裁判所事務官対策

裁判所事務官(一般職)のボーダーの点数は?元講師が解説します

裁判所事務官を受験するにあたり、ボーダーって何点ぐらいなのか気になる人も多いかと思います。
択一で何点とれれば1次通過するのか、また、筆記試験で失敗しても面接で逆転ができるのかなど不安が常につきまとうと思います。

そこで今回は、裁判所事務官(一般職)のボーダーについて分析していき、どれくらい得点できれば安心なのかについて解説していきたいと思いますので参考にしてみてください。

1 各科目の配点比率について

裁判所事務官(一般職)の配点比率は、各年度の「裁判所職員採用試験受験案内」に公表されています。最近、面接の比率が変更になったように(比率が下がりました)、突然変更されることがありますので、受験を申し込む際には必ず確認しましょう。

平成27年度受験については次のとおりでした。

第1次試験

基礎能力試験(多肢選択式=択一) 40題 配点比率 2/10
専門試験(多肢選択式=択一) 30題 配点比率 2/10

第2次試験

論文試験(小論文) 1題 配点比率 1/10
専門試験(記述式) 1題 配点比率 1/10
人物試験(個別面接) 配点比率 4/10

まず、1つ目の注意点は、論文試験(小論文)と専門試験(記述式)は、第1次試験日に実施されますが、評価自体は第2次試験にされるということです。

つまり、1次合格発表(例年6月中旬)は、択一試験(基礎能力+専門)のみで判断されることになります。

 

2つ目の注意点は、裁判所事務官の場合は、筆記試験と面接の「総合評価」となる点です(これは国家公務員試験全般に共通しています)。

近年の地方自治体の試験では、面接はリセット方式、つまり最終面接では、1次試験の筆記試験を考慮せず(リセットして)面接の点数のみで判断するということが多くなっていますが、そうではなく、裁判所事務官の場合は総合点で最終順位がつくということになります。

 

したがって、以下の2つの合格必須ポイントを意識して受験勉強をすすめていくことが重要となります。

①1次試験(択一試験)をボーダーギリギリでもよいのでまず突破すること。

②面接だけではなく、筆記試験全体についてもできるだけ高得点を取得すること。

2 択一試験(1次試験)ボーダーは36点〜42点(非公表)

裁判所事務官に合格するためには、まず1次試験に合格する必要があります。1次試験は、択一(教養+専門)の結果のみで判断されますので、何点とれば合格するか受験生の1番気になるところになりますが、例年36点〜42点あたりで推移しているようです。ちなみに、受験申込時の管内ごとにボーダーが異なります。

なぜこれだけ幅があるのかと疑問に思うかもしれませんが、あくまで相対評価であるという点がポイントの1つだと考えられます。つまり、易しい問題が多かった年度は、高得点を取得する受験生が続出するため、ボーダーが高くなると考えられます。

 

また、裁判所は1次合格者の人数を毎年変えています(おそらく前年度の辞退者数等を考慮しているかと思います)。したがって、1次合格者数を多く設定した年度はボーダーが下がりますし、劇的に合格者数を減らす年度があり、そのときにはボーダーが上がるわけです。

なお、裁判所は択一試験ボーダーを公表していません。ボーダー予想はあくまで予想であって不確実なものであるということに注意してほしいと思います。

受験生がいうボーダーというのは、予備校や2ちゃんねるなどのネットによる予想、受験者の口コミのことであり、もちろんこれは正式なものではありません。

たとえば、同じ管内受験生で35点で不合格した人と36点で合格した人がいれば、ボーダーは36点と確定できるわけですが、必ずしもその情報を予備校やインターネット上のサイトで把握しているわけではないことを注意していただきたいと思います(予備校の場合は把握できる場合がありますが不確実です)。

なお、平成27年については前年度に比べ1次合格者を多めに出しているのでボーダーが全体的に下がったと考えられます。

したがって、例年はのボーダーは40点前後と考えておけばよいでしょう。

3 東京のボーダーは低く、近畿・九州はボーダーが高いという噂について

2ちゃんねる等では、東京高裁管内はボーダーが低く狙い目で、大阪高裁や福岡高裁管内のボーダーが高い、という情報があがっています。

東京のボーダーはやや低いと考えられますが、しかし、これも不確かな情報なので惑わされないようにしていただきたいと思います。

 

もっとも、東京高裁管内の場合は、たとえば平成27年には1次合格者を1202人も出していますので、ボーダーは他の管内よりも低い可能性は十分にあります。

しかし、東京管内の場合は、首都圏に難関大学や実績の高いロースクールが多く存在し、その出身者たちも総合職だけでなく一般職でも受験してきます。したがって、裁判所事務官の筆記試験の上位層の人数(割合でなく実際の数)は、他の管内より多いと推測できます。

大阪管内も同様のことがいえますが、数では東京の方が多いと考えられます。実際に、司法試験の滑り止めで受験し、司法試験も裁判所事務官も両方合格したという人は毎年相当数います。

したがって、東京管内はボーダーが低いと考えられる分、狙い目ではありますが、上位合格するにはそれなりの高得点をとることが必要ということを意識しておきましょう。

 

また、そもそも受験生が参考にする予備校のボーダー予想は、予備校に択一試験の情報を提供した受験生を対象として予想を出します。

東京管内は実際の受験者の母数が4000人を超えており、しかも予備校の校舎も大学の通学路線に乱立していますので、多くの受験者が情報提供をしてくれ、それに基づいて予想することができます。

 

一方、たとえば福岡管内の場合、受験者の母数は1300人程度。そこから予備校に情報を提供してくれる人がどれだけいるかというと、予備校の校舎の数や九州全域ということも考えると、東京に比べ情報提供の数・割合は減ると思います。

このようなデータ集積の段階での違いが、ボーダーの点数に現れる要因とも考えられるでしょう。つまり,情報提供が少ない場合、ボーダーがややあがる傾向があるということになりますので、一概に地域によってボーダーが高いから難しいという判断は危険でしょう。

4 筆記試験、面接試験どちらも足切りがある

筆記試験にも面接試験にも足切りがあります。

①裁判所は、択一試験について、「基準点」=最低限必要な素点、とし公表しています。

そして、基準点に達しない試験種目が1つでも存在する者については、他の試験科目の成績にかかわらず不合格となります。

平成27年

基礎能力試験 満点40 基準点15 平均点20.08
専門試験 満点30 基準点12 平均点16.04

平成26年

基礎能力試験 満点40 基準点15 平均点19.45
専門試験 満点30 基準点12 平均点15.38

平成25年

基礎能力試験 満点40 基準点15 平均点19.95
専門試験 満点30 基準点14 平均点14.29

 

上記のように、基準点は年度によって若干変更がありますので気をつけて下さい。

なお、2次試験の各科目についても基準点を設定しているようですが、その点数は、公表はされていません。裁判所が公表しているのは、「採点者による評点を基礎とし、科目ごとに満点20%から50%を基本に個別に定めます。」と、いうことです。

何点とはいえませんが、小論文及び専門記述についても足切りがあることを知っておきましょう。

 

②面接については、判定の高い順にA、B、C、及びDの4段階で判定し、AからCの者について第2次試験の合格者を決定します。すなわち、D=不合格となります。いくら、筆記試験で高得点を取得してもDをとると不合格ですので、注意する必要があります。

なお、足切りについては素点を基準に考えますが、総合得点は、各試験科目の素点をそのまま用いるのではなく、配点比率や平均点を考慮した「標準点」というものを使用します(詳細は平成27年度裁判所職員採用一般職試験の合格者決定方法を参考にしてください)

つまり相対評価になりますので、他の受験生よりも1点でも高く点数をとることを意識する必要があります。

5 筆記試験が微妙でも面接で挽回できることもある

裁判所事務官(一般職)では、面接の配点比率が4/10とかなり高くなっています。しかも、D=不合格ということで、裁判所事務官は面接が1番大事といわれることもあります。

実際に、択一試験でギリギリ合格した受験生(36点や37点)が、第2次試験で挽回して、最終合格を果たすこともよくあります。したがって、是非、面接対策には力をいれてください。

 

しかし、面接では思っているほどは差がつかないのが現実です。

というのも、前述のとおり面接の評価はA、B、C、及びDの4段階での評価となり、筆記試験のように細かい点数で分類されるわけではありません。1次合格者が4つの枠に分類されるだけになりますので、差がつきにくくなります。

 

まず、D=不合格となる人は、裁判所事務官用の面接対策を全くしていないか、もしくは面接を甘く考えているか、本番で緊張して何も言えなかったか(結構存在します)、そもそもコミュニケーションの能力が低い(この場合、他の試験でもかなり苦戦すると考えられます)という点が考えられます。

大学や予備校等で裁判所事務官用の面接対策をしっかりとしていれば、ほとんどの場合はDを免れることができるはずです。

 

一方、面接でAをとることはかなり難しいと考えて下さい。面接では大学時代だけでなく高校時代のがんばったことも聞かれます。スポーツや文化系で全国大会レベルの賞をとるような人もいて、その点で話が盛り上がり感触が良かったという合格者もいます。

また、その人のもともとの性格や雰囲気も評価の対象となってきますし、評価の甘い面接官と厳しい面接官がいます(面接官は固定されていないので、どの面接官にあたるかも運次第です)。

したがって、面接対策だけでは補えない分も出てくるのでAをとることは難しく、多くの受験生はC、Bで最終合格をしていると考えて下さい。

実際に、択一試験の合格最低点で面接Bをとった受験生が順位をぐんとあげて最終合格することもありますので、面接はAでなくても逆転が可能であること、小論文や記述試験で高得点をめざすことを特に意識していただきたいと思います。

6 まとめ

裁判所事務官(一般職)には、①各科目に足切りがあること、②択一試験はボーダーが40点前後ということ、③面接で逆転することも可能だけど、結局は総合評価なので、筆記試験でもしっかりと点数をとっていくこと、が大事になります。

面接重視ではありますが、まずはしっかりと筆記試験で得点できるようにがんばってください。

これで完璧!裁判所事務官の試験科目と対策を徹底解説

裁判所事務官はどんな科目が出題され、どのような対策をすればいいのかわからない受験生も多いのではないのでしょうか?
裁判所事務官についての情報はなかなか手にいれることができず、途方に暮れている人が多いようです。

また、平成27年度の裁判所事務官の試験では、試験名称のみならず、試験科目自体にも若干の変更がありました。

このように裁判所事務官の情報は自ら積極的に情報収集することが求められるため、ここではどこよりも詳細に裁判所事務官の試験科目と対策について書いていますので参考にしてみてください。

1 裁判所職員の試験区分(平成27年度から名称変更)

裁判所職員の試験には大きく、裁判所事務官(総合職・一般職)と家庭調査官補(総合職試験)の試験があります。

平成27年以前から裁判所事務官を受験・検討されている方は、試験名称が若干変更されましたのでご確認ください。以下のように官職が明記されるようになり、非常に分かりやすくなりました。

(旧)総合職試験(院卒者・大卒程度試験,法律・経済区分)

(新)総合職試験(裁判所事務官,院卒者区分・大卒程度区分)(旧)総合職試験(院卒者・大卒程度試験,人間科学区分)

(新)総合職試験(家庭裁判所調査官補,院卒者区分・大卒程度区分)(旧)一般職試験(大卒程度試験)

(新)一般職試験(裁判所事務官,大卒程度区分)

つまり、現行の制度は総合職試験(院卒者区分・大卒程度区分)は裁判所事務官と家庭裁判所調査官補、一般職試験(大卒程度区分)は裁判所事務官として採用されることが明記されるようになったのです。

2 受験資格年齢と試験科目

裁判所事務官の試験では、①総合職か一般職かでの違い、②院卒者区分か大卒区分かでの違いがあります。
また、裁判所事務官と家庭調査官補とのの違いも存在します。つまり、以下のように6種類に分類することができるので、「平成27年度試験案内」をもとにひとつずつ見ていきたいと思います。

(1)総合職試験(裁判所事務官、院卒者区分)
(2)総合職試験(裁判所事務官、大卒程度区分)
(3)総合職試験(家庭裁判所調査官補、院卒者区分)
(4)総合職試験(家庭裁判所調査官補、大卒程度区分)
(5)一般職試験(裁判所事務官、大卒程度区分)
(6)一般職試験(裁判所事務官、高卒程度区分)

2−1 総合職試験(裁判所事務官、院卒者区分)

総合職試験(裁判所事務官)は、院卒者・大卒程度区分ともに3次試験まであります。
院卒者区分と大卒程度区分では、受験資格及び試験科目(1次・基礎能力試験の問題数と、2次・専門記述の出題科目)に違いがあります。

受験資格:30歳未満であって、大学院修了及び修了見込みの方

【1次試験】
①基礎能力試験(択一式)30題(知能27+知識3)
②専門試験(択一式)30題
【必須】憲法7題・民法13題
【選択】刑法10題または経済理論10題(当日、どちらかの科目を選択)

【2次試験】
①専門試験(記述式)4題
【必須】憲法1題・民法1題・刑法1題
【選択】民事訴訟法1題or刑事訴訟法1題
※憲法は、1次試験日に実施されます。
※憲法は六法使用不可、民・刑・訴訟法は当日六法が貸与されその六法のみ使用可。

②政策論文試験(記述式)1題
政策論文試験は与えられた資料等から課題を読み取らせ、それに対する対策を検討させ論述させる試験となっています。詳細は、3−4 政策論文・小論文の対策を参考にしてください。

③個別面接
総合職の個別面接の試験は受験生1人に対し面接官が3人という形式で行われます。

【3次試験】
集団討論および個別面接

集団討論については面接官が3人が見守る中、受験生が複数人である議題に対し討論を行います。
その後、集団討論を踏まえた上で個別面接が行われます。

2−2 総合職試験(裁判所事務官、大卒程度区分)

受験資格: 21歳以上30歳未満の方

【1次試験】
①基礎能力試験(択一式)40題(知能27+知識13)
②専門試験(択一式)30題
【必須】憲法7題・民法13題
【選択】刑法10題または経済理論10題(当日、どちらかの科目を選択)

【2次試験】
①専門試験(記述式)4題
【必須】憲法1題・民法1題・刑法1題
※憲法は、1次試験日に実施されます。
※憲法は六法使用不可、民法・刑法は当日六法が貸与されその六法のみ使用可。

②政策論文試験(記述式)1題
政策論文試験は院卒者程度区分と同様に、与えられた資料等から課題を読み取らせ、それに対する対策を検討させ論述させる試験となっています。詳細は、3−4 政策論文・小論文の対策を参考にしてください。

③個別面接
個別面接の試験は受験生1人に対し面接官が3人という形式で行われます。

【3次試験】
集団討論および個別面接
集団討論については面接官が3人が見守る中、受験生が複数人である議題に対し討論を行います。
その後、集団討論を踏まえた上で個別面接が行われます。

2−3 総合職試験(家庭裁判所調査官補、院卒者区分)

家庭裁判所調査官補はその職業柄、心理学や社会学、教育学等の人間関係科目の出題が多いのですが、試験制度の変更により、民法や刑法を選択することも可能になりました。人間関係科目の科目も1科目は選択する必要はありますが、以前に比べ、非常に法学部生やロースクール生が受験しやすい制度になりました。

受験資格: 30歳未満であって、大学院修了及び修了見込みの方

【1次試験】
①基礎能力試験(択一式)30題(知能27+知識3)
②専門試験(記述式)
次の人間関係諸科学科目および法律学科目 の15科目(15題)のうち選択する3科目(3題)
※試験当日に科目を選択。
※人間関係諸科学科目から少なくとも1科目(1題)を選択。

◼︎人間関係諸科学科目
心理学概論、臨床心理学、社会心理学、社会学概論、現代社会論、社会調査法、社会福祉学概論、社会福祉援助技術、地域福祉論、教育学概論、教育心理学、教育社会学

◼︎法律学科目
憲法、民法、刑法

【2次試験】

①専門試験(記述式)
次の13科目(15題)のうち選択する2科目(2題)
※児童福祉論と高齢者福祉論は同時に選択不可。
※民法のみ2題又は刑法のみ2題を選択不可。

臨床心理学、発達心理学、社会心理学、家族社会学、社会病理学、社会福祉援助技術、児童福祉論or老人福祉論、教育方法学、教育心理学、教育社会学、民法、刑法

②政策論文試験(記述式)1題
政策論文試験は与えられた資料等から課題を読み取らせ、それに対する対策を検討させ論述させる試験。詳細は、3−4 政策論文・小論文の対策を参考にしてください。

③集団討論および個別面接
集団討論が行われた後、それを踏まえた個別面接が実施されます。

2−4 総合職試験(家庭裁判所調査官補、大卒程度区分)

院卒者区分と共通の試験問題で行います。ただし、第1次試験基礎能力試験について解答する問題数が異なります。

受験資格: 21歳以上30歳未満の方

【1次試験】
①基礎能力試験(択一式)40題(知能27+知識13)
②専門試験(記述式)
次の 15科目(15題)のうち選択する3科目(3題)
※試験当日に科目を選択。
※人間関係諸科学科目から少なくとも1科目(1題)を選択。

◼︎人間関係諸科学科目
心理学概論、臨床心理学、社会心理学、 社会学概論、現代社会論、社会調査法、社会福祉学概論、社会福祉援助技術、地域福祉論、教育学概論、教育心理学、教育社会学

◼︎法律学科目
憲法、民法、刑法

【2次試験】
①専門試験(記述式)
次の13科目(15題)のうち選択する2科目(2題)
※児童福祉論と高齢者福祉論は同時に選択不可。
※民法のみ2題又は刑法のみ2題を選択不可。

臨床心理学、発達心理学、社会心理学、家族社会学、社会病理学、社会福祉援助技術、児童福祉論or老人福祉論、教育方法学、教育心理学、教育社会学、民法、刑法

②政策論文試験(記述式)1題
政策論文試験は与えられた資料等から課題を読み取らせ、それに対する対策を検討させ論述させる試験です。詳細は、3−4 政策論文・小論文の対策を参考にしてください。

③集団討論および個別面接
集団討論は面接官3人が見守る中、受験生6人があるテーマについて討論を行います。テーマは一般的な内容(たとえば待機児童問題)についてであり、その後、集団討論を踏まえた上で個別面接が行われます。
個別面接は受験生1人に対し面接官3人という形式で行われます。

2−5 一般職試験(裁判所事務官、大卒程度区分)

一般職試験は、総合職試験と異なり2次試験までとなっています。
総合職試験(裁判所事務官)と重なる試験種目、具体的に択一試験(基礎能力+専門科目)及び専門論文(憲法)では、共通の試験問題が出題されます。

受験資格: 21歳以上30歳未満の方。21歳未満で大学卒業及び卒業見込み、短大等卒業及び卒業見込みの方も受験可。

【1次試験】
①基礎能力試験(択一式)40題(知能27+知識13)
②専門試験(択一式)30題
【必須】憲法7題・民法13題
【選択】刑法10題または経済理論10題(当日、どちらかの科目を選択)

【2次試験】
①論文試験(小論文)1題
※論文試験(小論文)は、1次試験日に実施されます。
②専門試験(記述式)4題
【必須】憲法1題・民法1題・刑法1題
※憲法は、1次試験日に実施されます。
※憲法は六法使用不可、民法・刑法は当日六法が貸与されその六法のみ使用可。

③個別面接
個別面接は受験生1人に対し面接官3人という形式で行われます。

2−6 一般職試験(裁判所事務官、高卒程度区分)

受験資格:高卒見込み及び卒業後2年以内の方 (中学卒業後2年以上5年未満の方も受験可)

【1次試験】
①基礎能力試験(択一式)45題(知能24+知識21)
②作文1題

【2次試験】
個別面接

3 裁判所事務官の試験の特徴とその対策

3−1 専門の択一試験は3科目で受験ができる

裁判所事務官の専門択一は、他の公務員(行政職)試験と異なり特徴があります。裁判所事務官の専門択一は、たった3科目で受験することができます。
憲法・民法が必須科目、これに加えて、刑法か経済原論のどちらか1科目を選択します。

まず、公務員(行政職)試験で必須の行政法が存在しません。行政法が苦手な方には受験しやすい試験といえるでしょう。

また、必須科目の憲法・民法は他の公務員試験と重複するため、試験対策が非常にしやすいといえます。

しかし、「刑法」は裁判所事務官ならではの出題となります。通常、刑法は他の試験では出題されないか、地方上級で2題程度の選択問題となっているため、公務員試験用の勉強として行うことはあまりありません。
ですが、裁判所事務官の仕事が、実際に法廷で働く仕事ですから、業務上必要な知識となってきますので刑法が試験科目に入ってきます。

しかし、多くの公務員(行政職)受験生が、裁判所事務官を併願していることから、「刑法」の変わりに「経済原論」を選択することもできます。経済原論とは、いわゆるミクロ・マクロ経済学のことをいい、公務員(行政職)受験生にとっては主要科目となります。

例年、多くの受験生が、刑法ではなく経済原論を選択し最終合格をしていますので、法学部生でない人は経済原論を選択する方が得策ともいえます。
もっとも、裁判所に入所すると、経済原論は一切使いませんが、刑法の勉強は必須になります(書記官試験の必須科目です)。したがって、合格の先を見据える場合には刑法を選択するのも非常に有効でしょう。

3−2 専門試験の対策方法

裁判所事務官の専門試験は択一試験と記述試験があります。他の公務員試験と異なる部分も多いですが、

3−2−1 択一試験の対策

択一試験では、憲法7題、民法13題、刑法/経済原論10題が出題されます。いずれも、総合職試験と共通の問題になります。
裁判所の試験ということで、「難しそう!」というイメージをもたれる方もいますが、実際には公務員試験でよく出題される基本問題が多く出題されています。また基本をしっかり理解しているかという良問が多くなっています。

したがって、裁判所事務官だからといって特別な対策が必要なわけではなく、公務員試験の過去問集を使って知識を定着させることで十分得点することができます。

■注意点①
法律3科目では、学説問題が出題されることがよくあります。
たとえば平成27年度の憲法の試験では、「公共の福祉」についてA説・B説・C説を紹介したうえで、各説について述べた記述の正誤を問う問題でした。しかし、このテーマも基本中の基本で、過去の裁判所の試験でもほぼ同様の問題が出題されています。したがって、過去問集をしっかり問いていた受験生は簡単に正解にたどりつく内容となっています。

■注意点②
法律3科目では、正誤問題が非常に多くなっています。
正誤問題とは、
「〜に関する次のア〜エの記述の正誤の組合わせとして最も適当なものはどれか」という出題に対して、
「ア正 イ誤 ウ正 エ誤」のように、全ての答えの正誤が合っている選択肢を選ぶ問題です。
これは各記述について確実に分からないと答えが出ない問題であり、難易度が上がります。

したがって、なんとなく過去問集を回すのではなく、基本問題について確実に暗記をしていく丁寧な作業が必要になることを、特に意識してください。

■注意点③
刑法か経済原論のどちらを選択するかは悩ましいところですが、早めにどちらを選択するかを決めましょう。
経済原論がとても難しかった年度もありますが、必ずしも毎年そういうわけではありません。逆に、刑法が難しい年度もあります。

経済原論では、正誤問題が少ない一方で、計算をしてその数値を選択肢から選ぶ問題も半分程あるので、数学が苦手な人にとってはとっつきにくい印象があるかもしれません。

いずれにしても、どちらの科目も一長一短ですし、受験年度によって難易度に大きな波がありますので、早めに選択科目を決定して、選択した以上は迷わずその科目の理解を深めていってください。
なお、ロースクール卒業生や、裁判所事務官・専願の受験生は、迷わず刑法で問題ないでしょう。

3−2−2 記述試験の対策

総合職・一般職の共通問題として、憲法の一行問題が出題されます。一行問題とは、たとえば、「財産権について論じなさい。」といった問題をいいます。

この一行問題では、書き出す論点が決まっています。条文・趣旨・判例・学説等、時間内に読み手に分かりやすくただ書き出すだけです。
対策としては、一行問題用のテキストや問題集をただ暗記し、本番で書けるようにするだけです。

直前期には、各予備校で記述対策講座を単発で売り出していますし、書店には公務員試験用の記述の問題集がいくつか販売されています。

独学で対策される方や予備校だけの対策で不安な方は「公務員試験 論文答案集 専門記述 憲法(早稲田経営出版)」が、論点が比較的よくまとまっており、解答例も使いやすいものとなっているためおすすめです。

公務員試験 論文答案集 専門記述 憲法 〈第2版〉
公務員試験 論文答案集 専門記述 憲法 〈第2版〉

年明け2月頃から3か月かけて暗記する時間を設けられれば、合格点がつきます。もっとも、暗記したものをいざ実際に書き出してみると、思っている以上に正確に書けないことが多いです。なので、大学の先生や予備校等を利用して、1度添削を受けることも有効な手段です。

一方、総合職では、民法・刑法・訴訟法の出題があります。こちらは、一行問題ではなく、事例問題になっています。問題を読んで、何が論点かを抽出し、それについて知識を吐き出し、自分の見解も書いていくというものなので、難易度がぐっと上がります。

難関私大や国立大学の法学部の定期試験のレベル〜ロースクールの入試のレベルと把握しておくとよいでしょう。(司法試験のような超長文を読解させるものではありません。)
このレベルの市販の問題集はほとんど出版されていませんので、法学部生以外の人は、予備校等のなんらかの利用が必要になるかと思います。また、一行問題以上に、添削してもらうことが重要になります。
大学のゼミの先生や、予備校の講座で添削してもらい、何が足りないのかをしっかりと把握して実力をつけてください。

3−3 教養試験の対策方法

基礎能力試験(択一式)という名称で、総合職では30題(知能27+知識3)、一般職では総合職の30題に知識問題が10題追加して(つまり合計40題)出題されます。

基礎能力試験は、ほとんどの公務員試験で出題され、難易度や範囲も大卒程度の公務員試験とほぼ同じです。したがって、他の公務員試験を併願される人は、裁判所事務官用の対策を特別に設けることは必要ありません。

具体的に、平成27年度裁判所事務官(一般職)の基礎能力の出題数を紹介します。

現代文5題、英文5題、判断推理6題、数的推理10題、資料解釈1題
政治2題、経済2題
法学、日本史、世界史、地理、思想、物理、化学、生物、地学は各1題
(合計40題)

判断推理・数的推理・資料解釈といった数的処理系が17題出題されていますので、ここでかなり差がつくところになります。
もっとも、数的処理系はどの公務員試験でも近年重視されていますので、過去問や模試などを問いて、力をつけていただきたいと思います。

ところで、知識系(法学、日本史、世界史、地理、思想、物理、化学、生物、地学)はたった1題ずつしか出題されていません。
このたった1題のためにどれだけ力を入れるかが問題となります。

私大文系の受験生には、物理や化学、生物、地学を始めから捨ててしまう人がいますが、完全に捨てるのはおすすめしません。

たとえば平成25年度の試験では、化学「気体の性質」、生物「DNA」が出題されています。これらは超頻出分野で、予備校テキストや模試ではメインで扱う分野です。実際の問題はやや細かい知識で得点率は低かったようですが、分野としては是非学習しておきたいものでした。出題年度によっては、頻出分野について非常に簡単な知識問題が出題されています。

また、地学では「地球の構造・火山」といった分野が出題されました。昨年から全国で火山の噴火が問題になり話題となっていたわけですので、出題されてもなんらおかしくないテーマでした。実際の内容も消去法で比較的簡単に答えが出る問題だったようです。

もちろん手に負えない細かい分野が出題されることもよくあります。これは、ほとんどの人が解けませんので差がつきません。
しかし、基本的なテーマが出題されたときに、知識系を完全に捨てた人と、基本分野を万遍なく学習していた人との差が出ます。その結果、合否に影響することになります。
したがって、知識系については、頻出分野(過去問集で傾向が分かります)だけはしっかりとインプットしておくことをおすすめします。

3−4 政策論文・小論文の対策方法

総合職は政策論文、一般職は小論文が出題されます。

◼︎政策論文の対策(裁判所事務官・家庭調査官補共通課題)

政策論文は資料から課題を読み取らせ、その対策を検討させる形式です。(過去問については裁判所のHP掲載されていますが、著作権の都合で掲載されていません。)

平成27年度は「グローバル社会に適応できる人材を育てるための対策」、平成26年度は「家庭裁判所がより国民にとって利用しやすい裁判所となるための方策」といったテーマが出題されました。

政策論文が出題されるようになってまだ数年であり、過去問がほとんどありません。以前は裁判所に関するテーマが出題されていましたが、ネタが切れたのか、平成27年度は一般社会論がテーマでした。
したがって今後も、裁判に関係なく幅広く教養のテーマが出題されると考えられます。

政策論文では、①資料(文献や統計)を時間内によみとり、②そこから課題を抽出し、③自分の意見を書き出します。これらは大学でレポートを書き上げる際に自然に身に付く基本的な力とも言えます。
とりたてて対策は不要ですが、予備校の模試で1度経験しておくことをおすすめします。

◼︎小論文対策

政策論文と異なり資料はついていません。テーマについて自分の意見を述べるものになります。

平成27年度では「いきいきとやりがいを持って働くことができる良好な職場環境を整える上で、あなたが重要と考える要素を検討し、その実現に向けた方策について論じなさい。」という内容が出題されました。

例年テーマは様々ですが、「だれもが書ける」テーマしか出題されません。裁判所に関するテーマは出題されていませんので、安心してください。
また、出題意図をだいたい把握したうえで、日本語として文章が成り立っており、自分の意見を書いている人は合格しているようです。

多くの受験生は特別の対策をしていませんが、文章力に苦手意識がある人は、大学受験の小論文の問題集(資料を読み取るタイプでないもの。)を軽く読んでおくとよいでしょう。

また、日頃からニュースや新聞の社説やコラムを読んで、いま話題になっている社会問題についてのさまざまな意見を収集しておくと、本番に役立ちます。

3−5 面接対策はD評価を取らないようにしよう!

裁判所事務官の試験は人物重視といわれています。それは、裁判所事務官(一般職)の場合、面接の点数(配点比率)が全体の10分の4を占めるからです。

また、面接はA、B、C、Dという評価で、Dは不合格となります。したがって、まずはDをとらないことが絶対条件になります。

ではDをとってしまう人はどんなタイプか紹介します。

①裁判所の仕事を全く理解していない。(行政職とは全く異なる仕事です。)
②公務員試験の併願先のひとつとしか考えていない。(志望動機から、裁判所が本命でないことが分かる。)
③声が小さい。(これはどの試験でも論外。)
④裁判所を利用する国民とコミュニケーションをとれそうにない。

特に④が重要なポイントです。
裁判所には、トラブルをかかえた多くの国民が毎日やってきます。その国民をまず相手にするのが裁判所事務官・書記官になります。そのような国民にいかに親身に手続を説明できるかが重要な仕事になります。

したがって、たとえばプライドが高い人、(法学部生にありがちな)理屈っぽい人、話し方の感じが悪い人、暗い人、調子のよい人は、どんなに成績がよくても、頭の回転が速くても、面接官が裁判所事務官としてのコミュニケーション力が不足しているととらえられてしまいます。

この部分をクリアできた人は、実際の面接でC、Bを確保し最終合格することがほとんどです。

よく裁判所事務官は女性に有利といいますが、これは、受験生全体をみたときに、女性の方が、国民が安心できるコミュニケーションをとれることが多い現れではないかと思います。そういう意味では、公正に判断していると思います。

男性でも、接客業の経験者や、民間企業で渉外経験のある方などは上位で合格しています。(1位合格が男性であることも非常に多いです。)

このような点をふまえて、面接対策をしていくことが重要となります。
(志望動機については【試験種別】絶対に合格するための公務員の志望動機の考え方を参考にしてください)

4 裁判所事務官の難易度は国家一般職・都庁ⅠBとほぼ同じ

裁判所事務官のレベルは、総合職・一般職ともに、筆記試験(教養+専門)のレベルは国家一般職や都庁レベルと考えられます。
また、受験層もほぼ重複しているため、国家一般職や都庁IBの合格者が裁判所事務官に合格することは非常に多いです。

もっとも、裁判所には専門科目の記述式試験がありますので、これらは他の試験種とはなかなか比べられませんが、国家総合職(法律区分)の筆記試験よりはやや易しく、都庁ⅠBと問題のレベルは近いですが、採点が非常に厳しいといえるでしょう。

なお、裁判所事務官(総合職)の場合は、採用人数が非常に少ないという意味で、他の試験に比べ難易度が極めて高いともいえます。しかし、試験問題自体の難易度はそれほど高くありませんので、専門科目の記述対策を十分にできれば合格できる可能性が十分あります。

なお、家庭裁判所調査官補については、試験科目が行政職と異なり特殊のうえ、採用人数も全国で50名程度となっており、こちらは狭き門になっています。しかし、試験科目が特殊ということから受験生の数はしぼられてきます。
したがって、最初から無理だと諦めずに、戦略的に試験対策をすることで合格を勝ち取っていただきたいと思います。

5 まとめ

裁判所事務官(総合職・一般職)について平成27年度の情報を参考に紹介してきましたが、①総合職といえど超難関というわけでないこと、②一般職は、ほかの公務員(行政職)試験と十分に併願できること、を知っていただけたかと思います。

公務員の受験先の1つとして考える人は、重複しない科目(刑法)の手をぬかないこと、裁判所事務官のみを受験される方は、専門科目が少ない分、高得点を狙うこと、を意識して勉強をすすめていってください。

また、必ず受験する年度の「受験案内」を自分の目で確認してください。
大幅な変更の場合は、10月頃〜年内に裁判所のホームページに「お知らせ」が掲載されるかと思います。

特にインターネット上の情報は、最新の情報を掲載していない場合もよくありますので、くれぐれも注意しましょう。

裁判所事務官・書記官の仕事について知っておきたいこと

裁判所というと裁判官しかイメージできない人も多いと思いますが、実際に裁判所を動かしているのは裁判所事務官・書記官になります。

特に裁判所書記官の仕事は専門性が非常に高く、知れば知るほど魅力的なものです。

ここでは、裁判所事務官と書記官の仕事について具体的にまとめてみたので裁判所事務官を目指している人は参考にしてみてください。

1 仕事からみる裁判所の組織

裁判所の組織は、大きく「裁判部門」と「司法行政部門」に分けられます。

1−1 裁判部門

裁判部門の各部署(事件部)には裁判官・裁判所書記官・裁判所事務官が配置され、裁判の審理・手続に携わります。
※家庭裁判所には、家庭裁判所調査官がさらに配置されます。

■地方裁判所の組織の一例
民事部
−通常部
−特殊部(破産や執行事件を処理する専門部など)
−訟廷事務室(記録の管理や、民事部職員の管理事務等)

刑事部
−通常部
−特殊部(令状の事務を行う専門部など)
−訟廷事務室(記録の管理や、刑事部職員の管理事務等)

■家庭裁判所の組織の一例
家事部
−刑事部
−訟廷事務室(記録の管理や、家事部職員の管理事務等)

少年部
−刑事部
−訟廷事務室(記録の管理や、少年部職員の管理事務等)

1−2 司法行政部門

司法行政部門には裁判所事務官が配置され、裁判事務が合理的・効率的に運用されるために、人員や設備などについての職務を行います。
なお、書記官資格をもっている事務官も管理職として多く配置されます。

■司法行政部門の組織の一例
事務局
−総務課(庶務全般、広報等)
−人事課(採用や異動、給与、研修等)
−出納課(裁判所で扱われるお金の管理等)

※裁判所の規模によって、部署の名称や分類方法が若干異なります。

2 裁判所事務官の仕事

裁判所事務官の枠で公務員受験をした場合、採用後は全員が裁判所事務官からスタートします(その後、内部試験に合格すると書記官に任官することになります)。

1で紹介したように、裁判所の仕事は裁判部門(以下、裁判部)と司法行政部門(以下、事務局)に大きく分かれ、採用後はいずれかに配属されることになります。

それでは、それぞれついて仕事の内容について説明していきますので参考にしてください。

2−1 裁判部の仕事は書記官の補助が中心

裁判部とは、民事部や刑事部、家事係・少年係(家裁)などのように、具体的に裁判事件を扱う部署になります。各部には、裁判官+書記官+事務官が配置されています(なお、家裁には家裁調査官も配置)。
裁判官は「裁判審理」のプロとして、書記官は「裁判手続」のプロとして仕事をしていきますが、その書記官の仕事を補助する仕事が事務官の主な仕事になります。

たとえば民事部では、絶えず窓口に法律事務所の職員や弁護士などが事件の書面を持参したり、郵便やFAXで送付してきます。それを確実に受付し、担当書記官に引き継ぐ仕事があります。
書類の受理以外に、裁判期日の呼び出し状や判決書の発送準備もあります。書記官の指示に従って、法律に規定される手順で適格・迅速に処理をしていくことになります。

その他、裁判所では毎月統計資料を作成しています。全国の何万件という裁判がどのように審理され結審したかなど、各部署でデータを作成し最高裁の担当部署にあげることになっています。
データは裁判所独自のシステムを使って作成しますが、それを行うのが事務官の仕事になります。システムが更新された場合は、マニュアルを読み込み理解することも必要になります。事務官になってパソコンが少し得意になるようなこともあるようです。

2−2 司法行政部門は組織の運営が中心

裁判所も、民間企業と同様に一つの大きな組織ですので、その組織を運営するための部門が必要になります。それが事務局で、各裁判所(たとえば東京地裁、東京高裁等)にそれぞれ存在します。

事務局には事務官が配置されますが、書記官の資格を持っている職員(有資格事務官)が配置されることもよくあります。特に管理職については書記官の方が多いようです。

事務局の部署には、たとえばみなさんが受験の際に真っ先にお世話になる人事課があります。人事課では、採用に関する手続、受験当日の準備等を行いますが、その他にも裁判所内の人事異動の手続、各種研修や、給与等に関する事務も人事課の各係で担当します。
東京地裁のように、職員が1000人を軽く超えるような部署ではその事務が膨大となり、年末調整や採用時期の繁忙期には、かなり残業も増えるようです。

また、裁判所も1つの組織として運営していくためにお金を扱いますが、それを担当するのが出納課といわれるところになります。出張費などはこの出納課に請求しますし、裁判所ならではとしては、たとえば保釈金などの取扱いも出納課で担当したりします。

その他いろいろな部署がありますが、たとえば最高裁判所には、最高裁判所裁判官のスケジュール等を管理する秘書官という仕事があったり(いわゆるお茶汲みではなく、とても重要な業務を扱っています)、裁判所で使うデータを開発する情報政策に関する部署などもあります。

事務局の仕事を嫌いずっと裁判部で仕事をする人もいますが、裁判部よりも事務局の仕事の方が面白いという人もいます。

裁判所は非常に組織が大きいため、適性や希望を考慮してくれるというメリットがあります。

3 裁判所書記官の仕事

ここまでは「裁判所事務官」の仕事について説明してきましたが、ここからは「裁判所書記官」の仕事について説明していきます。

裁判部では、事務官の仕事はあくまで書記官の補佐に過ぎず、固有の権限がないため雑務が多いのが現状です。したがって、事務官に採用されたら絶対に書記官を目指す方がよいですし、裁判所に入ると管理職から書記官試験を受けることを前提に話をされることも多いです。

では書記官はどのような仕事をしているのか紹介しますので参考にしてください。

3−1 裁判所書記官は訴訟手続の専門家として活躍できる

書記官は固有の権限が与えられており、その権限に基づき様々な職務を行います。具体的には、法廷立会、調書作成のほか、執行文の付与、支払督促の発布など、事件の当事者が権利を実現するために必要な文書を発行する職務を担います。
実は、裁判所は裁判官だけでは存在しえない機関であり、書記官という存在が必要になるのです。

たとえば、刑事部では保釈請求や被告人の身柄拘束といった仕事があります。これらは人権に直接関わる事務であり、迅速性だけでなく絶対的な正確性も追求される仕事になります。

また裁判員裁判を担当する刑事部の書記官は、裁判員の選任手続にも立ち会います。長期にわたる裁判員裁判の場合は裁判員自身の負担も重くなるので、できるだけ短期間に裁判ができるように裁判官と綿密に準備を行います。また裁判員に対して適切な応対をとることも、書記官の重要な仕事になります。

司法制度を正確に理解し、それを運用していく重要な役割を担っています。

民事・刑事など裁判所の種類にかかわらず、国民の人権や財産に直接関わるという点で重大な責任がある一方、やりがいを感じられる仕事といえるでしょう。

3−2 オフィスワーク中心だが常に対外的な仕事

書記官は、書記官室と法廷との往復が一般的で、いわゆるオフィスワーク中心になります。たとえば、民事1部という部署には裁判官室と書記官室という執務室がつながっており、書記官室で書記官や事務官が仕事をします。

しかし実際の仕事は、書記官室に訪れる弁護士・弁護士事務所職員・当事者への応対や説明、証書の交付、証人や通訳人との連絡、裁判員の応対など、裁判所以外の人と常に関わる仕事といえます。

また、事件によっては裁判官と現場検証に赴くことがあります。たとえば東京から沖縄への現場検証が決定されると、日帰りでの出張は厳しいため出張先で一泊することになります。

しかし近年、公務員全般にいえることですが、旅費(出張費)の請求は大変厳しくなっており、日帰りが可能なら日帰りを強いられますし、最低限の費用しか支給されないため、古き良き時代のような楽しい出張とはいえないようですので、大きな期待はしないほうが無難でしょう。

4 裁判所事務官・書記官に向いている性格(求められる力)

事務官・書記官の仕事に向いている性格(求められる力)には、以下の3つが最低限必要と考えます。

①丁寧な応対力
②組織力
③作業を正確にできる力

①丁寧な応対力

裁判所に訪れる人がやり手の弁護士ばかりならよいのですが、実際には、初めて裁判を担当する弁護士や司法修習生、法律事務所のお使いできている若手の事務員の方であったり、さらには、弁護士は絶対につけないといって自分で訴訟を進める頑固な当事者などもいます。ときどき、日本語がままならない方が裁判所で迷子になっていることもあります。廊下で突然騒ぎ出すような尋常でない人もいます。

このようないろいろな来訪者に、その都度、適切に対応できることが求められています。

決してサービス精神が旺盛であるとか、饒舌であるということは求められません。誠実に丁寧に応対できることが必要になります。社会人経験のない学生の場合は、一般的には男性よりもやや女性の方が得意にするところともいえます。したがって、応対力に自信のない男性はその点を意識して大学生活を過ごす事も大事でしょう。

②組織力

民間企業、特にベンチャー企業では個性が重視されることもしばしばですが、裁判所には限らず公務員全体にいえることでもありますが、仕事の中で個性はあまり求められません(私生活がとても個性的な方はたくさんいます。)。
自分の意見をもちながら、組織の状況に常に配慮し動いていくこと、組織の中で問題を起こさないことが必要です。

たとえば裁判部では、それぞれの膨大な数の事件を裁判官・書記官・事務官で常に恊働して扱うことになります。事務官の仕事は書記官の補助にすぎませんが、窓口を捌いてくれる事務官が1日欠席しただけで、書記官の仕事が遅れだし、ひいては裁判官にも影響することもあります。
※有給はしっかりとれますが、仕事の状況に応じて計画的にとることが一般的です。

このように、組織の一員として全員が協力して働くことが絶対に必要となっています。新しい政策ではなく、今あることを法律等に基づいて着々と進めていく仕事だと思って下さい。
もし個性を活かして新しいことをどんどん推進したいという方は、裁判所は向いていないと思います。むしろ、まちづくりなど新しい政策を次々に進める地方自治体の方が向いているでしょう。

③作業を正確にできる力

1つのミスが、国民の人権・権利を侵害してしまうことになります。

たとえば、「渡辺さん」と「渡邉さん」は全くの別人になるので、1字1句、常に注意する必要があります。
また、裁判所から当事者に裁判の書面をFAXで送付することもしばしばありますが、FAX番号の数字を1つ間違えただけで、全く違う人に裁判の書面が届き、個人情報が簡単に漏洩されてしまうのです。

このようにちょっとしたミスすら許されないのが裁判所の仕事です。職務中は、大量の書類やたくさんの電話に気が散ってしまうのが現状ですが、そんなときでも正確に仕事を処理していく力が必要となります。

もっとも、この力は仕事をする中でも身に付いていくので、必要以上に気にすることはないでしょう。

しかし、「渡辺さん」も「渡邉さん」も一緒じゃん!と思うような方は、裁判所にはあまり向いていないといえるかもしれません。

5 書記官になると転勤することもある

仕事の内容からも、事務官はあくまで書記官になるためのステップと考えるのが裁判所の立場です。事務官より、昇級ペースが早いので、給与の面でもやりがいの面でも書記官になることをお勧めします。

しかし、書記官に任官するときには転勤を伴う可能性があります。これはあくまで可能性にすぎず、事務官のときと同じ裁判所に戻ってくる場合もよくあります。

ケースバイケースとしか言えませんが、首都圏以外の県で事務官をしていた人は、少なくとも同じ道府県の裁判所に配属される傾向があるようです。

たとえば、栃木県出身の宇都宮地裁の事務官が、書記官になっ足利支部(栃木県内)に配属され、数年後、また宇都宮地裁に戻ってくるというように、県内で異動する方もよく聞きます。

東京地裁の事務官が、書記官として東京地裁に配属されることももちろんあります。

ただし、東京(霞ヶ関勤務)の事務官が書記官になるときは、年度によっては大量に地方の県に書記官として飛ばされることがありますので、その点だけは覚悟だけはしておきましょう。数年後、霞ヶ関に戻ってくることは多いようです。

裁判所事務官の転勤については知っておきたい裁判所事務官の転勤情報に詳しくまとめていますので参考にしてみてください。

6 まとめ

裁判所の仕事を少しだけでもイメージすることができたでしょうか。

裁判所では、ドラマよりも複雑な事件がたくさん扱われています。そのような事件の渦中にいる人たちを、裁判手続のプロとしてサポートしていくのは、とても魅力ある仕事といえるでしょう。

専門家としてたくさんの事件に携わって、裁判の運営を支えていってほしいと思います。

知っておきたい裁判所事務官の転勤情報

裁判所事務官を目指して勉強をしている受験生は多いかと思いますが、転勤があるのかどうか気になるのではないでしょうか。

中には公務員になりたいけれど転勤はしたくない、転勤をしたとしても引っ越しまではしたくない、と考えている人もいるかと思います。

ここでは、そうした転勤について悩んでいる人のために元裁判所事務官の経験から裁判所事務官の転勤事情をどこよりも詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。

1 裁判所事務官は採用された管轄区域内で転勤がある

裁判所事務官に採用されると、転勤の可能性があります。その転勤の範囲は、基本的に受験時に申し込んだ各高裁管内の範囲内となります。

この高裁管内とは、全国に存在する8つの高等裁判所(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)がそれぞれ管轄する区域を指します。 たとえば、 東京高等裁判所の管轄区域は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、新潟県、となっているため、東京高裁管内で採用されると、これら1都9県で勤務する可能性があることになります。

そのため、例えば現在東京に住んでいる人が東京高等裁判所の管轄区域で採用されて長野に転勤となった場合は転居を伴う転勤となってしまいます。

 

各高裁管轄区域は以下のとおりとなります。(参照元:「平成27年度裁判所職員採用試験受験案内」)

大阪高裁管内:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県
名古屋高裁管内:愛知県、三重県、岐阜県、福井県、石川県、富山県
広島高裁管内:広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県
福岡高裁管内:福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県
仙台高裁管内:宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県
札幌高裁管内:北海道 高松高裁管内:香川県、徳島県、高知県、愛媛県

※これまでは裁判所事務官の総合職採用は全国で採用し全国に配属される方法をとっていましたが、平成27年から、一般職同様に管轄区域での採用・勤務に変更されました。

なお、勤務地で1つ注意しておくことは、たとえば東京都に採用されても、必ずしも霞ヶ関勤務ではないということです。東京都の場合、西の方に立川支部という比較的大きな裁判所があります。ここは23区でなく東京の西部、立川市にありますが、当然都内の裁判所ですので勤務地となります。

また、札幌管内は「北海道のみが勤務地で転勤がない!」と道外の方は勘違いしそうになりますが、北海道には札幌、旭川、函館、釧路という地裁管轄があり、釧路転勤も十分にありえます。(札幌〜釧路の走行距離は約320キロとされており、これは東京〜仙台間の約350キロの走行距離より若干短い程度の距離になります。つまり、転居を伴う転勤になるので、札幌管内はそのような北海道特有の事情を考慮しなければなりません。

このように、裁判所事務官は原則として採用された管轄区域内での転勤があるということを知っておきましょう。

2 採用の際は勤務先の希望は通らないことが多い

裁判所の受験案内には勤務地として管轄区域が明示されていますが、果たして採用の際に自分の希望は通るのでしょうか?

まず、採用されたときの最初の配属先についてですが、正確には転勤とは言いませんが、受験生にとっては気になるところかと思います。

たとえば東京高裁管内の受験生は、やはり東京・神奈川・埼玉・(千葉)の裁判所で勤務したいという希望が圧倒的に多くなっています。 しかし、新人事務官全員の希望をかなえるだけの事務官のポストがありません。

 

そこで裁判所では、一般的に「合格者名簿の席次順(=合格順位)」に配属先を打診していき、「希望を聞いて」割り当てていく形をとっています。したがって、上位で合格すればするほど、自分の希望地に配属される可能性が高くなります。

東京高裁管内では毎年150名程度採用しています。しかし、首都圏に全員を配属するだけの空きもありませんので、人気のない地方都市にもだれかを配属することになります。 東京生まれ東京育ちの人が、1年目の採用で縁もゆかりもない群馬県や新潟県などの裁判所に任官することもあります。これは男性、女性関係ありません。近年は、男女の採用比率がほぼ平等になっていますので、女性だけ優遇するということもないようです。

 

なお、採用試験の面接時に、「勤務希望地等調査票」というものを裁判所に提出します。この調査票には、希望勤務地を第3希望まで記入することになっています。 しかし、合格者名簿の席次(合格順位)によっては必ずしもその希望がとおらないこともありますので覚悟しておきましょう。

なお、この調査票には、 「勤務希望地に採用されない場合」という欄があり、

□どこでもよい
□(     )の地域を除けばどこでもよい
□採用を希望しない

にチェックをいれることになっています。

どうしても合格したい人は、□どこでもよい、にチェックをすべきですが、親の介護や乳幼児の育児など特殊の事情がある場合は、後者2つにチェックすることも可能です。 しかし、それが採用にどう影響するかは当局しか知り得ないところになります。 採用面接時に質問されますので、しっかり事情を伝えることが必須となります。採用試験は相対評価ですので、もし後者2つにチェックをするのであれば採用されないリスクも覚悟すべきでしょう。

3 書記官になると転勤することがある

採用時に配属されたところには、基本的には3年以上は勤務することになります。 特に、東京都や大阪府などの大規模長で採用された場合、裁判所書記官にならずに裁判所事務官でいる以上は、長く同じ裁判所で勤務することが多くなっています。

もっとも前述したように、東京都といってもいくつか裁判所があるので、東京地方裁判所(霞ヶ関)→民事執行センター(目黒)、といった都内の裁判所の中での異動はあります。

一方、採用時に希望しなかった地方に配属された人が、2、3年後に希望の裁判所に戻れるかどうかは確証がありません。大都市圏は人気のある激戦区ですので、そのポストの空きがなければ異動がかなわないこともあるわけです。

 

では地方配属になってしまった事務官は、そこに住み続けなければならないのでしょうかというと、そのようなことはありません。 毎年の上司との面談で異動を訴え続けるほか、「書記官」に任官するときには大きな転勤が伴う可能性があります。

この書記官になるには原則として、裁判所内部の試験を受けて、それに合格すると埼玉県にある研修所で1〜2年、全国の裁判所事務官の仲間と研修を受けます。その後、卒業試験に合格すると書記官に任官し、それぞれの裁判所に配属されることになります。配属先については、必ず面談をしてくれて希望をくみあげてはくれます。

たとえば、乳児を保育園に預けながら研修を受ける女性も珍しくありませんが、さすがにそのような女性に、突然、現在の住居から転居を伴う他県に配属するようなことはないようです。

残念ながら結婚をしただけでは、つまり子どもがいない状態では、必ずしも希望がかなうとは限りません(かなうこともあるようですが)。また、20代独身で自由の身の場合には、容赦なく地方都市や、もしくは交通の便が悪い支部に配属されることもあります。これは男女関係ありません。

 

しかし、これも書記官のポストがあるかないかの問題なので、首都圏勤務の希望を出して、ほとんどの人が首都圏に配属された年もあれば、ほとんどの人が地方配属になった年もあります。 また、東京という大都市圏はやや特殊であって、地方の場合はまた状況が異なることもあるようです。地方の裁判所から書記官研修所に来た人は、書記官に任官するときに同じ裁判所に戻るということも珍しくないようです。

これらは、裁判所に採用されてから、人事課や諸先輩に話を伺ってほしいと思います。

その後はしばらく大きな転勤はないことが多いようです。 もっとも、事務官時代に東京地裁に勤務していた人が、書記官になったときに地方の裁判所に配属された場合、希望を出せば、その3〜6年後に東京に戻してくれるという人事は行われています。

4 昇進しても転居を伴う転勤はありえる

書記官任官後、次の大きな転勤は、主任書記官(管理職)として任官する場合になります。だいたい30代後半〜50代くらいで任官することが多いのですが、このときは、転居を伴う異動が多いようです。 しかし、ここで異動しても、大都市から地方への転勤の場合は、希望すれば、3〜6年で大都市の裁判所に戻ってくる主任書記官(管理職)がたくさん存在します。

30代後半であれば育児、40代以降であれば介護の問題も発生してきますので、ある程度考慮はされているように感じます。しかし、100%考慮されるわけではないので、特に育児中の女性は、主任書記官になることを大きくためらう方も多くいます。

なお、主任書記官になったあとに更に上の役職に昇進していく場合、同様に管内での転勤があります。官職が上がる度に転勤することもありますが、これもポストの空きの問題があります。

主任書記官は基本的には各部署に1〜2名、また司法行政部であれば課長補佐も課長もそれぞれ1名、といったように人数が決まっています。 したがって、昇進のタイミングにそのポストがどの裁判所に存在するのかによってくることになります。

ずっと東京近郊だけを回りながら(たとえば、東京簡裁→東京地裁→東京高裁→最高裁→東京高裁のように)出世した人もいれば、あらゆる県を回りながら出世していく人もいます。

ここまで述べてきたように、採用時、書記官任官時、管理職昇進時には、都府県をまたぐ転勤の可能性が十分にあります。

5 結婚や持ち家、介護などが理由でも転勤は避けられない

裁判所の転勤は、民間企業にありがちな、突然辞令がおりて「行ってきて!」という命令とはやや異なります。一応、上司との面談を繰り返し行ったうえでの転勤になります。

ただ、子どもなしの結婚の場合は、子どもありの夫婦よりは配慮されないことも考えられます。 首都圏の場合は交通網も発達していますし、また通勤時間が2時間以内なら十分に通勤圏内と考えられていますので、県をまたいでも夫婦として同居生活を行うことは十分に可能ですし、現実にそのような夫婦もいます。

持ち家があっても単身赴任を3〜6年くらいすると、地元に戻してくれることも実際に多いです。ここは、容赦なく全国を転々とさせられる家庭裁判所調査官や裁判官と異なり非常に考慮してくれているように感じます。

結論としては、家庭の事情で転勤を断ることは昇進を断ることにもつながりますが、ある程度勤務地を配慮してくれる余地があるということです。 ケースバイケースとしかいいようがありません。

6 給与は転勤先の地域により異なる

ここまで読んで裁判所事務官になったら転勤は避けられないな、と感じたかと思いますが、さらに気になるのは転勤したら給料がどうなるのか?ということではないでしょうか。

例えば、地方に転勤になったら給料が安くなってしまい生活が苦しくなるのでは、という不安もあるかもしれません。

結論として、転勤先の地域によって給料変わります。

これは裁判所事務官に限らず、国家公務員全てに適用されます。 国家公務員の手当の中には地域手当というものが存在します。これは、その地域の民間賃金水準の反映や物価等をふまえ、民間賃金の高い地域に勤務する職員には手当を上乗せするというものです。

人事院規則9−49(地域手当)の附則別表にその加算割合が記載されていますので参考にしてみてください。 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18F22009049.html

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上図のように、特別区は百分の十八(つまり18%)となっているので、現在は東京都特別区の勤務(たとえば東京地裁等)は、基本給に18%が加算されます。もちろん加算なしの地域もあります。

この割合は事情により変更されます。割合についてはここ10年でも変更がありましたし、今後も変更されるでしょう。

一見不公平にも感じますが、住居費を考えるとやむをえないとも考えられます。 民間の調査によると以下のようになっています。

1Kの家賃相場

・東京都23区(平均23.6㎡) 7.6万円

・大阪市(平均23.1㎡)  5.3万円

・札幌市(平均24.3㎡)    3.3万円

(2011年9月 ホームアドパーク調べ)

物価は全国ほとんど変わりませんので、現実問題として、大都市圏と地方との住居費の差額を埋めてくれるのが地域手当ともいえるでしょう。

実際に、東京で一人暮らしをしている職員よりも、地方に住んでいる人の方が貯金が貯まったという話を聞くこともありました。

7 転勤はデメリットばかりではないということも知っておこう

転勤って引っ越しをしなければいけない可能性はあるし、地域によって給料も変わるしで、あまりいいことがないのではと感じる人も多いかと思います。

しかし、転勤はこのようなデメリットばかりではないということも知っておいてください。

裁判所の仕事は、霞ヶ関や大阪本庁の仕事が圧倒的に事件数が多く、激務となることが多いです。特に事件部であれば裁判官の異動時期の3月には判決ラッシュとなるので、書記官の仕事も膨大になります。 大規模庁の人事課は、年末や採用時期には終電の日が続きます。土日出勤もあります。

一方、事件数が少ない地方では、勤務時間中はたしかに忙しくても、定時もしくは残業も2時間程度であがれることがほとんどのようです。

仕事にゆとりがあると精神的にも余裕が出ます。 勤務後は行きつけの飲み屋に通ったり、帰宅して勉強するのもよいでしょう(裁判所書記官の仕事は常に勉強が必要です)。

地方転勤になった裁判所職員の友人には、地方で乗馬を習ったり、ゴルフを始めた人もいました。都心では時間・費用的になかなかできないことを余暇として楽しめるわけですね。

地方転勤から霞ヶ関に戻って来たとたん、鬱病になるような方もいるくらいですから、やはり、ワークライフバランスをとるという意味では、一時的な転勤は視野の広がり人生において十分なメリットがあると感じます。

さらに、同じ場所で同じメンバーと何年もいっしょに仕事をし続けることは非常に窮屈なものです。裁判所職員にもいろいろな方がいるので、ずっと一緒にいると好き嫌いも出てくるものです。そのような負の環境を変えるチャンスがあるということがいかによいことかは、働いてみると身にしみて感じるとことでしょう。

このように転勤をすることは決してデメリットだけではないということを知っていただければと思います。

8 まとめ

いかがでしたか?裁判所事務官の転勤についてはかなり詳細に知れたかと思います。 裁判所事務官は転勤を避けられず、場合によっては転居を伴うこともありえるので、職場を転々をする人にとっては気になるかもしれません。 しかし、転勤をすることのメリットもありますし、転勤の有無だけでは測れない仕事の魅力もあります。 ぜひこの記事を参考に、自分は仕事を通じ、将来どのようなライフスタイルを送っていきたいかを考えていただければと思います。