筆記試験対策

公務員試験の論文の書き方について講師が詳しく解説します

公務員試験では、択一試験、面接試験のほか、論文試験(※)が実施されることも多くあります。択一試験では、社会人として求められる知識と事務処理能力を主に判断し、面接試験では受験生の人柄や採用側との相性を判断しています。

論文試験では受験生の何を判断しているのか?どんなテーマが出題されているのか?
このようなことが気になる受験生も多いことかと思います。

面接重視の傾向にある公務員試験ですが、論文試験も重要な試験のひとつです。

論文はセンスだ、対策をしてもあまり意味がないということをよく聞きますが、それは間違いでありしっかりと対策をしなければ合格することはできません。

ここでは公務員試験の論文試験ついて知っておくべきことや対策について詳細に説明しています。
これから対策を始める方、そして始めてみたけれども不安に感じている方は参考としていただき、少しでも合格に近づいてください。

※自治体等によって論文試験、作文試験など呼び方が若干異なります。ここでは、専門論文試験(法律・経済などの専門的知識を問う試験)ではなく、受験生の見識や関心などを問ういわゆる教養記述試験をまとめて「論文試験」とします。

1 論文試験の評価要素と重要性

論文試験は国家一般職や地方自治体の行政職等で実施されることがあり、特に都道府県庁でよく出題されています。北は北海道から南は沖縄県まで、多くの都道府県で採用されています。

論文試験の「評価要素」は各受験先の受験案内などに「論文試験の内容」として掲載されていることがあります。
たとえば以下のように記載されています。

「社会事象への関心、思考力、論理性等を問います。」
(平成28年特別区Ⅰ類 採用案内)

「文章による表現力、課題に関する理解力などについての短い論文による筆記試験」
(平成28年国家一般職(大卒程度) 受験案内)

「思考力、創造力、論理力、柔軟性等についての筆記試験」
(平成27年度神奈川県職員採用試験のお知らせ)

「見識(社会事象に対する基礎的知識や、論理的思考力、企画提案力、文章作成力などを問います。)」
(平成27年大阪府職員採用試験案内)

自治体等で表現の違いや要素の若干の違いはありますが、評価要素は主に以下のとおりとなっています。

論文試験の評価要素

①論理性、論理的思考力
②理解力
③社会への関心度
④表現力

さらに、市町村を含めた地方自治体では、受験生の主体性や積極性といった人物的な面も評価されているといわれています。

近年、公務員試験では特に面接重視と言われていますが、実は論文試験も決して手を抜けない重要な試験です。
論文試験は1次試験に実施されたり2次試験に実施されたりと様々で、しかも配点を公表していない自治体がほとんどです。

その中で配点を公表している神奈川県をみてみましょう。

■神奈川県行政

・第1次試験
教養試験(択一式40題)・・・配点100点、専門試験(択一式40題)・・・配点100点

・第2次試験
論文試験(記述式)・・・配点100点
グループワーク・・・配点50点
第1回個別面接(15分)・・・配点50点、 第2回個別面接(30分)・・・配点200点
※最終合格者は、第2次試験の結果のみで決定。
(引用元「平成27年度神奈川県職員採用試験のお知らせ」)

神奈川県は第1次試験の結果はリセットされる方式なので、論文が実施される第2次試験の配点をみてみましょう。

さすが面接重視の自治体なだけあり、面接の配点が非常に高くなっています。

しかし、第2次試験400点満点中、論文は100点を占めます。グループワークや第1回個別面接の2倍の配点です。

グループワークは当日のメンバーに若干影響されたり練習する機会が少ないこと、第1回個別面接は面接時間が短いためあまり点数に差がつかないことを考慮すると、しっかり対策をすれば点数が必ず伸びる論文でできるだけ点数を稼ぐべきといえるでしょう。

グループワークで失敗しても、論文で十分に挽回できる配点になっています。

では別の視点から愛知県の採用案内をみてみます。

■愛知県行政Ⅱ
(専門試験に代え、論文試験や面接試験などにおいてその能力を評価する試験種。)

・第1次試験・・・教養試験30点(択一式50題)、論文試験15点
・第2次試験・・・口述試験(面接)55点
※各試験科目の成績が一定基準に達しない場合、他の試験科目の成績にかかわらず不合格となる(つまり科目ごとの足切りあり)。
(引用元「平成27年度愛知県受験案内」)

こちらも面接重視で、配点が半分を超えています。しかし、その面接の前にまず第1次試験を突破しなければなりません。

たしかに論文試験の配点は15点ということで全体の配点比率は低くなっています。

しかし、教養試験の択一式は50題で30点の配点です。専門試験の択一と異なり、教養試験は範囲が膨大で細かい知識や超難問が出題されることもあります。

つまり、合格者の中ではさほど差がつかない傾向があります。各種模試等の傾向を見てみても、教養択一については25点前後に合格者が多く分布していることが多くなっています。

このように考えると、択一式ではあまり差がつきません。

したがって、論文で少しでも差をつける必要が出てきます。少なくとも、論点違いの論文や表現力に乏しい論文では1次合格も難しくなるでしょう。

さらに、足切りがあることにも注意が必要です。

どの自治体も面接の配点は高くなっていると思いますが、択一試験よりも論文試験を重視する傾向もあるようです。また、上述のように択一試験では合格者が同じ点数付近にかたまって分布しているため、論文試験でしっかりと得点する必要も生じてきます。

論文試験だからといって手をぬかない、これが最終合格への重要事項になります。

2 論文試験の過去の出題テーマと特徴

論文試験の過去の出題を知ることは、論文対策の重要なポイントになります。
近年は、各自治体が過去2、3年分の出題例をホームページ上に掲載していることも多いので、興味のある自治体について過去問を掲載していないか確認してみましょう。

2−1 地方自治体の論文テーマと特徴

以下、ランダムに各自治体で公表している論文出題テーマを紹介します(引用元は全て自治体ホームページから)。

それぞれコメントを入れています。自分とは全く関係ない自治体であっても、コメントから地方自治体の論文テーマの特徴が見えてくると思いますので参考にしてみてください。

北海道(大卒程度、一般行政・教育行政・警察行政) H26年度

「北海道新幹線の開業は、本州との移動時間の大幅な短縮に伴う道内外との人的・物的交流の活発化など、地域再生の起爆剤として期待されている。
今後、開業効果を広く波及させるため、解決すべき課題について述べるとともに、道の財政状況を踏まえ、道が優先して取り組むべきことについて、あなたの考えを述べなさい。」

コメント:北海道新幹線の開業(平成28年3月)が決まり、北海道では特に話題になっていたので予想もしやすかったテーマ。北海道の財政状況は最低限知っておく必要がある。また、本州とは異なる北海道の地理的条件などの特徴にいかに言及して論じられかがポイント。

仙台市(大卒程度事務) H26年度

「地域の魅力を発信していくことの必要性と、その際に行政が果たすべき役割について、あなたの考えを論じなさい。」

コメント:非常にオーソドックスな地方自治体向けテーマ。但し、仙台市の魅力・仙台市政について理解が不足していると、一般論で終わってしまう危険性が高い。一般論で終わった場合は不合格答案の可能性が高い。

川崎市(大卒程度、行政事務) H27年度

「川崎市では、急速に変化する近年の社会経済状況などに対応する「新たな総合計画」の策定に向けて検討を進めています。
総合計画とは、これからの川崎市の目指すべき方向やそのための取組内容を明らかにする、10年間程度のまちづくりの計画であり、川崎市の将来に向けた道しるべと言えるものです。
そこで、「10年後の川崎市をどのようなまちにするべきか」という川崎市の将来像について、現在の社会情勢や今後の社会環境の変化などを踏まえながら、あなたの考えを述べてください。」

コメント:川崎市の本命度を論文で試しているかのようなテーマといえる。特別区と併願する受験生も多いからか…。論文対策と面接対策がかなりリンクしている。十分な論文対策が必要といえる。

愛知県(大卒程度) H27年度

「グローバル化が進展する中、愛知県が世界中の人材や資本を取り込んで飛躍するためには、何が必要と考えるか。」

コメント:愛知県ではH20年〜H24年の期間で「あいちグローバルプラン」、次いでH25年〜H29の期間で地域の特色を生かした「あいち国際戦略プラン」を策定している。愛知県の受験生なら当然知っておきたいテーマであった。

H26年度
「非正規雇用の拡大について考えるところを述べよ。」

コメント:H27年度と異なり、拍子抜けするような一般テーマ。だからこそ、しっかりと知識などを整理して準備していた人と、そうでない人の差が大きく出るため、はっきりと合格の明暗が分かれる。

大阪市(事務行政) H27年度

「通常、公務と民間企業の違いとして、経済的利益の追求と社会的問題の解決の違いであるといわれることが多い。しかしながら、現在では、NPO*1、ソーシャルビジネス、CSV*2など社会的問題の解決に公務以外が取り組むことも多く、その重要性も増している。公務として取り組む課題と業務の範囲はどのように考えるべきか。
その状況下であなたが公務を目指す理由について、あなた自身がこれまで学んできたこととこれまでの経験などを踏まえて述べてください。
*1 NPO(Nonprofit Organization):非営利団体
*2 CSV(Created shared value) :共有価値の創造」

コメント: NPOはともかく、CSVという用語に面食らった受験生も多かったかもしれない。
論文対策をしっかりしていた受験生は高度な論文に仕上げられたであろうが、そうでなくても面接対策として必須の「公務」について論文試験の段階で追求できていれば乗り切れたのではないか。

福岡市(大卒程度) H27年度

「福岡市は,政令指定都市となって今年で43年目を迎えます。現在,政令指定都市は20都市ありますが,福岡市が政令指定都市であることのメリットと,そのメリットを生かし,今後,福岡市はどのように発展していくべきか,あなたの考えを述べなさい。」

コメント:そもそも政令指定都市の役割を知識として知っていないと書きあげられないテーマであり論文対策が必須となる。地方自治体を志望する受験生は早い段階から行政の役割を調べておく必要がある。これはそのまま面接対策にもなる。

2−2 特別区の論文テーマと特徴

例年1万人以上の申込者がいる特別区では、論文が合格の重要なカギになり、論文に泣く受験生も毎年多数発生しています。

特別区では論文の配点は公表していないので生の受験生情報になりますが、択一試験の素点がギリギリだったにもかかわらず、1次合格しさらに最終合格は2桁代の上位合格だった!とか、択一の素点はかなり高かったのに1次不合格だった!など、教養論文がいかに重要かを伝えるエピソードが毎年寄せられています。

特別区の出題テーマについては、親切にも全試験種の過去問を3年分掲載してくれていますので、是非確認してみましょう。

まず、特別区Ⅰ類採用試験では、
「論文の課題は2題あり、このうち1題を選択してください。」
となっています。
当日選択できるのは精神的に良いですね。

平成27年は次の2題が出題されました。

「地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を上げるようにしなければなりません。特別区ではすでに、自治体事務のアウトソーシングとして、公共施設の指定管理などを行っていますが、施設の利用者が増大する一方で、様々な課題も見られます。
このような現況を踏まえ、自治体事務のアウトソーシングについて、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。」


「人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくいという現実に直面しています。誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て、介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう仕事と生活の調和が求められています。
このような現況を踏まえ、ワークライフバランスの実現に向け、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。」
(引用元:「特別区人事委員会 採用試験情報」HP)

以上の課題をみて、簡単に感じましたか?難しく感じましたか?

テーマ自体は地方自治体でよく出題されオーソドックスなもので、難易度は2題とも標準レベルだと考えられます。
特に課題2は受験生にとってかなり書きやすいテーマでした。少なくとも受験生ならそう感じられる程度に準備しておく必要があります。

最近の傾向として、「特別区の職員として」の取り組みを論じる形式になっています。一般論ではなく、受験生自身が特別区の職員になったことを想定した書き方が必要になります。ここで受験生の主体性や積極性を伺うことができます。
また、「特別区」という行政主体ができることをしっかり理解していることが必要になります。

以下、各課題についてどのようなことを軸に書けばよかったのかをコメントしますので参考にしてみてください。

課題1について

地方自治体の受験生であれば誰しも「自治体事務のアウトソーシングが進められている」という現状は知っておく必要があります。
では、なぜアウトソーシングが進められているのか、どんなメリットがあるのでしょう。
「住民ニーズ」というキーワードに触れて簡単に論じておくべきでしょう。

しかし、民間事業者に依頼したことで様々な問題も生じます。経費削減からくるデメリット、情報番組やネット上でも話題になったTSUTAYA図書館の選書問題など、自分の頭の中の情報を引き出し整理していきましょう。

そして、このようなアウトソーシングから生じる課題を行政がどのように関わって解決していくのかを、後半にしっかりと論じていくというテーマでした。

行政職受験生として知っておきたい用語「PPP=Public Private Partnership(官民恊働)」
「指定管理者制度」用語自体を論文中に使用しなくても問題ありません。しかし、これらの知識があるかないかでは、論文に大きな差がつきます。このような知識は面接にも大いに役立ちます。

課題2について

受験生でワークライフバランスという言葉を知らない人はいないでしょう。特別区に限らず多くの公務員受験生が準備をしているテーマともいえます。
しかし、ワークライフバランスのテーマは比較的書きやすく、イロイロと書きたくなってとりとめもない論文になるリスクがあります。締まりのある論文にまとめることがポイントになります。

ワークライフバランスが重要なのは分かっていても、現実問題としてその実現は難しい、それはなぜなのか。子育てや介護のために、特に女性は仕事を諦めざるをえない現状など。たくさんの問題があります。

これらの問題に対する行政の対応を後半でしっかりと論じていきましょう。
前半でたくさんの課題・現状が出てくると思いますが、その中から論点を自分でいくつかに「絞る」という決断が必要になります。

※課題1より2を選択した受験生の方が多かったかもしれません。
しかし、書きやすいテーマほど注意してほしいところ。知識面ではあまり差がつかないからこそ、その知識の深さや文章構成力、表現力の実力差が如実に表れてしまうのです。

特別区の論文対策については特別区の論文試験の基本から対策までトコトン解説の記事も併せてご覧ください。

2−3 国家一般職の論文テーマと特徴

国家一般職(行政区分)は1次試験に「一般論文試験」が課されます。「文章による表現力、課題に関する理解力などについての短い論文による筆記試験」という内容になっています。

配点は全体の1/9と低めです。行政区分では専門択一が4/9と非常に高くなっているので、一般職についてはやはり専門科目の対策が1番といえるでしょう。

しかし、公表されている合格者の決定方法には、「基準点に達しない試験種目が一つでもある受験者は、他の試験種目の成績にかかわらず不合格となります。」とあります(いわゆる足切り)。しかも、記述式試験の基準点は個別に定めるとしかないので、油断は禁物です。

国家一般職の論文と特徴として、以前はグラフや表などの資料解釈を通じて論じていく問題が続いていました。ただ最近は形式が変わり、抜粋分などの文章を読んで設問(1)(2)に答えるという形式になってきました。

今後、どちらの形式でも出題される可能性が高いので、前者にも慣れておくとよいでしょう。

平成25年の採用試験では以下の課題が出題されました。

「以下は平成 24 年版科学技術白書の抜粋である。これに関し(1)及び(2)の問いに答えなさい。
『東日本大震災は,自然の猛威を前に,我々が築いてきた現代文明がいともたやすく破壊され,多くの尊い命が失われてしまう現実を,さらには,これまで日常生活を豊かにしてくれていた科学技術の限界や,社会・経済システムの脆弱さを我々に突き付けた。(ア)今回の震災が科学技術の 各分野や科学技術政策に投げかけた課題は深く,重い。

しかしながら,「社会の新たな問題はさらなる科学技術の発展によって解決される」と思っている国民の割合が,震災を契機に低下したものの依然として6割を超えていることからも明らかなように,国民の科学技術の発展に対する期待は,震災を経た今もなお強い。想定を大きく超えた今回の地震及び津波に対しては,従来の科学技術の成果が必ずしも国民の期待に応えられなかった面もあるが,一方で,地震に際して,緊急地震速報により東北新幹線が緊急停止し被害拡大を防いだこと,耐震補強技術により甚大な被害を免れた橋梁等の例もあったことなど,科学技術が被害拡大防止に貢献した面もある。

また,戦後から,河川堤防等の治山治水事業の進展やアメダス,気象衛星等の導入などにより,我が国が自然災害に耐え得る強靱さを備えてきたこともま た事実である。
今後,政府は,震災が投げかけた様々な課題に真摯に対応していくことを通じて,国民からの 信頼の回復に努めるとともに,我が国が震災からの復興茜再生を果たし,将来に向けて持続的に発展していくために,その原動力となり得るのが科学技術であるということにも思いを致しなが ら,(イ)社会の要請に応えた科学技術の振興に努めていかなければならない。』

(1) 下線部(ア)について,東日本大震災が科学技術の各分野や科学技術政策に投げかけた課題は何か。 あなたの考えを具体例を交えながら述べなさい。
(2) 下線部(イ)について,(1)で述べた課題を解決し,今後,社会の要請に応えた科学技術を振興して いくためには,どのような取組が必要となるか。あなたの考えを述べなさい。」
(引用元:「国家公務員試験採用情報NAVI」)

科学技術白書の抜粋分からの出題でした。当然、白書は読んでいなくても問題ありません。国家一般職では、(1)→(2)と誘導してくれるので、高校の数学の問題のようにある程度は書きやすい形式にはなっています。
そこで内容面で合否が決まっていくことになります。

この論文では、政府が、東日本大震災の課題と対策を、科学技術の側面から論じることが求められています。つまり国が取るべき防災対策を論じることになるでしょう。
防災対策の論点はオーソドックスなテーマで準備している受験生がほとんどだと思いますが、今回は基礎自治体としての取組みではなく、国としての取組みだということを注意して論じてほしいと思います。

ところで震災が投げかけた科学技術面の課題と問われて、悩んでしまう受験生もいるかもしれません。そんなときは、震災時の混乱を思い出してみて下さい。

通信状態はどうだったでしょうか。被災地はもちろん被災地から遠く離れた地域であっても、携帯がつながらず安否確認がとれないなど、不安を感じた人も多かったと思います。携帯はつながらないけど、SNSはつながる!ということで、SNSの情報共有が盛んに行われましたね。

このように情報通信の面から取組みを論じることができます。

教養論文では、専門的な知識は必要ありません。一見難しい内容に思えても、実は自分が経験したことを素材にしていることがほとんどです。

予備校では専門的な用語も含めて論文対策を行うこともありますが、細かい知識に溺れず、まずは社会的に大きな話題になったもの(娯楽系の情報番組などでも取り上げられるような誰もが知っている話題)について、何が問題でそれについて行政がどのように取組みできるのかを、その都度意識しておくとよいでしょう。

3 公務員試験の論文の書き方・対策について

さて、ここでは具体的にどのようにして論文を書いていけばよいかを確認していきます。
公務員試験の論文では名文を書くことは求められていません。合格レベルの論文にさえ仕上げられればよいのです。

その合格レベルの論文は、
(1)形式面
(2)内容面
の側面から判断することができます。

(1)形式面

①誤字・脱字がないこと

各自治体等でどのように評価しているかは不明ですが、たとえば誤字・脱字1字につき1点減点する方式や、誤字・脱字の量によって「表現力」を低く評価するといった方式がとられます。
合格スレスレの答案が、誤字・脱字で不合格答案に格下げになるのは非常に残念です。これは「見直し」をすることで防止できます。

②指定された字数を守っていること

たいていの論文試験では、1000字以上1500字以内や、1200字程度という指定があります。指定されたルールを必ず守る必要があります。これを守らないと大きく減点されることでしょう。

「何字程度」という指定があった場合は、一般的には8割以上、できれば9割以上の字数で書いてほしいと思います。1200字程度という指定なら、960字以上(できれば1080字以上)になります(このあたりは厳密に考える必要はありませんが・・・。)
この位書かないと、出題者の意図を理解して答えていない不十分な答案ということにもなり、内容面でも評価が低くなります。

③主語・述語が対応していること

受験生の答案をみていて「わかりにくい・意味が伝わらない」と思う答案は、たいてい主語・述語が対応していません。例えば、以下の例をご覧ください。

「私の目標は、〇〇市の職員として住民ニーズをしっかり把握し、そのニーズを実現していきたい。」

いかがでしょうか?
述語が「実現していきたい」という意志を表しているのに、主語は意志をもたない「目標は」になっています。本来であれば次のように書くべきです。

「私は、〇〇市の職員として住民ニーズをしっかり把握し、そのニーズを実現していきたい。」
もしくは
「私の目標は、〇〇市の職員として住民ニーズをしっかり把握し、そのニーズを実現していくことである。」

1文が短ければ、書いている途中で主語と述語が対応していないことに気がつくことが多いのですが、1文が長いと(文章を書き慣れている人ですら)主語と述語が対応しなくなってくることがあります。
したがって、1文の文字数はほどほどにするということを意識しましょう。

形式面については以上のほか、④原稿用紙を正しく使えていること、⑤句読点を適切な位置に打っていること、⑥文体(ですます調/である調)が一貫していることなどが挙げられます。

形式面で減点されることにならないように、文章を書く際には常に意識しておきましょう。

(2)内容面

①出題意図を正しく理解していること

論文を書く出発点であり、論文の肝ともいえるのが「出題者の意図を理解すること」になります。

出題者は、「こういうことを書いてほしい」という意図をもって問題文を作成しますので、それとは的外れなことを書いてしまっては、どんなに素晴らしい内容であったとしても、あっというまに不合格答案となってしまいます。

問題文が長文だと一見難しく感じるかもしれませんが、むしろ長文の方がヒントがたくさん隠されていることが多いです。問題文を大まかに読むのではなく、細分化して分析することで、出題者の意図がみえてきます。
あわてずに問題文を何度も読み返してみましょう。

②根拠・理由を説明していること

論文は作文とは異なります。小学生の時にたくさん書かされた作文は、①自分の経験や体験→②それに対する感想を書いていくものです。

しかし論文は、①事実や意見に対して→②自分の判断を理由を付けて主張すること、をいいます。

読み手を説得できるような根拠・理由を、客観的に述べていく必要があります。その根拠・理由の深さが、内容の深さにつながります。その根拠・理由の深さは、テーマに対して日ごろから情報を得たり、考えたり、議論をすることで深まります。
そういう意味で、論文対策やはり必要といえるでしょう。

③主体性・積極性がみられること

特に基礎自治体の論文では、「〇〇市の今後の取組み」について論じさせることが多くなっています。
答案の前半で、“〇〇市の現状→問題点”を指摘することは当然必要なのですが、自治体の現状についてしっかりと調べているが故に、前半を長々と書いてしまい、結局それに対する取組みが浅い論文になってしまうことがよくあります。ひどい場合は、市政の批判が論文の中心となってしまうこともあります。

そこで、書き始める前に全体の構成をしっかりと考えることが重要なポイントになります。
現状・問題点に対する「取組み」を後半で深く書き上げることで、受験者の行政職員としての主体性や積極性といった前向きな態度をみることができるのです。

4 まとめ〜文章を書くのが得意な人、苦手な人〜

文章を書くことが得意な人ほど論文対策を後回しにし、場合によってはぶつけ本番ということがあります。
しかし、制限時間内に字数を守って合格答案を書くことは、思っているほど簡単なことではありません。特に最近は、鉛筆やペンで直に長文を書くことがほとんどないので、頭で思ったことを最後まで書ききれないということがあります。

したがって、文章を書くことが得意な人でもある程度の論文対策(準備)は必要といえます。

一方、文章を書くことが苦手な人でも論文対策をしていれば十分に合格答案を書くことができます。なぜなら、公務員試験の論文のテーマはある程度しぼられるからです。さらに、書き方もある程度の型があるとも言えます。

地方自治体の論文対策は、そのまま面接対策にも役立ちます。

択一試験の勉強が最優先にしつつ、論文対策もできるだけ早い時期から少しずつ始めていくと、精神的に余裕をもって試験日を迎えられることでしょう。

公務員試験に3ヶ月〜半年の短期間で合格するために必要な戦略

公務員を目指している人の中には現在民間企業などで働いていたり、卒論やバイトが忙しくてなかなか勉強時間が取れないという人もいるのではないでしょうか。
中には就活をしていて、公務員を目指しているという場合もあるでしょう。

公務員試験の合格に必要な勉強時間は1000〜1500時間といわれており、期間にすると半年〜1年はきちんと勉強しなければ受からない試験だというのが世間一般の認識となっています。

しかし、「時間がないから3ヶ月〜半年など短期で公務員試験に合格したい」という人が多くいます。

結論から言ってしまえば短期合格は可能ですが、闇雲に勉強を始めるのではなく、受験先を絞り、戦略的に学習を進めていくことが重要です。

もともとの知識量やどの試験を受験するかといった部分に大きく左右されますので、ここでは公務員試験についての知識がほとんどない状態の人が大卒レベル事務系の公務員試験を受験するための短期合格のために知っておきたいことをお伝えします。時間のない人は参考にしてみてください。
(1年など時間が取れる人は公務員になりたい人必見!公務員試験の対策と勉強法を全解説!を参考にしてしっかりと対策することをおすすめします)

1 まずは受験先を絞ることが重要

短期で合格するためには受験先をある程度絞るということが重要になります。ここでは短期合格のために受験先のポイントをお伝えします。

1-1 専門試験がない試験を検討する

ご存知の方も多いと思いますが、公務員は国家公務員と地方公務員に大別され、それぞれが実施する試験を受験することになります。

細かく見ると、大卒レベルの受験者が志望するのは国家公務員であれば国家公務員総合職、国家公務員一般職、国税専門官、裁判所事務官、地方公務員だと都道府県庁、市役所、特別区、国立大学法人といったところでしょう。
(詳しく知りたい人は公務員の種類について知っておきたいことをご覧ください。)

ではこの中からどれを受けるべきか?それを決めなければなりません。

この中でも国家公務員総合職、国家公務員一般職、国税専門官、裁判所事務官といった国家公務員試験や地方公務員試験でも都道府県庁や政令指定都市などの地方上級試験と呼ばれるものの一部は筆記試験のレベルが比較的高いため短期合格は比較的難しくなります。

もし、難関大学の出身でもなく、大学で法律や経済を専攻しているのでなければ(専攻してても知識がほとんどなければ)、教養科目だけを課す(専門科目がない)自治体や国立大学法人などを受験するのが短期合格への近道でしょう。

中には3ヶ月以内で国家公務員などの試験に合格したという方もいますが、公務員試験は元々の知識量や確保できる時間などに大きく左右されるため、そのような話を鵜呑みにしないのが懸命です。

参考までに、比較的大きな自治体は専門科目が課せられるのが一般的ですが、札幌市、千葉市(行政B)、横浜市、相模原市、新潟市(一般行政B)、静岡市、名古屋市(行政一般)、大阪市、北九州市(行政Ⅰ)は専門科目試験が課せられないので候補に入れてみてもよいでしょう(受験の際は必ず最新の情報を見てください)。

主な試験は以下のような日程で行われます(平成29年度の日程)。

4/30(日)  国家総合職試験
5/7(日) 東京都Ⅰ類B(一般・新方式)
特別区Ⅰ類(一般方式)
警視庁警察行政職員Ⅰ類
東京消防庁職員Ⅰ類(事務)
5/14(日) 東京都Ⅰ類A
裁判所職員(裁判所事務官)
裁判所職員(家庭裁判所調査官補)
6/11(日) 国税専門官試験
財務専門官試験
6/18(日) 国家一般職(大卒程度)
6/25(水) 市役所(A日程)
7/2(日) 国立大学法人等職員採用試験
7/23(日) 市役所(B日程)
8/13(日) 東京都キャリア活用採用
9/3(日) 特別区Ⅰ類(新方式)
特別区経験者採用
国家一般職(高卒・社会人)
税務職員(高卒)
9/10(日) 特別区Ⅲ類
東京都Ⅱ類Ⅲ類
東京消防庁職員Ⅲ類(事務)
警視庁警察行政職員Ⅲ類
裁判所事務官(高卒者区分)
9/17(日) 市役所(C日程)
9/24(日) 地方公務員試験(短大卒程度・高卒程度)
10/16(日) 市役所D日程

政令指定都市以外の市役所であればB日程やC日程、D日程といった日程が遅い市役所の試験があり、こうした市役所試験は教養科目のみというところが多いです。

ちなみに、半年ぐらい時間のある人は、特別区は専門科目こそありますが基本的な問題が中心となりますので短期集中で取り組むことで合格は十分に可能な試験ですので、検討してみるのもいいでしょう。(特別区の試験対策は特別区試験対策カテゴリの記事を参考にしてください。)




1-2 SPIで受けられる自治体を受ける

近年、特に地方公務員は学力ではなく人物重視の傾向となっており、様々な試験を導入するようになっています。

その中でも教養試験の代わりにSPI試験を課す自治体もあります。

SPI試験は民間企業を受ける方であればおなじみの試験で、以下のような内容について答えていく試験です。

SPI試験の内容

SPI=「能力検査」「性格検査」で構成

能力検査=「言語分野」+「非言語分野」

  • 言語分野→語彙に関する知識・簡単な文章理解 
  • 非言語分野→計算力や論理的思考を問う問題

性格検査=人となりを把握する試験

29年度は以下の自治体(一部)でSPIを試験科目として取り入れました。

  • 埼玉県所沢市 
  • 千葉県市川市
  • 東京都西東京市
  • 神奈川県平塚市、鎌倉市
  • 愛知県豊川市
  • 大阪府吹田市、箕面市 など

民間の就活をしていない場合、「そもそもSPIの試験対策が難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、ご安心ください。

SPI試験は公務員試験の勉強をしていれば十分に対応できるほどのレベルであり、決して難しくはありません(公務員試験の教養試験よりも相当易しいです)。

問題のパターンは決まっているので市販の問題集を繰り返して解くことで確実に得点することができます。

勉強が苦手で、短期合格を目指すのであればこのような自治体を受験することも視野に入れてみるとよいでしょう。

1-3 「民間志望者歓迎」の自治体を受ける

先ほど地方公務員は人物重視の傾向となっているとお伝えしましたが、中には「民間志望者歓迎」と謳っている自治体もあります。

例えば、東京都(新方式)の採用ページでは以下のように説明がされています。

グローバリゼーションの進展による国際競争力の強化、高度防災都市の実現、環境エネルギー戦略の展開。
都政が担うフィールドが一層広がっている今、東京都は「首都公務員」として活躍できる、様々な資質・能力を備えた多様な人材を求めています。
だから、東京に関心のある方にもっと都政へチャレンジして欲しい。
民間企業への就職を考えている方はもちろん、理系学部出身者も大歓迎です。
こうした想いから、1類B行政区分に、公務員試験のための特別な対策が不要な、新しい試験方式を設置しました。

東京都は通常の試験である「一般方式」のほかに、こうした理由で平成25年度試験より「新方式」の採用試験を実施しています。専門試験と論文試験を行わないため、勉強時間が確保できない人にもチャレンジしやすい試験といえます。

ただ、あくまで「教養試験」は実施されるため、それなりの対策は必要です。

他にも、神奈川県(秋季チャレンジ)や愛知県行政Ⅱ、国立大学法人などが民間志望者歓迎としているため、このような試験を行なっている試験も検討してみるのもよいでしょう。




1-4 筆記が受かりやすい=論文・面接が重視される!

ここまで読んでいただいて「もしかしたらイケるかも!」と思われた方も多いかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。

よく考えてみてください。筆記試験がない(もしくは易しい)ということは一次試験に合格する人が多くなる、ということです。

そうすると、論文と面接が非常に重要視されるということです(特に面接)。

特に地方公務員の場合は、面接試験の配点が他の試験に比べて高い場合が多く、いくら筆記試験や論文試験が得点できたとしても、面接がうまくいかないと簡単に落ちてしまいます。

例えば、試験の配点を公開している横浜市の場合では、以下のように配点となっています。

■横浜市(平成29年度事務職試験)

一次試験 二次試験 三次試験 総合点
一般教養 面接 一般論文 面接
一次試験 610 610 610
二次試験 200 100 300
三次試験 15 30 15 600 660

三次試験では、一次試験と二次試験の結果を三次試験にある点数を満点として換算し、第三次試験(面接)の結果と総合して決定します。

つまり。いくら一次試験で得点しても総合点の660点のうち最高で15点にしかならないのです(三次の面接試験はなんと600点!)。

 

また、面接を重視している自治体は試験自体の内容についても注目するべきです。

1-3で紹介した東京都の場合、「一般方式」と「新方式」で以下のような試験内容の違いがあります(平成30年度試験)。

一般方式一次試験
教養試験・専門試験・論文試験

二次試験
個別面接

新方式一次試験
教養試験・プレゼンテーションシート作成

二次試験
プレゼンテーション・個別面接

三次試験
グループワーク・個別面接

いかがでしょうか?
試験内容を比較してみるとよくわかりますが、新方式のほうは三次試験まで行われ、プレゼンテーションやグループワークも実施されるため、いかに筆記試験以外の要素が重要かがわかります。

これは東京都に限った話ではありません。

例えば市役所などは、筆記試験のレベルはそれほど高くありません。B日程以降の試験は同じように時間のない受験生や、他の試験に落ちた人、民間に勤めながらの受験など様々な人が受験する傾向にあるため比較的倍率は高くなります。

そして、これも結局、筆記試験はパスしやすいため、面接などが重要になるのです。

このように、筆記試験が楽だから合格が簡単、というのは短絡的であり、その先もしっかりと考えなければならないのです。

2 次に勉強する科目を絞る

公務員試験は試験科目が膨大です。教養試験と専門試験をすべて学習しようとすると以下のような科目をやらなければなりません。

一般知能

文章理解・・現代文、古文、漢文、英文
数的処理・・数的推理、判断推理、資料解釈

一般知識

人文科学・・日本史・世界史・地理・思想・文学・芸術
自然科学・・数学・物理・化学・生物・地学
社会科学・・政治・法律・社会・経済

専門科目(行政系)

法律系・・・憲法・民法・行政法・刑法・商法・労働法
経済系・・・経済原論・財政学・経済史・経済事情・経済政策・経営学
行政系・・・政治学・行政学・社会学・国際関係・社会政策

今回は教養科目だけで受験することを考えていますが、教養科目だけでも数的推理や判断推理などの一般知能、高校時代に学習した英語、数学、理科、社会、国語などの一般知識があり、全ての科目をやると20科目ほど勉強しなければなりません。

しかし、短期で合格を狙うのであれば、これらを全てやるのは非効率過ぎます。自分の受験する自治体の出題傾向を調べ、「捨て科目」を決めましょう。

捨て科目にする基準は、受験先の出題数が少なく、見るのも嫌で勉強したくない科目にするのがよいでしょう。

行政職(事務職)の受験生でしたら数学や物理を捨てる人が多いです。

また、日本史や世界史については出題数はありますが学習範囲が非常に広いので、受験先の出題数が多いもの(3題以上出題されるなど)や頻出の分野に絞って勉強するといった方法で学習を進めていきます。

公務員試験は日程さえ被らなければ複数の試験を併願することができるので複数併願するのが一般的ですが、その場合、受験先によって科目や出題数が異なるため、どの科目を勉強していくかをしっかりと考えなければならないので注意が必要です。

※数的処理は短期間での習得が困難!
いくら科目を絞ったとしても数的処理はどの試験でも数多く出題され重要科目となっています。
そのため、数的処理は捨てることができずしっかりと勉強しなければならないのですが、3ヶ月などの短期間で詰め込みで勉強をしても解けるようにならない可能性があります。
特に数学や算数が苦手とする人にとって数的処理は最も苦手とする科目である傾向にあるため注意が必要です。
数的ばかり勉強し他の科目に手が回らなくなっては意味がありません。
こうしたことから、数的が苦手な人はなるべく長期的に学習することをおすすめします。

3 アウトプットをしながら知識をインプットするのが効率的

通常、学習を進める場合は時間があれば、インプット→アウトプット、という流れで進めますが、試験まで時間がない場合はアウトプットしながら知識のインプットするのが効率的です。

というのも、公務員試験は教養試験だけでも科目が多く、また各科目ごとにそれなりに覚えることがあります。それを一からやっていては到底間に合いません。

3-1  過去問を「正しく」解いていく

どのようにアウトプットしてばいいかと、公務員試験に限らずですが、試験に合格するには過去問を解いていくということが鉄板です。

公務員試験で出題される問題は、過去の問題を少し変えたかたちで出題されるため、過去問を解いておくことで本番では似たような問題に遭遇するからです。

知識のない状態では過去問を解いてもほとんど解けません。ですが、それは当たり前ですし落ち込む必要はありません。

過去問はあくまで頻出分野についてインプットするために使うものであるため、解けなくても都度テキストなどで確認し、必要な知識をインプットしていけばいいのです。

これを繰り返すことで徐々に必要な知識がついていき、初見の問題でも解くことができるようになります。

ただし、公務員試験合格に必要な正しい過去問の解き方の記事も必ず読んでいただきたいのですが、過去問はただ漫然と解いても意味がありません。

過去問を解くこと自体が目的なのではなく、必要な知識をインプットするために解くということを忘れないようにしてください。

そのためには、一問一答式の問題のように一肢ごと正しいかどうか、違うなら何が違うのかをきちんと検討することが重要です。そして何度も繰り返すようにし、知識をしっかりと定着させていきます。

注意点としては、過去問を解いているとたまに国家総合職で出題されたような難しい問題が出てきますが、そのような問題は市役所レベルでは解ける必要はありませんし、他の受験生も解けない可能性が高いため時間の無駄でもあるので捨てましょう。

また、解説を読んでも理解できない問題もひとまずは保留で構いません。そのような問題は本番でも解けない可能性が高く、悩んでいる時間ももったいないです。

この辺りの取捨選択は3-3で解説する独学の難しさでもあります。こうした判断が難しいようであれば、予備校などに通うことも一つの手段です。

いずれにせよ、短期合格を目指しているのであればまずは基本的な問題を確実に得点することが重要です。

難しい問題は他の受験生も解けないので気にする必要はありません。とにかく効率を重視していきましょう。

おすすめの参考書などは大手予備校講師おすすめ!公務員試験で使える参考書まとめで紹介していますので併せてご覧ください。

3-2 模試も積極的に受ける

併せて、直前期は模試も活用してみることをおすすめします。

直前期は各予備校がヤマを張って問題を作っているので、本番で模試に出たような問題が出ることもありえます。

予備校によっては模試は本番よりも難しめに作られていたりしますが、基本的には本番を意識し、公務員試験によく出る分野について問題が作成されています(明らかな悪問は問題集に比べて少ないはずです)。

そのため、模試を定期的に受けることで現在の実力を計るだけでなく、必要な知識をインプットすることができるのです。

3-3 独学で勉強するかは慎重に考える

ここまでで、筆記試験についてやるべきことはなんとなく理解できたかと思います。

しかし、いざ勉強を始めたとしても様々なタイミングで必ず行き詰まることになるでしょう。

  • いくらやっても解けるようにならない
  • 解説を見ても解き方がわからない
  • いつまでに何をすればいいのかわからない
  • どこまで覚えればいいのかわからない
  • モチベーションが上がらない

公務員試験はある程度の量をこなすことでやり方が見えてきます。つまり、「量が質に転化」していきます。

しかし、間違った方向に努力をしても決してよい結果は生まれません。

基本的に公務員試験は独学でも合格可能です。しかし、先にも述べたように科目数が膨大であるゆえにその人が持つ本来の学力に大きく左右されてしまうのが現実です。

そのため、独学に限界を感じた場合、短期合格を狙うのであれば予備校に通い、頻出分野を徹底的に詰め込み、受験テクニックを身につけることをおすすめします(私は科目数の多さから最初から予備校に通いました)。

もし仮に、一次試験に合格したとしても二次試験では必ず面接試験が課せられるため、独学ではほぼ対策は不可能です。模擬試験や面接カードの添削などしてもらわなければなりません。

また、予備校ではわからないところもすぐに講師に聞けるため、無駄な時間を使わずに済みます。さらに論文試験を課す自治体を受験するのであれば自分が書いたものを見てもらい添削してもらうという作業が必要になります。

こうしたことから、間違った勉強をして時間を無駄にしないためにも公務員試験では独学ではなく予備校に通って勉強をしていくことをおすすめしています。

基本的にどこの予備校がいい、というものはありません。当たり外れは予備校というよりも担当する講師次第であるため、きちんと実績を出している予備校であれば問題ないでしょう。

予備校にするか個別指導のような塾にするかはそれぞれメリット・デメリットがありますので、公務員試験対策、予備校か個別指導どっちがいい?詳しく解説しますを参考にしてみてください。




4 面接対策は気を抜かずに対策すること

1-4でもお伝えしましたが、筆記試験が受かりやすい試験ということは、面接試験が非常に重視されてしまいます。

どうしても最初は筆記試験に合格することばかり考えてしまいますが、その先になる面接対策を気を抜くことができません。

公務員試験の受験生に多く見られがち、勉強ばかりできるガリ勉タイプという人は最近は合格しにくい試験となっています。

  • なんとなく公務員を目指している
  • コミュニケーションが苦手
  • 過去に頑張ったと言えることがない

こうした方は面接試験で非常に苦労します。ASK公務員でも面接対策をしており多くの受講生を見ていますが、このような方が多く、相当の対策が必要だと感じています。

不安に感じた方は大変ですが筆記試験も対策しつつ、同時進行で面接対策もしておくことをおすすめします。

まとめ

短期合格のためには効率的な学習が必須です。

そして、無駄な時間を徹底的に排除しましょう。
電車の移動時間などの隙間時間は暗記など有効活用し、少しでも多くの勉強時間を確保するよう努めてください。こうした時間の積み重ねが大きな差となって表れます。

また、筆記試験だけでなく面接対策まで目を向けて対策をしていくことも重要だということを忘れないようにしてください。

試験については様々な情報が出回っていますが、そうした情報に惑わされず、正しいやり方で芯を持って勉強するようにしましょう。

市役所で働きたいなら知っておきたい公務員試験や仕事のことについて

市役所で働きたい!けれどどうすれば市役所の職員になれるのだろう?

多くの人は市役所で働くために公務員試験に合格しなければいけないということを知りません。


市役所って窓口のイメージだけど実際どういう仕事をしてるの?どうせ9時5時の楽勝な仕事でしょう?

市役所というと窓口で住民票などを発行する人たちというイメージがあるかもしれません。そして決まって9時5時の楽勝な仕事だと思われがちです。

このように、市役所とは身近な施設ではあるものの、その実態は良く知られていません。
今回は市役所で働きたいのであれば最低限知っておくべきことを紹介していきますので、ぜひ一読していただき市役所で働くことのイメージを現実的なものにしてください。

1 市役所に勤めるには公務員試験を突破しなければならない

市役所の職員は地方公務員です。そのため、市役所で働くには地方公務員試験を受け、合格しなければなりません。

市役所の場合、各自治体で採用試験が行われるため、志望する自治体の採用ページから申し込みを行い受験の手続きをしましょう。

市役所試験のレベルについては、大卒程度の「上級試験」、短大卒程度の「中級試験」そして高卒程度の「初級試験」に分類されています。

「程度」となっているのは、必ずしも大学や短大を卒業していなければならないわけではなく、大学卒業程度レベルの問題が出題されるということです。そのため、年齢制限などの受験資格を満たしていれば高卒の方でも大卒程度の上級試験を受験することができるのです。

試験内容は市役所試験では「教養試験」「論文試験」「人物試験」が課されます。上級試験ではこれらに加え、「専門試験」が課される自治体もありますので、必ず志望する自治体のHPで試験内容を確認するようにしましょう。

教養試験および専門試験は以下のような科目が出題される五肢択一式の試験です。自治体によって出題科目や出題数が異なるため、志望する自治体の受験案内を必ず確認してください。

教養試験
・数的処理(数的推理、判断推理、資料解釈)
・文章理解(現代文、英文、古文)
・人文科学(日本史、世界史、地理、思想、文芸)
・社会科学(政治、経済、社会)
・自然科学(数学、物理、化学、生物、地学)

専門試験
・法律系(憲法、行政法、民法、労働法、刑法など)
・経済系(経済原論、財政学、経営学、経済事情など)
・行政系(政治学、行政学、社会学など)

人物試験は、通常の個別面接のほか、集団面接や集団討論、自己PR面接やプレゼンテーションを行う市もあります。
他には漢字や時事などの教養記述や適性試験、適性検査、体力試験を課す市もあり、実に様々な形で試験が行われているといえます。

それぞれの試験の具体的な内容については、公務員試験に出題される科目まとめ(行政・事務系)を参考にしてください。

市役所試験の特徴として、国家公務員試験や都道府県に比べ教養試験のレベルは比較的易しめで、配点もそれほど高くないということです。

教養試験が易しいというのは一見合格しやすいように思えるかもしれませんが、その代わりに面接や論文試験の配点を高くしているということです。中には教養試験が足切りにしか使用せず二次試験に加点しない自治体もあります。

つまり、市役所試験は人物重視の傾向が顕著で、勉強はできるけれどコミュニケーション力が低い人は面接や論文で足切りを受けてしまい不合格となってしまう可能性が高いということです。

なお、ここでいう「コミュニケーション力」とは、雑談やおしゃべりのことではなく、面接官からの質問に対して的確な回答をできる能力のことをいい、訓練次第でいくらでも向上させることができるので、市役所受験者は特に重点的に対策が必要です。

このように、市役所で働くためには様々な試験を突破しなければなりません。
「なんとなく市役所にでも…」という気持ちで合格するのは難しい試験となっています。これから市役所を目指す方は、どの自治体を受験し、どのように学習を進めていくかをまずは考えるようにしましょう。




2 市役所試験の日程について

市役所試験は試験の日程さえ被らなければいくらでも併願することができます。
実施される日程については自治体によって異なりますが、大卒程度の試験の場合主に以下の4パターンに分類されます。

①地方上級試験日(6月実施)
②A日程(①と同日)
③B日程(7月実施)
④C日程(9月実施)
※これらは例年の傾向であり、2020年はコロナの影響で大きな変更が出ています

各日程において試験が実施される自治体の一例を挙げます(A日程〜C日程は関東のみ列挙)。

地方上級試験 都道府県、大阪市を除く政令指定都市
A日程  市川市、船橋市、柏市、厚木市、大和市、春日部市、太田市、横須賀市、茅ヶ崎市、逗子市など
B日程  立川市、昭島市、小金井市、清瀬市、多摩市、稲城市、西東京市、成田市、佐倉市、鎌ケ谷市、印西市、秦野市、海老名市、つくば市、日立市、つくばみらい市、館林市、伊勢崎市など
C日程  八王子市、府中市、調布市、小平市、国分寺市、日野市、八潮市、和光市、入間市、越谷市、川口市、川越市、蕨市、草加市、銚子市、木更津市、我孫子市、君津市、水戸市、土浦市、日光市、小山市、那須高原市など

※政令指定都市とは人口50万人以上の都市のことで、大阪市、名古屋市、京都市、横浜市、神戸市、北九州市、札幌市、川崎市、福岡市、広島市、仙台市、千葉市、さいたま市、静岡市、堺市、新潟市、浜松市、岡山市、相模原市、熊本市が該当します

上記で挙げた市はほんの一例に過ぎません。特にC日程が最も試験を実施している自治体が多いため、あなたが住んでいる地域の周辺で採用試験がないかをHPで確認してみましょう。

また、小さい自治体の場合、例年職員を採用していたけれど今年は採用しないといったところもあります。これは、小さな自治体であればそもそも職員数が少なく、採用数もそれに応じて少なくなるためその年だけ新しい職員は必要でななくなったので採用を行わないということです。

例年採用していたから今年も大丈夫だろう、と考えずに必ずHPで採用があるかどうかを確認するようにしましょう。




3 市役所の試験は面接がとても重要

市役所の試験は倍率が高くなる傾向があるということも注意しておきましょう。特に規模の小さい自治体ほど要注意です。

例えば、都道府県や政令指定都市のような大きな自治体であれば職員の数が多いため、その分採用数も多くなります。そうすれば倍率も低くなるということは分かるかと思います。

逆に規模の小さい場合は採用数が少ないのでそれだけ倍率が高くなり、合格が難しくなります。当たり前のことを言ってますが意外とこのことを知らない方が多いので市役所ぐらい余裕でしょと思っている方は要注意です。

実際に東京都のⅠ類B(行政)と東京都調布市(上級・事務)を比較したのが以下の表です(いずれも平成27年度試験)。

東京都

採用予定者数 申込者数 受験者数 1次合格者数 最終合格者数 倍率
484 5383 3465 1249 640 5.4

調布市

申込者数  受験者数 1次合格者数 2次合格者数 3次合格者数 4次合格者数 倍率
 344 260  129  42  20  12  21.7

最終的な合格の倍率が東京都は5.4倍に比べ調布市は21.7倍と相当高くなっています。やはり最終合格者数、つまり採用者数の違いが倍率に影響していることがわかります。

ちなみに調布市は人口約22万人を有する市であり決してそれほど小さな市ではありません。

注目すべきは4次試験まで行っていることでしょう。

市役所の場合、筆記試験には比較的合格しやすいけれども2次試験以降の突破が非常に難しいという傾向にあります。
実際に東京都と調布市を比べると、筆記試験(1次試験)の合格者は東京都は約3人に1人に対し府中市は半分くらいが合格しています。
しかし最終的にはそこから10分の1まで絞り込まれているため2次試験以降がいかに厳しいかが分かるかと思います。

特に地元でない方の場合、なぜその自治体を受験するのかを厳しく問われるため、面接対策は非常に重要となります。

特に筆記試験がパスしやすい分、民間企業の経験者や勉強が苦手でもコミュニケーション能力が高い方の受験が多くなるため、競争相手は厳しくなる傾向にあります。

もちろん、コミュニケーションが苦手であっても合格することはできますが、倍率やライバルとなる受験生のことを考えると、地方上級試験や国家公務員試験に比べて難易度は上がると言わざるを得ないしょう。

これを読んで不安になってしまった方もいるかもしれませんね。
そのような方は少しでも規模の大きな自治体を受験できないか検討してみましょう。繰り返しになりますが、規模の大きな自治体ほど採用数が多くなる傾向にあるので合格の確率が高くなります。

例えば、調布市の隣にある府中市(人口26万人)では、平成27年度上級事務の最終的な倍率は7.8倍とそこまで高くありません。府中市も4次試験までありますが、各試験の合格者数は比較的多くなっています。(参考:府中市職員採用試験の実施状況

市役所を目指す方はこうしたことも踏まえ、どうしても地元じゃないと!という方以外は合格しやすい自治体を狙うという手も考えてみると良いでしょう。もちろん、合格しやすいといえどもそれなりの倍率があるので対策は欠かさないようにしましょう。

面接試験対策については以下の記事で詳しく紹介しているので、自信がない方はぜひチェックしてみましょう。

必ず抑えておくべき公務員試験の面接対策の「超」基本【解説写真付】
公務員試験の面接で聞かれる定番の質問の答え方
「伝わる」を意識した面接で良い印象を与えるための話し方




4 市役所の仕事は窓口だけではない

ここまでで市役所の試験についてある程度理解できたかと思います。
公務員を目指しているとついつい試験に合格することばかりに目がいきがちですが、合格してからがスタートなので仕事についてもある程度の理解は必要です。

まず、市役所含め公務員として働く上で以下のイメージは捨ててください。

・窓口業務がメインである
・定時退社できるのでワークライフバランスが取れる
・毎日ルーティンの仕事をこなしていればいい

これらは全てイメージで語られたものであり、現実はそれほど甘いものではありません。このようなことを言ってる公務員の人はいないでしょう。

まして最近は財政難の自治体が多く人件費を抑えようとしているため昔言われていた9時5時で楽勝な仕事をして帰れるという時代ではなくなっています。

実際これを読んでいるあなたも役所に行って住民票の発行などをしたことがありますが、対応している人は職員ではなく派遣の方のケースが多くなっています。最近対応がいいな、と思ったその人は実は役所の職員ではない可能性があるのです。

このように簡単な仕事はそのように派遣の人に任せて、職員は中で別の仕事をしているという場合が多くなっています

それは人件費の削減だけでなく、職員の業務量が増えているという背景もあります。

IT化が進み業務の効率化が進んでいる一方で、住民の目が厳しくなっていることから自治体としてはより住民が満足するための施策を考えていかなければなりません。
このような企画や政策を立案する部署は花形だと思われがちですが、業務量は膨大です。

一つの施策を作るために上司の納得する資料を作り、会議を何度も行い指摘された部分は都度修正し、議会にかけて認められればようやく決定となります。そのために作成する資料はなぜか全て紙ベースで打ち出すという非効率な方法が取られている場合が多いため、その労力は相当なものです(印刷のため遅くまで残業はザラです)。

逆に楽な部署も当然あります。毎日ルーティン業務でほぼ定時で帰れる部署も存在するのは事実ですが、数年ごとに異動になるため、異動先が激務だということもありえます。

でも、これは民間企業でも同様ではないでしょうか。

民間=キツイ、というイメージが特に公務員受験生にはありますが、会社によって、そして部署によっても全く異なるためひとくくりにすることはできません。下手すれば公務員でも民間よりもきつい部署もあるでしょう。

人によってはずっと楽な部署をぐるぐると回る場合もあります。それは「仕事ができない人」の場合が多く、その人ができなくても他の人がサポートすれば問題なく仕事が回る部署なので比較的楽なのです。

しかし、せっかく頑張って入庁した市役所でそんな扱いされたいですか?

入ったからにはバリバリと頑張って、周りに期待されながらきつい仕事も取り組んでいくと良い経験になるかと私は思っています。

5 まとめ

市役所で働くためにはそれなりに難しい公務員試験に突破しなければならないことはご理解いただけたかと思います。「たかが市役所」と思っていると合格が難しい試験ですので市役所で働きたいと思っている人は特に面接対策はしっかりと対策しましょう。

そして、仕事についても世間のイメージはあまり信じないようにし、楽な部署ならラッキーぐらいに考えておくといいかもしれません。できれば入庁してから腐らないように活躍していただくことが組織にとっても、そして住民にとっても理想であるはずです。

高卒で公務員になりたい人が最初に知っておきたいことまとめ

高卒だけれど公務員になれるのかな?
なれるとしたらどのような公務員になれるの?
また、仕事は大卒とは何か違うの?

公務員は大卒の人がなるというイメージがあるためか、高卒の方はこうした悩みを持っている人が多いように感じます。

しかし、安心してください。高卒であっても問題なく公務員になることはできます。

大卒者と同じように国家公務員・地方公務員問わず様々な試験を受け、合格すれば職員として働くことができるのです。
それは大学中退をして結果的に高卒にしまった方であっても同じです。

今回は高卒の方(卒業予定含む)に向けて、どうすれば公務員になれるかについて解説していきますので諦める前に一読し将来の仕事選びの参考にしてください。

※ここでは受験者が多い行政・事務系公務員についてのみ触れています。
警察官・消防士を目指す方は以下の記事も参考にご覧ください。

1 高卒の人は「高卒程度試験」を受験するのが一般的

まず大前提として知っておいていただきたいことは、公務員には「国家公務員」と「地方公務員」の2種類があり、それぞれについて採用試験が行われているということです。

国家公務員は「◯◯省」のような国家機関およびその出先機関で働く職員であり、地方公務員は都道府県や区市町村で働く職員のことをいいます。
多くの方がイメージする市役所の窓口で働いている人は地方公務員ですね。

どちらを目指すにせよ、高卒の方であれば「高卒程度」の公務員試験を受験し合格しなければなりません。

「高卒程度試験」とは、試験の内容が高校卒業レベルのものが出題されるということであり、必ずしも高校卒業している必要はなく。極端な話、年齢制限さえクリアすれば中卒の人でも受験することができることが多いです。

ここでは国家公務員、地方公務員それぞれにおいてどのような試験を受けることで公務員になれるのか以下で詳しく説明していきます。

なお、高校を卒業して3年以上経過している方や、ある程度仕事でキャリアを積んでいる方が年齢的に高卒程度の試験が受けられない可能性があります。
その際は公務員になりたい人必見!公務員試験の対策と勉強法を全解説をご覧ください。




2 高卒程度試験を受けるときは年齢制限に注意

高卒程度試験を受ける際は年齢制限に注意しましょう。

公務員試験は年齢制限をクリアしないとそもそも受験することができないので、必ず受験案内を確認することが重要です。

普通に高校を卒業したばかりの方が受験する際は全く問題ないのですが、高校を卒業して数年経過している方や、ある程度仕事でキャリアを積んでいる方は高卒程度試験を受けられない可能性があります。

例えば国家一般職の高卒枠の場合、受験資格として以下のように定められています(平成28年度試験)。

平成28年4月1日において高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して2年を経過していない者及び平成29年3月までに高等学校又は中等教育学校を卒業する見込みの者

前半部分を要約すると「受験する年において高校を卒業して2年以内であること」ということになります。
そのため、あなたが高校を卒業して3年以上経ってしまった場合、高卒程度試験を受けることができないのです。

また、東京都では以下のように明確に年齢の条件を決めています(平成28年度試験)。

平成7年4月2日から平成11年4月1日までに生まれた人

17歳から21歳の人しか受験できないということが分かります。つまり、想定する受験者としては高校卒業見込者や高校を卒業して3年以内ぐらいの人だと推測され、表現は違えど国家公務員と同様だと言えます。

東京都に限らず、どの自治体でもこのような年齢制限を設けていますんで、高校卒業して数年経った方は事前に確認をしましょう。

高卒程度試験が受けられない人は大卒程度試験や経験者採用試験を検討しよう

では、高校卒業して5年くらい経ってしまったという方や、高卒でずっと働いてきたという人は公務員になれないのかというと決してそのようなことはありません。

高校を卒業して社会人経験がない方は「大卒程度試験」の受験を検討してみましょう。

年齢制限については大学を卒業し数年経過した人も考慮されているため30歳前後まで受験できるところが多いですが、最近では年齢を引き上げている自治体も多く年齢制限が59歳と実質撤廃しているようなところもあります。
どうしても公務員になりたい!という気持ちがあればチャレンジしてみることをおすすめします。(詳細は年齢制限はほぼない!30歳以上でも受けられる公務員試験はたくさんあるをご覧ください)

大卒程度試験を受験する際の注意点としては、筆記試験で専門試験が課せられることが多いということです。
専門試験とは法律や経済など大学で学ぶ専門的な内容について問われるものであり、難易度は高卒試験に比べかなり高くなります。

当然、勉強時間も多く必要となりますので辛抱強く学習を続けられるかがポイントとなるでしょう。

大卒程度試験を検討している方は公務員になりたい人必見!公務員試験の対策と勉強法を全解説でどのような試験でどうやって勉強を進めていけば良いか詳しく解説しているので参考にしてください。

また、高校卒業してから正社員なりバイトなりで数年以上の就業経験がある方は経験者採用試験(社会人試験)を受験することも可能です。

この試験は、数年間の就業経験があれば受けられる試験であり、民間企業等で培った経験やスキルを業務に生かすために即戦力として採用するものです。

試験の特徴としては教養試験以外の論文や面接試験が重視される傾向にあり、中にはプレゼンテーションを行う自治体もあります。
大卒程度試験に比べ筆記試験のウェイトが軽い分、人物重視の試験となりますのでいずれにせよしっかりとした対策が必要です。

経験者採用試験については社会人が受験できる公務員試験の内容と採用後の待遇についてをご覧ください。

以下では、高卒程度試験を受ける場合、どのような試験が実施されるのか説明していきます。




3 国家公務員を目指す場合

国家公務員になって国の機関で働きたい!と考えている方は国家公務員試験を受験する必要があります。
高卒の方であれば、国家公務員一般職試験(高卒者試験)や税務職員、裁判所職員一般職などを受けるのが一般的です。

試験は一次試験と二次試験が行われ、一次試験の合格者だけが二次試験を受けることができ、最終的な合格はトータルの得点で決定されます。

国家公務員一般職試験の試験内容は以下のとおりです(平成28年度)。

一次試験

①基礎能力試験(択一式)
②適性試験(択一式、事務のみ)
③作文試験(事務のみ)

二次試験

①人物試験(個別試験)
※人物試験の参考とするため性格検査が行われる

国家公務員一般職の試験の場合、一次試験と二次試験に合格し、その間に行う官庁訪問により志望する省庁から最終的に内定をもらうこととなります。
それでは、それぞれの詳細について以下で説明していきます。

3-1 基礎能力試験

公務員試験でまずクリアしなければならず難しいとされるのが、一次試験で課される筆記試験です。
国家公務員試験の場合は「基礎能力試験」という名称ですが、要は教養科目といわれるもので地方公務員でも同様の試験があります。

高卒程度では事務系の場合、教養科目だけの出題となりますが、科目数が多いため対策が大変です。まずはこの基礎能力試験に合格するために勉強を進めていかなければなりません。出題科目は以下のとおりです(国家一般職試験の場合)。

koppan-kousotu
国家公務員一般職試験ではこれらの科目が全問回答となっているため、満遍なく勉強しなければなりません。
他の試験を受験するにせよ、科目や出題数はほぼ変わりません。ですので、これらの科目についてしっかりと対策をしなければならないおです。

とはいえ、苦手な科目を1問や2問のため一から勉強するのは効率が悪いため、頻出分野だけを集中してやったり、出題が少ない科目は思い切って捨ててしまうなど戦略的に対策を進めていく必要があります。

公務員試験全般にいえることですが、筆記試験は高得点を取らなくても問題ありません。しかし、国家公務員試験は地方公務員試験に比べて筆記試験の配点比率が高いです。
そのため、高得点を取る必要はなくとも、やはり点数が低いとハンデになってしまいますので、しっかりと対策をしておくべきです。

国家一般職試験・税務職員試験では適性試験が課される!

国家一般職試験や税務職員試験を受験する場合、適性試験も一次試験で課されます。

事務職の場合、事務業務(文書の記入や清書、照合、転記、分類、整理など)を適切かつ迅速に行わなければなりません。適性試験はこうした業務の適性があるかどうかを測るために実施される試験です。

適性試験の内容は、計算、照合、置換、分類、図形把握の5パターンがあり、そのうち3パターンが10題ずつ4回繰り返され合計で120問となります。
適性試験は時間との戦いなので、市販の問題集を使いながら回答するスピードを培う訓練を行うようにしましょう。

国家一般職[高卒]・地方初級公務員 適性試験問題集 2017年度
国家一般職[高卒]・地方初級公務員 適性試験問題集 2017年度

3-2 作文試験

作文試験も一次試験で実施されます。

作文は筆記試験では分からない受験者の考え方や意欲、日常生活を見る試験となっており、人物重視となっている近年その重要性が増しています。

評価ポイントとしては文字は丁寧か、誤字脱字はないか、といった基本的なことから、分かりやすい文章になっているか、課題に合った内容になっているか、説得力があるか、など様々な基準で採点されます。

受験生の個性を見る試験とはいえ、内容が分かりにくい、読みにくい文章は採点者によい印象を与えません。ですので、こうしたテクニック的な部分もしっかりと訓練していく必要があるでしょう。

平成25年度の国家一般職試験では「社会の一員として働くということ(50分・600字)」という内容で出題されています。
作文とはいえ、それなりの思考力が必要とされる試験でありことがわかるかと思います。

作文のテーマについては、自分のことについて述べるもの、社会人・公務員として働く上で意識したいこと、社会的・時事的な課題に対しての考え、など多岐に渡ります。

どのテーマであっても、普段からやっておくべき対策は実際に手を動かして繰り返し練習することです。
スマホやパソコンを当たり前に使うようになっている現在、実際に文章を書く機会が減っており手を使って書くのが苦手な人も多いでしょう。そのような方は早めに対策をすべきです。

また、作文は自分では出来不出来がわからない科目です。ですので、本番前に一度は必ず第三者にチェックしてもらい添削してもらうようにしましょう。

3-3 面接試験について

二次試験は面接試験性格検査が行われますが、いずれも人物評価をするための試験となります。
面接試験は社会人・公務員としてふさわしい人物かどうかを見るための試験です。形式は国家一般職の場合、個別面接(受験生1人に対して面接官数人)となります。

なぜ公務員なのか、なぜその省庁を希望するのか、学生時代に取り組んだことは何か、趣味について、どのような仕事をしたいか、などが定番の質問ですので、自分の考えをしっかりと固めておかなければなりません。

性格検査はより的確な人物評価を行うために平成24年度から試験項目として追加されました。
内容としては、性格について該当するものを「はい」「いいえ」から選択することで大まかなに受験生の正確を把握するものです。性格検査については特に対策を必要とするものではありません。

逆に対策をしすぎたり、嘘をついてしまう(いい印象を与えるためにポジティブな回答ばかりしてしまうなど)と正確な結果が測れないばかりか、面接での回答と矛盾が出てしまい悪い印象を与えてしまいますので注意が必要です。

官庁訪問について

国家公務員一般職試験で採用を勝ち取るためには避けて通れないのが「官庁訪問」です。

これは地方公務員試験や他の試験にはない独特のもので、希望する省庁に面接を通じて「私を採用してください」とアピールするものとなります。
通常、一次試験の合格発表後から最終合格発表までの期間に行われます。一次試験に合格したらすぐに志望する省庁に電話をし、業務説明会への参加や官庁訪問の依頼をすることとなります。

一次試験・二次試験に合格し「最終合格」したとしてもイコール採用ではありません。
採用されるためには志望する省庁での面接(官庁訪問)もクリアしなければいけないということを覚えておきましょう。

官庁訪問についてはこれだけは知っておきたい!官庁訪問の流れと対策についての基本で詳しく解説していますので、こちらも併せてご覧ください。




4 地方公務員を目指す場合

高卒で地方公務員を目指す場合、一般的には「地方初級試験」「Ⅲ類試験」と呼ばれる試験を受験することとなります。

最初にお伝えしたように地方公務員は都道府県や区市町村で働く公務員のことを指します。そのため、各自治体が実施する採用試験を受験し、合格しなければなりません。

例えば、神奈川県で働きたければ神奈川県が実施する採用試験を、横浜市で働きたければ横浜市が実施する採用試験を受ける、といった感じです。

東京の23区においては、各区で採用試験を行うのではなく、「特別区採用試験」という23区全体の試験を受験します。最終合格したのち区ごとに面接を行い無事合格すれば特定の区に採用される、という流れになります。

試験内容については、国家公務員試験と同様に教養試験、作文試験、面接試験が課せられるのが一般的です。
ただし、自治体によって試験の内容は異なるため必ず志望する自治体の受験案内で確認するようにしましょう。

地方公務員試験は国家公務員よりも面接重視の傾向にあるため、筆記試験に合格しても気が抜けません。

これは大卒程度試験でも同様ですが、地方公務員試験のほうがより人物重視であるため、早めの面接対策をしておくことが望ましいでしょう。そして、可能な限り、第三者にチェックしてもらうことも重要です。

5 試験の日程について

最後に高卒程度試験の日程について確認しておきましょう。

高卒程度試験は、大卒程度試験が5〜7月を中心に実施されるのに対し、9月以降がピークになります。

公務員試験は日程が被らなければいくつでも併願することが可能です。とはいえ、あまりにも併願すると幅広く対策しなければならないため、計画的に併願するようにしましょう。

平成30年度試験日程

9/1(土) 衆議院事務局(一般職(高卒程度)・衛視)
9/2(日) 国家一般職(高卒者)
税務職員
9/9(日) 特別区Ⅲ類
東京都Ⅲ類
警視庁警察行政職員Ⅲ類
裁判所事務官(高卒者区分)
9/16(日) 県警(高卒)※一部
警視庁警察官Ⅲ類
9/23(日) 地方初級(高卒)
10/14(日) 県警(高卒)※一部
1/13(日) 警視庁警察官Ⅲ類

試験の日程については変更されることもあります。必ずご自身で受験案内を確認するようにしてください。

まとめ

高卒であっても公務員になれる可能性はいくらでもあります。
まずは、現在の年齢や職歴などからどの試験を受けるのかを明確にしましょう。
そして、どの試験を受けるにせよ、公務員試験は筆記試験が最初の関門となります。
難関試験と言われていますが、きちんと計画的に勉強を進めていけば必ず合格することができますので、早めに学習を進めていきましょう。

これから地方公務員を目指す人が知っておきたい基本まとめ

地方公務員になるのはどうすればいいの?
そもそも地方公務員ってどういう仕事があるの?

こうしたことは、これから公務員を目指そうとする人はよくわからないかもしれません。

公務員とひとくくりに言っても大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」があります。
また、地方公務員も都道府県や市区町村など働く場所によって採用方式も異なるため、自分がどこを目指しているのかを決めて勉強を進めていかなければなりません。

ここでは、地方公務員を目指すのであれば最低限知っておきたいことをまとめていますので、参考にしていただければと思います。

※警察官や消防士などの公安職を目指している方は以下の記事のほうがより特化した内容になっていますので、こちらをご覧ください。
【徹底解説】警察官になるには?試験内容とその対策について
消防士になるには?試験内容について最低限知っておきたいこと

1 地方公務員とは?

まず、地方公務員とは何かについてですが、端的に言うと「地域の住民のために地方公共団体で働く職員」のことをいいます。
地方公共団体とは都道府県や市区町村のことであり、一般的に地方自治体と言われてます。

公務員というと市役所の窓口にいる職員をイメージするかもしれませんが、あれは地方公務員です。
また、市役所などの役所で働いている職員だけでなく県立や市立で働く教職員や警察官(警視正未満)もまた地方公務員です。

このように地方公務員といっても様々な職種があることを知り、自分が何を目指し、どこで働きたいのかを決めることがまずは重要になります。

2 地方公務員の仕事ついて

市役所の窓口で働いている職員の例を出しましたが、あれは役所内の仕事の中のほんの一部にすぎません。多くの方は地方公務員に限らず公務員といえば窓口で住民票を発行する、というイメージを持っているかもしれませんが、一つの自治体には膨大な数の部署があります。

仕事は窓口業務だけでなく、観光や商業の発展を考えたり、防災対策や環境対策の計画を立てたり、道路や上下水道を整備したりと、その自治体で暮らしている住民のために行政サービスを行うのが地方公務員であり、業務は非常に多岐にわたります。

一般的に、数年で人事異動が行われるため、一つの仕事をやり続けるということはなく、最初は観光の部署で観光客の誘致に励み、次に出先の窓口で住民対応を行い、その次に防災対策の部署で計画を立案したり…というように、様々な職場で幅広い仕事を経験することになるため、様々な仕事を経験したいという方には向いているでしょう。

多くの人が受験する事務職の仕事については知っておきたい事務系職種公務員の仕事内容でも詳しく説明していますので、参考にしてみてください。

3 地方公務員の職種ついて

一般的にイメージされている公務員は「一般行政事務職」となります。そして公務員になる人の多くがこの事務職として受験することになります。

しかし、先述のとおり一つの自治体の中には相当な数の部署があり、仕事も多岐にわたることから、様々な職種が存在し、それぞれが協力し合い業務を遂行していくのです。

ここでは、地方公務員として働く上に、どのような職種があるのかを説明していきます。

3−1 事務系職種

市役所などで仕事のところで書いたような業務を行うのは「一般行政事務」という分類になります。

一般行政事務は、「事務職」「行政職」など自治体によって呼び方は様々ですが、文系の人のほとんどが事務系となり、理系でも技術系ではなく事務系に進む人もおり、採用が最も多く、公務員を代表する職種といえるでしょう。

特定の部署ではなく、本庁内の各部署や出先機関の様々な職場で採用され、幅広い仕事を行うゼネラリストして活躍します。

事務系職種には他に「学校事務」「警察事務」があります。

学校事務は国立大学法人等において、施設の維持管理や教職員の給与・旅費等の管理、歳入・歳出などの財務管理といった学校の運営や学生支援、国際交流の推進など多種多様な業務を行います。

そして、警察事務は東京都の警視庁や道府県の警察の本部および警察署において警察業務をサポートし、スムーズに警察組織の仕事を運営できるようにします。

注意点としては、いわゆる交番勤務やパトロールをしている「警察官」は警察事務ではなく、3−4で紹介している「公安系職種」となります。興味のある方はそちらをご覧ください。

このように事務系職種は特定の業務を行うのではなく、幅広い仕事を行うこと、そして組織の運営をサポートするということを行っていきます。
事務系職種の仕事については、知っておきたい事務系職種公務員の仕事内容も併せて参考にしてみてください。

3−2 技術系職種

技術系職種は事務系職種とは異なり、特定の部署内で異動となり、専門知識を生かしスペシャリストとして活躍していきます。理系の方はこの技術系職種を目指す方が大半でしょう。

技術系職種には以下のような職種があります。

・土木職
・建築職
・電気、電子職
・化学職
・農業、農学職

いずれも大学で学んだ知識を生かし、インフラの整備や公共施設の設計などの仕事を行うことができます。

ちなみに、文系であっても採用試験に合格さえすれば技術系職種として働くことができるケースが多いので、興味があれば受験を検討してみるのもよいでしょう(受験の際は希望する自治体の受験要項を必ずご確認ください)。

3−3 資格・免許職種

上記2つについては資格や免許がなくても公務員になれるものでした。

しかし、中には資格や免許がなければ公務員になれない職種があります。
主なものとして以下の資格や免許があげられます。

・医師
・看護師
・保健師
・薬剤師
・管理栄養士、栄養士
・獣医師
・衛生監視
・福祉指導員
・教員
・保育士
・学芸員
・司書

医師が公務員?と思われるかもしれませんが、県立や市立で働く医師は公務員となります。
教員や保育士なども同じで働くところが公立であれば地方公務員として働くこととなります。

資格・免許職種についても技術職と同様に、大学等で専門的な分野を専攻した方がその知識や技術を生かしたいと思い受験することが一般的です。

3−4 公安系職種

公安系職種は警察官や消防官といった地域の安全を守る公務員のことを指します。
警察官と交通巡査員(駐車違反のチェックや交通指導、交通安全教育などを行う)は都道府県に採用され、消防官は市町村に採用となります。

3−5 技能系職種

技能系職種は、地方公務員だと清掃作業員やバスの運転手などが挙げられます。現在はコスト削減のため、民間に委託しているところも多く採用が減っているという現状があります。
また、これらは高卒程度の試験でのみの採用となり大学や短大を卒業した人は受験できない可能性がありますので、希望する人は必ず受験要項を確認するようにしましょう。

4 公務員試験について

ここまでで、地方公務員の仕事について何となく理解できたかと思います。

もし、「地方公務員になりたい!」と思ったのであれば、当然ですが「公務員試験」を受験し、合格する必要があります。

これは地方公務員でも国家公務員でも同じで、公務員になるためには試験に合格して初めて公務員として働くことができるのです。

公務員はコネで採用されるといった話を聞くかもしれませんが、そのような採用を行っているところはまずないと考えてよいでしょう。数十年前はそうしたこともあったようですが、これから公務員になる人は公務員試験に合格しなければならないということを知っておきましょう。

◼公務員試験の「程度」について

公務員試験の内容は、試験の「程度」や種類、自治体によって異なります。
「程度」とは、「大学卒業程度」「短大卒業程度」「高校卒業程度」というように、学歴を目安とした分類のことをいいます。
「程度」となっているのは、例えば「大学卒業程度」の場合、必ずしも大学卒業(予定含む)していなくても問題はなく、高卒の人でも受験でき、あくまで試験のレベルがその程度だということです。
まずは、あなたがどの「程度」の試験を受験するのかを確認するようにしてください。

ここでは多く方が受験する大卒程度の事務系職種で課される「教養試験」「専門試験」「論文試験」「面接」について、それぞれ詳細を説明していきます。

4−1 教養試験

教養試験は大きく「一般知能」と「一般知識」に分類されます。
それぞれについて出題される科目は以下のようになります。

【一般知能分野】
・文章理解(現代文・古文・英文)
・判断推理
・数的推理
・資料解釈

【一般知識分野】
・社会科学
政治、経済、社会、法律
・人文科学
日本史、世界史、地理、思想、文学・芸術
・自然科学
数学、物理、化学、生物、地学

教養試験は択一式(5つの選択肢から正解を1つ選ぶ)で行われます。
上記の全てを解く必要はなく、一般知能分野の場合、選択方式を採用している自治体が多くなっています(逆に一般知能分野は全問必答とするところが多いです)。

一般知能の数的処理は算数や数学的要素が強く特に文系の方は苦手とする方が多いですが、どこも出題数が多いため長期的に対策を行っていく必要があり合否の決め手となる科目といえるでしょう。

そして、一般知識は高校時代に学習する科目全般が出題されるというイメージです。そのため、大学受験の際にこれらの科目をどれくらい勉強したかによって一般知識の負担は変わってくるでしょう。

4−2 専門試験

専門試験については、多くの方が受験する行政・事務系であれば、以下の科目が出題されます。

【行政系科目】政治学、行政学、社会学、社会政策(労働経済・社会保障)、国際関係、社会事情など
【法律系科目】憲法、行政法、民法、商法、刑法、労働法、国際法など
【経済系科目】経済原論(ミクロ経済学・マクロ経済学)、経済学、財政学(公共経済)、経済政策、経済学史、経済史、経済事情、統計学、計量経済学、国際経済学など
【商学系科目】会計学、経営学
【その他】英語、教育学、心理学など

専門試験は大学で学ぶ専門的な内容が出題されます。そのため、教養試験とは違い職種によって出題科目が異なるという特徴があります。

例えば、建築系の職種であれば建築に関する内容が出題され、機械系であれば数学や物理、工学系の知識が問われます。

また、地方公務員試験では少数ですが、専門試験において記述試験を課されることもあります。

ちなみに地方公務員の場合、特別区や東京都、地方上級試験などの規模の大きい自治体の場合専門試験が出題されることがほとんどですが、高卒程度の試験や規模の小さい市役所、警察・消防といった公安系などは専門試験が課せられません。もし時間がない、専門科目まで手が回らないという場合はこうした試験を検討することもおすすめです。

勉強を始める前にあなたが志望する自治体がどのような試験を行うのかを必ず確認するようにしましょう。

4−3 論文試験

地方公務員試験において論文試験は二次試験で課せられるケースが多く、内容としては社会問題や自治体としての取り組みについて論述するものが一般的です。

【例1】
国際化の持つ影響、可能性、課題を示し、自治体としてどのような取組を行 うべきか、論じなさい。

平成27年度 千葉県(上級)論文試験

【例2】
若者から高齢者まで、全ての市民に、「広島市に住み続けたい」と思い続けてもらえるようにするため、行政としてどのようなことに取り組むべきか、あなたの意見を述べよ。

平成27年度 広島市論文試験

中には自身の経験を問うてくる自治体もあります。

あなたがこれまでに新人(新入生、新入社員など)として組織(ゼミ、サークル、職場など)に加入した時に、その組織の一員として受け入れられ、認められるために取り組んだことについて具体的に述べるとともに、その取組を通じて学んだこと等について、述べてください。

平成26年度 名古屋市(第1類)論文試験

論文試験では、課題に対する理解力のほか、文章構成力・表現力、一般常識、そして論文を通じて受験生の人物的側面まで評価されます。

論文試験は付け焼刃での対策は難しく、課題を設定し自分で手を動かして実際に書いてみて、第三者に添削してブラッシュアップしていくという作業が重要となります。

論文対策については【徹底解説】公務員試験の教養論文の基本と対策についてで詳しく解説しています。

4−4 面接試験

面接試験はすべての公務員試験で実施されます。
自治体によって形式は異なりますが、主に以下の形式で行われます。

個別面接…最もオーソドックスなタイプで、受験生一人に対し、複数人の面接官が対応します。

集団面接…受験生複数人に対し面接官が複数人で対応します。個別面接と併用して行われることが多いです。

集団討論…受験生複数人が与えられたテーマについて討論を行います。その状況を面接官が観察し、各人の知識や表現力、問題解決能力、協調性などを評価します。

最近ではプレゼンテーションを実施する自治体も増えてきており、マニュアル通りの回答による合格が難しくなってきています。

また、公務員試験はつい筆記試験ばかりに目が行きがちですが、特に地方公務員は面接重視の傾向になってきています。いくら筆記試験で高得点であっても面接試験で不合格になってしまうことはざらにあります。

せっかく一次試験に合格しても面接で落ちてしまっては勉強してきたことが水の泡となってしまいます。
面接試験も論文試験と同様、決して手を抜かず対策をしましょう。

面接対策については面接対策カテゴリを見ていただければ目的に応じた対策法を探すことができます。

※ここでは主なものを紹介してきましたが、他にも適正検査や体力検査など一部の試験で出題されるものがあります。詳しく知りたい方は公務員試験に出題される科目まとめ(行政・事務系)をご覧ください。

4−5 出題タイプについて

地方公務員の試験では、自治体によって出題される科目や出題数が異なります。これは「出題タイプ」と言われていますが、あなたが受験する自治体がどのタイプなのか知っておく必要があります。

出題方法については以下の6タイプに分類されます。

1.全国型(全国型変形タイプ)
多くの都道府県や政令指定都市が採用しているタイプです。全国型は他のタイプのベースとなるものであり、他のタイプは本タイプを変形させて出題数を増減させているものとなります。

2.関東型(関東型変形タイプ)
関東甲信越+静岡県が採用しているタイプです。
出題数50題中40題を解答というパターンが多くなっています。

3.中部・北陸型
中部地方の6県(愛知県、三重県、岐阜県、富山県、石川県、福井県)が採用しているタイプです。
教養試験は50題全問解答、専門試験は50題中40題選択解答としています。

4.法律・経済専門タイプ
広島県、名古屋市、神戸市、広島市で採用しているタイプです。「法律」や「経済」の区分があり、専門試験の出題が法律か経済どちらかが多くなっており、申込時に選択します。

5.その他の出題タイプ
神奈川県(専門試験)、札幌市(専門試験)、横浜市(教養試験)で採用しているタイプです。上記のどのタイプにも該当しませんが、全国型との共通問題も出題されています。

6.独自型
東京都、大阪府、特別区が採用しているタイプで、完全にオリジナルの問題を出題しています。

このように出題タイプが異なると勉強方法に迷ってしまうかもしれませんが、タイプが異なっても出題科目が共通しているものが数多くあり、最初は気にする必要はありません。

そのため、まずは全国型の主要科目から学習を始め、あなたが受験するタイプに合わせて勉強する科目を微調整していく、という方法をおすすめします。

公務員試験は出題科目がとても多いという特徴があり、簿記や宅建などのメジャーな資格試験とは違い短期で合格することは難しい試験といえます。そのため、しっかりと予備校等で学ぶか、独学であれば自分でスケジュールを決めて計画立てて勉強を進めていかなければ合格は厳しいでしょう。
公務員試験は難関試験ではありますが、何年もかけるような試験ではありません。なるべく一年で合格することを目標としてください。

学習の進め方については公務員になりたい人必見!公務員試験の対策と勉強法を全解説を参考にしていただくとよいでしょう。

5 難易度についてあまり考えないほうがよい

さて、ここまでで地方公務員とはどのようなもので、どのような試験が課せられるのかご理解いただけたかと思います。
これから勉強を始めようと考える人が陥りがちなのが、難易度を気にしすぎてしまうことです。

果てして自分は合格することができるのか、既卒だし試験が簡単な自治体にしたほうが良いのではないか、など不安な方もいるでしょう。
そしてネット上で公務員試験の難易度について検索し、自分が受験する試験はどのくらいなのかという情報を知ることもできます。

一般的に、地方公務員試験よりも国家公務員試験のほうが難しい場合が多く、地方公務員試験の中でも市区町村よりも都道府県のほうが難しい傾向にあります。

そのため、ネット上の偏差値ランキングなるものでは国家公務員や都道府県庁が高くなっていたりしますが、忘れてはいけないのは面接試験にも合格しないと公務員になれないということです。

よく市役所は筆記試験が比較的易しいと言われますが、その分受験生の層も広くなり、全体的に倍率が高くなる傾向になります。
特に、筆記試験とは違い面接試験で差をつけることは難しく、面接が苦手とする人にとっては逆に合格の可能性が低くなって可能性もあります。

「自分は勉強が苦手だから…」というネガティブな理由ではなく、「この自治体の職員として働きたい!」という気持ちで目指したほうが勉強のモチベーションを維持することもできるます。

また、勉強時間についても、一般的には合格のために必要な時間は1500時間とされていますが、ここまで見ていただいた方であれば分かるかと思いますが受験する試験によって出題科目は異なりますし、あなたが受験勉強をどれくらいしてきたかによっても違ってくるため一概には言えません。

勉強時間については公務員試験合格に必要な勉強時間について知っておきたいことで詳しく触れています。

6 自治体ごとに年齢制限が異なるので注意しよう

最後に、これから地方公務員を目指すにあたり注意しなければならないことがあります。それは、どこの自治体でも設けている「年齢制限」です。
いくら合格できる学力を身につけていてもこの年齢制限をクリアしなければ受験することすらできません。

例えば、平成28年度の特別区Ⅰ類試験の場合、年齢制限を以下のように定めています。

日本国籍を有する人で、次の年齢要件に該当する人
★ 昭和 60 年 4 月 2 日から平成 7 年 4 月 1 日までに生まれた人

この場合、22歳〜31歳までが受験することができます。

繰り返しになりますが、いくら勉強ができて面接が得意であっても、そもそも受験資格がないと受けることができません。年齢制限を超えてしまっている場合、不利になるとかではなく絶対に受験することができないのです。

現在大学生の方であれば問題ありませんが、卒業してから何年か経っている場合、年齢制限に引っかかってしまう可能性があるため要注意です。

もし、民間企業等で数年働いている方(働いていた方も含む)は「経験者採用」という枠で受験できるかもしれません。経験者採用枠であれば対象の年齢がかなり広くなります。
ただし、「一つの会社等で4年以上かつ週29時間以上従事」の様に要件が決まっているので、自分が要件に該当するかどうか確認するようにしましょう。

また、最近の傾向として地方公務員は年齢制限を引き上げており、中には年齢制限が59歳と実質撤廃しているような自治体もあります。
ですので、既卒で未経験であっても「自分は年齢がいってしまっているから無理…」とは思わず、まずは希望する自治体の受験要項を確認することをおすすめします。

年齢について気になる方は年齢制限はほぼない!30歳以上でも受けられる公務員試験についてを見ていただくとよいでしょう。

7 まとめ

地方公務員はその地域の住民のために働く職員です。
地方公務員になりたいと決めたら、次はあなたが貢献したい地域(自治体)を決め公務員試験に合格するために勉強を進めていきましょう。

公務員試験はそれなりの期間、しっかりと勉強しなければ合格が難しい試験です。しかし、超難関試験でもないので、計画的に対策を進めていけば合格は十分に可能です。

注意点としては、地方公務員は論文試験や面接試験に比較的重きを置いているということです。いくら勉強が得意でも論文や面接で落とされる可能性があるため、これらも含めてしっかりと対策を進めていきましょう!

裁判所事務官(一般職)のボーダーの点数は?元講師が解説します

裁判所事務官を受験するにあたり、ボーダーって何点ぐらいなのか気になる人も多いかと思います。
択一で何点とれれば1次通過するのか、また、筆記試験で失敗しても面接で逆転ができるのかなど不安が常につきまとうと思います。

そこで今回は、裁判所事務官(一般職)のボーダーについて分析していき、どれくらい得点できれば安心なのかについて解説していきたいと思いますので参考にしてみてください。

1 各科目の配点比率について

裁判所事務官(一般職)の配点比率は、各年度の「裁判所職員採用試験受験案内」に公表されています。最近、面接の比率が変更になったように(比率が下がりました)、突然変更されることがありますので、受験を申し込む際には必ず確認しましょう。

平成27年度受験については次のとおりでした。

第1次試験

基礎能力試験(多肢選択式=択一) 40題 配点比率 2/10
専門試験(多肢選択式=択一) 30題 配点比率 2/10

第2次試験

論文試験(小論文) 1題 配点比率 1/10
専門試験(記述式) 1題 配点比率 1/10
人物試験(個別面接) 配点比率 4/10

まず、1つ目の注意点は、論文試験(小論文)と専門試験(記述式)は、第1次試験日に実施されますが、評価自体は第2次試験にされるということです。

つまり、1次合格発表(例年6月中旬)は、択一試験(基礎能力+専門)のみで判断されることになります。

 

2つ目の注意点は、裁判所事務官の場合は、筆記試験と面接の「総合評価」となる点です(これは国家公務員試験全般に共通しています)。

近年の地方自治体の試験では、面接はリセット方式、つまり最終面接では、1次試験の筆記試験を考慮せず(リセットして)面接の点数のみで判断するということが多くなっていますが、そうではなく、裁判所事務官の場合は総合点で最終順位がつくということになります。

 

したがって、以下の2つの合格必須ポイントを意識して受験勉強をすすめていくことが重要となります。

①1次試験(択一試験)をボーダーギリギリでもよいのでまず突破すること。

②面接だけではなく、筆記試験全体についてもできるだけ高得点を取得すること。

2 択一試験(1次試験)ボーダーは36点〜42点(非公表)

裁判所事務官に合格するためには、まず1次試験に合格する必要があります。1次試験は、択一(教養+専門)の結果のみで判断されますので、何点とれば合格するか受験生の1番気になるところになりますが、例年36点〜42点あたりで推移しているようです。ちなみに、受験申込時の管内ごとにボーダーが異なります。

なぜこれだけ幅があるのかと疑問に思うかもしれませんが、あくまで相対評価であるという点がポイントの1つだと考えられます。つまり、易しい問題が多かった年度は、高得点を取得する受験生が続出するため、ボーダーが高くなると考えられます。

 

また、裁判所は1次合格者の人数を毎年変えています(おそらく前年度の辞退者数等を考慮しているかと思います)。したがって、1次合格者数を多く設定した年度はボーダーが下がりますし、劇的に合格者数を減らす年度があり、そのときにはボーダーが上がるわけです。

なお、裁判所は択一試験ボーダーを公表していません。ボーダー予想はあくまで予想であって不確実なものであるということに注意してほしいと思います。

受験生がいうボーダーというのは、予備校や2ちゃんねるなどのネットによる予想、受験者の口コミのことであり、もちろんこれは正式なものではありません。

たとえば、同じ管内受験生で35点で不合格した人と36点で合格した人がいれば、ボーダーは36点と確定できるわけですが、必ずしもその情報を予備校やインターネット上のサイトで把握しているわけではないことを注意していただきたいと思います(予備校の場合は把握できる場合がありますが不確実です)。

なお、平成27年については前年度に比べ1次合格者を多めに出しているのでボーダーが全体的に下がったと考えられます。

したがって、例年はのボーダーは40点前後と考えておけばよいでしょう。

3 東京のボーダーは低く、近畿・九州はボーダーが高いという噂について

2ちゃんねる等では、東京高裁管内はボーダーが低く狙い目で、大阪高裁や福岡高裁管内のボーダーが高い、という情報があがっています。

東京のボーダーはやや低いと考えられますが、しかし、これも不確かな情報なので惑わされないようにしていただきたいと思います。

 

もっとも、東京高裁管内の場合は、たとえば平成27年には1次合格者を1202人も出していますので、ボーダーは他の管内よりも低い可能性は十分にあります。

しかし、東京管内の場合は、首都圏に難関大学や実績の高いロースクールが多く存在し、その出身者たちも総合職だけでなく一般職でも受験してきます。したがって、裁判所事務官の筆記試験の上位層の人数(割合でなく実際の数)は、他の管内より多いと推測できます。

大阪管内も同様のことがいえますが、数では東京の方が多いと考えられます。実際に、司法試験の滑り止めで受験し、司法試験も裁判所事務官も両方合格したという人は毎年相当数います。

したがって、東京管内はボーダーが低いと考えられる分、狙い目ではありますが、上位合格するにはそれなりの高得点をとることが必要ということを意識しておきましょう。

 

また、そもそも受験生が参考にする予備校のボーダー予想は、予備校に択一試験の情報を提供した受験生を対象として予想を出します。

東京管内は実際の受験者の母数が4000人を超えており、しかも予備校の校舎も大学の通学路線に乱立していますので、多くの受験者が情報提供をしてくれ、それに基づいて予想することができます。

 

一方、たとえば福岡管内の場合、受験者の母数は1300人程度。そこから予備校に情報を提供してくれる人がどれだけいるかというと、予備校の校舎の数や九州全域ということも考えると、東京に比べ情報提供の数・割合は減ると思います。

このようなデータ集積の段階での違いが、ボーダーの点数に現れる要因とも考えられるでしょう。つまり,情報提供が少ない場合、ボーダーがややあがる傾向があるということになりますので、一概に地域によってボーダーが高いから難しいという判断は危険でしょう。

4 筆記試験、面接試験どちらも足切りがある

筆記試験にも面接試験にも足切りがあります。

①裁判所は、択一試験について、「基準点」=最低限必要な素点、とし公表しています。

そして、基準点に達しない試験種目が1つでも存在する者については、他の試験科目の成績にかかわらず不合格となります。

平成27年

基礎能力試験 満点40 基準点15 平均点20.08
専門試験 満点30 基準点12 平均点16.04

平成26年

基礎能力試験 満点40 基準点15 平均点19.45
専門試験 満点30 基準点12 平均点15.38

平成25年

基礎能力試験 満点40 基準点15 平均点19.95
専門試験 満点30 基準点14 平均点14.29

 

上記のように、基準点は年度によって若干変更がありますので気をつけて下さい。

なお、2次試験の各科目についても基準点を設定しているようですが、その点数は、公表はされていません。裁判所が公表しているのは、「採点者による評点を基礎とし、科目ごとに満点20%から50%を基本に個別に定めます。」と、いうことです。

何点とはいえませんが、小論文及び専門記述についても足切りがあることを知っておきましょう。

 

②面接については、判定の高い順にA、B、C、及びDの4段階で判定し、AからCの者について第2次試験の合格者を決定します。すなわち、D=不合格となります。いくら、筆記試験で高得点を取得してもDをとると不合格ですので、注意する必要があります。

なお、足切りについては素点を基準に考えますが、総合得点は、各試験科目の素点をそのまま用いるのではなく、配点比率や平均点を考慮した「標準点」というものを使用します(詳細は平成27年度裁判所職員採用一般職試験の合格者決定方法を参考にしてください)

つまり相対評価になりますので、他の受験生よりも1点でも高く点数をとることを意識する必要があります。

5 筆記試験が微妙でも面接で挽回できることもある

裁判所事務官(一般職)では、面接の配点比率が4/10とかなり高くなっています。しかも、D=不合格ということで、裁判所事務官は面接が1番大事といわれることもあります。

実際に、択一試験でギリギリ合格した受験生(36点や37点)が、第2次試験で挽回して、最終合格を果たすこともよくあります。したがって、是非、面接対策には力をいれてください。

 

しかし、面接では思っているほどは差がつかないのが現実です。

というのも、前述のとおり面接の評価はA、B、C、及びDの4段階での評価となり、筆記試験のように細かい点数で分類されるわけではありません。1次合格者が4つの枠に分類されるだけになりますので、差がつきにくくなります。

 

まず、D=不合格となる人は、裁判所事務官用の面接対策を全くしていないか、もしくは面接を甘く考えているか、本番で緊張して何も言えなかったか(結構存在します)、そもそもコミュニケーションの能力が低い(この場合、他の試験でもかなり苦戦すると考えられます)という点が考えられます。

大学や予備校等で裁判所事務官用の面接対策をしっかりとしていれば、ほとんどの場合はDを免れることができるはずです。

 

一方、面接でAをとることはかなり難しいと考えて下さい。面接では大学時代だけでなく高校時代のがんばったことも聞かれます。スポーツや文化系で全国大会レベルの賞をとるような人もいて、その点で話が盛り上がり感触が良かったという合格者もいます。

また、その人のもともとの性格や雰囲気も評価の対象となってきますし、評価の甘い面接官と厳しい面接官がいます(面接官は固定されていないので、どの面接官にあたるかも運次第です)。

したがって、面接対策だけでは補えない分も出てくるのでAをとることは難しく、多くの受験生はC、Bで最終合格をしていると考えて下さい。

実際に、択一試験の合格最低点で面接Bをとった受験生が順位をぐんとあげて最終合格することもありますので、面接はAでなくても逆転が可能であること、小論文や記述試験で高得点をめざすことを特に意識していただきたいと思います。

6 まとめ

裁判所事務官(一般職)には、①各科目に足切りがあること、②択一試験はボーダーが40点前後ということ、③面接で逆転することも可能だけど、結局は総合評価なので、筆記試験でもしっかりと点数をとっていくこと、が大事になります。

面接重視ではありますが、まずはしっかりと筆記試験で得点できるようにがんばってください。

社会人が受験できる公務員試験の内容と採用後の待遇について

現在民間企業などで働いていてる社会人の方で公務員に転職したいと考えている方が増えています。

近年、民間企業等で働く人を積極的に採用する「経験者採用」を実施する自治体が増えてきており、経験者採用試験は「何年以上民間企業等で勤務した経験がある」という要件さえ満たせば受験することができます。

しかし、単純に「社会人=経験者採用試験」と単純に考えるのはおすすめしません。というのも、一般の大卒程度試験や高卒程度試験に比べて、経験者採用試験は非常にハードルが高くなる傾向にあるからです。

まずは、あなたの今の状況から受験できる試験を知らなければなりません。

この記事では、社会人の方が公務員になる方法について、そしてどのような試験をクリアしなければならないか、さらに経験者採用試験に合格して公務員になった場合の待遇などについて詳しく解説します。

1 大卒程度試験か経験者採用試験どちらを受験するか決めよう

公務員に転職したいのであれば、まずはどの試験を受ければいいかを知る必要があります。そのためには、以下の2点を確認してください。

・現在の年齢は?
・民間企業等(※)の経験年数はどれくらいか?
(※)民間企業等とは、民間企業に限らず公務員や自営業でも適用される場合があります

「現在の年齢」というのは非常に重要で、全ての公務員試験では年齢制限を設けています。

もし、あなたが社会人経験がありながらも20代であれば、経験者採用試験以外にも大卒程度試験(場合によっては高卒程度試験)を検討してみましょう。

というのも、経験者採用試験の場合、採用枠が少ないことから高倍率になることが多々あります。
また、これまでの職歴も判断材料とされてしまうため、論文試験や面接試験が非常に重要となり、勉強ができれば受かるという試験でもありません。

それに比べ、大卒(高卒)程度試験の場合は、自治体にもよりますが、経験者採用試験よりも倍率が低いことがほとんどです。そのため、単純にしっかりと対策をしておけば採用される可能性は高くなります。

ただし、これも試験によりますが、大卒試験の場合は法律系や経済系などの「専門科目」を課せられることが多いため、勉強が大変になる傾向にあるます。

大卒程度試験
  • 専門科目がある場合が多く対策に時間がかかる
  • 経験者採用試験に比べて倍率が低い
経験者採用試験
  • 筆記試験の勉強の負担は小さい
  • 論文と面接が非常に重要でこれまでの経験を求められる
  • 採用数が少なく倍率が高くなる

倍率が低いほうを取るか、勉強が比較的楽なほうを取るかは人それぞれですが、「社会人=経験者採用試験」と視野狭窄にならず、視野を広げて考えてみることが大切です。

多くの人が受験する大卒程度試験(行政職)については公務員になりたい人必見!公務員試験の対策と勉強法を全解説にまとめていますので参考にご覧ください。

■基本的に併願はできない!
大卒(高卒)程度試験も経験者採用試験も両方受けられる、という人はどっちも受ければいいのでは?と思ったかもしれません。しかし、同一年度に両方の試験を併願することは基本的には不可能であるため、選択が必要です。
もし初年度に経験者採用試験を受験してダメだったら次年度に大卒程度試験を受けるということはできます。

もし、「年齢的に大卒試験が無理そう…」ということであれば経験者採用試験を検討することになりますが、これについては勤務年数が重要となります。

次にどのような方が経験者採用試験を受けられるのか見ていきます。

2 経験者採用試験の受験要件について

大卒試験は考えていない、年齢として難しい方で、社会人として数年働いている、もしくは働いていたのであれば「経験者採用試験」(社会人採用、キャリア採用などともいいます)という枠で受験を検討してみましょう。

経験者採用とは、「民間企業などで培ってきた経験や知識を業務に活かせる人材を確保するための採用方式」であり、近年、特に地方公務員では採用数が増えてきています。

これは通常、大学生などが受験する試験とは別に実施されるものであり、受験のための条件や試験内容が異なるため受験する前によく確認しておく必要があります。

では、民間で経験していれば誰でも経験者採用枠で受験することができるかというと、そういうわけではないので注意が必要です。

例えば東京都では受験資格として以下のように定めています。

学歴区分に応じた民間企業等における一定以上の職務経験がある人
・院修了…5年以上
・大卒…7年以上
・短大卒…9年以上
・高卒 …11年以上  等

つまり、大卒の方であれば7年以上の職務経験が求められることがわかります。ちなみに、現在正社員として働いていなくても、必要な条件だけ満たせば受験することはできます。

なお、ここで出てくる「7年以上」と「民間企業等」について、東京都の受験要項では以下のように定義しています。

「民間企業等における職務経歴」には社会人、自営業者等として6ヶ月以上就業した期間が該当します。

つまり、一つの会社で7年勤めていなくても、極端に言ってしまえば14社を半年ごとに転職していても受験することができるのです。

また注目すべき点は、「民間企業等」を会社員、自営業等としており、必ずしも民間企業に限っていません。

東京都は不明ですが、公務員やJICAでの勤務も経験として認める自治体もありますので、確認してみるとよいでしょう。
(※東京都は事務職であっても専門性を重視するため、経験した職種の条件もありますので注意が必要です)

また、アルバイトや契約社員は職務経歴に入らないのではないか?と心配している方もいるかもしれませんが、自治体によっては受験可能なところもあるので要チェックです。

例えば、横浜市では経験者採用の受験資格を以下のように定めています。

・「民間企業等における職務経験」には、会社員、自営業者、アルバイト、パートタイマー、公務員等としての経験が該当します。また、財団法人、社団法人、NPO法人等の経験も含まれます。

・「5年以上」とは、それぞれの企業・団体等で休憩時間を除き、週30時間以上の勤務を2年以上継続し、これらの経験が通算で5年以上であることを要します(同時期に複数の企業・団体等に勤務していた場合は、いずれか一方の勤務期間のみを職務経験とします。)。

かなり具体的でわかりやすいので見ていただければ理解できるかと思いますが、横浜市ではアルバイトでもなんでも職務経歴になります。

しかし、「週30時間以上の勤務を2年以上継続」という条件がありますので、アルバイトを週20時間1年間やっていたというのは経歴に入りませんので注意が必要です。

このように自治体ごとに受験資格が異なりますので、あなたの志望する自治体が条件を満たすかどうかをまずは確認するようにしましょう。

3 経験者採用ならではの試験に注意する

経験者採用の受験資格を満たした方は経験者採用試験のための勉強をしなければなりません。

公務員試験は大卒程度試験の場合、「教養試験」「専門試験」「小論文」「面接試験」が課されるのが一般的です。

しかし、経験者採用試験では学力よりもこれまでの経験やコミュニケーション能力が見られる傾向にあるため、地方公務員試験の場合「教養試験」「小論文」「経験者者論文」「面接試験」という内容になっているものがほとんどです。

例えば、埼玉県では一般試験と経験者採用試験では試験種目に以下のような違いがあります。

■一般試験
・1次試験
教養試験、専門試験
・2次試験
論文試験、人物試験(集団討論・個別面接)
■経験者採用試験
・1次試験
教養試験、論文試験Ⅰ
・2次試験
論文試験Ⅱ、人物試験Ⅰ(個別面接)
・3次試験
人物試験Ⅱ(個別面接)

注目するポイントとして、経験者採用試験は専門試験がなく、その代わりに論文試験と面接試験が2回行われること、そして3次試験まで行われることです。

また配点も教養試験が50点に対し、その他の合計が750点となっており、

暗記をすれば得点できる「勉強ができる人」ではなく「考えなどを表現できる人」を採用するということが分かります。

こうした傾向は埼玉県に限ったことではありません。

例えば東京都では2次試験にプレゼンテーションを含む個別面接が実施され、特別区においては1次試験で職務経歴論文というものが課せられます。
また、国家公務員の経験者採用試験においては一次試験で「経験論文試験」が実施され、職務経験について問われるものとなっています。

このように、経験者採用試験は一般試験とは異なり、筆記のウェイトが低いけれども人物の適正を図るためのウェイトが高いという特徴があるのです。
もちろん、一般の試験であっても最近は人物重視の傾向となっていますが、経験者採用試験とは比べ物になりません。

それでは、経験者採用で重視される論文試験および面接試験ではどのような内容が問われるのか見ていきましょう。

3-1 論文試験について

通常、一般試験(大卒試験)での論文試験は以下のようにある課題(社会問題等)に対し自分の考えを述べたり自治体としてどのような行動をすべきかということを問われることが多いです。

国際化の持つ影響、可能性、課題を示し、自治体としてどのような取組を行うべきか、論じなさい。

平成27年度 千葉県(上級)

人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくいという現実に直面しています。誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て、介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう仕事と生活の調和が求められています。
このような現況を踏まえ、ワークライフバランスの実現に向け、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

平成27年度 特別区Ⅰ類

経験者採用試験では、こうしたものに加え、以下のように 

職場における個人情報管理の重要性について、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて論じてください。

平成27年度 特別区経験者採用試験

川崎市職員採用試験を受験するにあたり、あなたはどのようなキャリアプランを描いて転職を決心したかを述べるとともに、(1)あなたが川崎市でしかできないこととは何か、(2)それを実現するために、これまでの職務経験をどのように活かしたいかについて、それぞれ具体的に述べてください。

平成26年度 川崎市経験者採用試験

出題の形式さえ違えど、聞いていることは同じような内容だということがわかるかと思います。

普段からあなたがこれまでの仕事でどのような目標を立て、どのような取り組みを行い、どのような成果を出してきたのかを整理しておくとよいでしょう。

論文試験についての詳細は【徹底解説】公務員試験の教養論文の基本と対策についてをご覧ください。

3-2 面接試験について

公務員試験における面接試験で評価される基本的な能力は、

  • 積極性(意欲、行動力)
  • 社会性(他者理解、関係構築力)
  • 信頼感(責任感、達成感)
  • 経験学習力(課題の認識、経験の適用)
  • 自己統制(情緒安定性、統制力)
  • コミュニケーション力(表現力、説得力)

の6つです。

公務員試験では「コンピテンシー型」といわれる面接を行われるケースが増えています。

コンピテンシーとは、「行動に表れる能力、特性」や「結果や成果と結びつく能力、特性」と定義されますが、つまりは「過去に起こったできごとに対しどう考えたのか(実施したのか)」という、過去の行動に焦点が当てられた質問をされるということです。

例えば、社会人の場合であれば「仕事において困難だったこと、それをどのように乗り越えたか」という質問はコンピテンシー型といえます。

そのため

  • これまでどのような仕事をしてきたのか
  • どういう困難があったか
  • どう乗り越えたか
  • その経験はどのように生かせるのか

といったことは突っ込まれてもいいように整理しておくのがよいでしょう。経験者採用試験に限りませんが、しっかりと自己分析を行うことが重要といえます。

また、経験者採用の場合、一般試験では課されないプレゼンテーションや自己PRなどを行うことで表現力や達成力などを見る自治体もありますので、やはりこれまで仕事で成し遂げたことなどを整理しておくことが重要となります。

また、民間から公務員へ転職する場合、「なぜ公務員なのか」といったことを非常に鋭く質問されるということも注意しておきましょう。

民間から公務員へ転職する人の本音として、「楽そう」「安定してる」といったものがあるかと思いますが、もちろんそのようなことを面接試験で言うわけにはいきません。

あなたが「なぜ公務員を目指しているのか」を、これまでの経験とこれからやりたいことと結びつけて考えなければなりません。
公務員試験の面接で聞かれる定番の質問の答え方の記事も見ていただくことで、より具体的な質問について知ることができます。

4 採用された場合の待遇について

さて、ここまでは試験の内容について見てきましたが、経験者採用は試験の内容が違うだけではありません。
実際に公務員として省庁や自治体に入庁し働くことになった場合、経験者採用の場合、一般試験で採用された人とは役職や給与が異なります(公務員は給料ではなく「給与」といいます)。

一般試験で入庁した人は末端の職員(主事などと言われます)からスタートします。

当然、社会人経験もない人に最初から役職を与えることはありえませんので違和感はないでしょう。そして給与についても、いわゆる大卒の初任給の金額からのスタートとなります。

これに対し、経験者採用では最初から役職がつくことを前提として採用される場合もあります。
例えば、特別区では職務経験の年数に応じて役職が異なります(8年以上の職務経験で主任主事からのスタートとなります)。

また、国家一般職では係長級の職員を採用するための試験となっています。

このような役職つきの採用でなくても経験者採用であればスタート時の給与に差が出てきます。公務員の場合、以下のような俸給表という表をベースに給与が決められます。

棒給表

職務年数や役職によって「級」や「号」が上がっていく(位が上がっていくイメージ)のですが、経験者採用で採用された場合、最初から高めに設定されているのです。

例えば、横浜市では受験案内において以下のような例が記載されています。

・22歳で大学を卒業し、民間企業における正社員の職務経験が6年、青年海外協力隊経験が2年あり、無職の期間2年を経て、採用時の年齢が 32 歳の場合 →256,244円
・22歳で大学を卒業し、民間企業における正社員の職務経験が10年あり、採用時の年齢が32歳の場合 →261,116円
・22歳で大学を卒業し、民間企業における正社員の職務経験が18年あり、採用時の年齢が40歳の場合 →302,528円

これはあくまで例であり、「個々の採用前の職歴の有無・内容に応じて決定するため、金額は異なります。」としていますが、どの自治体でも職務経験がある人はそれまでの経歴を考慮されるためスタートの給与が高めとなるのです。

なお、公務員の給与について詳しく知りたいという方は公務員の給料や年収について知っておきたい基礎知識まとめを参考にしていただくとよいでしょう。

そして役職や給与が高いということは当然、末端職員とは違い役職に応じた仕事が任されるため責任感が違います。入庁して1年目では通常任されないような仕事も経験者採用であれば任されるのが普通です。

それだけ仕事についてのパフォーマンスは期待されているということも認識しておいたほうがよいでしょう。

5 まとめ

経験者採用試験はあなたが仕事に対してどのように取り組み、それを行政の仕事としてどのように生かすかを伝えることが重要です。

受験のための要件は決して易しくはありませんが、一般で入るよりも責任のある仕事を任されるのでやりがいを感じることができますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

また、要件を満たさない方も地方公務員は年齢制限を引き上げしている傾向にあるのため、諦める前に志望する自治体の受験要項を確認してみるとよいでしょう。

公務員試験対策、予備校か個別指導どっちがいい?詳しく解説します

これから公務員試験の勉強を始めよう!そう思いまずは予備校に通おうかな。そう思っている人も多いかと思います。
私もそうでしたが、公務員を目指すのであればまずは予備校で勉強しようと思い大手予備校に通いました。

独学も考えなくはなかったですが、やはりあれだけの科目を一人で勉強するのは大変だということと、論文と面接は独学では対応できないだろうな、ということから結局は予備校に通うことで合格することができました。

当時は頭にはなかったのですが、人によっては予備校ではなく個別指導が向いている方もいます。

実際、ASK公務員の個別指導講座では大手予備校に通いながら個別指導を受けていたり、基本的に独学で勉強し、特定の科目だけ個別指導を受けるといった使い方をしている方もいらっしゃいます。

それでは、予備校と個別指導、どっちがいいのでしょうか?
それぞれのメリット・デメリットを見ながらご説明していきますので、これから勉強を始める方の参考になれば幸いです。

※この記事では、マンツーマン(1対1)の指導を個別指導としています。

予備校のメリット・デメリット

まずは予備校に通うことのメリットとデメリットについて見ていきましょう。

メリット

大手ならではの安心感がある

これから公務員試験の勉強を始めるような人は「とりあえず大手予備校に通おうかなぁ」と思う方がほとんどなはずです。

それはやはり大手ならではの実績や安心感だったり、知り合いが通っているからといった理由で、とりあえず大手の予備校に通っておけば間違いないだろう、という気持ちからだと思います。(私もそうでした)

このように大手予備校の場合は安心して通うことができ、豊富な実績があるということは大きなメリットといえます。

カリキュラムに沿って学習をすれば合格に必要な知識を得られる

予備校では科目ごとにカリキュラムがあり、それに沿って授業が進められます。

最初は数的処理や憲法といった重要科目から始まり、徐々に他の教養科目や専門科目が同時並行で始まっていき、試験直前までにすべての科目を網羅するというかたちになります。

受講生はこのカリキュラムに追いつきながら学習を進めていくだけで計画的に試験に必要な科目をすべて学習することができます。

予備校によっては、国家一般職・地方上級コースや市役所コース、警察・消防コースというように受験する試験に合わせたコースが用意されており、その試験に特化した授業が行われるため無駄な学習をしなくても済みます。

公務員試験に必要な膨大な科目を自分で学習計画を立てて進めていくことはとても大変なことです。

そのため、こうしたカリキュラムに沿って勉強をするだけで合格に必要な知識を身につけられるということが、計画を立てて勉強するのが苦手な方にはメリットとなるでしょう。

勉強仲間ができるのでモチベーション維持が可能

特に大手予備校の場合、多くの方が講座に申し込むため長い勉強期間を通じて仲間ができます。

「友達ができちゃったら勉強に集中できないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、そのようなことはあまりありません。

勉強仲間ができることで、勉強のいい息抜きになるだけでなく、お互いの勉強する様子を見ることでモチベーションを維持することができます。
自分よりも早く予備校に来て自習をしているのを見ると、もっと頑張ろうと思います。目指している試験が同じならなおさらです。

1年近くという長い期間を一人で勉強するというのはどうしてもモチベーションが下がるものです。
怠け癖のある人は仲間を作って刺激を受けることをおすすめします。

デメリット

ついていけなくてもどんどん授業は進んでいく

予備校はカリキュラムに沿って進められるとお伝えしました。
それはメリットでもあるのですが、授業に追いつけないとどんどんと遅れをとってしまうことになります。

予備校は集団授業なため、当たり前ですが受講生が理解していようがいまいが授業は基本的には待ってくれません。
公務員試験は科目が膨大なので、一度遅れをとってしまうと他の科目の時間を犠牲にしたりして、手が回らない科目がさらに膨れ上がっていきます。

ただ授業を受けるだけでなく、授業以外の時間は自習をしっかりと行い、分からないところは積極的に講師に聞くということをしなければなりません。
これは試験に合格するのであれば当たり前の姿勢ですが、予備校に通えば安心と考えている方があまりにも多いです。
そして、そういう方はいつの間にか予備校から消えている、ということはよくある話です。

予備校の場合は、カリキュラムに遅れないように学習を進めていくことが特に大切です。

講師の当たり外れの差が激しい

公務員試験に合格できるかどうかは、予備校の知名度ではなく、教えている「講師の質」だということを認識しておきましょう。

講師の質によって理解の度合いが大きく異なります。

私も予備校に通っているとき、どうしてもわかりにくい講師にあたってしまったため、その科目はWeb授業で他の校舎の授業を見て勉強をしました。

カリスマ講師などと言われる講師もいますが、それはほんの一部の講師にすぎません。

大手だからと合格できる、と安心するのではなく、自分に合った講師を見つけ、しっかりと復習をすることで始めて合格に必要な実力がつくということを知っておきましょう。

特定の科目だけ受講ができない

ある程度学力が高い方や予備校に通う時間がない場合は独学で勉強を進める方も多いかと思います。
そのような方が必ずぶち当たる壁が論文と面接対策です。

公務員試験の筆記試験のレベルであれば、勉強方法を知っている方であれば独学で十分合格することは可能です。
ただし、論文と面接対策だけは独学で対応することは不可能に近いため指導を受ける必要があります。

予備校の場合、先述のとおり国家一般職・地方上級コースのようにコースとなっていることが大半であり、教養科目や専門科目、論文対策、面接対策までがパッケージとなっているため、特定の科目だけ受講することができません。

そのため、直前期だけ論文対策や面接対策だけ受けたい!と思っても難しいのです。

実際にASK公務員にはこうした方からの問い合わせが多くあることから、特定の科目だけを対策したいという人は多いでしょう。

また、数的だけは苦手だからしっかりと学びたい、と思っている人も多いですが、それもやはりできません。

あくまですべての科目をカリキュラム通りに受講できないので、苦手科目だけを補強したり、特定の科目を受講したいと考えている人には向いていないと言えるでしょう。

論文・面接対策のサポートが手薄くなりがち

公務員試験は教養科目や専門科目で得点できても、論文や面接試験で得点できないと落ちてしまう可能性は十分にあります。

特に最近の公務員試験の傾向として、思考力やコミュニケーション能力を見るために論文・面接試験が重視されています。

予備校では論文対策や面接対策の講義はもちろんありますが、受講できる回数が限られているため十分な対策ができないまま試験を迎えてしまうことがよくあります。

どうしても人数がいるため、一人一人の論文添削や模擬面接に時間を取ることが難しいのです。

そのため、これらの試験を苦手と感じる方にとってはサポートが手薄いと感じてしまいます。

予備校に向いている方・向いてない方

予備校についてのメリット・デメリットをまとめると以下の通りとなります。

メリット

  • 大手ならではの安心感がある
  • カリキュラムに沿って学習をすれば合格に必要な知識を得られる
  • 勉強仲間ができるのでモチベーション維持が可能

デメリット

  • ついていけなくても授業はどんどん進んでいく
  • 講師の当たり外れの差が激しい
  • 特定の科目だけ受講ができない
  • 論文・面接対策のサポートが手薄くなりがち

このようなメリット・デメリットから、予備校に向いている人というのは授業についていける人となります。

授業を受けるだけでは当然合格はできませんので、予備校の授業はある程度の自主性が必要となるため、「予備校に通えば安心」というタイプは向いていません。(意外とついていけなくなる人は多いです)

人数が多いので一人あたりのサポートも限度があるので、勉強が苦手な人は苦労することが多いです。

また、自分でスケジュールを決めて勉強を進めていくのが苦手という人には予備校は向いているといえるでしょう。
カリキュラムがあるため、必要なタイミングで必要な知識を身につけることができるのは大きな強みです。

個別指導のメリット・デメリット

次に個別指導のメリット・デメリットをご説明します。

メリット

今のレベルに合った指導を受けられる

個別指導は通常、生徒と講師の1対1の授業です。そのため、一人ひとりのレベルに合わせた講義を受けることができます。

個別指導を受講される生徒は多くの場合、自分で勉強してきたけどどうしても分からない、予備校に通っているけれどこの分野が苦手、というように「苦手意識」を持っています。

例えば数的であれば、分数の掛け算がわからない、といった算数レベルからつまずく方も多くいます。
そのような場合、予備校だとまさか掛け算からやるわけにはいかないため、基本的なことは自分で学ばなければなりません。

特に苦手意識がある科目については個別指導を受講することは大きなメリットといえるでしょう。

分からないところは何でも聞くことができる

勉強をしているとどうしても分からないところがでてきます。
そんなとき、個別指導であれば講師に分からないところを聞くことができます。

予備校の場合も授業前後に分からないところ聞くことはできますが、他の生徒が質問のために並んでいたりすることも多く、聞くまでに時間がかかったり、時間の関係で十分に聞くことができずモヤモヤしてしまうことはよくあることです。

また、なんとなく気恥ずかしくて聞けない、こんなこと聞くと怒られそう、という方もいるでしょう。

予備校は受講生が多いだけにどうしても周りに気を使ってしまいがちなので、気になることや勉強でわからないところはなんでも聞ける環境は個別指導ならではといえます。

特定の科目だけを対策することができる

繰り返しになりますが、予備校はコースとなっていることがほとんどであるため、「数的だけを対策したい」「論文の添削だけをしてほしい」といったような特定の科目だけ受講することは基本的にはできません。

数的などの苦手科目や論文や面接といった独学では対策が難しい科目だけを受けたいというニーズに応えられるのは個別指導ならではです。

ただし、個別指導塾によってはこうした対応が難しいこともあるところもあるので、事前によく確認するようにしましょう。

デメリット

予備校よりも授業料が高くなる傾向にある

個別指導のデメリットはなんといっても予備校と比較した場合に授業料が高くなってしまうことです。

予備校は公務員試験に必要な知識をすべて学べて20〜30万円ほどであるため、1回あたりの単価で考えるととても安いです。

これに対し、個別指導は1回あたりの単価は比較的高く、予備校のようにすべての知識をすべて学ぼうと思うと膨大な金額になります。(逆に1日だけの単発講座だけを受ける場合は安く済みます)

そのため、苦手な科目や面接対策だけなど、特定な科目だけを受講するのが一般的です。

当然、個別指導は生徒一人に対し講師が一人必要なので人件費がかかることから高くなります
予備校のように20人や30人と大人数に対して授業を行えば一人あたりの単価が安くなるのはお判りでしょう。

個別指導で安さを謳っているところがあれば、それは講師への投資を惜しんでいる可能性があり、注意が必要ですので、必ず受講前に体験授業を受けるなどして様子を見ることをおすすめします。

進度が遅れて試験に間に合わない可能性もある

個別指導は生徒のレベルに合わせられる反面、いつまでも基本が身につかないと進度が遅れてしまいます。

たとえば、数的処理が苦手でいつまでも算数の基本が理解できない、このような方は過去問をこなすまでに時間がかかってしまい、結果的に試験までに十分な実力が身につかず、不完全なまま試験に臨むことになります。

個別指導というと「何から何まで面倒を見てくれる」と思っている人も多いですが、あくまで勉強を進めていくのは自分です。学んだことはしっかりと復習していき、問題を解けるようになっていかなければなりません。

柔軟性がある分、自分で目標に向けて何をすべきかを考え(聞いて)、学習を進めていかなければなりません。

個別指導に向いている方・向いてない方

個別指導のメリット・デメリットをまとめると以下のとおりとなります。

メリット

  • 今のレベルに合った指導が受けられる
  • わからないところはなんでも聞くことができる
  • 特定の科目だけを対策することができる

デメリット

  • 予備校よりも授業料が高くなる傾向にある
  • 進度が遅れて試験に間に合わない可能性がある

個別指導はとにかくマンツーマンでサポートをしてくれるので、勉強が苦手でどう進めていけばいいか分からない人にはおすすめといえます。

特に、何からやれば全くわからない方や、自分がやったことに対して講師から意見をもらいたいという人にはとにかく合っているのが個別指導です。

とはいえ、自分で勉強は進めていかなければいつまでたっても先に進めないので、それなりに自分で頑張るということは必要です。

逆に、少しでも安く済ませたいという人には向いていません。そのような人は大手予備校や独学で勉強を進めていき、どうしても予備校や独学での対策が難しい場合に現状に合わせて利用するのが良いでしょう。

まとめ

それぞれメリット・デメリットを比較しながら解説しましたが、なんとなく自分にとってどちらが良いのは判断できたでしょうか。

予備校や個別指導は正直「どこがいい」というのはそれほどありません。なぜかというと、どこもそれほど指導内容について大きな違いはないからです。

それよりも、自分に合いそうかどうか、しっかりとサポートしてくれそうか、そういった視点で選ぶと良いでしょう。

そして、気になるところがあれば実際に話を聞きに行くなどし、自分に合いそうかどうか判断してみることをおすすめします。

【公務員試験】ミクロ経済学8割ゲットの勉強法とおすすめ参考書

公務員試験において、経済学は、民法と並ぶ攻略困難科目です。私が出会った受験生の多くが苦戦していました。

出題数が少なければ捨てることも可能です。しかし、経済学全体で以下の出題割合を占めるため、その戦略は賢明とはいえません。

経済学(ミクロ経済学+マクロ経済学)の出題数

・国家一般職:10問/40問

・東京都特別区:10問/40問

・地方上級:11問/40問

・市役所上級・中級:11問/40問

そこで、本記事では、ミクロ経済学に絞って、どのように学習をしていけば、8割程度の得点ができるかについて解説していきます。公務員試験は6~7割の得点で筆記試験を通過できる年が多いので、8割取れるということは、得点源科目化していることを意味します。

なお、紹介する学習方法は、初学者で予備校に通っていない方を想定し、入手可能な書籍しか用いません。そのため、どのような方にも取り入れられます。是非、この記事を参考に勉強を進めていっていただき、ミクロ経済学を得意科目化してください

※本記事は、国家総合職を除く大卒公務員試験種を対象としています。

1 ミクロ経済学とは?

 ミクロ経済学とは、経済を構成する個々の家計(消費者)や企業(生産者)といった経済主体がどのように行動するかという分析をし、また、両者が出会う市場における価格メカニズムや資源配分の効率性等の分析も行う経済理論のことです。

公務員試験では、概ね以下の6分野に大別されます(学習開始前の方は、以下の概要を読んですぐに理解できなくても構わないのでご安心ください)。

1)消費者理論

……様々な仮定を置きながら消費者の行動を分析し、需要曲線を導出します。

2)生産者理論

……1)同様、様々な仮定を置いた上で生産者の行動を分析し、供給曲線を導出します。

3)競争均衡

……1)2)で導いた需要曲線と供給曲線を市場で出会わせ均衡を得ます。余剰やパレート効率性などの概念もここで学習します。

4)不完全競争市場

……3)までにおいて前提としていた完全競争市場という仮定を外して、独占市場や寡占市場といった不完全競争市場を学びます。寡占市場の中ではゲーム理論にも触れられます。

5)市場の失敗

……市場に任せると資源配分が最適かされていない状況である市場の失敗の事例である、費用逓減産業・外部効果・公共財・情報の非対称性などを学習します。

6)国際貿易理論

……リカードの比較生産費説などの貿易理論、貿易の余剰分析などを行います。

2 ミクロ経済学の学習開始前に心得ておきたいこと

出題分野の説明から、次の3つのことが導けます。これは学習開始前に心得ておかなくてはならないことでもあります。

1つ目は、色々な仮定が置かれる科目だということです。つまり、「△△は、○○という条件があるならば、××となる」という結論の覚え方をしなければなりません。経済学を苦手とする受験生は「△△は××だ」と覚えてしまい、少し仮定が変わると分からなくなってしまいます。きちんと「仮定も覚える」ようにしなければなりません。

2つ目は、積み重ね科目だということです。1)で導出した需要曲線と、2)で導出した供給曲線が、3)で合わせて使われ、4)や5)はそれまでの仮定条件を変えて今までとの相違を学びます。初学者対象の記事なので説明は省きますが、6)も前までのところが分からないと話が理解できません。文系に位置づけられる科目というのは、概して1つの分野が他分野にそこまで影響がない気がしますが、ミクロ経済学(実はマクロ経済学もですが)は前から順に学習する必要があります

3つ目は、計算処理が必要な科目だということです。〇〇曲線という言葉から、関数表現されることが想像できるでしょう。これは、例えば平面上で縦軸に価格を、横軸に数量をおいたときに、需要曲線が一般的に右下がりの曲線として図的に描かれるわけなので、その曲線を数式的にも表せられるということです。

実際、ミクロ経済学の問題は、指数法則に則った処理、方程式の解法、微分と偏微分などの計算方法を知らないと解けない形となっているものが出ます。手を動かして図を書き、計算ができないといけません

3 ミクロ系経済学の具体的な勉強法とおすすめ参考書

それでは、実際にどのような学習をしていくと良いのかを説明していきます。

(1)経済数学から攻めていこう

経済の参考書を読んでいこうと意気込んでも、計算処理がよく分からないと読み進めるのが苦痛になります。ここは、「急がば回れ」の精神で、公務員試験の経済学で使う数学だけおさえてしまいましょう。

おススメは、石川秀樹著『経済学と数学がイッキにわかる!!』です。

ただし分厚い本ですので、全部をやる必要はありません。ミクロ経済学としては、chapter01~07までをやれば十分です(マクロ経済学を含めても、あとchapter09、10を追加する形で構いません)。

本書の優れている点は、別冊ワークブックがあり、各chapterに入る前に実力を診断できる形となっていることです。これを先に行い、正解できる単元は読まなくても構いません。分からないところだけやりましょう。他方、すごく苦手な方は、YouTubeに全頁の解説動画があります。これが理解の助けとなるでしょう。

参考動画

(2)問題集と解説が一体となった本で知識注入を!

経済数学ができるようになった次は、いよいよミクロ経済学の知識を注入します。このとき、対策本を大別すると、①基本書(大学の1・2年生向けに大学教授が書いた本)、②基本書をかみ砕いた予備校講師による講義調の本、③過去問集、があります。このうち、どれを使えば良いと思いますか。

他サイトのアドバイスは②→③を推奨していることが多いようです。②の例は、茂木喜久雄著『らくらくミクロ経済学入門』や石川秀樹著『試験攻略入門塾 速習ミクロ経済学2nd edition (【試験攻略入門塾】)』、村尾英俊著『最初からつまずかない経済学 ミクロ編』などです。

 確かに、①は公務員試験とは関係ない記述がある本が多く不向きです。特に、マンキューなど著名な経済学者の翻訳本などに手を出しますと、演習問題には答えの掲載がなく、問題のタイプも公務員試験とはリンクしていないため、大変遠回りの学習になります。試験対策としては止めておくべきでしょう。 

ということは、やはり②→③になるのでしょうか。私の教えてきた経験則ですと、この手順は理想的とまではいえない(=王道ではない)と感じています。もちろん、各著書とも丁寧で分かりやすいです。ただ、この親切を3割くらい削って、もう少し問題を解きながら取り組める参考書の方が、早くマスターできるのになぁと常々感じています。 

特に上記(1)で経済数学を抑えているならば、『公務員試験 ゼロから合格 基本過去問題集 ミクロ経済学』(以下、『ゼロから』と表記)がお勧めです。この本は、問題集と銘打っていますが、丁寧な知識注入部分があります。そして、もちろん問題集のカテゴリー本ですので、たくさんの問題もあります。②よりの③ということです。
ということで、『ゼロから』にトライし、理解が難しい部分だけ②で拾い読みをしていくことがお勧めです。つまり、③(但し②寄り)→③(純粋な問題演習)がおススメの学習法です

知識注入にも使える問題集

理解が難しいところだけ拾い読むと良い本

(3)仕上げは、やっぱり過去問集のやりこみ

『ゼロから』に収録されている問題レベルは易~中程度といえます。そこで、本記事の目標、8割到達のためには、より難易度の高い問題にもチャレンジする必要があります。また、同程度の問題においても1問でも多く解く経験をしておくことが大切です。

その目的でお勧めの本は、『合格目標 公務員試験 本気で合格! 過去問解きまくり! ミクロ経済学(以下、LEC本と表記)です。解説は予備校の本だけあって分かりやすいですし、たくさんの問題が収録されています。毎年改訂で最新問題も手に入ります。

 ところで、このように書くと、『スーパー過去問』シリーズではないのかと聞かれます。もちろん、こちらでも構いません。ただ、LEC本は地方上級試験の再現問題が多く収録されています。そのため、国家一般職や専門職の公務員が第一志望なら『スーパー過去問』でも良いですが、地方上級の志望順位が高かったり、国家公務員と同程度だったりするなら、LEC本がお勧めです。

(4)まとめ

以上紹介した通り、ミクロ経済学のおススメ勉強法は、①経済数学への抵抗感をなくし、②問題を解きながら知識が注入できる本で学習を進め、③収録豊富な過去問題集で1問でも多くやり込む、というものです。

また、①の計算と③で問題を解く際は、自分の手を動かしてください。そして、②の際には、必ず順々に学習していき、各理論の設定されている仮定は確認するようにしてください。そうすれば、本試験でミクロ経済学8割獲得は決して難しいものではありません。参考に、ぜひ頑張って欲しいと思います。

なお、学習を進める際のペースメーカーになって欲しいとか、知識注入は頼りたいとか、過去問題集の分からない問題だけ教えて欲しいとか一部の困りごとがあれば(もちろん全部でも構いませんが)、個別指導致します。(詳細は、経済学対策講座をご覧ください)。

【分野別】数的推理の具体的な勉強方法について

ご存知の通り、公務員試験の教養科目において数的処理はとても重要な科目です。

試験にもよりますが、多くが40問中16問ほど出題されており、教養試験全体の40%を占めます。教養試験では6割の得点が1次試験合格の目安となりますので、特に数的処理の重要かが分かるかと思います。

にも関わらず、あまりにも数的が苦手な方が多いです。

特に「数的推理」については、判断推理や資料解釈とは異なり「数学的要素」の強い科目ですので文系出身の方が苦手とする人が多いでしょう。

この記事では数的処理の中でも多くの方が苦手とする「数的推理」について、どのように勉強すればよいか「分野別」に解説しておりますので、行き詰まっている方は参考にしていただければと思います。

数的処理の全体的な学習法については公務員試験の数的処理が苦手な人が知っておくべき勉強法をご覧ください。

1 数的推理の分野別攻略法

数的推理は、きちんと問題演習をこなしていくことで、時間がかかる判断推理などに比べてすぐに点数につながります。

年明けからでも1日4問を目安に毎日欠かさず解いていけば、本番には間に合う分野です。
以下では頻出分野についてどのように攻略していけばよいかを説明していきます。

1−1 場合の数・確率

場合の数・確率の問題は数的推理の超頻出分野です。

数的推理の得点率をあげたいと考えているのであれば、まずは場合の数・確率を固めることをおすすめします。

場合の数や確率は高校の数学で一通り勉強された方が多いと思います。
難易度的には大学入試で出題される場合の数・確率よりもかなり簡単です。

元々数学が得意だったという方は気にしなくても構いませんが、そうでなかった方は、まずは特別区や都庁といった難易度があまり高くない問題を解いてみて、もしそれでも歯が立たないようでしたら高校数学の参考書(白チャートやセンター用の参考書など)を参考にしてみると良いでしょう

場合の数・確率の問題で皆さんが良くつまずくのが、重複と組み合わせの問題です。
例えば以下のような問題です。

(例)1,2,3の数字を使って4桁の数字を作るとき、各位の数字の和が8になる場合の数は何通りか。

すぐに解法が思い浮かびましたか?

以下は解答例です。

まず、1,2,3の数を使って和が8という数字になる組み合わせを考えます。
その組み合わせは、(1,1,3,3)(1,2,2,3)(2,2,2,2)の3通りしかありません。
各組合せの順列について、
(1,1,3,3)⇒4!/2!×2!=6通り
(1,2,2,3)⇒4!/2!=12通り
(2,2,2,2)⇒1通り
6+12+1=19通り
答え 19通り

簡単な問題ですが、皆さんが良くつまずくところが組み合わせの見つけ方です。

たとえば、和が8になる組み合わせといった、地道に組み合わせを見つけていかなければならない問題などでのミスが見られます。

本問では数字が小さいため、すぐに全部書き出せると思うのですが、この数字が50や100など、大きくなった場合、いざ書きだそうとすると、漏れやダブりが生まれてしまうのです。

この理由は、やり方が自分の中でシステム化されておらず、行き当たりばったりの解法になってしまっているからです。

これについては、一番初めにまず数の小さいものから順に詰めていく、もしくは大きい数字から順に詰めていくなど、自分の中でやり方を決めることで、克服できるでしょう。

場合の数や確率などの問題で、全部書き出していかないと解けない問題は特に自分の中で解法を固定化させることが必要になります。

これは他の場合の数や確率の問題に限らず、数的処理全体でも同様に言えることですので、是非ただ漫然と問題を解くだけでなく、自分なりにどうすればミスが減る解き方ができるのかを考えながら演習をこなしていくことが必要になります。

じゃんけんの問題

もう1題。以下は確率の問題でよく出る「じゃんけん」の問題です。

(例)5人の生徒が1回だけじゃんけんをするとき、その1回で少なくとも1人は勝つ生徒がいる確率はいくらか

以下は解答例です。

「少なくとも1人は勝つ生徒がいる」=1−「1人も勝つ生徒がいない(全員あいこ)」

と考えるのが決まりきったパターンです。

5人がじゃんけんをするとき、その出し方は1人あたりぐー・ちょき・ぱーの3通りですので、
3^5=243通り

あいこになるのは
①全員がおなじものを出した時、もしくは
②ぐー・ちょき・ぱーのすべてが出ている時
の2通りです。

それぞれについて場合分けをします。

①全員「ぐー」か「ちょき」か「ぱー」なので3通り
②(1,1,3)になる場合→5C1×4C1×3C3×3=60通り
(1,2,2)になる場合→5C1×4C2×2C2×3=150通り
よって、243-3-150=90通り(答え)

簡易的な解説にとどめましたが、これはじゃんけんの問題の中では基本的なものなので、こうした問題が出たら必ず解答できるようにしましょう。

ダイレクトに答えを出す問題や、本問のように余事象を使った問題もありますので、こうした基本問題を手広く固めていくことで、次第に応用問題にも対応できる実力をつけることができるようになります。

焦らずゆっくりと計画を立てて進めると良いでしょう。

1−2 速度

速度の問題も確率と並び、超頻出分野です。

皆さんが受ける本試験の中で、どこかで必ず1問は出題されるでしょう。

例えば以下のような問題があります。

(例)6両の普通列車が、長さ1502mのトンネルに入り終わってから出始めるまでに86秒かかった。また、この仏列車が自足93.6kmで走る8両の急行列車と完全にすれ違うのに7秒かかった。このとき、この普通列車が長さ450mの鉄橋を渡り始めてからわたり終えるのに何秒かかるか。1両あたりの長さは普通と急行で同じものとする。

解答例については以下のようになります。

hayasa

解答例を見ていただければ分かりますが、旅人算はとにかく図を描いて練習することをおすすめします。

図を描くことで求めなければならないことが明確になり、どのようなプロセスで解いていけばよいかが分かりやすくなります。

また、図を描きながら考える癖をつけることは、旅人算だけでなく、他の分野でも役に立ちますので、ぜひ習慣とするようにしましょう。

ポイントとしては、図をなるべく大きく描くことです。速度の問題は頭を整理して、一歩ずつがコツです。

この分野についてはとにかく量を解くことが重要ですので、時間もかかり、解けなくて焦ることも多いと思いますが、それは他の受験生も同じなので、気にせず自分のペースで頑張りましょう。

1−3 濃度

濃度も頻出分野ですが、速度と同じく図を描くことが重要です。

参考書によっては比で解くやり方も紹介されていますが、あくまで「基本第一」で解くことが、本試験でも対応できる実力をつける上で必要になります。

例えば、25%の食塩水100gと、20%の食塩水200gと、15%の食塩水300gを混ぜると、何%の濃度の食塩水ができるでしょうか?

これを比で解こうとすると計算式が多くなり、時間もかかるだけでなく、その分計算ミスが出る可能性が高くなるため、おすすめしません。

あくまで基本に忠実に、

(100×0.25+200×0.20+300×0.15/100+200+300)×100=10  答え 10%

と、解いてしまえばいいのです。

テクニカルな解法を身につけるのもいいですが、どんな問題にも対応できる基本を身に着けてから、あくまで手段の一つとして知っておくとよいでしょう。

1−4 その他

魔法陣や割合の問題については、あまり頻出度は高くない上に、もし出されても簡単か、極端に難しい問題であることが多いです。

本試験で出題された際、自分が解ける問題か否かの見極めが正確にできるようにしてください。数的推理分野での得点を上げるには、上記の分野を固めれば十分ですので、優先度は中程度にとどめておくにしてください。

とはいえ、全くの無対策では簡単な問題であっても取り落としてしまうことになってしまえばもったいないので、問題集などで基本問題は確実に得点できるようにしておくと安心です。

2 まとめ

数的推理はとにかく地道に分野ごとに解法を抑えることが得点の近道です。

そのためには何か一つ問題集をやると決めたら繰り返し解き、自分なりの解法を身につけるようにしてください。
どんなに苦手な方でも、何度も繰り返し問題を解き解法を身につけることで確実に得点できるようになるはずです。

数的推理は解法を覚えてしまえば確実に得点できる分野ですので、「自分には無理だ」と考える暇があれば、1問でも問題を解くようにしましょう。