剤師の業務は大きく分けて3つあります。

1、薬事衛生に関する業務
薬局に対しての立ち入り検査、薬局立ち上げの認可などを行います。
また、麻薬取締りも担当し、薬物乱用防止の啓発活動、指導などを行っています。

2、食品衛生に関する業務
飲食店の立ち入り調査、新店舗の認可や、管理栄養士などに対して食中毒予防に関する指導などを行います。

3.環境衛生に関する業務
多くの人が利用する施設(美容院、公衆浴場、プール、旅館)などの監査・認可を行います。
その他、動物や水からの伝染病を防ぐための衛生管理、廃棄物処理に関する指導・監視なども行っています。

調剤などの薬剤師らしい業務はなく、許可・監視などの行政仕事がメインとなります。
お店などに指導する立場になるため、嫌われ役となりがちですが、地域の安全を守る大事な仕事です。

環境関連部署

大気汚染対策や騒音対策、土壌汚染など環境対策に関する仕事を行います。

大気汚染対策や騒音対策については住民から問い合わせや苦情が来た際に測定を行うなどし対応を行います。
また、クリーニング店や美容室、公衆浴場といった特定の施設や工場を建築する場合は事前に自治体に申請を行う必要があるため、職員は振動や騒音、大気や土壌に問題がないかを確認し認可します。

これらの仕事は事務職の職員が行うこともあるため、実際に採用された自治体によって異なる可能性があることを知っておきましょう。

衛生研究所

食品を製造しているメーカーなどの商品を検査し、それが安全なものかどうかを確認します。
また、水、医薬品、食品などについても検査を行い、細菌やウイルスを調べ、住民がそれらのものを安心に摂取できることを目標とします。

こうした調査から感染症の拡大防止や健康被害を防止のための対策を立てていくことになります。

市立・県立病院

市町村や都道府県が病院を経営している場合に配属される可能性があります。
民間病院や調剤薬局と業務的に大きな違いはなく、薬の調剤や服薬指導などを行います。

公立の病院は地方の中核病院となっていることが多く、近隣の医療機関よりもより新しい医薬品に触れやすいというメリットがあります。

公務員薬剤師の仕事まとめ

ここまで読んでいただいたら分かる通り、公務員薬剤師は公立病院での勤務以外ではほとんど民間とは異なった仕事をすることになります。

調剤や薬の研究はほとんどなく、監視や許可、調査といった事務仕事が多いです。
これらの仕事では色んな職種の人と関わる機会が多くなるため、薬剤師としてというより、人間としての見識が広くなるかと思います。

しかし、国家資格である薬剤師の知識を使う機会は配属先によってはほとんどないこともあります。
あくまで住民にとって安心で健康的に暮らしてもらうことを目的とするため、せっかく取得した資格があまり活かせず不満を感じる方も少なからずいますので、こうした仕事が自分にとって合っているのかよく考えてみてください。

公務員薬剤師の給与

公務員は基本給の他、地域手当、住居手当などの各種手当が支給され、全て合わせたものが給与となります。
大卒直後の初任給で言えばおよそ20万前後となるでしょう。これは薬剤師であっても事務職であってもあまり変わりません(院卒の場合や前職がある場合は新卒で採用された場合に比べると少し高くなります)。

公務員の基本給は「棒給表」というものに基づいて決まりますが、民間企業の給与との較差がないよう毎年見直しが行われます。
薬剤師は国家公務員棒給表のうち、医療職棒給表(二)(参考:http://kyuuryou.com/w495.html)というものを基準として基本給が決定されます。

国家公務員の場合はこの表がそのまま適用され、地方公務員の場合はこの表を参考にした、自治体の規定によって基本給が決定します(給与の考え方は複雑であるため詳しく知りたい方は公務員の給料や年収について知っておきたい基礎知識まとめを参考にしてください)。

民間の薬剤師では初任給から30万を越える場合もあり、そうしたところと比べると低めの水準と言えるかもしれません。実際に民間から転職した薬剤師は給料が下がったという話をよく聞きます。

しかし、公務員の場合は上昇幅は少ないですが昇給が毎年ありボーナスも出るため、長く勤めていれば民間の平均以上の給与をもらうことができます。

短期的に転職を繰り返す場合に公務員はあまりおすすめできませんが、公務員の薬剤師として腰を落ち着かせようと考えているならば、給料に関しては良いのではないかと思います。

薬剤師の公務員試験対策

公務員になるためには何と言っても公務員試験に合格しなければならず、薬剤師の国家試験とは違った難しさがあります。

薬剤師として公務員になる場合、受験する自治体などによって募集している職種が異なります。
薬剤師を募集している職種として、「化学」「薬剤師」「衛生監視」というように複数の職種で募集しているところもあれば、「薬剤師」として募集しているところもありますので、職種によって試験科目が異なる可能性もありますので受験要項で必ず確認するようにしましょう。

いずれの職種で受験するにせよ薬剤師も公務員になるためには、公務員試験を受けなければなりません。
「難しい薬剤師試験をパスしたのだから公務員試験など楽勝!」と思う方も多いかもしれませんが、薬剤師の試験とは異なる内容が出題されるため、改めて勉強する受験生が多いのが現状です。

国家公務員試験

薬剤師として国家公務員になる場合、国家総合職の試験を受験する必要があり非常に難関です。
筆記試験で国家公務員総合職試験に合格し、人事院面接、官庁訪問を経た上で採用が決定されます。

厚生労働省の採用ページによれば平成20~27年まで毎年5~7人程度しか採用されていません。
薬剤師免許を持つ人以外でも受験できるため、かなりハイレベルな競争を勝ち抜かなけれ合格は難しいといえるでしょう。

行われる試験は以下の通りです。

・1次試験
教養試験(選択式)
専門試験(選択式、化学・生物・薬学分野)

・2次試験
専門試験(記述式、化学・生物・薬学分野)
政策論文試験(政策について自分の意見を述べる試験)
人物試験(面接)

意外と苦戦するのが、1次の教養試験ではないでしょうか?
薬剤師と全く関係のない分野からも幅広く出題されるため、理系知識だけでは解けない問題も多いです。
政策論文試験もまた、薬剤師とは直接関係のない試験となります。
普段から政治に興味を持ち、それぞれの政策がどういう役割を持つのかを自分の中で理解できていることが重要となります。

また、国家総合職試験では27年度から外部英語試験の活用が導入され、各種英語試験(TOEFL、TOEIC、IELTS、英検)を所持している場合、点数に応じて上記試験に15点~25点のプラス加算が行われるようになりました。
合格を目指す人にとって上記の試験を受験し高得点を取っておけば有利になるでしょう。

繰り返しますが国家総合職試験は非常に難関試験であるため、公務員試験対策の専門学校に通うことも視野に入れておいた方がいいかもしれません。

地方公務員試験

先述のとおり、国家総合職試験は非常に難関試験になるため薬剤師として公務員になる場合、ほとんどが地方公務員かと思われます。

地方公務員は都道府県および市区町村によって実施要綱が異なるため自治体によってかなり試験内容に違いがありますが、一般的に実施される試験内容としては、教養試験(選択式)、専門試験(選択式または記述式)、論文試験、面接試験、適性試験などがありますが、教養試験と専門試験、面接試験についてが大半の試験で課せられることになるためこれらについて詳細に説明していきます。

教養試験

教養試験は必ずどこの自治体でも実施されるため、公務員になりたいと考えているのであれば対策は必須です。

教養試験は、以下の内容の科目が課せられます。

【一般知能分野】
・文章理解(現代文・古文・英文)
・判断推理
・数的推理
・資料解釈

【一般知識分野】
・社会科学
政治、経済、社会、法律
・人文科学
日本史、世界史、地理、思想、文学・芸術
・自然科学
数学、物理、化学、生物、地学

一般知能分野は文章理解は現代文・古文・英文などの長文読解が課せられ、判断推理と数的推理は算数やパズル的な要素がある問題であり、資料解釈は表やグラフを読み取る問題となっています。これらの科目について文章理解以外は公務員試験で初めて学習する人も多く、苦手としている人が多い科目でもあります。
しかし、どの試験でも回答必須としており出題数も多いので早めの対策が必要となります。

また、一般知識分野は社会化学、人文科学、自然科学とあり、これらは高校のときに学習する内容となります。大学受験のときにどれくらい勉強したかが出来不出来に大きく差となって現れてくるでしょう。

受験する自治体により出題科目や出題数が異なってきます。そのため、これら全てを学習する必要はなく、なるべく出題数の多いものや自分が得点しやすい科目を選択しましょう。

ただし、試験によっては与えられた問題は全問必須の場合もありますので、併願する試験とのバランスを見て選択することも重要になります。

専門試験

専門試験は物理・化学・生物、衛生、薬理、薬剤、病態・薬物治療、法規・制度など薬剤師の国家資格で出題される内容について問われることが多いです。

形式については択一式または論述式で出題されますが、自治体によって異なるためどちらの形式で出題されるかについては必ず確認するようにしましょう。

択一式の場合は、薬剤師の国家資格の勉強をしていればそれほど問題ないかと思います。
すでに資格を持っている方は受験する自治体のHPから過去の出題を見てみて、どの程度解けるか確認してみましょう。知識があり7〜8割ぐらい解けるのであれば教養試験の勉強を中心に進めていったほうが良いでしょう。

もし、薬剤師の資格を取得してから時間が経っている場合は内容について結構忘れているかと思いますので、薬剤師の資格取得のときに使っていた参考書を読み直しておき、実際に保健師の国家試験の過去問を解くことが最も良い対策となります。

教養試験もそうですが、公務員試験含めどのような試験もやはり過去問をこなすことが最も効果的です。
薬剤師の資格を取得された方はわかるかと思いますが、同じような問題が形式を変えて他の年に出題されるということは公務員試験でもいくらでもあります。

そのため、ある程度過去問をこなすことでパターンを身につけ、知識の引き出しを多く持つことで対応することができます。ただし、漫然と過去問を解いてもわかったつもりになってしまい本試験で解けないというパターンに陥ってしまうので、必ず理解しながら解くようにしましょう(不安な方は公務員試験合格に必要な正しい過去問の解き方を参考にしてください)。

面接試験

試験が比較的簡単な自治体でも難関となるのは面接試験です。
その自治体を志望した動機や自己PRといった基本的なことに加え、なぜ公務員を目指すのか、薬剤師として自分は何ができるか、といった部分もしっかりと答えられるようにしなければなりません。

公務員試験は筆記試験対策が大変なので面接対策は軽視されがちですが、特に地方公務員は人物重視の傾向となっているため、いくら筆記試験の点数が良くても面接での印象が悪いと落とされてしまうことは当たり前のようにあります。

とは言っても民間企業の面接ほど倍率は高くありませんので、予備校などでしっかりと対策をすれば十分に合格することができます。

せっかく筆記試験に合格しても面接で落とされてしまっては元も子もありません。最後まで気を抜かないようにすることが大切です。

まとめ

薬剤師が公務員になることは、公立病院以外は一般的な薬剤師の仕事とは全く違った仕事に就くと考えた方が良いでしょう。
もし、調剤や患者さんと触れあう仕事が好きであるのであれば公務員の仕事はマッチしないかもしれませんが、住民が安心に暮らせるために働きたいと考えている人には公務員はおすすめできます。

まずは自分が何をしたいのかを明確にし、本当に公務員として働きたいと思うのであればまずは筆記試験に突破できるよう勉強を進めていってみてください。

保健師の公務員を目指す上で知っておきたい基本情報

保健師が働く職場としてまず最初に思いつくのが保健センターや保健所などの行政の仕事なのではないでしょうか。
実に保健師の約8割が行政関係の仕事に携わっていると言われています。

そんな保健師にとってメジャーな職場である行政の仕事ですが、その道は決して楽ではありません。
行政に携わるためには保健師の資格以外に公務員試験も合格しなくてはならないからです。
特に新卒から行政職になりたいと考えている場合は、保健師資格の勉強と並行して公務員試験の対策もしなければならないため相当ハードとなります。

ここでは公務員保健師志望の方のために、実際の行政で働く保健師の仕事内容、給与、公務員試験の対策などについて触れていきますので参考にしてみてください。

保健師が行政(地域)で働く職場と仕事内容

保健センター・市役所

各市町村の公務員試験に合格した場合に配属されるのが、保健センターや市役所です。
市役所の場合は配属される部署によって少し業務内容が異なりますので、それぞれの詳細を見ていきましょう。

保健センター、市役所の健康推進課・健康づくり課など

保健センターと役所内の健康推進課・健康づくり課などは、業務内容としては同じです。

これらの部署での役割を一言で言えば「市民の健康を守る」ことです。
具体的な仕事内容は、各種検診の実施、健康に関する教室の運営、市民の健康相談対応などとなります。

一口に「市民」と言っても、子ども、お年寄り、母親、病気の人、障害者など色んな人がいます。
こうした全ての市民を対象としているため、非常に幅広い知識が求められます。

そして当然、これだけの範囲を1人でカバーすることはできません。
病院・施設・他の相談機関など様々な関係機関と連携を取り、中心となって仕事を割り振るマネージャー的な能力が必要となります。

福祉課、障害福祉課など

障害者の相談対応や障害福祉サービス(障害者手帳・障害程度区分の判定など)の手続きを行います。
自治体によって障害者相談は、健康推進課・福祉課どちらがメインで担当するのかが違ったりします。

子育て支援課など

子育てや虐待に関する相談、虐待予防などの活動を行います。
児童相談所や学校との連携が重要となります。

人事課など

市役所内で働く職員の健康管理・病気予防の活動を行います。
職場内での検診、健康相談(メンタルヘルスなど)、啓蒙活動が主な仕事です。

保健所

都道府県の公務員試験に合格した場合、主な配属先となるのが保健所です。
保健所では保健センターや市町村よりも、より広域的・専門的な仕事を担当することになっています。
例えば、感染症対策、難病対策、医療機関の監査、地域の福祉関連の研修会を開くなどは保健所が行う特別な仕事と言えるでしょう。

その他、未熟児、発達障害者、HIVなどの難病などの専門的・困難分野に関しては保健所が担当することになっています。

精神保健福祉の分野は少し線引きが難しく、保健所が主担当で保健センター・市役所が主に動く、という形に原則なっているようですが、それまで関わりのあるケースなどは保健所の保健師が積極的に動いたりすることもあり、臨機応変な部分もあります。

また、夜間の電話番のため、当直のある保健所もあるため想像しているような9時5時で帰れるというイメージで公務員になると後悔することにもなります。

都道府県職員のその他の配属先

都道府県庁

主に健康推進のための計画策定や市町村へのアドバイスなどに携わることになります。
規模としては広い範囲の業務に携わることができますが、保健所や市役所のように住民を相手とするというよりも、事務仕事が中心となるため、どちらが良いかはその人次第でしょう。

その他の専門機関

児童相談所・地域包括支援センター・精神保健福祉センター・発達障害者支援センターなど専門分野に特化した機関に配属される可能性もあります。
これらの機関では主に市町村に助言支援を行ったり、困難事例を受け持つなどバックアップがメインとなります。

上記のように様々な職場で活躍することができる保健師ですが、異動については市町村の保健師はほとんど異動がありません。あっても部署間の異動がほとんどです。

一方、都道府県の保健師は3~6年程度で大きな異動があります。
保健所や各種センターは都道府県内全域に出先機関があるため、どこに飛ばされるか分かりません。
ある程度の希望は聞いてくれるようですが、数年で県内のいずれかの場所に異動になる可能性があるということは覚悟しておいた方が良さそうです。

保健師の給与について

公務員の給与は棒給表という表に基づいて支給され、保健師においては国家公務員棒給表(三)(参考:http://kyuuryou.com/w496.html)に準じて定められた、これをベースに自治体の棒給表に則って支払われます(公務員の給与についての詳細は公務員の給料や年収について知っておきたい基礎知識まとめを参考にしてください)。平均年収は大体400~500万前後となっているようです。

保健師でも民間に勤める産業保健師は場所によって年収に差があるものの、平均すると年収500~600万と言われているため、行政保健師の給与は若干安いと言えるでしょう。

保健師の公務員試験対策

公務員試験は多くの方が受験する行政職(事務職)の場合、一次試験として筆記試験(教養試験・専門試験)が課され、二次試験として面接試験や論文試験などが課せられることが多いです。

ただし、行政職だけでなく保健師の公務員試験についても受験する自治体による違いがかなりあります。

例えば山口県職員の27年度の試験の場合、一次試験で教養試験、専門試験(看護・保健分野)の試験が課され、2次試験では論文問題と面接試験が実施されており、一般的な公務員試験といえる内容となっており多くの自治体がこの形式を取っているかと思われます。
(参考:http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/c/c/2/cc2792cc0d771fc70939a6b362abb3ce.pdf

一方、福島県職員の場合、27年度試験案内では教養試験、適正試験、面接試験のみとなっております。
適正試験は特に対策が必要ないため、上記の山口県に比べれば楽な印象を受けるかもしれませんが、筆記試験が少ない分面接試験の配点が大きくなっており、人物重視の試験となっていることがわかります。
(参考:
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/118457.pdf

このように自治体によって試験の形式が異なるため、まずは受験先の自治体のHPに行き、どのような試験が課されるのかをしっかり把握することが重要だということを知っておく必要があります。

筆記試験について

公務員試験の関門といえばやはり膨大な出題科目を学習し突破することです。特に保健師のような専門職の場合、多くの方は国家試験の勉強で専門知識はあるため専門試験よりも教養試験の出来が合否を左右すると言っても過言ではありません。

教養試験

教養試験は必ずどこの自治体でも実施されるため、公務員になりたいと考えているのであれば対策は必須です。

教養試験とは、以下の内容の科目が課せられます。

【一般知能分野】
・文章理解(現代文・古文・英文)
・判断推理
・数的推理
・資料解釈
【一般知識分野】
・社会科学
政治、経済、社会、法律
・人文科学
日本史、世界史、地理、思想、文学・芸術
・自然科学
数学、物理、化学、生物、地学

一般知能分野は文章理解は現代文・古文・英文などの長文読解が課せられ、判断推理と数的推理は算数やパズル的な要素がある問題であり、資料解釈は表やグラフを読み取る問題となっています。これらの科目について文章理解以外は公務員試験で初めて学習する人も多く、苦手としている人が多い科目でもあります。
しかし、どの試験でも回答必須としており出題数も多いので早めの対策が必要となります。

また、一般知識分野は社会化学、人文科学、自然科学とあり、これらは高校のときに学習する内容となります。大学受験のときにどれくらい勉強したかが出来不出来に大きく差となって現れてくるでしょう。

受験する自治体により出題科目や出題数が異なってきます。そのため、これら全てを学習する必要はなく、なるべく出題数の多いものや自分が得点しやすい科目を選択しましょう。

ただし、試験によっては与えられた問題は全問必須の場合もありますので、併願する試験とのバランスを見て選択することも重要になります。

専門試験

専門試験は公衆衛生看護学、疫学、保健統計学、保健医療福祉行政論など保健師の国家資格で出題される内容について問われることが多いようです。

形式については択一式または論述式で出題されますが、自治体によって異なるためどちらの形式で出題されるかについては必ず確認するようにしましょう。

択一式の場合は、保健師の国家資格の勉強をしていればそれほど問題ないかと思います。
すでに資格を持っている方は受験する自治体のHPから過去の出題を見てみて、どの程度解けるか確認してみましょう。

もし、保健師を取得してから時間が経っている場合は内容について結構忘れているかと思いますので、保健師の資格取得のときに使っていた参考書を読み直しておき、実際に保健師の国家試験の過去問を解くことが最も良い対策となります。

教養試験もそうですが、公務員試験含めどのような試験もやはり過去問をこなすことが最も効果的です。
保健師の資格を取得された方はわかるかと思いますが、同じような問題が形式を変えて他の年に出題されるということは公務員試験でもいくらでもあります。

そのため、ある程度過去問をこなすことでパターンを身につけ、知識の引き出しを多く持つことで対応することができます。ただし、漫然と過去問を解いてもわかったつもりになってしまい本試験で解けないというパターンに陥ってしまうので、必ず理解しながら解くようにしましょう(不安な方は公務員試験合格に必要な正しい過去問の解き方を参考にしてください)。

論述式の場合は知識を問われる問題と、あなたの気構えや姿勢を問われる問題の2パターンがあります。
知識を問われる問題の場合、それほど難しい問題が出題されることはないので、択一式の場合と同じように教科書や参考書を読みなおしておけば問題ないでしょう。

面接試験

試験が比較的簡単な自治体でも難関となるのは、やはり面接試験です。
その自治体を志望した動機や自己PRといった基本的なことに加え、なぜ公務員を目指すのか、保健師として自分は何ができるか、といった部分もしっかりと答えられるようにしなければなりません。

公務員試験は筆記試験対策が大変なので面接対策は軽視されがちですが、特に地方公務員は人物重視の傾向となっているため、いくら筆記試験の点数が良くても面接での印象が悪いと落とされてしまうことは当たり前のようにあります。

とは言っても民間企業の面接ほど倍率は高くありませんので、予備校などでしっかりと対策をすれば十分に合格することができます。

せっかく筆記試験に合格しても面接で落とされてしまっては元も子もありません。最後まで気を抜かないようにすることが大切です。

まとめ

公務員というと楽なイメージがあるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。特に保健師は住民の健康に関する仕事であるため行政職よりも責任が重く大変な場合が多いです。
その分やりがいも大きいのも特徴といえるでしょう。

まずは自分が「なぜ公務員になりたいか?」をよく考え、合格するためにしっかりと計画的に公務員試験の学習を始めるようにしてください。