公務員の仕事

公務員の昇任のしくみについて(1)国家公務員編

公務員試験の勉強に取り組まれている皆さんも、公務員情報を知りたいと思っていらっしゃる皆さんも、公務員の昇任のしくみは、どのようになっているか気になりませんか?
公務員になるための試験対策や試験情報は多くありますが、公務員になってからのキャリア形成や昇任制度の状況については、あまり情報を得られる機会がないという方が多いのではないでしょうか。
ここでは、公務員として長年勤務し昇任を経験してきた筆者が、皆さんに役立つ情報をお届けします。

1.公務員の昇任のさまざまなしくみ

公務員の昇任と一口で言っても、そのしくみは、まず国家公務員と地方公務員で異なっています。
また地方公務員の場合は、都道府県庁、市役所など各自治体によって、様々なしくみがあります。
さらに職種によっても、昇任試験などの状況に違いがあります。

今回は、この(1)国家公務員編と(2)地方公務員編の二つに分けて、公務員のキャリアや昇任についての情報をお届けしたいと思います。

この記事では、(1)国家公務員編として、国家公務員の昇任のしくみについて、お知らせします。
主に一般行政職を想定し、記載しています。

2.国家公務員の職位は、どのようなものがあるのでしょうか?

国家公務員の職位としては、各省庁や機関ごとにさまざまな役職が置かれていますが、
次の表〔標準的な官職と職名〕の左列に掲げたように、標準的な官職があります。

これは、職制上の段階と職務の種類に応じて、定められています。

〔標準的な官職と職名〕
             一般行政の職務の種類、本省内部部局等の例

標準的な官職 本省内部部局などでの職名
事務次官 事務次官、○(省名)審議官
局長 局長、政策統括官、官房長
部長 部長、審議官、次長
課長 課長、参事官、管理官
室長 室長、企画官、調査官
課長補佐 課長補佐、専門官、上席○○官、室長補佐
係長 係長、専門職、○○官、主査
係員 係員

            ※標準的な官職を定める政令(概要)より抜粋

上記は主な官職名であり、部署の職務内容に応じて、担当する業務などを表す職名が付けられています。

3.各階層の役割と得られる能力・経験

国家公務員は、上記2に挙げた官職などの階層に応じて、それぞれの仕事に適した資質や能力が求められるものですが、一方で、職員は実務の経験を積みながら、能力に磨きをかけ成長していくものでもあります。

ここでは、経済産業省を例に、各階層の役割と得られる能力・経験を挙げていきます。

各階層の役割と得られる能力・経験

引用)経済産業省ホームページより
資料 「ともに成長するために」2024年6月

ここでの「管理職」は、職制上の段階が「室長級」又は「課長級」の官職を指しています。

国家公務員として採用されると、通常はまず係員として、どこかの職場に配置されることとなります。

そして、OJT※1 やOff-JT※2 といった研修・訓練も活用しながら、仕事に必要な知識を学び、実務の経験を経て成長し、キャリアアップしていくものです。

※1 OJTとは  …On the Job Trainingの略。職場内研修。
職場での業務を通じて知識や能力を身につける育成方法。
※2 Off-JTとは…Off the Job Trainingの略。職場外研修。
職場を離れて行う集合研修などの教育方法。

4.国家公務員の昇任と人事評価

国家公務員制度の中で、重要なものとして「人事評価」というしくみがあります。

「人事評価」は、職員の能力や実績などを的確に把握するものであり、この結果は、適材適所となるような人事配置をめざし、人事異動などに活用されます。
人事評価は、昇任、昇格の判断材料となり、給料やボーナス(期末手当+勤勉手当 のうち、勤勉手当)の額にも、影響してくるものです。

また、実績などに応じて給与にメリハリをつけ、職員の意欲増進にもつなげていくこととされています。
さらに、職員の能力開発など人材育成を進め、パフォーマンスの向上をめざしていくものでもあります。

人事評価の目的
〇能力・実績を正確に把握し、人事管理の基礎とする
〇人材育成・パフォーマンスの向上につなげる

※人事院ホームページより

職位に応じた職務を、
高い水準で遂行できるレベルの行動を取っていたか(能力評価)
求められた役割を果たし
(重要または困難な)課題に成果が見られたか、
周囲への支援や創意工夫、効率化に取り組んだか(業績評価)
などの点から、人事評価が行われます。

こうした評価を行う際には、「標準職務遂行能力」に照らして、主に能力評価されることとなっています。

この「標準職務遂行能力」とは、国家公務員がそれぞれの階層に応じて、発揮することが求められる能力のことで、内閣総理大臣が定めることとされています。

標準職務遂行能力
⇒標準的な官職の職務を遂行する上で発揮することが求められる能力

5.国家公務員の採用区分によって、昇任の仕方は変わるのでしょうか?

国家公務員は、採用区分によって昇任スピードが変わってくる、というのは良く言われていることです。

実際には、どうなのでしょうか?

管理職に登用された職員の採用区分について、見ていきましょう。

管理職への任用に関する状況(令和5年10月1日時点)

管理職員数及び割合

資料)内閣官房 内閣人事局ホームページ
管理職への任用状況等について

上の表では、室長級と課長級を合わせて4,837名のうち、Ⅰ種試験等で採用された職員が3,520名と7割以上を占めⅡ種試験等で採用された職員は578名、Ⅲ種試験で採用された職員は495名と、それぞれ1割を上回る11.9%、10.2%だったことが分かります。

なお、Ⅰ種試験は、現在の国家公務員採用総合職試験、Ⅱ種試験は現在の国家公務員採用一般職試験に相当するものとして、現在は名称などが変わっています。

6.国家公務員の昇任と昇格って、どう違うのですか?

「昇任」「昇格」。一見、似た言葉に見えますが、意味は異なっており、
さらに「昇給」もありますが、それぞれの意味は下記のようになっています。

昇任 … 現在の官職より上位の官職への任用
昇格 … 俸給表のより上位の職務の級への変更
昇給 … 俸給表の同じ級の中での上位の号俸への変更

国家公務員の給料月額は、俸給表に級と号俸によって金額が定められています。

「昇任」は、「係員」から「係長」へ、「係長」から「課長補佐」へと、階層が上がることを言いますが、
「昇格」は、給料が定められている俸給表の「1級」から「2級」へ、「2級」から「3級」へと上がることを言います。
それぞれの級の中で、「2号俸」から「3号俸」へ、などと号俸が上がることを「昇給」と言います。
●昇任・昇格・昇給とは

資料)人事院ホームページより

7.まとめ

この記事では、国家公務員の昇任のしくみや昇格、昇給について、取り上げました。
数ある官職の階層や求められる役割と能力など、何となくイメージがわいてきたでしょうか。

ただし、昇任をあまり意識することで、本当に必要な仕事に身が入らなくなっては本末転倒となってしまいます。
国を動かす制度や政策に携わることのできる国家公務員として、どのようなしくみが国民のために良いのか、といったしくみづくりや、暮らしやすい制度につながる、やりがいのある国家公務員の仕事にチャレンジしてはいかがでしょうか?

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レアな公務員試験種紹介②~衆議院事務局職員~

1.はじめに

公務員試験は、民間企業と同じ筆記試験を課すことも増えてきました。しかし、この試験方法による選抜は、倍率が高めですから、やはり公務員試験用の筆記試験を勉強しなくてはと考えている人も多い事でしょう(詳しくは、下記の記事です)。

「民間筆記試験型公務員試験」受験、3つの留意事項!

そのとき、たくさんの時間を公務員試験に割いたのであれば、多くの試験種を併願しようかなと思われる人も多いのではないでしょうか。

本シリーズでは、そのような方に向けてあまり知られていない公務員試験職種をいろいろ紹介していこうと思います。第二弾は、衆議院事務局職員です。

衆議院事務局職員は、国会の立法活動を補佐し、衆議院及び衆議院議員の活動を支える特別職の国家公務員です。総合職・一般職・衛視・技術系といった各種採用試験を独自に実施しています。以下の記事では、一般的な行政職の専門科目で対応可能な総合職と一般職(大卒)を対象とし、さらに、仕事内容と試験内容をお伝えしていきます。

2.仕事内容

衆議院事務局職員の具体的な業務は、次の3部門があります。

(1)会議運営部門

議長や委員長を政治的に中立な立場から補佐し、会議が公正・円滑に実施されるようサポートしていく仕事です。よく国会の本会議で、衆議院議長の傍、大臣席の後ろに控えている方々がいますが、あそこにいるのが、会議運営部門の衆議院事務局職員です。

また、衆議院には、国会法で定められた常設機関である17の常任委員会のほか、各議院において必要とされたときに設置される特別委員会があります。ここでの委員長を補佐し、法規・先例に基づく委員会の運営を支えている委員部で働く職員も、会議運営部門の衆議院事務局職員です。

(2)調査部門

専門的調査機能を発揮し、内容面から委員会活動及び議員活動を補佐します。具体的には、①委員会関係事務、②議員からの個別的な調査依頼への対応、③情報発信をしています。

①は、「法律案、条約、予算、決算等の審査のため、法律案等の要旨、提出に至った経緯、論点、参考となる資料をまとめた法律案等参考資料」や、「当該法律等の施行に当たって政府が留意すべき事項について、委員会としての意思を明らかにするための附帯決議の原案」などを作成します。他にも、国政調査や請願審査に関連した資料作成にも携わります。

②は、議員立法に関する、依頼に応じて、法律案提出に向けた現状の把握や背景についての調査を進め、各種資料の取りまとめを行ったり、議員が本会議や委員会で質疑・討論を行う場合は、最新情報の提供や論点となる項目の説明といった調査依頼に対応したりします。

③は、各委員会所管事項の動向、通過議案要旨集、研究論文誌「論究」、調査レポート、委員会ニュースなどを担います。

(3)その他の議員(院)活動補佐部門

秘書課、庶務部、管理部、国際部、憲政記念館、記録部、警務部、憲法審査会事務局、情報監視審査会事務局などの部署を通じて、衆議院の対外活動や衆議院の組織運営を後方から強力に支援しています。以下のパンフレットPDFには、これらの部署で働く方の声が読めます。

令和6年度版 職員採用パンフレット

単に衆議院の議事進行が円滑に回るようにするだけでなく、政策内容面の支援や、議会の活動を発信するなどしていることも分かり、刺激的な職場のように感じますね

3.働き方・福利厚生など

身分は特別職の国家公務員ですが、一般職の国家公務員と待遇はほぼ同じです。つまり、衆議院事務局総合職であれば国家公務員総合職並みの、一般職であれば国家公務員一般職並みの待遇ということです。

勤務場所は、国会議事堂内及びその周辺(分館、第一議員会館、第二議員会館、第一別館、第二別館等)となります。もちろん出向や海外派遣などがあれば違いますが、基本的には、東京の霞が関から転勤はないといえるでしょう。

ちなみに、海外派遣先の実績は、エディンバラ大学大学院比較公共政策学修士課程(英国)、ユニバーシティカレッジロンドン大学院民主主義・比較政治学修士課程(英国)、クイーンメアリー・ロンドン大学大学院公共政策学修士課程(英国)、バース大学大学院国際関係学修士課程(英国)だそうですので、イギリス留学をする雰囲気があるようです。

また、衆議院独自の男女独身寮及び世帯寮があるほか、財務省の管理する合同宿舎(独身用・世帯用)などが都内及び近県にあるので、地方の方も、合格後はそれらを利用するなどして働くことができるようです。

1日7時間45分の勤務時間で、初年度から有給休暇が20日与えられ、特別休暇(結婚・保育・看護・忌引・夏季等)、介護休暇、育児休業が利用できるようです。令和6年度のパンフレットによると、育児休業の女性取得率が100%となっていました。男性も50%あります(厚生労働省が発表する3400余りの事業所回答が、女性84.1%、男性30.1%ですから、かなり高水準です)

4.試験内容

衆議院事務局職員は狭き門です。

まず、総合職は、令和3・4・5年と3年連続で最終合格人数が僅か2人です。対して、応募者は、毎年170人ほどですので、倍率は、約85倍です。

次に、一般職は、最終合格人数が12~14人です。3年平均の応募人数が536人ですから、40倍の倍率を超える感じとなっています。

したがって、目指すのであれば、しっかり準備をして臨まなければなりません。これを踏まえつつ、試験内容を確認していきましょう。なお、衆議院事務局の試験制度は令和7年度実施から変更がありますので、それを反映した状態となります

【第一次試験】

総合職・一般職ともに、1次試験が教養試験(多肢選択式120分)です。出題内訳も同じで、文章理解11題、数的処理16題、自然・人文・社会(時事含む)13題の計40題出題ですね。

総合職は3月3~4週目の土曜日に、一般職は5月3~4週目の土曜日にそれぞれあります。申込期限は、総合職が2月下~3月上旬、一般職が4月上旬です。

土曜日に試験というのが、併願し易さを上げることにはなるでしょう。また、令和7年度からは、関西での受験もできるようですので、西日本の方を中心に受験負担が減りますね

【第二次試験】

2次試験として、総合職・一般職ともに、学力をみられる試験として、記述試験が課されます。また、総合職の方は2次試験から個別面接があります

総合職は、憲法・行政法・民法・ミクロ経済学・マクロ経済学・政治学の6科目中から2科目を選択します。憲法は以前は必須でしたが、令和7年度から必須ではなくなります。また、以前は、経済学で1問だけでしたが、ミクロとマクロで分割してくれます。経済学だけを磨いて臨むことも可能となったわけですね。

一般職は、憲法・行政法・民法・経済学・政治学の5科目中から1科目選択です。令和6年度までは憲法必須で、もう1つを選択する2科目回答だったのですが、1科目でよくなりました。負担が減りましたね

【第三次試験】

総合職の方は口述試験が課されます一般職の方は、集団討論と個別面接です。一般職の方は、一次、二次より、三次の倍率が例年最も高いので最後まで気を抜けません。

5.おわりに~目指すなら~

衆議院事務局職員試験では、一次試験の教養試験は、他の公務員種と同様です。一次の通過は、例年の傾向をみると、総合職も一般職も受験者(応募者ではなく)の3分の1~4分の1に入れれば通過しています。

一方、総合職では二次試験での絞り込みが強まります。二次試験の内容は、記述式の専門試験と個別面接ですからしっかり準備が求められますね

一般職の方は、三次試験の絞り込みが最も強まりますので、二次の記述が通っても気を引き締めて、集団討論と個人面接の準備が大切です。

既に予備校などに通い、一次試験突破に向けた学習をしていると思いますが、早めに専門記述練習、面接練習をしていきましょう。

究進塾では、経済学、面接などの指導ができるスタッフがいますので、自身がアウトプットしたものがどう採点されるかを知り、上達する練習をしたい人は是非ご活用ください。

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本記事では、政策立案と議案成立の陰の立役者のような働きをし、安心待遇で働ける衆議院事務局職員について解説をしました。参考になれば幸いです。

公務員は出産と育児がしやすい、というのは本当?

公務員は出産と育児がしやすい、と耳にしますが実際のところどうなのでしょうか?
産休(産前・産後休暇)育休(育児休業)の他にも、制度は整ってきているようですが、実際に取得できるのか。また、育休から復帰した後に、公務員の仕事と育児の両立はできるのか。そんな疑問にお答えします!

1.はじめに

公務員は福利厚生や各種制度が充実しているという点が、人気の理由のひとつです。
一方で、中央省庁での仕事は残業が多いなどとメディアで目にすることがあると、公務員として働いていくことに不安を感じる方もいるでしょう。

ですが、国家公務員も地方公務員も多くの人は、子育てしながら仕事をしています。
この記事では、公務員の出産・育児にかかわる主な休暇・休業制度と、実際の取得状況など、有用な情報をお伝えしていきます!

2.公務員の妊娠から出産まで

まず妊娠が判明したら、と言う前に。
◇不妊治療をするための「出生サポート休暇」が、導入されています。
1年度につき5日以内、体外受精の通院では10日以内、通院にかかる分の休暇が認められるようになりました。
以前は、年休で対応していましたので、通院しやすくなっています。

◇妊娠が判明したら、
妊産婦の通院
通勤緩和措置…妊婦が交通機関の混雑時を避けて出勤できること
妊娠症状休暇
妊産婦の時間外勤務等の免除(制限)
といった、妊産婦の身体を保護する制度がありますので、必要に応じて利用することができます。

◇出産前後には、
産前・産後休暇
があり、産前8週間前から、産後8週間までが産休となります。

◆パパにも
出産補助休暇(配偶者出産休暇)
として、妻の出産に伴う入退院や出産時の付き添いなどで、有給の休暇があります。
子育て休暇
という、妻の出産予定日の8週間前から出産後1年の間に取れる休暇もあります。
※なお、休暇制度の名称等は各自治体により異なる場合があります。

3.育児休業の制度はあるけど、公務員の実態は?

では、育児休業について見ていきましょう。
育児休業
産後休暇に引き続き、最長で3歳の誕生日の前日まで育児休業を取ることができます。

国家公務員が、実際にどれだけ育児休業を取得しているのか
その状況については、次の通りです。

○令和4年度において新たに育児休業を取得した男性職員は5,030人で、取得率43.9%女性職員は2,836人取得率102.2%
男性職員の育児休業の取得率は、昨年度から上昇し、調査開始以降(注1)、最高数値
注1 育児休業の取得状況については平成16年度から、「男の産休」の使用状況については平成26年度から調査を開始している。
「男の産休」の5日以上使用率(配偶者出産休暇(2日)又は育児参加のための休暇(5日)を5日以上使用した割合)も、86.6%となり、調査開始以降、最高数値

さらに、生まれて1年以内に育休を取れた割合についてもデータがあります。
令和3年度に子供が生まれた男性職員の85.0%が、子の出生後1年以内に育児に伴う休暇・休業を 1ヵ月以上取得。また、1ヵ月未満の場合も含めれば、令和3年度に子供が生まれた男性職員の97.5%が取得し、その平均取得日数は、目途とする1ヵ月を大きく上回る53日となった。

※〔令和6年1月19日、内閣官房内閣人事局の報道資料〕から抜粋
内閣官房ホームページ

地方公務員の育児休業取得状況については、次の通りです。

○令和4年度に新たに育児休業を取得した男性職員は、20,057人で、取得率は31.8%と、過去最高
一般行政部門では、49.9%。
【内訳:都道府県56.2%、政令指定都市65.3%、市区町村44.1%】
女性職員は47,760人で、取得率100.3%

○育児休業期間で見ると、男性は2週間以上1ヵ月以下が36.2%と最も多く、次いで1ヵ月超3ヵ月以下が23%と、2番目に多い。

※〔令和4年度地方公共団体等の勤務条件調査結果〕から抜粋
総務省ホームページ

国家公務員の方が、地方公務員よりも男性の育児休業取得率がやや高くなっています。
ただ、いずれの調査においても、男性の育休取得率が過去最高となるなど、男性職員も育児を多く担う割合が着実に増えていることが分かります。

4.復帰してからの公務員の仕事と育児の両立

育児休業から復帰してからの仕事との両立については、どうなのでしょうか?
実際のところ部局によって繁忙の差があったり、仕事によって、繁閑の違いはあるものです。

ただどんなに忙しい部局であっても、必ず仕事の波はありますし、出産できる適齢期は思うよりも短いものですので、ヒマになったら出産…と先延ばししていたら、いざ子どもが欲しいと思っても不妊になって苦労することにもなりかねません。
生まれたら何とかなる!とほとんどの人は、仕事と育児を乗り切っています。

部分休業で仕事を早く上がって保育園に迎えに行くことや、
子どもが熱を出したり病気のときには、看護休暇を使うこともできます。

仕事をしながらの育児というのは、キツい、ツラいという印象を持たれる方も多いかと思います。
さまざまなメディアで、そういうネガティブな情報を目にすると、自分の楽しみを我慢しないとならないのかな?とか、経済的側面や労力的な面で、子どもを持つことに不安な気持ちが大きくなる方もいるかもしれません。

ですが、筆者がフルタイムのワーママ職員として子育てした平成の前半頃は、公務員でも育児休業は1歳の誕生日の前日まで。
つまり、0歳の間のみでした。
もっと上の世代になると、産後休暇(生後8週間、つまり2ヵ月)しかありませんでした。

それに、子どもの母親が育休を取っている間は、父親は取れませんでした。

今は、母親と父親が1人の子どもを育てるために、同時に育休を取れる時代になりました。

制度は、進化しつづけており、子どもを育てやすい環境になってきています。
子どもを生んで育ててみれば、かけがえのない存在を生んで良かったと、心から思えることでしょう。

5.まとめ

公務員として、育児と仕事は両立することができます。
大変な時期があったとしても、ほんの一時期の間です。

家でずっと子どもとだけ相対しているのも、またそれはそれでストレスになるということもよく言われることです。
日中は仕事をして、夕方保育園へ迎えに行って、子どもとの時間を濃密にする、と切り替えをしながら両立していれば、あっという間に子どもは育ってしまいます。

また子育て中は、いろんな人に手助けをしてもらうことが多くなります。

そして、困ったときには手助けをお願いしていいのです。

ただ、感謝の気持ちは絶対に伝えましょう!
子育てで仕事を休んだり、育休で離れている間は、まわりの人たちが仕事をカバーしてくれています。
感謝を伝えるのと伝えないのとでは、職場で円滑に行くかどうかも大きく変わってきます。
カバーしてくれるのを当たり前と思うのではなく、感謝を「ありがとうございます」の言葉にして伝えていくことが、仕事と育児の両立の大切な秘訣です。

『敬遠される地方税の徴収業務には、メリット盛りだくさん』

1.避けられがちな地方自治体の「税務職員」

地方自治体の職員にも3・4年間隔で異動がありますが、そんな中でもイメージから敬遠されがちなのが「税務職員」です。

税務職員といっても、その仕事内容は、
・課税
・徴税
の2つに大きく分けられます。

市町村では、課税と徴税をまとめて一つの部門で担当するところもあります。
この税務職員は、哀しいことに地域住民から疎まれることがあります。
さらに職員の異動先としても、敬遠されるケースがよく見られます。
中でも、滞納税をあの手この手で回収する徴税部門がより敬遠されています。

なぜならば、滞納者からの税金回収にはさまざまに大変なことがつきまとうからです。

しかし実際に徴収業務の最前線で働くと、その多くのメリットにも気づくことになります。
それらは、一般的な行政事務では習得できない役に立つ専門知識や、かなり貴重な経験と言っても過言ではありません。

2.税務署の国税専門官との違い

地方税における課税・徴収の原則は、国税で適用される法律や規則と同一です。
しかし、国税は所得税、地方税は自動車税や住民税などと、扱う税金が明確に分かれています。

そのため、国の税務署から地方自治体があれこれ指示を受けることはありません。
むしろ、滞納税回収や納税のための啓蒙活動などで協力をすることがあります。

では、地方自治体の税務職員と税務署の国税専門官との間には、どのような違いがあるのでしょうか。

2-1 国税専門官はスペシャリスト

地方自治体の職員は、3~4年で全く異なる分野に異動になります。

しかし、国税専門官は税務署間で異動になるも、税務業務から離れることはまずありません

そして国税庁は、研修機関として埼玉県和光市に「税務大学校」を構えています。そこで国税専門官は、数ヵ月単位のみっちりとした研修を受けることになります。

そのため自治体職員は、税務の知識面においてスペシャリストである国税専門官には遠く及ばないのです。

2-2 地方自治体の税務職員の利点

そんな国税専門官に対して、自治体の税務職員が勝るところもあります。
それは地元の情勢(地理、雇用環境、景況など)をよく把握し、滞納者に最適な回収方法が選択できることです。
地方自治体の税務職員は、地元の情報をいち早く収集し、迅速・柔軟に対応できることが多いです。

3.徴収業務のメリット

地方自治体でいざ徴税部門に配属されると、その職員には「徴税吏員(ちょうぜいりいん)」としての特有の権限が与えられます。

その際に発行される「徴税吏員証」を紛失すると、始末書を伴う大騒動となります。
徴税吏員というのは、それほどの権利と責任が伴う身分ということです。

その徴税吏員の具体的なメリットは、以下の点です。

3-1 税収入の仕組みがよく分かる

まずは、自治体の税収入の仕組みがよく分かるようになります。

住民からの現金納付に対応することで、自治体の財源かつ給与の源である税金のありがたさが、痛いほど実感できます
滞納者からの厳しい声が届くことも日常的で、場合によってはトラブルに発展することも事実、あります。
そんな厳しい条件下で回収を行なうので、自らだけでなく所属の滞納回収実績、自治体全体の税収入にまで敏感になります。

3-2 「差押」を体で知ることができる

「差押(さしおさえ)」という言葉は、ご存じでしょうか?

基本的には、債務者が裁判所に申し立てを行なうと、裁判所で審理されて認められるものです。この一連の作業には、かなりの時間と労力がかかります。

しかし、徴税吏員は国税徴収法の定めにより、税事務所長などの所属長名で差押の執行ができます。
具体的には、必要な決裁書類と公印を用いて、対象者の預金口座、所有不動産や自動車などを差押することになります。
その後、預金口座の現金はそのまま滞納税に充当します。
不動産や自動車の場合は、公売(競売)にかけ売却金額を滞納税分に充当することになります。

このように、徴税吏員や税務部署は、裁判所を経ずに「差押」という法的行為を行なうことができるのです。
ちなみに、県税事務所で最も時間と労力を割く仕事は、普通自動車税の滞納回収です。
一職員あたり年間で50~100件の差押を行なうなかで、さまざまな経験を積むことになります。

3-3 ケースワーカーとして実績が積める

地方自治体の徴税吏員になると、住民感覚で納税の大変さが実感できます。

特に新型コロナウイルス蔓延による不況下では、滞納相談が大幅に増加しました。
このような状況では、滞納者特有の事情を聴きとり、分割納付や納付の猶予など然るべき方法で対応することになります。
このような業務の中で、ケースワーカーとし住民の悩みに対応するためのスキルが高まります

3-4 時間的拘束が少ない

徴税職員になると、時間外勤務を意図的に避けるようになります。
それは「自らが徴収した税金を、時間外業務で消費するのはもったいない」とコスト意識を強く感じるようになるためです。

またケースワーク型の業務のため、業務量をコントロールしやすいことも一因です。
そして、都府県においても主要地域に税事務所があるので、通勤しやすいと言えるでしょう。
税事務所内においても、総務⇔課税⇔徴税という部門間異動も認められやすいようです。

3-5 外出の機会が多い

徴税吏員になると、銀行口座の差押、滞納関連の調査などで、外出の機会が圧倒的に多くなります。

事務所内での執務が多い公務員にとって、この外出で気分の切り替えが容易になります。

しかしながら、地方部では車での移動ができないと大変なことも多いです。近年の新卒の方は運転実績が少ない傾向があるので、この面で苦労するかもしれません。

3-6 各員の業務実績が比べやすい

徴税吏員の主な業務は滞納税の回収であり、「差押」行為はその一手法に過ぎません。

しかしこの差押の件数は、所属内で徴税吏員を評価する便利な指標となりえます。事務所内では各徴税吏員の差押件数を比べて、叱咤激励されるところもあります。
しかし年功序列が根強く残る自治体全体の人事評価においては、差押件数をどんなに上げても、若手が際立って評価されることはまれです。

4.徴収業務のデメリット

たくさん挙げた徴税吏員のメリットに比べ、デメリットは主に以下の二つです。

4-1 滞納者からの圧力

これはかなり強烈なもので、異動で敬遠される要因であることは間違いないでしょう。
具体的には差押時に納得できない滞納者が、電話で苦情を浴びせてきたり、事務所に陳情に来られたりすることもあります。

このような圧力に、1年目の職員が泣き出してしまうこともあります。

しかし、職員に危害が及ばぬよう、自治体でもさまざまな対策を講じています。

4-2 自治体の「支出面」に疎くなる

徴税吏員になると、当該自治体の「支出面」に疎くなりがちです。

正確には、自治体の収入のみに執着することになるので、自治体の支出にまで気が回らなくなることが多いです。これは、日常的な回収業務により、事業の予算などとは無関係の日々を過ごしているためです。

5.実はメリットの多い徴収業務

徴収業務のメリット・デメリットを述べてきましたが、結果的にメリットの方が多くなりました。

このようなメリットにより、実際に各自治体では、「税務職員のスペシャリストコース」として税務業務に数十年間従事する職員も存在します。

公務員が異動辞令を受ければ、それを拒むことはかなり困難でしょう。
徴税業務を敬遠する気持ちはよく分かりますが、あなたの性分にマッチする可能性もあります。
もしマッチしなくてもその数年で蓄積するスキルは、あなたの人生で貴重なものとなるでしょう。

公務員試験の勉強って、仕事で役に立つのでしょうか?

公務員試験に向けて、いま勉強をしている方、これから勉強をしようか迷っている方、
「せっかく勉強しても、実際の仕事で使うのかな?」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、実際に公務員として働いてみて、公務員試験の勉強が仕事に活きるのかどうか、筆者の経験からお伝えしていきます!

1.はじめに

国家公務員、地方公務員として仕事をするためには、公務員試験に合格しなければなりません。
受験する区分によって、試験科目が異なりますが、多くの試験区分において必要となる基本的な科目があります。

たとえば、

法律系科目
●憲法
●民法
●行政法

経済系科目
●経済原論 〈マクロ経済学、ミクロ経済学〉

政治・行政系科目
●政治学
●時事問題

基礎的科目
●数的処理
●判断推理

といった科目が挙げられます。

最近は、こうした科目を課さない試験区分も出てきていますが、多くの場合には、公務員試験に合格するため、これらの科目を勉強して知識を頭に入れておく必要があります

ですが、せっかく勉強した知識が、実際に公務員になってから全く使われないのならば、もったいないと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ここでは、実際の公務において、試験勉強の知識が役立つかどうか、お伝えしていきます。

2.行政法などの法律知識は、何かと役に立ちます

公務員試験の大きな要素を占めるのは、憲法、民法、行政法と、法律関係の知識を問う問題です。
なぜ、そうなっているかというと…。

国であれ、地方であれ、住民のくらしにはあまねく法律やさまざまな規則、ルールが定められており、皆さんの生活が成り立っています。

法律がさまざまな決まり事の礎となるものですが、法律を実際に運用していくためには、それぞれの施行令や施行規則などにおいて詳細が定められていますので、施行令や施行規則に記載されている内容も含めて把握する必要があります。

地方自治体では、法律のほか、各自治体毎に定められているさまざまな条例を基本に、その自治体におけるルールとして運用がなされます。

→法律や施行令、施行規則、広義では条例や条例施行規則
などをまとめて、「法令」と呼びます。
「法令に則って、仕事をする」などというふうに、表現されます。

さて、公務員試験の行政法は、実際に公務員になってから何かと必要になる知識です。

たとえば、国家賠償法第2条には
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる
という規定があります。

これは、具体的な例で言うと

公園の遊具で子どもが遊んでいて、ケガをした

というような場合に、公園の遊具〈公の営造物〉が、通常備えるべき安全性を備えていたか〈設置又は管理に瑕疵がなかったか〉どうか、ということが問題になってくるわけです。


もちろん、通常の利用方法でケガをしないように、設置されていなければいけないものですが、「瑕疵」といえるかどうかは、営造物の種別、地理的条件、構造、利用状況、気象条件、季節、時刻などの要素を総合的に考慮して、個別的・具体的に判断されるものです。

道路や河川、学校、公共施設などと、公の営造物はたくさんありますので、実際に公務員になってみると、
管理に瑕疵がなかったか
つまり、
通常備えるべき安全性を備えている必要がある
などと、気にかけることが出てきます。

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他にも憲法や民法など、公務員試験で勉強した法律知識は、必要になる場面が時折出てきますので、そういう時に「こういう場合には、確か民法に時効の規定があったな」などと記憶があれば、完全に覚えていなくても民法で時効を調べれば良いわけです。

また、地方公務員試験で出題される地方自治法は、地方公務員として勤務する上ではたびたび必要となる法律ですので、覚えておくと役に立ちます。

3.役所に入ってから勉強すること

公務員として役所に入庁すると、実際に配置された部局によって、必要な知識はさまざまであり、その都度勉強しなくてはなりません。

たとえば、児童手当の担当になれば、児童手当法がまず基本としてあります。
児童手当法に則って業務を行っていくわけですが、法律に記載されていない詳細なことについては、法令通達集や運用事例集というようなものに照らして、申請受付や審査、支給決定といった具体的な仕事を行っていきます。

税務関係であれば、国税通則法、国税徴収法、所得税法、法人税法など多種多様な法律がありますし、生活保護関係であれば、生活保護法が基本というふうに、各業務においては個別法に自ずと詳しくなっていく必要があるでしょう。

選挙権や被選挙権なども、公務員試験で勉強する事柄ですが、市役所や都道府県の選挙管理委員会に配属となれば、もっと詳しい知識が必要となります。
選挙管理委員会に配属されなくても、市職員は選挙時には選挙業務に従事することが多くありますので、基本的な知識は持ち合わせていることが求められます。

4.まとめ

公務員として採用され、役所に入庁すると、個別の業務に応じて詳しい知識が必要となりますので、多くのことは採用後に実地に学んでいくこととなるでしょう。

けれども、行政法や選挙に関する知識など公務員試験で勉強したことというのは、決してムダになるものではありません。
ふとした時に役に立つものですので、しっかりと学んでおきたいですね!

公務員を体験して分かったこと

公務員になりたいと思っている方も、なりたい職業が分からなくて調べている方も、公務員として実際に働く生活は、どんな感じなのかな? と興味をお持ちではありませんか?

筆者は、大都市である政令指定都市に大卒区分(地方上級公務員)で入庁し、22歳から38年間、今年の春に部長として退職するまで、長年にわたり勤務してきました。

ここでは、大都市の市役所で実際にどんな仕事をしてきたのか、公務員の生活はどんな生活だったのか、一部ご紹介します。

1.思い出深い仕事について、お話しします

私は、20代後半から30代前半にかけて、公務員として、市の教育委員会で勤務しました。
そこで、私は一生忘れることのできない仕事を経験しました。

それは、市の「『生涯学習推進構想』を、策定すること」でした。

当時、社会教育部社会教育課という部署に所属しており、私の事務分掌としては、

・社会教育委員に関すること
・PTA研修に関すること

などが大きな仕事でしたが、その他にも、当時ちょうど導入されたばかりの

・学校週5日制への対応

というのも、喫緊の課題でした。
今は、公立小中学校は土曜日が休日なのは当たり前となっていますが、平成の初期までは、土曜日は授業があったのです。

○学校週5日制は、(中略)平成4年9月から月1回、平成7年4月からは月2回という形で段階的に実施してきました。〈引用元:文部科学省ホームページ〉

小学校が土曜日に新しく休みになりましたので、共働きの家庭では、特に低学年の子どもを家で留守番させられないような状況に、どう対応すれば良いか、というようなことが盛んに議論されておりました。
児童館における放課後児童クラブでの受入れ、あるいは休みの土曜日に地下鉄で市内を周遊してスタンプを押す「サタデーテーリング」という事業を始めるなど、大人たちは、小学校の新しい休みにどうやって児童を有意義に過ごさせ、孤立させずに居場所をつくるか、と頭をひねったものです。

「学校教育」と「家庭教育」と「社会教育」が連携をすべき、と当時から良く言われていました。

さて、「生涯教育」「生涯学習」の必要性を大きく唱えられるようになったのも、この頃です。
生涯学習振興法の施行(平成2年)や、生涯学習審議会の答申「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」が平成4年に出されたことを契機として、各都道府県には、生涯学習推進基本構想を策定して住民の生涯学習を振興することが、早急に講じるべき施策として課されたのです。
政令指定都市は、住民サービスを直接担う基礎自治体であると同時に、多くの場合、都道府県と同様の権限や義務もありますので、やはり早急に講じる必要がありました。

2.市の長期構想を策定する担当者になりました

こうして私は、市で初めてとなる『生涯学習推進構想』というものを、策定する担当者となりました。

でも、誰もやったことがないので、どうしたら良いのか分からないのです。
生涯学習というのは、とても広い概念です。
「人々が生涯に行うあらゆる学習」を指すものです。

教育委員会が担当していましたが、教育委員会が単独で文案を作成したところで、それではあくまで「市教委」の作文にしかなりません。「市」全体の長期構想とするためには、どのように作成し、どのようにオーソライズする必要があるのか、真剣に考えました。

文案を作成するにも、ただ理想を書けばいいというものではありません。

【総論】として、このような工程を辿りました。

✅生涯学習の必要性と社会的背景をふまえ、
✅本市の特性と「生涯学習」の現状を把握するところから始まり、
✅現状から課題を抽出し、共通テーマでくくり
✅課題に対応するための方向性を導き出し
✅3つの方向性を施策の柱とし、方針を立てる

市の産業構造や年齢構成、学習機会や学習ニーズは、どこにどういうものがあるのか。
インターネットが、まだ一般的に利用できない時代でしたが、資料や各種調査、文献などを調べた上で、【総論】をまとめ上げました。

そして、【各論】として、
✅3つの方向性〈施策の柱〉に基づき、施策を掲げる
✅施策の柱の他に、「学習支援の体制づくり」の方策を述べる

という構成にして、文案を作成しました。

これらをまとめ上げるのと並行して、市長部局の関係10局と教育委員会を合わせ、11局で「市生涯学習推進構想策定委員会」を設置し、部長会議を幹事会に、課長会議をワーキングメンバー会議として、意見交換を行いました。

さらに、外部の方の意見もお聞きするため、
社会教育委員会議から頂いていた「市生涯学習推進構想の策定について」の提言に加え、
「生涯学習懇話会」を設置し、各方面から意見を頂き、
最終的な「生涯学習推進構想」に反映しました。
並行して、副市長や市長へと企画調整会議のステップを経て、平成7年3月に、市全体の構想とすることができました。

3.その頃の公務員生活

私は当時、実は少し前に結婚した後、病気で3回手術をしたため、病気休職から復職して約1年経過したというところでした。
退職も悩んだ後に、仕事を続けていこうと決めて、構想の策定という大きな仕事を担うこととなりました。

上記の庁内会議でキツい意見をぶつけられたり、業務量も多く、ストレスやプレッシャーは相当にありました。
でも、構想の策定という大きな目標に向けて、ある程度の残業があっても毎日ではなかったですし、無事にやり遂げることができました。

4.公務員の経験から、分かったこと

かつて、公務員は「9時-5時」で仕事は楽だろう、という認識が世の中に広がっていた時代がありました。
その後、景気や世情の影響も受け、公務員の人数を減らすべきとの議論や動向があり、今では、公務員、官僚の仕事がハードであるといった話をよく耳にするようになりました。

もちろん、仕事ですから、大変な状況というのは時に、あるいはしばしば、訪れます。
ただ大抵は、大変な状況にも波があり、ある程度は到達点というのが見えてくることがほとんどです。

私は、数々の大変な状況も経験しましたが、市に自分の仕事を形で残すことができました。私が最初に作った『生涯学習推進構想』を元に、その後、生涯学習センターが建設され、各種事業が行われました
この構想も、今では第3次構想と、後に続いています。

この仕事によって、私自身も大きく成長できましたので、経験に感謝しています。

『国家と地方でこんなに違う公務員』

※この記事における「国家公務員」とは、国家総合職と国家一般職を指すものとします。

1.それぞれのメリット

公務員を目指すあなたは、国家と地方のどちらを選択しますか?
どちらも受験する方が多いでしょうが、これらの具体的な違いをご存知でしょうか?
もちろん雇用先は「国」と「地方自治体」に分かれるため、その業務内容や労働環境は異なります。

しかし、試験問題が似ているので、業務も同様ではないかと思われる方もみえるでしょう。
国家と地方の双方の経験がある方は少ないので、比べることも難しいでしょう。
しかし双方とも経験すると、国家と地方公務員では全く異質なものであると実感できます。

まずは、それぞれのメリットを説明します。

1-1 国家公務員のメリット

・業務内容によって省庁を選べるので、ある程度自分の興味のある分野に限定できます。
国全体の制度などを指揮・統括する責任感を味わうことができ、国民への直接対応は比較的少ないでしょう。
・ 総合職では原則として霞が関の勤務ながらも、全国転勤が楽しめます。
さらに「出向」により、一時的に地方自治体の職員にもなることがあります。
一般職においても、関東や近畿などブロック圏内での転勤が可能です。
・国家公務員用の官舎についても、総合職・一般職に関わらず全国の都市に新旧混在して用意されています。

1-2 地方公務員のメリット

・業務範囲が広いので、幅広い分野の知識を習得できます。
興味のない分野でも、意外に自らの新境地が拓けることがあります。
・納税者である地方住民に対して、顔がみえる距離で触れ合えます。
・原則として自治体内の異動のため、余暇の時間が確保しやすいでしょう。
・都道府県の職員においても、勤務地を考慮してもらえることが多いでしょう。

2.大きな違い3点

実際に国家と地方の公務員として働くにあたって、大きな違いは次の3点です。

2-1 専門性

国家公務員の専門性

国家公務員は、各省庁の所管する法律や制度の根幹を担うことから、専門的な職員いわゆる「スペシャリスト」として育成されます。
国益を主に考えなければならず、外務省などのように国外で勤務する場合もあります。
大きな省では所管する法律に従い業務範囲も広くなりますが、地方自治体に比べるとその範囲は小さいです。

地方公務員の専門性

地方自治体では広大な業務範囲の中で、いろんな部署を異動することでいわゆる「ジェネラリスト」として育成されます。
自治体職員として今年は国土交通省の職員と連絡を取っていても、自らの異動により翌年の相手が厚生労働省になるなどと、数年ごとに全く畑違いの法律・制度に向き合います。

実際の業務としては、制度の現場運用や適用に特化しています。
取り扱いが微妙な案件などについては、国の機関から「助言」をもらって解決に奔走することになります。

そんな中でも立ち位置が独特なのは、地方自治体の税務職員です。
課税・徴税の原則は、国税の法律やルールに準ずる形になります。
しかし所管する税金が「国税と地方税」できれいに別れているため、国の税務署からあれこれと指示を受けることもありません。
各自治体内でも、「スペシャリスト養成コース」として税務職員が挙げられることが多いです。
この特性を活かし、各地域の税務事務所を異動し続ける職員も一定数存在します。

2-2 勤務地

地方公務員の勤務地

地方公務員の圧倒的なメリットが、勤務地が原則としてその自治体内に限られることです。
市町村の職員ならば、たいていの異動辞令を受けても、自宅から通勤可能でしょう。
都道府県の職員は市町村よりも勤務地が拡大されますが、家族の問題などで考慮をしてもらいやすいでしょう。

国家公務員の勤務地

一方の国家公務員は、国家総合職で霞が関を始めとした全国勤務、国家一般職でもブロック別勤務となることから、引っ越しを伴う転勤が多くなります。
ブロック別勤務でも当該ブロック圏内の5・6県が勤務地となるので、長い職員生活で転居の覚悟は必要でしょう。
なお国税庁が管轄する税務署や、法務省の法務局職員などについては、たいていの市に事務所を構えているため、希望すれば異動による転勤は少なくなるかもしれません。

2-3 住民・国民対応

国家公務員の特に一般職では、制度運用や免許業務において、各業者に対応することはあります。
しかし地方公務員に比べると、住民生活レベルで接することは少ないでしょう。

ここに、地方公務員の魅力を見出す職員が多いです。
納税⇔住民サービスという分かりやすい構図が、やりがいとして実感しやすいためでしょう。
しかしひとたび大災害が発生すると、地方公務員は自治体内の部局を超えて災害対応に奔走することになるでしょう。
自らが被災者にも関わらず、避難所の運営に始まり、絶え間ない復興業務に忙殺されます。

国家公務員については情報収集・統括を行なうなど、所管の省庁は忙しくなります。
災害対応などで国土交通省が忙しくなるのは想像しやすいでしょう。
原発事故などの特殊な例では、経済産業省や環境省が地域住民の対応を続けています。

住民や国民の代表である「議員」への対応は、双方の公務員に存在します。
地域や組織の事情があるので、どちらが大変とは一概には言えません。
しかしマスコミが報じるように、国・地方問わず議員への対応に悩まされる公務員は一定数存在します。

3.まとめ 双方のメリットの他にも考えるべきこと

今まで述べてきたように、国家公務員と地方公務員にそれぞれのメリットがあります。

「この分野に興味がある!」という理由だけでは、国家公務員の業務の大変さや転勤生活に打ちのめされるかもしれません。
また「地元の自治体で家族と幸せに暮らしたい」という理由だけでは、地方自治体の業務に物足りなさを感じるかもしれません。
大事なことは、自らの性格を客観的に分析し人生を考えるだけでなく、今後の国内情勢・地方情勢を分析したうえで、各公務員のやりがいやメリットを十分に勘案することです。

レアな公務員試験種紹介①~国立国会図書館職員~

1.はじめに

公務員試験は、民間企業と同じ筆記試験を課すことも増えてきました。しかし、倍率が高めですから、やはり公務員試験用の筆記試験を勉強しなくてはと考えている人も多い事でしょう(詳しくは、下記の記事です)。

「民間筆記試験型公務員試験」受験、3つの留意事項!

そのとき、どうせ勉強するならいろいろな公務員試験を受けておこうとも思われる方も多いのではないでしょうか。

本シリーズでは、そのような方に向けてレアな公務員試験職種をいろいろ紹介していこうと思います。第一段は、国立国会図書館です。

仕事内容や試験内容をご紹介していきます。

2.仕事内容

国立国会図書館は立法府に属していますそして、国会、行政・司法の各部門及び一般公衆に対して幅広いサービスを提供しています。勤務場所は、東京本館(東京都千代田区永田町)、関西館(京都府相楽郡精華町)又は国際子ども図書館(東京都台東区上野公園)です。

国立国会図書館の業務は調査業務・司書業務・一般事務に分けられ、総合職試験、一般職試験等での採用者はこれら 3 つの業務の様々な仕事を担います。

■例えば、「調査及び立法考査局」では、国会の立法活動を補佐するため、国会議員やその他の国会関係者に対して、法案等の分析・評価、国政審議に係る政治、経済、社会等各分野の調査及び情報提供を行います。また、国会情報・立法情報への国民のアクセスを容易にし、国会と国民とをつなぐ役割も果たします。

つまり、国会議員等から調査の依頼を受けて、所蔵資料や データベースを使って調査を行い、報告書にまとめたり、国会議員に直接説明したりするわけですね。加えて、国会で論点になりそうな国政課題に関する調査研究を行い、その結果をレポートに取りまとめ、刊行物として国会議員等に提供をしています。

■それから、「収集書誌部」では、国内で刊行された全ての出版物は、納本制度に基づき、国立国会図書館に納入することが義務づけられていますので、図書・雑誌・新聞のほか、CD・DVD 等の電子出版物、地図や楽譜などを収集します。これ以外に、購入・寄贈等の手段も活用し、広く収集し、収集した資料のタイトルや著者名、主題を表すキーワード等、資料を探す手がかりとなる情報を記録し
書誌データを作成しています。外国の出版物は、購入・国際交換等により、国会活動の補佐や学術的な調査・研究に役立つ資料、日本関係資料等を選択して収集しているそうです。

ありとあらゆる著作物に出会える意味で、刺激的な職場環境ですよね。

■もちろん、図書館ですから、利用者サービスもあります。これは、「利用者サービス部」といって、資料の閲覧、複写、レファレンスといった来館サービスの提供と、遠隔複写やデジタル化資料の送信といった来館せずに利用できる遠隔サービスの提供を担っています。専門知識をいかして膨大な資料・情報を整理し、効果的な調べ方のガイドの作成や、特色ある資料を紹介する展示会の開催等もあり、色々な角度から我々の調べものを手助けしてくれます。

以上に加え、関西館や国際子ども図書館での仕事もあるわけですので、本当にいろいろなステージが用意されている職場ですね。

3.働き方・福利厚生など

身分は特別職の国家公務員ですが、一般職の国家公務員と待遇に遜色はありません。つまり、国立国会図書館の総合職であれば国家公務員総合職並みの、一般職であれば国家公務員一般職並みの待遇ということですね。

設置場所としては主に東京都と京都府なので、この2場所が勤務場所になります。なお、東京都渋谷区に代々木上原寮(独身者用)が、京都府相楽郡精華町に京都宿舎がありますので、その地域にお住まいでない方も合格後はそれらを利用するなどして働くことができるようです。

勤務時間は、午前 9 時から午後 5 時 45 分まで(休憩60 分を含む)を原則としつつ、育児短時間勤務、保育時間、育児時間、早出遅出勤務、時差通勤、フレックスタイム制等の制度を利用できるようです。福利厚生も手厚く、働きやすい環境が作られていますね。

そのためか、職員の男女比は、女性が51.8%と女性が多く、管理職の女性割合も35.2%となっています(令和4年度)。

キャリアパスは、調査業務・司書業務・一般事務をジョブローテーションしながら経験を積み、係員級→係長級→課長補佐級→管理職へと昇進していくようです。先輩職員のキャリアなどをみると、衆議院法制局など他の国家機関へ出張したり、海外の大学院に派遣があったりするようです(調査部門・図書館部門から若干名の職員を、シカゴ大学、アベリストウィス大学、ルクセンブルク大学、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、ニューヨーク大学等へ)。

4.試験内容

国立国会図書館は狭き門です。というのも、総職員数が約900名と少ないことから、毎年の採用試験人数が僅かとなっているためです。

例えば、令和6年度の採用人数は総合職では4人で、応募数は406人ですから、倍率100倍以上です。一般職でも、応募数593人に対し、16人採用ですので、約37倍の倍率です。

ということで、目指すのであれば、しっかり準備をして臨まなければなりません。では、試験内容はどうなっているのでしょうか。

【第一次試験】

総合職・一般職ともに、1次試験が教養試験(多肢選択式120分)です
総合職は3月3~4週目の日曜日に、一般職は4月3~4週目の日曜日にそれぞれありますので、申込も2月上旬と、早いので注意しましょう(あくまで、令和6年ベースですので、興味ある方は国立国会図書館のHPで確認して下さい)。
国立国会図書館ホームページ: https://www.ndl.go.jp/

【第二次試験】

2次試験として、総合職・一般職ともに、学力をみられる試験として、

①専門記述
②英語 があります。
そして、
総合職だけ③小論文があります。
①専門記述

総合職は120分試験(90分+30分、90分のところは一般教養と同じ)が課され、一般職は90分試験のみが課されます。

なお、受験者は「あらかじめ選択する1科目」についての筆記試験です。科目は、法学(憲法、民法、行政法、国際法から受験時に2分野選択)、政治学、経済学、社会学、文学、史学(日本史、世界史から受験時に1分野選択)、図書館情報学、物理学、化学、数学、工学・情報工学(工学全般、情報工学から受験時に1分野選択)、生物学となります。

②英語試験

60分の長文読解で、総合職試験・一般職試験共通です。

③小論文(総合職のみ)

与えられた課題文を読み、1200字以内で書くものです。

そして、第二次試験には、人物試験(質問紙法による性格検査含む)が総合職・一般職ともに課されます。令和6年度はオンライン面接でした。

【第三次試験】

総合職・一般職共に個別面接試験が対面で課されます。この最終試験においての倍率も2.5~4倍くらいで推移していますので手を抜けません。

5.おわりに~目指すなら~

国立国会図書館では、一次試験の教養試験は、他の公務員種と同様です。一次の通過は、例年の傾向をみると、総合職も一般職も受験者(応募者ではなく)の3分の1に入れれば通過しています。

一方、二次試験は絞り込みが強まります。二次試験の内容は、記述式の専門試験と、英語試験ですから、ここはかなり高めておく必要があります。

また、面接は2・3次試験で2回ありますので、しっかり対策をする必要があるでしょう。さらに、総合職を目指される場合は、小論文対策も必要です。

合格のためには、この2次試験の関門が必要です。ただ、大手予備校ですと一次試験対策や、選択肢を選ぶ上での専門試験対策は優れていますが、2次試験対策となると少し心許ないところが多いでしょう。

その点、究進塾のような個別指導塾では、英語、経済学、面接、小論文などの指導ができまるスタッフがいますので、自身がアウトプットしたものがどう採点されるかを知るためには、こうした個別指導を受けると良いでしょう。

【個別指導の究進塾】英語や日本史・世界史などを学習されたい方向け

【ASK公務員】経済学・数的処理・論文・面接対策などをしたい方向け

本記事では、職域が広くやりがいがあり、待遇も良い国立国会図書館職員について解説をしました。参考になれば幸いです。

『地方自治体職員のキャリアパス、気になる分岐点はココ』

1.地方自治体の独特なキャリアパス

(この記事では、育児休暇及び育児休業をまとめて「育休」と表記しています)

公務員の中でも地方自治体を目指す方は、入庁してからどのような職員を目指しますか?
具体的には、どんなキャリアパスを思い描いていますか?

そんな地方自治体の職員のタイプは、大きく次の2つに分けることができます。

A 常に仕事重視で耐性の高い、タフ職員たちの幹部職員コース
B 仕事と育児など私生活との両立のため、負担を避け出先を好む職員コース

残念ながら今までは、Aには男性職員、Bには女性職員が多く配置されていました。

しかし、女性の社会進出や価値観の変化を受けて、Aに女性職員が登用されるようになったり、Bでは家族との時間を重視する男性職員が増加してきています。

とある自治体で私が所属していた予算部門は、庁内で最も時間外勤務が多い部署でした。
配属された女性職員は全て独身で、「あそこには独身女性しか配属されない」と哀しい噂をされていました。

1-1 職場で重宝される人材

官民共通していることですが、職場が欲する人材は、時間外勤務などの業務の負荷も受け入れながらしっかり働く職員です。
よって、そうした要請に対応できるような、未婚の職員が広範囲の所属で重宝されています。
また結婚していても、子どもがいなかったり家族の世話に心配がない職員も重宝されます。
このような職員が適正・耐性を評価されながら、Aコースを歩んでいくのです。

1-2 キャリアパスの分岐点

地方公務員のキャリアパスは多数存在し、その分岐点はいくつもあります。
その中で分かりやすい分岐点は、「あなたの子どもの出生時」です。

近年の地方自治体では、子どもが誕生すると男性でも1か月以上の育児休暇を取得することを強く勧められます。
なぜならば、部下の一定期間以上の育休取得が、上司や所属長としての評価基準であることが多いためです。

「子どもが誕生しても休みたくない!」と強く思っている男性職員でも、この最低日数だけは組織に従った方がよいでしょう。
そしてその育休明けに、キャリアパスの分岐点が待っています。

2.育児に時間を割く職員の処遇

地方自治体をはじめ公務員組織は、福利厚生が手厚く用意されています。
国の定める育児休業制度よりも、自治体独自の育児休暇がはるかに手厚いことが多いので、自治体職員は育児時間を確保しやすいことでしょう。

そして「育児と仕事を両立したい!」という職員にも対応したキャリアパスが存在しているため、理不尽な退職を迫られるということもないでしょう。

特に地方自治体は地元の民間企業に対して、従業員の育児環境の充実を求める立場です。
さらに自治体職員の労働組合との関係を鑑み、育休取得を決して疎かにできません。
育休期間についても、男女問わず最低1ヵ月以上の取得を強く勧められ、女性は1年以上休業するパターンが多く見受けられます。
また喜ばしいことに、価値観の変化により男性の育休取得期間も長期化しています。
育児などの家庭の事情を重視する職員は、育休から明けても地方機関や融通の聞きやすい部署間を異動することが多く、Bコースに分類されるようになります。

2-1 育児に大事だが、市町村と道府県で大きく異なること

育休明けの職員は子どもの世話をするため、業務の融通の効きやすい部署や、自宅から近い地方機関(いわゆる出先)を選択することが多くなります。

その際、市町村と道府県職員の職員を比べると、勤務地の範囲を痛感することがあります。
特に道府県庁では、地方機関同士の距離が大きいので、勤務地によって転居を強いられることもあります。
一方の市町村職員の勤務地は、原則として自治体内で勤務するので転居とはまず無縁です。

2-2 地方機関を異動し続ける職員

自治体職員の中には中枢や本庁の激務に辟易し、地方機関を好んで異動し続ける方が存在します。
これは主に、職員労働組合の力によるところが大きいようです。
地方自治体の職場労働組員率はたいていの自治体で80%以上で、一定の力を有しています。
自治体の人事部署も、そんな組合及び組合員の意向を無視できません。
特に職員に「育児や介護などの家族の都合」という名目があると、人事はそれなりの融通を効かせるでしょう。

3.地方機関などを異動していても、子育て後にチャンスあり

育児のためにBコースを選ばざるを得なかった職員ですが、子育てがひと段落した頃にも、Aコースに進路変更するチャンスがあります。
まずは、各々の育休明けの際に行なう人事面談が最初のポイントです。
ここで管理職は、職員から今後の育児への注力予定を確認します。
そこで平素より職場の勤務態度や実績が評価されていると、本庁の中枢に呼ばれることがあります。
育休が明けても育児と両立している職員は、毎年の人事面談において育児の関与具合を聞かれます。
これは、人事評価の高い職員を中枢に送れるかどうかを判断する一つの要素となるためです。

3-1 キャリアパス変更のポイント

BからAコースへの変更ポイントは、結婚・育休前からしっかり人事評価を積み重ねていることです。
特に若手職員は、異動先で常に適性・耐性を見られています。
「適性」については、地方自治体の一般職のほとんどが事務作業なので、評価の幅は小さいと思われます。
むしろ年度末などに発生する膨大な業務や、重責に打ち克つ「耐性」が重視される傾向が強いでしょう。
いわゆる「タフな職員」が歓迎される傾向が強いでしょう。
そもそも人事担当の職員が、各職員の適性をどれだけ判断できるかには疑問が生じます。
しかし、耐性ならば長く勤務し続けるという観点で判断できます。
その結果、本庁の中枢はタフな職員が大多数を占めることになります。
そんなタフな職員もAコースに戻るとなると多忙で体力勝負の部署に配属されることが多いでしょう。
そのため、出来るだけ若い年齢で戻ると、順応しやすいとも言えます。

3-2 中枢に配属されると感じるギャップ

いざ中枢に配属されると、地方機関とのギャップに驚かされることが多いです。
特に企画・予算経理・人事などの管理系部門に配属されると、その多忙さに圧倒されることでしょう。
若いうちにこの辛さを味わった職員のなかには、「ここには二度と戻りたくない」と進んでBコースを希望する方も出てきます。

4.まとめ

地方自治体の職員には育児に対して手厚い待遇が用意されており、「育児に専念する/しない」が分岐点の一つとなります。
しかし、この分岐点のみで、以後のキャリア全てが決まるわけではありません。
子育て前から職場の評価をしっかり積み重ねておけば、育児がひと段落したあとに幹部に上がっていけるチャンスも残されています。
そういう意味では、とても可能性にあふれた職場とも言えます。
説明を行なってきたA・Bコースに職員の優劣など存在しませんし、子どもの有無で価値が決まるものでもありません。
しかし、育児をひととおり経験した職員がその自治体の幹部になると、その地方はきっと大きく変わることでしょう。
育児の大変さを実感した職員が、育児世代の助けとなる施策を立案・施行することで、その地方の新たな活気に繋がるためです。

地方公務員の資格免許職とは?職種ごとの仕事内容を徹底解説!

地方公務員の資格免許職とは、どのような職種なのでしょうか?

地方自治体の職員のうち、特定の資格や免許を保有していることを要件とする職

を総称して、地方公務員の資格免許職といいます。
地方公務員の資格免許職になるには、

◎特定の資格や免許を保有していること(資格・免許取得見込み者を含む)
◎なおかつ地方自治体の採用試験(筆記試験・面接試験など)に合格すること
の2点が必要です。

保健師や獣医師、薬剤師、保育士、栄養士といった資格免許職が代表的なものとして挙げられますが、その他にも、さまざまな分野でスペシャリストは活躍しています。

では、地方公務員として具体的にどのような仕事をするのでしょうか?
ここでは、主に政令指定都市の資格免許職を例に見ていきましょう!

1.地方公務員の「資格免許職」とは?

地方公務員の「資格免許職」とは、
定められた資格や免許を保有していることを要件とする職のことです。

地方公務員の「資格免許職」になるためには、上述のように、
地方自治体の筆記試験や面接試験といった採用試験を受験して合格することと、
資格や免許を保有していることの両方が求められます。
受験の時点では、資格や免許の取得見込者も受験できますが、採用前に資格や免許を必ず取得している必要があります。

2.「資格免許職」は、どんな仕事をしているのでしょうか?

では、地方公務員の「資格免許職」は日々どのような仕事をしているのか、見ていきましょう。
ここでは、主に政令指定都市の「資格免許職」の仕事について紹介していきます。

(1)保健師〔地方公務員・資格免許職〕

仕事内容 妊産婦健康相談、家庭訪問、特定保健指導、乳幼児健診、両親教室
高齢者の介護予防、虐待や認知症への支援、介護保険認定調査
地域包括支援センターや介護予防センターへの支援と指導
精神保健福祉の支援と援助、難病患者支援、感染症対策
障がい者総合支援法に基づくサービス支給決定
健康づくり、健康課題の分析と事業立案など

市民の健康なくらしのために、関係機関とも連携しながらさまざまな仕事に取り組んでいます!

勤務場所 本庁、保健所、各区の保健センター、区役所、精神保健福祉センター、身体障害者更生相談所、障がい児の通園・相談施設、児童相談所など

(2)獣医師〔地方公務員・資格免許職〕

仕事内容 動物の愛護・管理、動物の診療、家畜防疫、畜産振興、食鳥検査、感染症対策、
狂犬病予防注射、調査研究など

市によって
〇「獣医師」採用区分を設けている場合と、
〇「衛生職」の区分で獣医師を採用している場合 とがあります。

「獣医師」採用区分でも、市によって食品衛生や環境衛生も担当するなど、仕事の幅の広さが異なる場合もあります。

また、都道府県の「獣医師」の採用数は比較的多い傾向にありますので、興味のある自治体のホームページやパンフレットなどを確認することをおすすめします!

■勤務場所 動物園、動物管理センター、家畜保健衛生所、食肉衛生検査所、生活衛生監視事務所、本庁、保健所、市立病院、環境衛生研究所など

(3)薬剤師〔地方公務員・資格免許職〕

仕事内容 医務薬務、感染症対策、食品獣疫監視指導
市立病院の調剤、薬局や医薬品販売の監視
そ族昆虫駆除、環境衛生・公害監視指導
検査、調査研究、各種施策の企画立案など

市によって、
〇「薬剤師」採用区分を設けている場合と、
〇「総合科学」や「衛生」区分などで採用される場合 とがあります。

勤務場所 本庁、保健所、市立病院、医療衛生センター、環境共生センター、衛生環境研究所など

(4)管理栄養士、栄養士〔地方公務員・資格免許職〕

仕事内容 栄養相談、離乳食や食生活支援の各種教室の運営
福祉施設や事業所の給食施設指導・監査
保育所など市立施設の栄養管理、献立作成、調理
生活習慣病予防のための保健指導、食生活指導
食育推進、マタニティ教室や地域などでの栄養講話など

区保健センターなどでは、妊婦や乳幼児、成人と広く市民の栄養・食生活指導などの仕事に従事します。
お弁当レシピコンテストを実施したり、レシピ集を作って配布するなど
食育の推進や啓発にも取り組んでいます!

学校に栄養教諭として配置される場合の業務は、次のとおりです。
・学校給食の栄養管理
・児童・生徒への食に関する指導など

勤務場所 保健所、区保健センター、保育所、認定こども園、児童相談所
市立病院、教育委員会、小学校、中学校、特別支援学校など

(5)保育士〔地方公務員・資格免許職〕

仕事内容 保育所での乳幼児保育

絵本の読み聞かせ、歌、室内遊び、戸外遊びの見守り、
食事・おやつの介助・見守り、おたより帳記入、書類作成など

障がい児の療育支援、親子教室
子育て相談、子育て情報の提供、子育て講座、子育てサロン
子育てボランティアの活動支援、小・中・高校生の育児体験支援など

公立保育所での保育の仕事以外にも、市民への子育て支援をする機会もあり、仕事の幅は広くなっています!

勤務場所 保育所、認定こども園、区保育・子育て支援センター、区保健センター、本庁、児童相談所、子ども発達総合支援センター、療育センターなど

(6)その他

上に挙げた以外にも、地方公務員の資格免許職として下記のような職種があります。

▼看護師
▼心理士
▼臨床検査技師
▼作業療法士
▼理学療法士
▼言語聴覚士
▼診療放射線技師
▼歯科衛生士
▼衛生監視員
▼幼稚園教諭
▼司書

詳しくは、それぞれの自治体のホームページなどでご確認ください。

3.まとめ~資格や免許を行政の仕事に活かしましょう!

資格や免許を取得するには、それぞれやりたいこと、なりたい職業を頭に描いて専門の知識や技術を身につけたものと思います。
あなたのスペシャリティを存分に活かして、行政で活躍しませんか?