筆記試験対策

都庁の専門記述対策と科目選びのポイントについて

東京都I類Bの試験では、国家一般職や他の地方上級の試験とは異なり、専門記述試験があります。

他の試験種を併願する受験生にとってはかなり重たい負担になることは間違いないのですが、基本はあくまで択一試験対策で培った知識です。
ですので、専門記述一本に特化しすぎず、択一試験の対策と並行して勉強することが大切です。

また、都庁の専門記述は難易度が科目ごとにばらつきがあり、本番で選択する科目を幅広く用意した方がリスクを軽減させられますので、科目を絞らずに勉強することが必要になります。

ここでは都庁の専門記述の概要やおすすめポイント、対策について紹介していきますので都庁を志望される方の参考になればと思います。

※本記事は東京都IBに最終合格された方の経験をもとに作成しております。

1 都庁の専門記述の概要について

東京都の採用試験は配点を公表していません。
そのため、1次試験における専門記述の配点も不明で、科目ごとの得点調整も行われているかは一切わかりません。

インターネット上では配点を様々に予想した書き込みが見受けられ、私自身もその書き込みを読んで一喜一憂していたのですが、結論としては一切根拠のない情報ですので、勉強の方針としてこれらの情報を参考にするのはおすすめできません。

出題科目は合計10科目で、当日そこから3科目を選択します。
憲法・民法・行政法・経済学・財政学・政治学・行政学・社会学・会計学・経営学から1科目あたり1題が出題されるという形式になります。

1枚当たり25行の罫線だけが引かれた、合計3枚のA4サイズの解答用紙に解答していく方式です。
実際に解答用紙を見ればわかるのですが、とても字を細かく書かなければ解答が収まりません。とはいえ、小さい字を書きすぎると採点官に悪い印象を持たれてしまいますので、ある程度見やすい大きさで書くことが求められます。
試験時間は全体で120分ですので、1科目あたり40分を目安に、字数としては、750~800字が目安になります。

東京都の採用試験は配点を公表していないため、教養試験や専門試験、論文試験の中でどれが一番配点が高いのかはわかりません。また、過去の受験生の情報を聞いても、確実にこれが一番配点が高いと言えるものもありません。

しかし、ここ2年間の教養試験の易化傾向や、論文試験のテーマを見るに、全体の試験において専門記述試験で他の受験生に差をつけられるのは大きなリスクであると言えます。また、多くの合格者は3科目を完答できており、最低2完以上が専門記述が合格の条件になることは間違いないと言えます。
専門記述で得点するためにも手を抜くことなくしっかりとした対策をするようにしましょう!

2 各科目の特徴とおすすめ科目について

専門記述試験の鍵は、科目選択にあると言って過言はありません。
毎年、科目によって明確に難易度の差があるのが東京都の特徴です。得点調整が行われているのかもわかりませんので、簡単な問題を確実に完答することが、合格する上では大切です。

以下では科目ごとに特徴とおすすめポイントを書いていきます。

憲法

かなりおすすめです。問題も書きやすいものが多く、私の周りの受験生もかなりの確率で選択していました。また、裁判所の試験や国税専門官などの試験を併願される受験生的にとっても、記述科目が重複するので、勉強していて損はありません。

【直近8年間の出題内容】

H28 外国人の人権について説明せよ。
H27 国政調査権の意義、性質、範囲と限界について説明せよ。
H26 私人間における人権の保障に関して、私人間への適用を認める2つの考え方とそれぞれの問題点について、三菱樹脂事件及び日産自動車事件の最高裁判決に言及して説明せよ。
H25 法の下の平等の意義について述べた上で、平等原則違反の違憲審査基準について、最高裁判所の尊属殺重罰規定違反判決に言及して説明せよ。
H24 条例の意義について述べた上で、条例の制定権と範囲と限界について、奈良県ため池条例事件及び福島市公安条例事件の最高裁判決に言及して説明せよ。
H23 生存権の意義を述べた上で、生存権の法的性格について、朝日訴訟及び堀木訴訟の最高裁判決に言及して説明せよ。
H22 表現の自由の意義を述べた上で、表現の自由を規制する立法に対する合憲性の判定基準のうち3つをあげ、それぞれについて説明せよ。
H21 違憲審査制の意義を述べ、違憲判断の方法について説明せよ。

人権分野が若干多い印象です。

しかし、統治分野での出題も良く出題されていますので、両方学習することが求められます。また、解答には判例に言及することが求められますので、判例名を正確に覚えておかなければなりません。

とはいえ、出題される判例はどれも超重要判例であるため、むしろ判例について言及することは字数稼ぎにもなることから、憲法を選択することは他の科目を選択するよりもお得だと思います。

民法

民法の専門記述での選択はあまりおすすめしません。総則、物権や債権を合わせると論点が膨大になるため、あまりにもコストパフォーマンスが悪いと言えます。
私は民法は択一試験においては得点源の科目でしたが、記述科目ではかなり山を張って対策しました。

【直近8年間の出題内容】

H28 通謀虚偽表示の意義について述べた上で、効果について説明せよ。
H27 不法行為の意義を述べ、一般不法行為の成立要件について説明せよ。
H26 債権者代位権の意義、要件、行使及び効果について説明せよ。
H25 動産の即時取得の意義、要件及び効果について説明せよ。
H24 時効の中断について、時効の中断事由に言及して説明せよ。
H23 保証債務の意義及び性質について説明せよ。
H22 民法第177条に規定する不動産物権変動の対抗要件及び第三者の範囲について説明せよ。
H21 表見代理制度の意義を述べ、表見代理の3つの類型についてそれぞれ説明せよ

平成28年度の問題はかなり易しく、私の周りでも選択した人をかなり見かけました。
論点を厳選した上で、的中した時に解答できそうであれば、書くことをおすすめします。都庁の専門記述においては、サブとして民法を学習する分には有効だと思いますが、メインで置くにはリスキーだと思います。

行政法

都庁の専門記述では、行政法を選択することはあまりおすすめしません。勉強すれば書けないことはないので、もし勉強した論点が出題されれば解答できますが、行政法も民法と同様に論点が多く、当てに行き辛い科目であると言えます。

【直近8年間の出題内容】

H28 行政手続法に定める「行政指導の中止等の求め」及び「処分等の求め」について、それぞれ説明せよ。
H27 行政行為の附款について説明せよ。
H26 行政上の強制執行の意義を述べた上で、行政上の強制執行の種類を4つあげ、それぞれ説明せよ。
H25 行政上の不服申立ての意義を述べた上で,行政上の不服申立てに係る教示制度について説明せよ。
H24 行政行為の瑕疵について説明し、あわせて行政行為の瑕疵の治癒及び違法行為の転換についても言及せよ。
H23 行政裁量について、司法審査による統制の観点から説明せよ。
H22 行政立法について、その意義を述べた上で、法規命令と行政規則とに分けて説明せよ。
H21 行政手続法に定める意見公募手続の制度について、地方公共団体への適用にも言及して、説明せよ。

出題傾向からも分かるように、こちらも択一試験では頻出テーマなのですが、いざ書けと言われると結構難しいです。
私は10テーマほど用意して臨み、実際予想もある程度当てていたのですが、書ききれる自信がなくて他の科目を選択しました。行政法も、あくまでサブとして準備する方が良いでしょう。

経済学

経済学はおすすめです。というのも、経済学の記述は図が書けるので、ぎっしり800字も書かなくても、図で字数を稼ぐことができます。また、経済学は法律系と違い、覚えることが少ないので、経済学がある程度できる人はぜひ準備することをおすすめします。

【直近8年間の出題内容】

H28 市場での自由な取引だけでは望ましい資源配分が実現しない場合を3つ挙げ、それぞれ説明せよ。
H27 生産物市場における独占企業の価格及び生産量の決定について、完全競争市場との違いに言及しながら、図を用いて説明せよ。
H26 金融政策の効果について、流動性の罠に言及しながら、IS曲線とLM曲線を示した図を用いて説明せよ。
H25 損益分岐点及び操業停止点について、図を用いて説明せよ。
H24 ライフサイクル仮説の意義を述べたうえで、ライフサイクル仮説について図を用いて説明せよ。
H23 需要の価格弾力性について、図を用いて説明せよ。
H22 新古典派経済成長モデルにおける定常状態について、マクロ生産関数Y=(K,L)を用いて説明せよ。ただし、Yは生産量、Kは資本ストック、Lは労働供給量をそれぞれ表すものとする。
H21 外部不経済について、市場メカニズムでは効率的な資源配分が達成できないことを図を用いて説明し、ピグー税及びコースの定理についても述べよ。

過去の出題からわかるように、図を用いて説明する問題が多く出ているので、比較的絞って対策しやすいと思います。
また、図を用いてという指定がなくても図を用いて構いませんので、ガンガン図を入れていきましょう。

ミクロとマクロで出題の周期のようなものは見受けられますが、リスクを回避するためにも片方に偏るのではなく両方バランス良くやった方が良いでしょう。
もし経済学をサブで置きたいと考えている場合は、どちらかに絞るという方法でも有効です。

財政学

基本的には経済学と同じく、図を使って答案を作成できる分、おすすめと言えます。
しかし、財政学は論点を当てるのが少し難しいため、それなりの論点を揃えておくべきでしょう。
私の場合は択一で財政学を選択する気はありませんでしたので、一切勉強せず、専門記述の論点だけ丸暗記してサブとして準備しました。

【直近8年間の出題内容】

H28 地方財政計画について、その概要及び役割を説明せよ。なお、歳入・歳出の公正についても言及すること。
H27 マスグレイブの財政の3機能について、具体例を挙げながら説明せよ。
H26 予算の意義を述べた上で、予算原則のうち、完全性の原則、単一性の原則および限定生の原則について、それぞれ説明せよ。
H25
H25 租税負担の配分原則である利益説および能力説について、それぞれ長所と短所に言及して説明せよ。
H24 市場の失敗を説明した上で、公共財の特徴及び種類について説明せよ。
H23 地方税の原則について説明せよ。
H22 リカードの中立命題及びバローの中立命題について、それぞれ説明せよ。
H21 地方交付税制度について、その目的及び機能を述べ、普通交付税の算定方法について説明せよ。

過去の出題からも分かるように、財政学は経済学よりの科目ですが、やはり学系科目の1つですので、暗記勝負なところもあります。財政学を一切勉強していない受験生でも、丸暗記さえすれば本番で当てられれば書けますので、ストックの選択肢を狭めない方がいいと思います。

政治学

政治学はとてもおすすめです。ぜひメインに置いておいた方がいい科目でしょう。
暗記要素が強く、800字も覚えるのが大変だとは思いますが、過去に出題された問題が繰り返し出題されることも多く、特別区からの問題も繰り返し出題されますので、対策はかなりしやすいと思います。
また、政治学は択一での頻出テーマが記述でも出されますので、頻出テーマを整理していたら出題されそうな箇所もある程度特定できます。

【直近8年間の出題内容】

H28 ミルズの「パワー・エリート」について、リースマンの多元主義と比較しながら説明せよ
H27 ダールのポリアーキー論について説明せよ。
H26 圧力団体の意義及び機能を述べ、政党との相違点を説明せよ。
H25
H25 小選挙区制及び比例代表制の仕組みについて、それぞれの短所と長所に言及して説明せよ。
H24 政治的リーダーシップについて、特性理論および状況理論に言及して説明せよ。
H23 政党の意義、機能とサルトーリの分類について説明せよ。
H22 「リヴァイアサン」で述べた政治思想について説明せよ。
H21 投票行動に関するコロンビア学派とミシガン学派について説明せよ。

都庁の専門記述によくある一行問題が主です。
また、平成28年度のように指定がある場合でも、誘導に乗れば字数も稼ぐことができますので、難易度としては高くないと思います。記述の定番がちゃんと出題されますので、是非メインの一つに置くことをおすすめします。

行政学

行政学も絶対準備しておいた方がいいでしょう。メインの中でも主力級のおすすめです。

H28 リンドブロムのインクリメンタリズムについて、合理的意思決定に対する批判に言及して、説明せよ。
H27 行政組織におけるラインとスタッフについて説明せよ。
H26 稟議制について、長所と短所に言及して説明せよ。
H25
H25 行政委員会および審議会について説明せよ。
H24 行政組織における独任制及び合議制について説明せよ。
H23 メリット・システムと米・英・日の公務員制度の成立過程。
H22 我が国の内閣制度について、明治憲法下の内閣制度との違いにも言及しながら説明せよ。
H21 情報公開制度(意義、導入経過、情報公開法)。

28年度のインクリメンタリズムは、受験生のほとんどの人が選択した科目だと思われます。
私の周りもそうでしたし、何より出題傾向を見ていれば、周期的にインクリメンタリズムかオンブズマン制度のどちらかしか出ないだろうと予想することもできたからです。出されるテーマは特別区や都庁の過去問からの出題が多いようです。

社会学

社会学も個人的にはかなりのおすすめ科目です。当て辛いという欠点はありますが、政治学や行政学と一部重複するテーマもありますし、勉強しておけば一石三鳥の科目です。

【直近8年間の出題内容】

H28 家族の機能について、マードックの説を中心に説明せよ。なお、パーソンズの説についても言及すること。
H27 スペンサーの社会進化論について説明せよ。
H26 社会的自我に関するG.H.ミード及びC.H.クーリーの理論について、それぞれ説明せよ。
H25
H25 バージェスの同心円地帯理論について、同心円地帯理論に対するホイトの主張や、ハリスとウルマンによる批判にも言及して説明せよ。
H24 デュルケムの主張した社会的事実について述べた上で、デュルケムの自殺論について説明せよ。
H23 コントによる社会静学及び社会動学について述べた上で、コントの三段階の法則を説明せよ。
H22 タルコット・パーソンズのAGIL図式について説明せよ。
H21 フェルディナント・テンニースによる社会集団の類型について説明せよ。

平成25年度のような地雷の年度もあり、難易度の山がかなり激しい科目ですが、その他の年度は択一でも超頻出テーマですので、書きやすいかと思います。
択一で社会学が苦手と感じている人も、記述ではメインに置いてもいい科目だと思います。

会計学

勉強する人がほぼほぼ誰もいない会計学です。周りで会計学を選択した人はいませんでした。
私自身、択一の勉強もしておらず、丸暗記するにしてもあまりにもベースができていなかったので捨ててしまいました。
国税が第一志望で、会計学の勉強をされている受験生にはおすすめですが、それ以外の受験生は余裕があれば、という感じかと思います。

経営学

あまりおすすめしません。学系科目の中ではかなり書きにくい部類です。
記述の流れを作りづらいため、稚拙な文章になってしまい、文章構成の点数を上げにくいと思います。経営学が得意な方は準備しておくのも有効ですが、サブにしておくのが無難かもしれません。

【直近8年の出題内容】

H28 事業部制組織について、長所と短所に言及して説明せよ。
H27 人間関係論について、ホーソン実験に言及して説明せよ。
H26 バーナードの組織論について、権限受容説に言及して説明せよ。
H25 ボストン・コンサルティング・グループの開発したプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントについて、その問題点にも言及して説明せよ。
H24 コトラーの競争地位別戦略について説明せよ。
H23 サイモンの意思決定論について説明せよ。
H22 SWOT分析について説明せよ。
H21 ドラッカーの「顧客の創造」について説明した上で、彼が主張した「企業の2つの基本的な機能」について説明せよ。

27年度のホーソン実験については、社会学とも重複するため、書きやすかったと思います。H28も択一で頻出テーマなので、サブでも用意していた受験生は多いかもしれません。

3 具体的な対策について

私の場合はまず優先順位をつけて、中身を詰める前に一通り論点を揃えました。

ゴールがわからずにひたすら論点を暗記するのはメンタル的にも耐えられませんでしたので、ここから外れたら他の受験生もきっと書けないと割り切って論点を選択しました。

内訳は、憲法19、民法5、行政法13、経済学5、政治学17、社会学11、行政学12、経営学5、財政学5の合計92論点です。
一般的には60~100論点の間で準備する受験生が多いようです。中には3論点で挑戦し、最終合格を勝ち取った人もいましたが、それはごく稀ですので、最低60は欲しいところです。

覚え方としては、私は構成をwordでまとめて、流れを暗記した後、細部を詰めていきました。

tocho-note1

tocho-note2
このような感じにまとめて、あとは書き込んだりして覚えていきました。

また、おすすめの覚え方としては論点を音読した音声をボイスレコーダーに入れて、繰り返し聞き返す暗記法です。
最初は自分の声が気持ち悪く感じますが、これも合格のためと割り切って聞き続けていたら、本番では流れが自動的に頭の中で浮かんでくるぐらいになりました。

・いつから対策すればよいか

択一を一通り詰め終えてから徐々に始めていくことをおすすめします。これには個人差があるので、具体的に何月からやるのがベストとは言えませんが、私の場合は2月から専門記述の勉強を本格化させました。

択一の知識がある程度定着している方が、記述の構成の流れや用語を掴みやすいです。記述は論点数も幅広く揃える必要があるため、焦ると思いますが、急がば回れでまずは択一です。

とはいえ、あまり遅すぎては記述試験に対応できませんので、遅くても本番の3~4か月前には手を付け始めた方がいいと思います。
また、無暗に自分の予想で論点を揃えるのはリスキーですので、専門記述だけでも予備校や、専用のテキストを参考にする方がより効率良く合格レベルに達することができるでしょう。

・対策として役に立つ本は?

私の場合はTACの専門記述対策テキストを参考にしながら自分なりにまとめ直しましたが、独学の方は市販の記述対策テキストでも十分対応できるかと思います。
TAC出版の「公務員試験 論文答案集 専門記述 憲法」や「公務員試験 論文答案集 専門記述 行政法」は字数も都庁試験用に800字程度に収められていますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

公務員試験 論文答案集 専門記述 憲法
公務員試験 論文答案集 専門記述 憲法

公務員試験 論文答案集 専門記述 行政法
公務員試験 論文答案集 専門記述 行政法

4 まとめ

東京都の採用試験は配点が公表されていないため、どれを優先的に勉強すればいいのかがわかりません。
私はおそらく東京都人事委員会が満遍なく全部しっかりやれというメッセージだと思いますが、受験生にはとても頭を悩ませる一要因ですよね。

専門記述で出題される問題は年度によっては難易度が高いものもありますので、繰り返しになりますが、科目数を増やして、最大限リスクヘッジしていくことが、試験対策では必要になると思います。気が遠くなるような気がする専門記述対策ですが、毎日コツコツ詰めていけば、想像以上になんとかなりますので、是非心を折らずに頑張ってください

公務員試験の世界史の勉強法と捨てるかどうかの判断について

出題範囲の広い世界史をどのように勉強すべきか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
また、勉強が大変な割に出題数が少なく、かと言って捨ててしまっていいものかどうかということも悩みがちな内容です。

高校時代に勉強していたならともかく、自分は日本史をやっていた、そもそも歴史は選択していない、という人にとっては厄介な科目でしかないでしょう。

ここではそのような方に具体的な世界史の勉強方法および捨てるべきかの判断について解説していきます。

1.公務員試験の世界史の出題数

多くの受験生が受験する国家総合職、国家一般職、財務、国税専門官、裁判所事務官では、ここ数年間は1問の出題数となっています。27年度の各種試験も1問の出題でした。
地方上級試験や、B、C日程で行われる地方公務員試験においては各地域によって異なりますが、おおむね1~2問といったところでしょう。

世界史をはじめ、教養科目で出題される自然科学や人文科学の出題範囲は、ほぼセンター試験と同程度の範囲なのにもかかわらず、出題数が少ないため、効率よく学習していくことが必要になります。それでは、日本史と比較しながら、具体的にどのように世界史の勉強を進めていけば良いのかについて考えていきましょう。

2.世界史の勉強方法について

世界史と日本史では勉強方法が少し変わってくるため、この点を踏まえ、公務員試験における世界史について見ていくこととします。

2-1.具体的な勉強の進め方

世界史も日本史と同様、範囲が広いため、頻出分野だけ集中的に取り組むという勉強方法で基本的には問題ありません。しかし、日本史とは違い世界史を勉強する際には注意しなければならないことがあります。
それは日本史と異なり、複数の国の歴史の縦の流れを頭に入れなければならないということです。

日本史は、ひたすら日本の歴史を暗記すれば良いのですが、世界史はこの点でややこしく感じてしまい、とっつきにくいと思う方がいるようです。たとえば、ヨーロッパ史であれば、各国が統一された時期、革命が起こった時期等が異なってくるため、暗記する際に少し大変です。また単純にカタカナが多く覚えきれないといった声もよく聞きます。

しかし、出題されてもせいぜい1問程度の世界史ですから、そこまで力を入れすぎる必要はありません。日本史同様、予備校に通っている方は、授業を聞いて過去問集で演習というオーソドックスなやり方で十分かと思われます。
過去問集に関しては、スーパー過去問ゼミやクイックマスターなどオーソドックスなものを使い、それらを解く→間違った場合は、その都度正しい知識を頭に入れる→時間をおいてまた解く、という風に繰り返し解いていきましょう。

独学で勉強している人は「ダイレクトナビ」を使い学習している人が多いようです。本書は過去問を解きながらインプットできるため、効率的に学習を進めることができます。

上・中級公務員試験 過去問ダイレクトナビ 世界史 2017年度
上・中級公務員試験 過去問ダイレクトナビ 世界史 2017年度

もっと詳しく知識をインプットしたいのであればセンター試験用ですが、「世界史Bの点数が面白いほどとれる本」を見るのも良いでしょう。

改訂第2版 センター試験 世界史Bの点数が面白いほどとれる本
改訂第2版 センター試験 世界史Bの点数が面白いほどとれる本

正直、教養科目についてはセンター対策用の参考書のほうが質が高いものが多く、インプット用として公務員試験用のものでいいものはあまりないと感じています。ほとんどが他の人文系科目とまとめられてしまっており、1科目あたりの情報が薄くなってしまっているという印象があります。

ただ、こちらの本はボリュームが相当あるので、一から読もうとせず、頻出のところだけ読むか、上記のダイレクトナビや過去問集を解く中で分からない部分があれば参考にする、といった使い方をすると良いでしょう。

そして、世界史だけに限りませんが、重要な知識は何度も繰り返し出題されますので、インプットができたら過去問集を繰り返し解くということは忘れないでください。

過去問集に関しては、世界史や日本史などの人文科学や自然科学等のサブ科目は、3周できれば上出来でしょう。センター試験などで一度勉強したことがある科目は2周でも十分かと思われます。ただし、ただ何となく解くのではなく、しっかり知識を頭にいれることを意識しながら勉強を進めていかなければ意味がありません。
ただ回数を回すばかり気にしすぎてしまい、3周したのに全然解けない、ということがよくあります。

それは単純に過去問の解き方が間違っているのです。回すことを目的とするのではなく、理解することを目的としましょう。
過去問の解き方については公務員試験合格に必要な正しい過去問の解き方を参考にしてみてください。

また、世界史の問題を解く際には他科目ともリンクさせながら勉強を進めていくことをおすすめします。
たとえば、戦後史は、経済の流れ等も問われることがありますし、日本史の知識が選択肢の正誤を判断する際に役に立つことがあります。特に戦後を勉強する際は、日本史の知識とも照らし合わせながら取り組んでいくと効率良く学習を進めることができます。

2-2.問題を解くときのポイントと頻出範囲

問題を解くポイントとしては、まずは用語とその定義を正確に覚え、人物の名前とその人物が行った政策等をしっかりと一致させることが大事です。
例えば、フランクリンルーズベルトが行ったニューディール政策は経済に国家の統制を加える政策である、といった要領で頭に入れていきます。

たいていの誤った選択肢は、ここでひっかけを作ってくることが多いので、これらを覚えておけば正解を導くことができます。

また、先ほどお伝えしたように、世界史の問題を解く際は、各国の歴史を混同しないように丁寧に覚えていくことが重要です。
さらに、A国で○○の出来事が起こっているときにB国は△△な状況であった、という選択肢もたまに見られるため、横の流れにも注意して取り組むことも大事です(たとえばイギリスとフランスの関係史という形で出題されることがあります)。

以上、問題を解く際のポイントについて解説してきましたが、世界史のすべての範囲を丁寧にやっているときりがないため、特に頻出分野においてこれらの解き方・勉強の仕方を意識していきましょう。

では、世界史の頻出分野とはどこなのかというと、ずばりアメリカ史と第一次世界大戦と戦後史です。この分野は毎年どこかの試験で出題されているのではないでしょうか。

実際に、本年度(平成28年度)は、アメリカ史が国税・財務専門官試験で出題されています。裁判所は毎年かなり頻出度の低い分野を出題している印象がありますが(ちなみに本年度はイスラム世界についての出題)、アメリカ史と第一次世界大戦後と戦後については、世界史全体に取り組む時間がなくてもやっておくと良いかもしれません。

4.世界史を捨てるべきかどうかについて

最後に、世界史をいわゆる「捨て科目」にするか迷っている方もいるかと思いますので、そのような場合どうすべきかについて触れます。
結論から言えば「捨てても問題ない」です。

たった1問のために膨大な範囲を勉強するのも時間の無駄です。これまで世界史について全く学習したことのない人にとってはコスパが悪いこと極まりないでしょう。

これまで世界史を全く勉強したことがない・カタカナを見るだけで嫌気がさす、と思う方は時間がなければ捨ててしまうのも手です。
ただし、当然その分他の科目でカバーしなければなりません。得意な科目はもちろん、そうでない科目についてもそれなりに得点できるようにバランスを見ながら勉強していきましょう。

不安だから少しだけ勉強しておこうかな、と思う人はアメリカ史と第一次世界大戦後と戦後についてはやっておいて損はないかもしれません。これらの分野は先ほどお伝えした通り頻出分野なので、出たらラッキーぐらいの気持ちで勉強するといいでしょう。そうすることで勉強に取りかかるときの心理的負担はかなり減ると思います。

5.まとめ

世界史の勉強方法も他の科目と同様、インプット→アウトプットの繰り返しです。
どうしても苦手意識がある人は頻出分野だけやる、最悪全て捨ててしまってもよいでしょう。
その分、他の科目で得点できるようにしましょう。

日本史の勉強方法については公務員試験に合格するための日本史の勉強方法をご覧ください。

働きながら公務員試験に合格できるかどうかは結局あなた次第である

民間に勤めていてるけれど公務員に転職したいと感じている人は多いようです。
実際、そうした方からの問い合わせも多くいただいています。

そして多くの方が「働きながら公務員試験に合格することができるのか」と心配しています。

働きながらだとどうしても日中は仕事をしているので、時間が限られてしまい勉強時間が十分に確保できない、という悩みがあるでしょう。

逆に働きながらも公務員に合格している人もたくさんいます。
では、その違いは何でしょうか?

一言で「働きながらでも合格できます」などとは言えません。人によって合格のしやすさが違います。

ここでは働きながら公務員を目指す人が勉強を始める前に「そもそも働きながら合格できるの?」と思ったら知っておきたいことについて書いていきますので、参考になれば幸いです。

1 働きながら公務員試験に合格は不可能ではない!が、条件はある

結論からお伝えすると働きながらでも公務員試験に合格することは可能です。そういった人を何人も見てきました。

ただし、これには重要な条件があります。

それは、「あなたが過去にどれくらい勉強したか」、そして「どの公務員試験を受けるか」に大きく依存するということです。
一つずつ説明していきましょう。

・あなたが過去にどれくらい勉強したかはとても重要

まず、1点目の「過去にどれくらい勉強したか」についてですが、公務員試験の筆記試験は教養科目、専門科目、論文試験が課されるのが一般的ですが、特に教養科目についてはこれまで受験勉強の経験があるかどうかで負担が大きく変わってきます。

ご存知かもしれませんが、教養科目は英語や政治・経済、生物、化学、地理、日本史、世界史など高校時代に学習する科目が出題されます。
また数的処理という計算を要する科目があり、どこを受験するにしても出題数が多く主要科目とされています。これは算数や数学の学習経験によって理解度が大きく異なり苦手としている人がとても多い科目でもあります。

このように、教養科目においては高校時代にどれだけ勉強してきたか、そして受験勉強をどれだけしたかで勉強の負担が大きく変わってくることがわかります。

もし受験勉強をせずに推薦で大学に入ったという人はほぼ一からの勉強になるので苦労するでしょう。
逆に、大学受験でしっかり勉強した人であれば、勉強した科目については少し学び直せば思い出せることも多いので有利であることは間違いありません。

また、専門科目については民法や経済学など大学で学ぶ科目ではありますが、「勉強のやり方」を知っている人は初学であっても専門科目も得点することができます。同じことを学んでもそれをどうすれば知識として吸収できるかの方法を知っているのです。

公務員試験は学歴などは関係ないと言われていますが、過去の勉強が影響するということは知っておくとよいでしょう。

・どこを受験するかもとても重要

そして、2点目の「どの公務員試験を受けるか」についてですが、こちらも合格できるかどうかを判断する上で重要な条件となります。

公務員試験は受験先によって試験科目が異なります

国家公務員なのか地方公務員なのか。

国家公務員であれば国家一般職なのか国税専門官なのか裁判所事務官なのか。
地方公務員であれば都道府県なのか市町村なのか。

さらに、通常の大卒・高卒試験なのか、社会人採用試験なのか。

教養科目はどの試験でも出題されるので勉強は必須になりますが、専門科目は市町村の試験では出題されないケースが多いです。また、高卒試験や社会人採用試験でもほとんど出題されません。

先にも書きましたが、専門科目は行政系であれば法律や経済など大学で学ぶ科目です。そのため内容は難しく勉強に多くの時間を費やす必要があります。
国家公務員試験や比較的規模の大きい自治体では専門科目を課すところが多いです。

専門科目があるかないかで必要な勉強時間が大きく異なるため、当然専門科目をないところを受験するほうが「筆記試験は」合格しやすくなります。
「筆記試験は」と強調したのは、公務員試験は筆記試験をクリアするだけでは合格とはならないからです。筆記試験を突破したら次に「面接試験」に合格しなければなりません。

専門科目がない自治体は筆記試験が比較的合格しやすく面接は倍率が高い傾向となっているため、筆記試験をパスしたところで安心できません。

つまり、受験先によって「筆記を重視するのか」「面接を重視するのか」が違ってくるのです(今はどこも面接重視なので配点や倍率という視点からこのように表現をしています)。
筆記を重視するところであれば専門科目も勉強しなければならないという認識でいると良いでしょう。

あなたがどっちが得意かによって受験先が変わってくるかと思います。
働きながらだと当然時間が限られるので、場合によっては教養試験のみのところを受験せざるを得ないかもしれません。

働きながら公務員試験に合格できるかどうかを考えるにはこうした背景がある人によって答えが異なるので、単純に「はい」「いいえ」で答えられるものではないということを知っておきましょう。

2 独学か予備校に通うか

公務員試験において面接は重要だとはいえ、筆記試験に合格しなければ面接さえ受けることができないのでまずは筆記試験に合格することを考えましょう。

勉強を始める際に気になることといえば、「独学でやるか予備校に通うか」ということでしょう。

これについても明確にこうすべき!というのはありません。
というのは、先ほどお伝えしたとおり公務員試験は「過去にどれだけ勉強したか」そして「どこを受験するか」で必要な勉強時間が全然違ってくるからです。
さらに、働きながらであれば「どれくらい勉強に時間が割けるか」ということも考慮しなければなりません。

2−1 独学でもいい(かもしれない)人

受験勉強もしっかりしてきたし、教養試験だけの自治体を受験するし、仕事も定時で終わる。そういう人であれば独学で合格できるかもしれません。
逆に、受験勉強はほとんどしてないし、仕事も残業が多い。という方はもしかしたら独学では難しいでしょう。

独学で合格できる人は勉強のやり方を知っているということと、時間をマネジメントできる、という特徴があると思っています。

・勉強のやり方を知っているとは?

試験全般にも言えることですが、公務員試験に合格するためにはテキストなどでインプットをし過去問などでアウトプットをする。この繰り返しです。

しかし、この単純な作業でも過去の勉強経験が影響してくるのです。
過去問一つ解くのでさえ勉強のやり方を知っている人はどうすればより知識として吸収できるかを理解しています。

間違った過去問の解き方をしていてはいつまでたっても問題が解けるようにならないのです!(過去問の解き方は公務員試験合格に必要な過去問の正しい解き方で詳しく説明しています。)

また、時間のマネジメントができるということも非常に重要です。

・時間のマネジメントとはどういうことか?

働きながらであれば勉強をする時間は仕事後か休日に限られるでしょう。

仕事をしていれば家に帰ればゆっくりしたいでしょうし、休みの日くらいダラダラ過ごしたり出かけたりしたいものです。

しかし、公務員試験に合格するためにはそのようなことを言ってる暇はありません。

ただでさえ勉強できる時間が少ないのですから、無理にでも勉強をするための時間を作らなければなりません
平日であれば仕事後に3〜4時間、休日も7〜8時間、直前期は10時間前後は勉強しないと合格は難しいでしょう。合格した方の体験談を見るとほとんどがそれくらい勉強しているのです。

もちろん予備校に通っていてもこれくらい勉強は必要ですが、独学の場合強制力がないのでついダラけてしまいがちです。
独学で合格する人は勉強時間を確保し自分を律することができるからこそ合格できるといえるでしょう。

2−2 ほとんどの場合予備校に通うほうが無難

ではそれ以外の方(おそらくほとんどの方が該当するかと思いますが)はやはり予備校に行ったほうが良いでしょう。

それは先ほどお伝えしたように予備校に通うことで強制力が生まれるからです。

予備校は合格に必要なプログラムが組まれており、あらかじめ決められたスケジュールがあるんでそれに従っていけば自然に合格することができます。

仕事で遅くなるという人でも最近はWeb授業もあるので、家やカフェなどで講義を見ることができます。

もちろん予備校に通えば合格できるほど甘い試験ではありません。
結局は本人がやる気次第であり、予備校はそれを補助するためにある、という認識でいると良いでしょう。

独学か予備校か迷っている人は公務員試験に独学で合格できる?メリット・デメリット徹底解説で詳しく書いてますので参考にしてください。

3 スキマ時間を大いに活用しよう!

働きながら勉強する場合、ネックとなるのが十分な勉強時間を取れないということでしょう。

そこで重要となるのがこの「スキマ時間」の活用です。

そんなことは知っている!と社会人の方であれば思われるかもしれませんが、知っているだけで意外と活用できていない人も多いです。

電車の中を見渡すとスマホでネットやゲームをしている人がとても多いことに気づくかと思います。ちょっとだけ、と思っていても気がついたらずっと触っていたという人も多いでしょう(私もそうですが)。

しかし、通勤中の電車で毎日30分勉強するだけで往復で1時間、1週間で5時間もの勉強ができます。

1ヶ月で20時間、半年で120時間、1年ともなれば240時間勉強できます。机に向かってする勉強以外にこれだけ勉強できるのです。

しかも電車内は集中力が増すため暗記にはとても向いており、この時間を生かさない手はないでしょう。

他にも昼休みや入浴中、次の予定までの空き時間など探せばいくらでもスキマ時間は存在します。こうしたちょっとした時間を積み重ねていくことでバカにできない時間を捻出できるということを意識しましょう。

なお、時々「仕事を辞めて試験勉強に専念すべきか?」というご質問をいただくことがありますが、「どうしても公務員になりたいけれど、どうしても時間を捻出できない」という人は専念しても良いかもしれません。

そこまでの熱意があるのであれば目標のために勉強に専念するのは問題ないでしょう。実際に仕事を辞めて勉強に専念している人も多くいます。

しかし、その間の収入がなくなることや失敗した時の再就職の難しさなどを考慮して慎重に決めてください。
公務員試験は司法試験や公認会計士のように超難関試験ではありません。本当にそこまでしなければ勉強できないか、辞める前によく考えることをおすすめします。

4 まとめ

働きながらの合格するには本人の学力と受験先、モチベーション、そして確保できる勉強時間をトータルで考えることが重要です。
今の自分に足りない部分はどれか、それを補うにはどうすればいいのかを考えましょう。

働きながら合格している人の情報を本やネットで見るかもしれませんが、それは「その人だから」合格できたということに他なりません。
人によって状況が異なるので他人が合格できてあなたが合格できるという保証は一切ないということは理解しておきましょう。

そして働きながらの勉強は本当に大変です。本気で公務員になる覚悟がないと挫折する可能性が高いので目指すのであれば試験日まで必死に頑張るしかありません!

消防士になるには?試験内容について最低限知っておきたいこと

火災の現場で消火活動や救助を行う消防士。
あの姿に憧れて消防士を目指す人も少なくないでしょう。

消防士は警察と同様に「公安職」と呼ばれ、治安維持のために従事する公務員です。
どちらも体力が勝負の仕事と思われているのですが、実際になろうと思うと筆記試験の勉強をしっかりとしなければならず意外と大変です。

また、消火活動や救助だけが仕事ではない、ということも知られていないのではないでしょうか。

ここでは、消防士になるための試験について到底すべて紹介することはできませんので最低限知っておきたいことについてご紹介します。
これから消防士を目指す方はぜひ参考にしてみてください。

1 消防士になるには公務員試験に合格しなければならない

消防士(消防官。正確には「消防吏員」)が普段消防署で勤務しているということはご存知かと思います。
その消防署は市町村の組織だということは意外と知らない人も多いのではないでしょうか。

市町村の組織ということはつまり消防士は「地方公務員」であり、消防士になるには地方公務員試験に合格しなければならないのです。

地方公務員試といっても、試験自体は各自治体で行われているので、そこで行われる消防士の採用試験を受験し、合格すれば消防士となることができます。

例えば、千葉市の消防士になりたければ千葉市が実施している採用試験の消防士区分を受験します。これはさいたま市でも名古屋市でも神戸市でもどこでも同じです。
東京都だけは市町村ではなく、「東京消防庁」という都の組織の採用となり、稲城市と島しょ地域を除く東京都全域での消防防災業務を担っています。

また、自治体によっては、「広域事務組合」「消防組合」で採用を行っているところもあります。
それぞれ「組合」とついていることから、複数の自治体が共同で業務を行っている組織をいいます。1つの自治体が単独で行うよりも複数の自治体が共同で行うことで財産面や効率面で効果的な場合にこうした形で運用されます。実際には規模の小さい市町村が行っています。

いずれの自治体においても採用試験を受験し合格することで消防士として活躍できるということをここでは抑えておくとよいでしょう。

※総務省の「消防庁」では消防士を採用していない

東京消防庁と似た名称のものとして「消防庁」というものがあります。
これは総務省の組織であり国の機関です。ホームページを見ると「総務省消防庁」とされており区別できるようになっていますが、総務省の消防庁では消防士の採用は行っていないので注意しましょう。

2 消防士試験を受ける前に「受験資格」の確認を!

消防士になるには公務員試験に合格しなければならないのはわかったから勉強しよう!と思っている方。少しお待ちください。
試験を受ける前に、そもそもあなたが受験できるのかどうか(受験資格)を確認しなければなりません。
受験資格がなければ消防士になりたくてもなれません。ここでは試験勉強をする前に知っておくべきことをご説明します。

2−1 受験資格とは?

消防士になりたいと思っても誰でもなれるわけではありません。まずは受験案内で「受験資格」を確認するようにしましょう。

受験資格として定められているもので注意が必要なのは「年齢制限」「身体要件」です。それぞれについて解説していきます。

年齢制限に引っかかると受験できない

年齢制限は自治体によって多少の差はあれど、おおよそ21〜30歳くらいまでとしているところが多いです。

ちなみに、この年齢制限については採用区分によって定められています。
採用区分というのは、例えば東京消防庁の場合、「1類」「2類」「3類」と分類されており、それぞれの区分ごとに採用試験が行われます。

ここでいう1類、2類、3類というのが採用区分であり、自治体によっては「上級」「中級」「初級」としているところもありますが、それぞれに年齢制限を設けています。

東京消防庁ではそれぞれの区分ごとに以下のような年齢の要件を設定しています(平成28年度試験)。

1類 ・昭和62年4月2日から平成7年4月1日までに生まれた人
・平成7 年4月2日以降に生まれた人で、学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)を卒業している人(平成29年)又は同等の資格を有する人
2類 昭和62年4月2日から平成9年4月1日までに生まれた人
3類 平成7年4月2日から平成11年4月1日までに生まれた人

これらはつまり、1類は大卒、2類は短大卒、3類は高卒の人たちを採用しようとしていることがわかります。
実際に試験によっては「大卒程度試験」「短大卒程度試験」「高卒程度試験」と言われたりしますが意味は同じです。

ちなみに、消防士に限らず公務員試験において「程度」としているのは必ずしも大卒や高卒である必要はありません。これは問題のレベルの目安であり必要な学歴ではない、ということは知っておくと良いでしょう。
そのため、高卒の人でも年齢の要件さえ満たせば受験できるのです。

消防士試験で課せられる教養試験は内容が高校で学習する内容なので大卒レベルというと語弊があるかもしれませんが、要は大卒レベルのほうが問題が難しいと思っておくとよいでしょう。
文章理解の文章量が多かったり、数的処理の条件が複雑だったりと求めらえるレベルは高くなる傾向にあります。

このように、採用区分においては要件さえクリアすればいいのですが、逆にいうと年齢制限に引っかかってしまうと一切受験することができなくなってしまいますので、まずは案内でそもそも自分が受験できるのかどうかを必ず確認するようにしましょう。

身体要件も要チェック

身体要件は消防士ならではのチェック項目といえます。
消防士は肉体的な仕事であり、不規則的な勤務であることから以下のような「身体要件」が定められています。これは他の行政系の公務員では見られない特徴ですので、注意が必要です。(以下は東京消防庁の場合であり2次試験で検査【平成28年度試験】)

・身長…<男性>おおむね160cm以上<女性>おおむね155cm以上
・体重…<男性>おおむね50kg以上<女性>おおむね45kg以上
・胸囲…身長のおおむね2分の1以上
・視力…0.7以上かつ一眼でそれぞれ0.3以上であること(矯正視力含む)。赤色、青色及び黄色の色彩の識別ができること
・聴力…正常であること
・肺活量…<男性>おおむね3,000cc以上<女性>おおむね2,500cc以上

身長や体重について「おおむね」となっているのは、必ずしもこれらを満たしていなくても前後1cmや1kg以内ぐらいであれば誤差とする、ということです。
他の項目に「おおむね」と入っていないのは、必ずその条件は満たさなければならないということなので要注意です。

以上のように消防士になるためには必ずクリアしなければならない受験資格がありますので、まずは希望する自治体の採用案内で確認してください。
クリアしていることが確認できたら次に筆記試験の勉強を始めましょう。

3 試験内容について

受験資格があると確認できたら試験内容を見ます。

消防士の採用試験では「教養試験」「論文試験(作文試験)」「体力検査」「適正試験」「面接試験」といった試験が実施されます。
自治体によって内容は様々ですが、概ねこれらの中から組み合わせてで出題されます。以下でそれぞれの詳細を見ていきましょう。

3−1 教養試験

教養試験は5つの選択肢から正しいもの、または間違っているものを選ぶ「五肢択一式」で行われます。
すべての自治体で実施され、一定以上の得点を取れないと二次試験に進むことができません。

出題される科目は以下のとおりです。

【一般知能分野】
・文章理解(現代文・古文・英文)
・判断推理
・数的推理(数的処理・判断推理)
・資料解釈

【一般知識分野】
<社会科学>
政治、経済、社会、法律
<人文科学>
日本史、世界史、地理、思想、文学・芸術
<自然科学>
数学、物理、化学、生物、地学

高卒試験・大卒試験いずれもこのように教養試験では多くの科目が出題されます。いずれも高校で学ぶ内容ですが科目数が多いため過去に勉強しなかった科目も対策が必要となり大変です。
特にこれまで受験勉強などをしてこなかった人にとってはとてもハードルの高い試験となるでしょう。

受験する自治体や試験によって出題科目や科目ごとの出題数が異なります。しかし、その差は小さいものであり、重要な科目は共通しているため、文章理解や数的処理などの出題数が多い重要科目をしっかりと対策し全体的にまんべんなく得点できるようにすることが大切です。

また、試験日については、一次試験日で大別すると、大卒程度の試験は「A日程(6月下旬実施)」「B日程(7月下旬実施)」「C日程(9月中旬実施)」となりC日程で実施される自治体が最も多くなっています。
また、政令指定都市はA日程と同日、東京消防庁は独自の日程で行っています。(※政令指定都市とは、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市の20市をいいます)

公務員試験は試験日さえ被らなければ併願可能です。そのため、できれば少しでも合格の可能性を上げるため併願することをおすすめします。

なお、すべての自治体が採用を行っているわけではありませんので、志望している自治体がどういう状況なのか事前に確認するようにしましょう。

独学で勉強をする人はレベルにあった問題集を選ぼう

これから教養試験の勉強を始める方は予備校に通うか独学で勉強するかのどちらかだと思います(通信もいるかもしれませんが少数なのでここでは割愛します)。

もし独学で勉強を進めるのであれば問題集選びに注意が必要です。

公務員試験対策の問題集の定番といえば「スーパー過去問」「クイックマスター」です。
しかし、これらの問題集は基礎がそれなりにできている人が問題をこなしていくためには有効的ですが、まだ基本も分からない状態で取り掛かるのは時間の無駄といえます。
というのも、こうした問題集は問題は豊富ではあるものの、その分解説が親切ではないためいきなり取り掛かるには敷居が高すぎるのです。

まずは基本的な参考書から始め基本を理解しましょう。その上で、一通り学習したら「消防士専用」の過去問題集を使うようにしましょう。国家公務員や地方上級試験対策のものではレベルが高く無駄な時間を使ってしまうことになりかねません(消防士試験は公務員試験の中では易しめです)。

自分が受ける試験のレベルにあった問題集を使うことが重要ですので、以下のような消防士の試験に特化したものを使うようにしましょう(クイックマスターは警察官試験向けですがレベルは同様なので対応可能です)。

[大卒程度]警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ 数的推理 改訂版
[大卒程度]警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ 数的推理 改訂版

警察官試験テキストゼロからはじめる! クイックマスター 社会科学 第2版
警察官試験テキストゼロからはじめる! クイックマスター 社会科学 第2版

3−2 論文試験(作文試験)

消防士の試験では論文試験(作文試験)も行われます。
論文試験は大卒程度、作文試験は高卒程度の試験で実施されるのが一般的で、試験時間は60〜120分、字数は800〜1200字程度という形式が多いです。
論文と作文に厳密な違いはそれほどありませんが、作文試験のほうが日常的で平易な課題で書く字数も少なめであることが多いです。

論文試験(作文試験)は課題に対する思考力、表現力、文章構成力などの試験を見るための試験であり、主に消防士としても心構えや、災害などの現状に対する認識や意見などについて論述します。
時間は60〜120分、字数は800〜1200字程度という形が一般的です。
東京消防庁の平成27年度の採用試験ではそれぞれ以下のような内容で出題されています。

Ⅰ類
「住民の防災への意識を高めるための現状の課題をあげ、消防職員としてのどのような取り組みが必要か、あなたの考えを述べなさい。」

Ⅱ類
「消防職員として働く上で信頼関係の重要性をあげ、信頼関係を築くためにあなたはどう取り組んでいくのか述べなさい。」

Ⅲ類
「あなたが目指す信頼される消防職員像について述べなさい。」

大卒程度試験では課題があり、それについてあなたがどう考えているかを問われることが多く、高卒程度試験では自分が普段どう考え消防士として何ができるか(したいか)を問われる傾向にあります。
高卒程度試験のほうがやや抽象的な課題が多いため、自分自身の経験や考えなどを洗い出して整理するとよいでしょう。

対策としては、ある課題を設定し(他の自治体の過去問でもいいです)、時間を測り実際に手を動かして書くことが重要です。解説だけ見て分かった気になっても実際に書こうとしても筆が進みません。必ず自分で書いてみるようにしてください。

そして、自分が書いたものを第三者に見てもらい添削をしてもらうことも重要です。人に見てもらうことで自分では気づかない内容を指摘してもらえるため、予備校などを活用してみるとよいでしょう。

なお、論文試験は「900字程度」というように字数の指定があります。これよりもあまりに少ない場合(できれば8割以上)は足切りとなってしまい、それだけで不合格となってしまうので注意しましょう。

3−3 体力検査

体力検査は一次試験または二次試験で実施されることがほとんどです。中には教養試験の成績で受験できるかどうか決まってしまう自治体もあります。
前述のように、消防士は体力仕事であり勤務も不規則になることから、職務に耐えられるかどうかが見られます。

内容としては垂直跳びや立ち幅跳び、握力、上体起こし(腹筋)、反復横跳び、持久走、シャトルランなど種目は様々です。
体力検査は受験案内に実施される種目が載っているので、事前に確認し普段から走りこみや腕立て伏せなど行い体力をつけておくようにしておけば大丈夫でしょう。

3−4 適正検査

適正検査とは、消防士として職務を行う上での適性があるかどうかを見るもので、性格検査や適正試験の名称で行われることもあります。実施しない自治体もそれなりにあるので採用案内で確認をしてください。
適性検査はクレペリン検査Y-G検査と呼ばれるものが課されるのが一般的です。

・クレペリン検査・・・たくさん並んだ1桁の数字を隣り合う数字をその答えの1の位を答えていくというものです。たとえば、「2+7+6=15」となる場合は15の一の位である「5」が答えとなります。これにより作業の能率や正確性を計ります。

・Y−G式性格検査・・・自分の性格や行動に関する120項目の質問に「はい」「いいえ」「わかりません」のいずれかで答えるものです。似たような試験を受けたことも多いかと思いますですが、これにより大まかな性格の特性の分類を行います。

適正検査は特に対策は必要ありませんので、正確に答えることを心がけましょう。

3−5 面接試験

面接試験は教養試験や論文試験では見ることのできない人物像を評価するために行われます。二次試験で実施されるのが一般的であり、すべての自治体で実施されます。

受験者1人に対し面接官が複数人で行う「個別面接」、受験者数人で行う「集団面接」、そして受験者数人である課題についてディスカッションを行う「集団討論」のいずれか、もしくは組み合わせによって行われます。

「なぜ消防士になりたいのか?」「自己アピールをしてください」「今まで何かスポーツはしてきましたか」「そこで大変だったことはなんですか?」「それを乗り越えるために工夫したことはなんですか?」といった内容がよく聞かれます。
これらは一例に過ぎませんが、重要なのは情報収集と自己分析を行うことです。

消防士がどういう仕事をしているのか、どのような組織があるのかについて情報を集め、なぜ消防士になりたいと思ったのか、消防士になって何がしたいのか、といったことを分析することで自分なりの回答を作ることができます。

本やネットの情報をいくら寄せ集めても、あなたが消防士を志す理由や過去の経験はあなたしか分からないはずです。回答例をそのまま言うのではなく、あなたの言葉で回答することで面接官に熱意を伝えることができるのです。

面接対策はしっかり行おう!

面接試験は最終的に合格できるかどうかのカギとなっておりとても重要な試験です。教養試験をパスし、いくら他の試験で得点できたとしても面接試験で失敗してしまうとそれまでの苦労が水の泡となってしまいます。
公務員試験全般に言えることですが、近年は特に人物重視の傾向となっており、いくら筆記試験が良くても面接で失敗して不合格になってしまう人がとても多いのです。

以下は平成28年度横浜市採用試験の消防区分の配点です。

二次試験に実施される面接の配点の高さが分かるかと思います。
横浜市では教養試験は足切りに過ぎず、二次試験では410点満点のものを40点満点に換算されてしまいます。そして面接では300点という配点があるのでいかに面接が他の科目と比べて重要かがわかるでしょう。
つまり、いくら教養試験や論文試験で高得点を取っても面接で逆転される可能性はいくらでもあるということです。

とはいえ、教養試験に合格しなければそもそも二次試験すら受験できないので、一次試験までは教養試験の勉強をしっかりと行い、一次試験終了後すぐに面接対策を始めるようにすることをおすすめします。

5 まとめ

消防士の採用試験は体力仕事とはいえ公務員試験である以上、一定の学力が求められます。
兎にも角にも教養試験をクリアしないことには先に進めませんので、「楽勝でしょう」とは思わずしっかりと対策をしてください。

そして面接対策も重要です。対策は不要だとは考えず、情報収集や自己分析をしながら本番に向けてトレーニングを行っていきましょう。

公務員試験に独学で合格できる?メリット・デメリット徹底解説

これから公務員試験の勉強を始める方で予備校に行くか独学で勉強するか迷っている人も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、予備校に行かず独学で合格することはできます
正確には「独学で合格できる人もいる」、ということです。

合格できる人もいる、というのは受験する試験やこれまでの受験経験などが大きく関わってくるからです。

ご存知の通り、予備校の学費は決して安くはありません。学生であればそれだけ投資するお金もないし、そもそもそれほどの効果があるかどうかも不明だし躊躇っている受験生も多いはずです。

しかし、私も最初は独学で勉強しようとしましたが、結局予備校に行き合格することができました。

ここでは独学で勉強することのメリットや予備校に通うことのメリットついて説明していきますので参考にしていただければと思います。なお、通信講座という選択肢もありますが、ここでは割愛させていただきます。

※本記事は独学での合格法を述べたものではありませんので、ご注意ください。

1 独学で合格できるかどうかはその人次第

いきなり根も葉もないことを言ってしまいますが、公務員試験は独学で合格できるかどうかはその人次第なのです。

その人次第というのはどういうことかというと、公務員試験は試験科目が膨大で平均的に半年〜1年と長期的に勉強をしなければならない試験であるため、過去にどれくらい勉強をしてきたかどうかが合格を左右するということです。

例えば、大学受験でそれなりに勉強をしていた人は勉強のやり方を分かっていますし、国公立大学を受験した人であれば5教科7科目勉強しているので、教養試験で有利になります。

逆に、これまでずっと勉強をせず、大学も推薦で入ったような人であれば一から勉強をしなければならず上記のような人と比べて不利になるでしょう。
また、算数や数学が苦手な人であれば数的処理に必ずつまずきます。これを独学でカバーするためには相当な努力が必要であり、最悪本番で全く得点できないというリスクもあります。

このように独学で合格できるかどうかは、その人がこれまでどれだけ勉強に時間を費やしていたかが大きく関わってきますので、ネットや本で独学でこうやって合格したという話を見て「自分も独学で合格できる!」と単純に考えてはいけません。

ちなみに、私も高校受験、大学受験はどちらもそこそこ勉強し、センター試験も受験しているため教養科目は比較的楽でした。
しかし予備校に通い勉強しようとした理由はいくつかあります。

以下では独学のメリットやデメリットなどについてご説明していくこととします。

2 独学のメリットと予備校に通うメリット・注意点

2−1 独学のメリット

独学のメリットはズバリ「費用をおさえることができる」という点に尽きます。

予備校に通うと通常、20万以上もの授業料がかかります。大手予備校の場合、教養試験、専門試験、論文、面接対策とフルパッケージになっている場合がほとんどであり、特定の科目だけ受講ということができません。

全て予備校で学ぶという方にはいいかもしれませんが、一部は自分で勉強するという人には向いていないかもしれません。

これに対し独学で勉強をした場合、かかる費用はテキストや問題集代だけです。

公務員試験のテキストや問題集は1冊1000円〜2000円ほどで購入することができるので、科目数が多い公務員試験でも全て揃えても10万円もしないでしょう。

このようにお金をかけることができない受験生にとっては独学というものは魅力的に感じることができるでしょう。

ちなみに、お金だけで独学にするか予備校に通うかを決めるのは個人的にはオススメしません
詳細は2−3お金だけで独学を選ぶ危険性についてで詳しく触れます。

また、通学をしなくていいという方もいますが、今は自宅で授業を視聴できるweb授業がありますので特に独学のメリットとはいえないでしょう。

2−2 予備校に通うメリット

私自身が予備校に通っていたのでどうしても予備校のメリットに目がいってしまうのですが、予備校に通っていたからこそ見えたものもありますので参考にしてみてください。

1、効率よく勉強ができる

独学で勉強をする場合、問題集を中心に進めていきますが、真面目な人や勉強のやり方を知らない人ほど全て解こうとします

受験まで1年以上と余裕のある人であればいいですが、多くの人にとってこの方法は非効率極まりないです。

問題集には国家総合職の問題から市役所、警察・消防レベルまで掲載されていますが、市役所を受験する人は国家総合職の問題など手をつける必要はないのです。
受ける試験によって出題傾向や難易度が異なるため、多くの場合無駄な勉強に終わってしまいます。

国家一般職は政治学や経営学が難しい傾向にありますが、独学の場合そうした情報を知らずに勉強を進めてしまい結局他の科目の勉強時間を犠牲にしてしまいます(授業では問題を解きながら「この問題は国家一般職を受けないなら解かなくていい」などと言ってくれます)。

今ではネットや雑誌でこうした情報をチェックすることはできますが、予備校に通っていれば自然に精度の高い情報が入ってくるため情報収集の面でも向いていると言えます。

このように予備校に通うことで無駄な勉強をせず効率よく合格を目指すことができるというメリットがあります。

2、学習ペースは予備校に合わせれば良い

公務員試験は科目数が非常に多いので計画的な勉強が合格の鍵となります。

主要科目である数的処理や法律系科目、経済学をまずは勉強し、教養科目や政治学などの「学系」科目に手をつける。こうした流れが一般的です。

これについては独学であってもある程度わかるかと思いますが、これらの科目をどのタイミングでどのように進めていけば良いのかについては手探りになりがちでしょう。
いくら数的処理や法律科目が重要だとはいえ、悠長に勉強をしていては本番に間に合わなくなってしまいます。

予備校の授業は本番に間に合うように各科目についてプログラムされているので、ただそれについていけばいいのです。
もちろん遅れがちな科目が出てきてしまったら追いつくための努力は必要ですが、多くの場合授業のペースについていけば問題ないでしょう。

3、モチベーションの維持ができる

私は大学受験は独学で勉強していたのですが、長丁場の試験勉強をモチベーションを保ち続けるというのはとても難しかった記憶があります。

一人で勉強しているとおそらく最もネックとなるのがこのモチベーションだと思います。
誰からも勉強をしろと言われない状況で時間もたっぷりあるとつい怠けてしまうのが人間です。
するとスマホをいじったりテレビを見たりとだらだらと過ごしてしまい、十分に勉強することができなかったりします。

予備校の場合、通学であれば共に勉強をする仲間もおり、授業によっては宿題があったりするので「やらなければ!」という気持ちになります。
特に仲間の存在はとても重要で、同じ試験を目指す友達がいるととてもやる気が出ます。

怠け癖のある人には絶対にオススメできるといえます(怠けすぎて予備校に行かなくなってはいけませんが)。

4、わからなければすぐに聞ける

問題を解いていたら必ず解説を見ても問題に遭遇します。そうした時に講師や友人に聞けるというのもメリットでしょう。

分からない問題をそのまま放置しておくことはとても危険です。特に民法など理解を要する科目は解説の暗記では太刀打ちできないので、なぜそうなるのかを理解する必要があります。

分からない問題に何時間も悩み続けるのは時間の無駄です。ましてやそれが解ける必要のない問題であればなおさらです。

特に時間のない受験生は予備校を活用しまくることも考えましょう。

5、論文や面接をチェックしてもらえる

それなりに勉強が得意な人であれば筆記試験の合格は独学でもできるでしょう。

しかし近年人物重視の傾向となる公務員試験では論文や面接の出来が合否を左右するようになってきています。つまり勉強だけできるタイプは合格が難しくなってきているということです。

論文試験や面接はどの試験を受けるにせよ避けては通れないものであるため対策は欠かせません。
これらの試験は筆記試験のように正解がないため「第三者によるフィードバック」がとても重要なのです。

自分の書いた論文が果たして合格点に値するものかどうか、面接の受け答えの内容として問題ないものか。

こうしたことは受験生が判断できるものではなく、誰かにチェックをしてもらう必要があります。

もちろんこれらは友人やハローワークでチェックしてもらっても良いですが、プロ集団の予備校のほうがより確実であることは言うまでもないでしょう。

2−3 お金だけで独学を選ぶ危険性について

ここまでで予備校に通うことのメリットをひたすら述べてきましたが、ここでは「独学のメリットは本当にメリットなのかどうか」について触れていきます。そして、ここが本当に伝えたい部分でもあります。

独学のメリットは「お金があまりかからない」とお伝えしました。

しかし仮に不合格になってしまったときのことを考えたことはありますか?

不合格になるということは「公務員になるのが1年遅れる」ということです。

つまり、給料をもらうのが1年遅くなる、ということです。

入庁して1年目は新卒の場合、年収は350万前後です。1年浪人するとこれが丸々無くなるのです(正確にいうと定年時の最後の1年がなくなるので額は遥かに大きくなります)。
そして1年間の生活費も余計にかかってしまいます。

つまり、予備校代の20万円程度をケチることで数百万もの損失につながる可能性があるとのことです。

もちろん予備校に通ったからといって確実に合格するとは限りません。しかし、少しでもリスクを減らせるのであればこれくらいの投資は無駄にならないと私は考えているのです。

もしどうしても予備校代を捻出することが難しいという方は、奨学生制度を利用することをお勧めします。簡単な作文などを書くことで授業料が半額になりかなりお得な制度です。詳細は予備校によって異なるので一度聞いてみると良いでしょう。

以上のように、独学で勉強することはお金で考えてもそれほどメリットではないといえます。大きな投資になるかもしれませんが、目先の利益にとらわれず将来的にも得なのか?という視点で決めていくことをおすすめします。

2−4 予備校に通う際の注意点について

ここまで読んで、やっぱり予備校に通ったほうがいいのか!と思った人もいるかもしれません。
しかし、予備校に行くだけで合格できるほど生易しいものではありません。
最後に予備校に通う際に注意していただきたいこと4つほど紹介します。

1、必ず復習をしよう

これが最も重要です。授業を受けっぱなしというのは何の意味もありません

授業を受けて分かった気になっていても、いざ自分で問題を解こうとするとほとんど解けないことに気づきます。それは本当に理解をしていないからです。

人は学んだことを復習しないとどんどんと忘れていく生き物です。

エビングハウスの忘却曲線という有名な実験があります。これによると人は学んだことは1時間後には56%、1日後には74%、1週間後には77%、1ケ月後には79%も忘れてしまうのです!

evinghouse
Free JuniorAcademyより引用

ですので、予備校に行ったら安心、ではなく復習することで確実に知識として身につけるようにしていかなければならないのです。
これをせずに合格することは不可能だということは上のグラフを見ても明らかでしょう。

2、分からないなら積極的に質問をしよう

せっかく講師がいるのに質問しないのは非常にもったいないことです。

先にも触れましたが、分からないまま放っておくと致命傷になってしまう科目もあります。そして一人で悩んでいる時間は本当に無駄です。
特に予備校は集団授業なのでついていけなくても次々と進んでいってしまうので、ほったらかしにするとどんどん遅れをとってしまいます。

質問をする人ほど合格しているのは事実です。

高い授業料を払うのでとにかく使い倒すようにしましょう。

3、合わない講師もいることを覚悟しよう

予備校は講師を選べないので合わない講師がいることも事実です。
どうも分かりにくいなと感じることもあるでしょう。

そのようなときはDVD授業なども併用し、違う講師の授業を視聴するという方法もあります。

私も予備校に通っていたときに数的処理と生物の講師がイマイチだったのでDVDで収録された他の教室の講義を見て勉強をしていました。

このように合わない講師だった場合、リアルの授業とDVDやオンラインを併用することで分かりづらい講義を回避することもできるということも知っておくと良いでしょう。

4、とにかく出席することを心がけよう!

これは意外と重要です。

予備校は学校ではないので出欠は自由です。気が向かなければ欠席しても誰にも怒られません。

しかし、一度サボりぐせがついてしまうとずっと行かなくなってしまうというのが人間です。大学の授業とかでもそのような経験はありませんか?

そして予備校に行かなくなるとモチベーションが下がり、「そもそも公務員になる必要はないのでは?」と考えてしまいます。
そうすると危機的状況であり、公務員試験をドロップアウトしてしまい民間に転向という流れになることが多いです。
実際にこうした人も何人も見てきました。

公務員試験は長期にわたる試験なのでモチベーションの維持が大変です。途中で予備校に行きたくなくなることもありますが、そこは歯をくいしばって行くようにしましょう。

たかだか数ヶ月から1年の辛抱で一生が決まると考えると頑張れるのではないでしょうか。

3 まとめ

全体的に予備校推しになってしまいましたが、どちらにするかはあなたの状況次第です。

勉強の方法を知っていてモチベーションを維持できるなら独学でも合格できるでしょう。私はすぐに怠けてしまう性格なので予備校に通い強制力を持たせようとしました。

注意点としては予備校に行ったからと安心してはいけないことです。授業を受けてしっかりと復習をしなければ何の意味もありません。
やる気のない人はすぐに予備校から消えていきました。ここは自分を律するようにしましょう。

そして、他人の意見はあくまで「その人」だから合格できたということを忘れないようにしてください。

「公務員試験など独学で十分」という意見もありますが、信じる前にその発言をしている人がどういう人なのかを知りましょう。
万人に共通する勉強法など存在しません。

独学か予備校に通うか悩んでいる方は、自分がどちらに向いているのかよく考え決めていただくと良いでしょう。

【徹底解説】警察官になるには?試験内容とその対策について

警察官になりたいけれどどうすればなれるだろう?
これから警察官を目指す方のほとんどはそうした疑問を持っているのではないでしょうか。
警察官に憧れている人は多いけれど、警察官になるための方法を知らない人はとても多いです。

ご存知かとは思いますが、警察官は公務員です。そのためには公務員試験に合格しなければなりません。

ここでは警察官になるためにどうすればいいのかという疑問を解消できるよう試験内容について徹底的に説明していきますので警察官を目指す方は参考にしていただけると幸いです。

1 警察官のほとんどは地方公務員である

警察官が公務員だということはご存知の人も多いかと思いますが、ほとんどが地方公務員だということを知っている人はあまりいないかもしれません。
公務員には大きく「国家公務員」と「地方公務員」に分かれます。それぞれについて簡単に説明すると、国家公務員とは「○○省」のような国の期間に勤める人で、地方公務員は都道府県や市町村役場で働く人のことを指します。

警察官はほとんどが地方公務員だとお伝えしましたが、正確に言うと、都道府県警察のうち「警視正」以上が国家公務員で、それ以外は地方公務員であり、地方公務員として採用されても警視正からは国家公務員となります。

警察官の階級は警察法で決められており、上から警視総監・警視官・警視正・警視・警部・警部補・巡査部長・巡査となっています。

都道府県の試験を受け、警察官になると最初は「巡査」から始まり、数年ごとに昇任試験を受け合格すれば昇進していくシステムです。
警視正以上の割合は全体の1%未満となっており、非常に狭き門となっています。そのため、99%は警視以下であるため地方公務員として活躍するのが普通なのです。




2 警察官になるのは公務員試験に合格しなければならない

警察官になるには「公務員試験」に合格しなければなりません。
警察官のほとんどは地方公務員だとお伝えしましたが、地方公務員になるためには都道府県で実施している採用試験を受験するし合格する必要があります。

例えば、東京都の警察官になりたければ東京都(警視庁)が実施する警察官の採用試験に、埼玉県の警察官になりたければ埼玉県が実施する警察官の採用試験に合格しなければなりません。これについては全国どこでも共通です。

公務員試験について詳細は後述しますが、決して簡単なものではありません。警察官の採用試験で関門となるのは「教養試験」「論文試験」「面接試験」です。特に筆記試験と論文試験については試験の数ヶ月前から計画を立ててしっかりと勉強しないと合格することは難しいでしょう。
警察官の試験は行政・事務系の試験よりは易しめだと言われていますが、それでも「たまたま受けたら合格した」というようなレベルではありませんので、しっかりと対策をして受験しましょう。

※警察官の採用試験を受ける前に「身体要件」に注意しましょう!

警察官は肉体的な仕事であり、不規則的な勤務であることから以下のような「身体要件」が定められています。これは他の行政系の公務員では見られない特徴ですので、注意が必要です。(以下は警視庁の場合)

・身長…<男性>おおむね160cm以上であること<女性>おおむね154cm以上であること
・体重…<男性>おおむね48kg以上であること<女性>おおむね45kg以上であること
・視力…裸眼視力が両眼とも0.6以上、又は矯正視力が両眼とも1.0以上であること
・色覚…警察官としての職務執行に支障がないこと
・聴力…警察官としての職務執行に支障がないこと
・疾患警察官としての職務執行上、支障のある疾患がないこと
・その他身体の運動機能…警察官としての職務執行に支障がないこと

身長と体重について「おおむね」となっているのは、必ずしもこれらを満たしていなくても前後1cmや1kg以内ぐらいであれば誤差とする、ということです。
他の項目に「おおむね」と入っていないのは、必ずその条件は満たさなければならないということなので要注意です。




3 試験内容について

では実際に警察官の採用試験ではどのような内容が課されるのかを見ていきます。

警察官の採用試験では「教養試験」「論文試験(作文試験)」「体力検査」「適正試験」「面接試験」といった試験が実施されます。
自治体によって内容は様々ですが、概ねこれらの中から組み合わせてで出題されます。以下でそれぞれの詳細を見ていきましょう。

3−1 教養試験

教養試験は5つの選択肢から正しいもの、または間違っているものを選ぶ「五肢択一式」で行われます。
すべての自治体で実施され、一定以上の得点を取れないと二次試験に進むことができません。

出題される科目は以下のとおりです。

【一般知能分野】
・文章理解(現代文・古文・英文)
・判断推理
・数的推理(数的処理・判断推理)
・資料解釈

【一般知識分野】
<社会科学>
政治、経済、社会、法律
<人文科学>
日本史、世界史、地理、思想、文学・芸術
<自然科学>
数学、物理、化学、生物、地学英語(警視庁のみ)

高卒試験・大卒試験いずれもこのように教養試験では多くの科目が出題されます。

警察官の試験内容は一次試験日で大別すると、大卒試験は「5月型」「7月型」「警視庁」高卒試験では「9月型」「10月型」「警視庁」となります。(平成20〜26年の情報による)

●警察官(大卒程度)試験の科目別出題数

daisotsu-police

●警察官(高卒程度)試験の科目別出題数

kosotu-police

受験する自治体や試験日によって出題科目や科目ごとの出題数が異なります。しかし、その差は小さいものであり、重要な科目は共通しているため、文章理解や数的処理などの重要科目をしっかりと対策し全体的にまんべんなく得点できるようにすることが大切です。

※専門試験について
通常、警察官の採用試験では専門試験が課されません。しかし、埼玉県警察の「国際捜査1類」のように語学力を必要とする特殊なものについては専門試験が行われますので、必ず希望する自治体の最新の受験案内を確認するようにしてください。

学習を進める上で注意すべきこと

これから教養試験の勉強を始める方は予備校に通うか独学で勉強するかのどちらかだと思います。
もし独学で勉強を進めるのであれば問題集選びに注意が必要です。

公務員試験対策の問題集の定番といえば「スーパー過去問」や「クイックマスター」です。
しかし、これらの問題集は基礎がそれなりにできている人が問題をこなしていくためには有効的ですが、まだ基本も分からない状態で取り掛かるのは時間の無駄といえます。
というのも、こうした問題集は問題は豊富ではあるものの、その分解説が親切ではないためいきなり取り掛かるには敷居が高すぎるのです。

まずは基本的な参考書から始め基本を理解しましょう。その上で、一通り学習したら「警察官専用」の過去問題集を使うようにしましょう。国家公務員や地方上級試験対策のものではレベルが高いため、以下のような警察官の試験に特化したものを使うことが重要なのです。

[大卒程度]警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ 数的推理 改訂版
[大卒程度]警察官・消防官 新スーパー過去問ゼミ 数的推理 改訂版

警察官試験テキストゼロからはじめる! クイックマスター 社会科学 第2版
警察官試験テキストゼロからはじめる! クイックマスター 社会科学 第2版

3−2 論文試験(作文試験)

警察官の試験では論文試験(作文試験)も行われます。
論文試験は大卒程度、作文試験は高卒程度の試験で実施されるのが一般的です。それぞれに厳密な違いはそれほどありませんが、作文試験のほうが日常的で平易な課題で書く字数も少なめであることが多いです。

論文試験(作文試験)は課題に対する思考力、表現力、文章構成力などの試験を見るための試験であり、主に警察官としても心構えや、治安・犯罪の現状に対する認識、犯罪に対する意見などについて論述します。
時間は60〜120分、字数は800〜1200字程度という形が一般的です。

大卒程度試験、高卒程度試験ではそれぞれ以下のような内容で出題されています。

【大卒程度試験】

・都民が警視庁に期待することについて述べ、警視庁警察官を志す者として、その期待にどのように応えていくか具体的に述べなさい。

平成22年度 警視庁

・東日本大震災に対しあなたは何を感じ、それに対してこれまで行ってきたことについて述べなさい。
・電車内や飲食店など、公共の場における利用者のマナーについて、あなたなりに見苦しさをおぼえた場面とその理由及びあるべき所作について述べなさい。

平成25年度 千葉県警察官

・警察官に求められる倫理観とは

平成25年度 群馬県警察官

【高卒程度試験】

・警察官として、あなたが守らなければならないものとはどのようなものか、具体的に述べなさい。

平成22年度 警視庁

・日頃から心がけていること、又は、実行していることは何か

平成22年度 茨城県警察官

・今、一番興味のあること

平成22年度 栃木県警察官

大卒程度試験では課題があり、それについてあなたがどう考えているかを問われることが多く、高卒程度試験では自分が普段どう考え警察官として何ができるか(したいか)を問われる傾向にあります。
高卒程度試験のほうがやや抽象的な課題が多いため、自分自身の経験や考えなどを洗い出して整理するとよいでしょう。

警察官になると書類を作成する機会が多くなるため、正しい文章を書かなければなりません。
そのため、論文試験(作文試験)は、内容に筋が通っていて読みやすいか、漢字が正しく使えているかということもポイントとなります。
対策としては、ある課題を設定し、時間を測り実際に手を動かして書くことが重要です。解説だけ見て分かった気になっても実際に書こうとしても筆が進みません。必ず自分で書いてみるようにしてください。

そして、自分が書いたものを第三者に見てもらい添削をしてもらうことも重要です。人に見てもらうことで自分では気づかない内容を指摘してもらえるため、予備校などを活用してみるとよいでしょう。

なお、論文試験は「900字程度」というように字数の指定があります。これよりもあまりに少ない場合(できれば8割以上)は足切りとなってしまい、それだけで不合格となってしまうので注意しましょう。




3−3 体力検査

体力検査は一次試験、二次試験のいずれか、または両方で実施されます。
前述のように、警察官は体力仕事であり勤務も不規則になることから、職務に耐えられるかどうかが見られます。

内容としては垂直跳びや立ち幅跳び、握力、腕立て伏せ、上体起こし(腹筋)、反復横跳び、持久走、シャトルラン、バービーテスト(起立状態から両手足を伸ばして四つん這いになり、再び起立状態に戻る動作を繰り返すもの)など種目は様々であり、これらの中から6種目行うのが一般的です。
中には以下のように体力検査の基準を設けている自治体もありますので受験案内を確認するようにしましょう(香川県警察の例)。

kagawa-men

体力検査は受験案内に実施される種目が載っているので、事前に確認し普段から走りこみや腕立て伏せなど行い体力をつけておくようにしておけば大丈夫でしょう。

3−4 適正検査

適正検査とは、警察官として職務を行う上での適性があるかどうかを見るもので、性格検査や適正試験の名称で行われることもあります。すべての自治体で実施されます。
クレペリン検査やY-G検査と呼ばれるものが課されるのが一般的です。

・クレペリン検査・・・たくさん並んだ1桁の数字を隣り合う数字をその答えの1の位を答えていくというものです。たとえば、「2+7+6=15」となる場合は15の一の位である「5」が答えとなります。これにより作業の能率や正確性を計ります。

・Y−G式性格検査・・・自分の性格や行動に関する120項目の質問に「はい」「いいえ」「わかりません」のいずれかで答えるものです。似たような試験を受けたことも多いかと思いますですが、これにより大まかな性格の特性の分類を行います。

適正検査は特に対策は必要ありませんので、正確に答えることを心がけましょう。

3−5 面接試験

面接試験は教養試験や論文試験では見ることのできない人物像を評価するために行われます。二次試験で実施されるのが一般的であり、すべての自治体で実施されます。

受験者1人に対し面接官が複数人で行う「個別面接」、受験者数人で行う「集団面接」、そして受験者数人である課題についてディスカッションを行う「集団討論」のいずれか、もしくは組み合わせによって行われます。

面接試験は最終的に合格できるかどうかのカギとなっておりとても重要な試験です。いくら他の試験で得点できたとしても面接試験で失敗してしまうと苦労が水の泡となってしまいます。

「なぜ警察官になりたいのか?」「自己アピールをしてください」「今まで何かスポーツはしてきましたか」といった内容がよく聞かれます。
これらは一例に過ぎませんが、重要なのは自己分析を行うことです。

あなたがなぜ(どういうきっかけで)警察官になりたいと思ったのか、自分の過去の経験で何を学び何を成果として出してきたのか。こうしたことを棚卸しすることで自分なりの回答を作ることができます。

ネットや本の回答例をそのまま伝えても面接官はプロなのでわかってしまいます。自分なりの回答をしあなたの熱意を面接官にぶつけるようにしましょう。

3−6 資格加点

柔道・剣道の段位や語学(英語、中国語、韓国語など)、情報処理などの資格を持っている方は一次試験で一定点を加点する自治体もあります。

申請の際に、取得した証明となるものの提出が必要になります(申請のときには取得済みであるということです)。また、証明となるものについてはなくさないよう大切に保管しておきましょう。

3−7 その他の試験種目

ここまでで紹介した内容について対策しておけばほとんどの自治体に対応することができます。しかし、中にはこれら以外の試験を課す自治体があるため、志望者は注意が必要です。

例えば、警視庁は「国語試験」というものが実施されます。これは、職務に必要な国語力を図るための記述式の試験となっており、具体的には漢字の読み書きが出題されます(以下の問題例(平成27年度)参照)。

( )内の漢字の読みをひらがなで書きなさい。
Ⅰ類
(1)勉学に(勤)しむ
(2)歯に(衣)着せぬ物言い
(3)(矛先)をかわす
Ⅲ類
(1)自動(制御)装置
(2)(優雅)な舞
(3)(光沢)のある紙

( )内のひらがなを漢字で書きなさい。
Ⅰ類
(1)(とくしゅ)詐欺の撲滅
(2)(こうてん)による航空機の欠航
(3)(ろうきゅう)化した橋
Ⅲ類
(1)インフルエンザの予防(せっしゅ)
(2)(しんけん)な眼差し
(3)世界記録を(こうしん)する

「読めるけど書けない」という漢字は多いのではないでしょうか。警視庁を受験する方は漢字の対策もしっかりと行いましょう。

他には「武道」区分の試験では柔道や剣道といった実技を課す自治体もあります。




4 採用試験の倍率について

ここまでで、警察官になるためにはどのような試験をクリアしなければいけないか理解できたかと思います。
次に気になるのは「どれくらい難しいのか?」ということではないでしょうか。

試験を通過できるのはどれくらいなのか倍率を知りたい方は各自治体のHPから採用試験の競争率を見ると過去の推移を見ることができます。

例えば警視庁の場合、Ⅰ類試験の倍率は以下のようになっています(警視庁HPより引用)。

●男性警察官
keishityou-men
●女性警察官
keishityou-women

警視庁の場合、女性のほうが倍率は高めですが自治体によって異なります。
それなりの倍率であるので、不安になってしまうかもしれません。
しかし、あまり倍率を気にしすぎるのはおすすめではありません。なぜならば中には「記念受験」をする人も相当数いるからです。

公務員試験は無料で受験できることから申し込みだけして受験しない人が一定数存在します。また、明らかに合格は厳しいにも関わらずとりあえず受けてみようとする人も一定数います。
経験者採用試験や採用がものすごく少ない自治体だと倍率が数十倍〜100倍超えという場合もあります。ここまでいくと合格は難しいといえますが、10倍前後であれば努力で問題なく突破できるレベルといえます。

このように、公表されている倍率が高くても実質的にはそれほど高くない(実際はきちんと対策した人同士の競争になります)ため、「自分はこの自治体の警察官として働きたい!」という気持ちをもってしっかりと対策すれば合格することができるということを知っておきましょう。

5 まとめ

警察官はスポーツができたり体力に自信があれば簡単になれるとイメージしがちですが、実際には教養試験や論文試験(作文試験)対策など筆記試験の勉強をしっかりとしなければ合格は難しい試験です。
そして面接試験も侮ることができないので、目標とする試験を決めたら合格まで全力で対策を進めていきましょう!

元大手予備校講師が教える公務員試験の法律科目の完全攻略法

公務員試験において法律科目は出題数も多く重要科目であることはご存知のとおりかと思います。
また、労働法や商法のようなマイナー科目については手をつけるべきかどうか迷う方も多いのではないでしょうか。

この記事では法律科目(憲法・行政法・民法・労働法・商法・刑法)の学習方法や科目の選択についてお伝えします。
行政・事務職の試験は科目も多いことからやるべき科目、捨ててもいい科目を知り、あなたが対策すべき方法を知りましょう。

1 公務員試験の法律科目

1−1 各試験の専門科目

公務員試験(行政・事務等)では専門科目の1分野として法律科目が出題されます。例年の各試験の出題科目(専門)は以下の通りです。

国家公務員試験

■国家総合職(H28大卒程度・法律区分)
(択一式:1次試験)
必須:憲法7、行政法12、民法12の計31題
選択:商法3、刑法3、労働法3、国際法3、経済学・財政学6の18題から任意の計9題解答

(記述式:2次試験)
次の5科目から3科目選択
憲法、行政法、民法、国際法、公共政策

■国家一般職(H28大卒程度・行政)
(択一式)専門16科目・各5題から8科目=40題を選択
憲法、行政法、民法(総則及び物権)、民法(債権、親族及び相続)
政治学、行政学、ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学・経済事情、経営学、
国際関係、社会学、心理学、教育学、英語(基礎)、英語(一般)

■裁判所職員(H28一般職)
(択一式)
必須:憲法7、民法13
選択:刑法10又は経済原論10 ※当日選択可

(記述式)憲法1

■財務専門官(H28)
(択一式)
必須(2科目28題解答)憲法・行政法、経済学・財政学・経済事情
選択(次の8科目・各6題から2科目=12題選択)
民法・商法、統計学、政治学・社会学、会計学、経営学、英語、情報数学、情報工学

(記述式)次の5科目から1科目選択
憲法、民法、経済学、財政学、会計学

■国税専門官(H28)
(択一式)
必須(2科目16題):民法・商法、会計学
選択(次の9科目・各6題から4科目=24題選択)
憲法・行政法、経済学、財政学、経営学、政治学・社会学・社会事情、英語、商業英語、情報数学、情報工学

(記述式)次の5科目から1科目選択
憲法、民法、経済学、会計学、社会学

■労働基準監督A(法文系)
(択一式)
必須:労働法7、労働事情5
選択(次の36題から28題選択)
憲法、行政法、民法、刑法16、経済学、労働経済・社会保障、社会学20

(記述式)
労働法、労働事情

地方公務員試験

■東京都特別区(H28Ⅰ類事務)
(択一式)
55題中40題選択解答(各科目5題出題)
憲法、行政法、民法①(総則・物権)、民法②(債権・親族・相続)、ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学、経営学、政治学、行政学、社会学

■東京都庁(H28Ⅰ類B・行政一般方式)
(記述式)10題中3題選択解答
憲法、行政法、民法、経済学、財政学、政治学、行政学、社会学、会計学、経営学

■地方上級(全国型) 必須40題
憲法4、民法4、行政法5、刑法2、労働法2、
経済学9、財政学3、政治学2、行政学2、社会政策3、国際関係2、経営学2

■地方上級(関東型)50題中40題選択
憲法4、民法6、行政法5、刑法2、労働法2、
経済学14、財政学4、経済政策1、政治学2、行政学2、社会政策3、国際関係3、経営学2

注意①:地方上級試験では問題が公表されていないため受験者情報に基づいています。実際の出題数と異なることもあり、また年度によっても出題数が若干異なります。

注意②:地方上級では上記の他、中部北陸型、全国変形型、関東変形型、独自型などと呼ばれる様々なタイプで出題されています。したがって各自治体の受験案内で必ず確認することが必要です。

1−2 刑法・労働法・労働法・商法の考え方について

1−1で見たように、いずれの試験も憲法、民法、行政法の出題数が多く、法律科目の主要科目といえます。公務員試験の場合は併願することが多いと思うので、まずはこの3科目は全力で取り組んで下さい。

刑法について

刑法についてみてみます。
裁判所事務官はその職種性から、行政法の代わりに刑法が出題されます。
しかし、刑法の代わりに経済を選択することもできます。公務員試験では経済も主要科目の1つになりますので、裁判所事務官でもあえて刑法を勉強せずに経済で受験することも可能ですし、実際に経済を選択する受験生も多いです。

刑法で問題なのは地方上級です。独自型をとる地方自治体では刑法を出題しないことが多い一方で、全国型や関東型ではたった2題だけ出すというパターンになっています。この2題のためにどれだけ力を費やすかは4−3で後述します。

労働法について

労働法については、労働基準監督 Aを受験する場合はそれを中心に勉強することになります。しかし、労働法を出題する試験は他には、地方上級で2題出題される程度です。

そもそも労働基準監督官を志望する受験生は、労働法の負担からそこが本命の場合が多いと思うので、割り切ってしっかり勉強してください。しかし,労働基準監督官を受験せずに労働法の出題される地方上級を受験する場合については、4−1で後述します。

商法について

商法については、国税専門官で必須問題となっていますが、実は問題数は例年2題程度しか出題されません。この2題をどうするか、4−2で後述します。

なお、国家総合職(法律区分)の択一の選択科目は公務員試験ではいわゆるマイナー科目ばかりです。しかし基本〜標準レベルも出題されますので、万遍なく学習し取りこぼしのないようにする必要があります。大学での履修状況や取組みやすさを考えて、早めに科目をしぼりましょう。
また、記述式はかなり高度な長文形式で出題されます。こちらも早めにどの科目で受験するかを決めて学習してください。法科大学院の入試と司法試験の中間くらいのレベルだと考えるとよいでしょう。

2 憲法は満点を目指すが落とし穴に注意

公務員試験の憲法は1番簡単と感じる受験生が圧倒的に多いです。学問的には非常に難しい科目ですが、公務員試験の範囲に限ると、たしかに専門科目の中で1番学習しやすく得点源になるのは間違いありません。
なので、満点を目指して完璧を目指して学習して下さい。

勉強方法として、基本書を読まずに最初から過去問を解きまくる!という受験生もいますが、これでは遠回りになります。

憲法は他の専門科目と異なりボリュームが少ないので、予備校のテキストや受験用の参考書をひととおり学習してから過去問を解くようにしてください。

まず憲法は、①人権編と②統治編に分かれます。①人権編では判例の理解、②統治編では条文の暗記が学習の中心となります。

①人権編
人権の主要判例は数が限られており、同じ判例が全ての試験種で繰り返し出題されています。たとえば薬事法事件や小売市場事件、第三者所有物没収事件など。

ただ、主要判例はだれもが知っているため、結論(合憲/違憲)だけでは解答できず、なぜその結論に至ったかの判断基準を問う形式が多くなってきます。その際、問題文では判決文を抜粋して出題してくるので、判決の言い回しに慣れましょう。

判決文を詳細に読む必要はありません。抜粋部分は限られるので、過去問を繰り返し読んで慣れてしまいましょう。

近年は重要な判例も続いています。たとえば国籍法違憲判決、非嫡出子法定相続分違憲判決など。まだ過去問が非常に少ないですが、今後も繰り返し出題されるので、過去問集の解説をていねいに読み込んでおきましょう。模試でも出題されるので、正解したとしても解説は読んでおきましょう。

また、人権では人権規定の背景や理解を問うものも多くなっています。特に地方上級と裁判所事務官がその傾向が強いので意識しておいてください。
たとえば、「生存権には、社会権的側面があるが、国民が自らの手で健康で文化的な最低限度の生活を維持する自由を有し、国家はそれを阻害してはならないという自由権的側面が認められることはない」(H27特別区)という選択肢は、生存権の性質について問うています。

これは間違い肢です。生存権が社会権というのは初学者でも知っている常識です。では自由権的側面もあるのか?そもそも社会権的側面と自由権的側面の違いとはなんなのか?といったことは基本的に知っておかなければなりません。
(もっとも、この問題では別の選択肢が超易問だったのでほとんどの人が正解したと思います。)

このように、憲法は簡単!と思えるようになったら、次は一歩すすんで、上記のような選択肢も過去問を通じて理解できるようにしておいてください。ここまでして初めて満点が見えてきます。

②統治編
統治では条文がそのまま出題されることがよくあります。特に国会の分野が頻出なので、その部分の条文はなんども繰り返し目を通して、数字などを覚えておきましょう。国会は、教養科目でも出題されるので統治編でも最重要になります。

つぎに統治では学説もよく出題されています。しかし学説といっても、統治の分野では出る学説が限定されているので、決しておそれる必要がありません。たとえば国政調査権の法的性質であったり、地方自治の法的性質の学説がありますが、同じ学説が何度も繰り返し、ほぼ同じ言い回しで出題されています。過去問を2、3回解けば完璧に得点できるでしょう。

統治で気をつける点は、条約や予算、地方自治といった分野です。国会・内閣・裁判所については頻出分野であり過去問も多いのでほとんどの人が正解してきます。

しかし、条約、予算、地方自治はテキストでも後半に記載されており手を抜いてしまう受験生がいます。テキストによってはかなりあっさりとした解説しか無い場合も多い。その結果、憲法で満点をとれなくなるわけですが、この後半部分も大事な分野ですから、ていねいにテキストを読み込み,過去問も後回しにしないようにしましょう。

3 行政法は最初の苦痛を耐えれば得点源になる

公務員試験では行政法を苦手としている受験生が結構います。しかし行政法は多くの試験で5題前後出題されており、絶対に苦手科目にしてほしくない科目です。同じく出題数の多い民法は、範囲が広いうえに試験種に関係なく難問がよく出題されます。そのためどんなに民法が得意でも満点をとれる保証がありません。だからこそ、行政法でできるだけ得点を稼いでおく必要があるのです。

ところで「行政法」という法律はありません。いわゆる行政法は、①行政組織法、②行政作用法、③行政救済法の3つに分類されます。さらにここから各法律に枝分かれしていきます。たとえば憲法でも勉強する国家賠償法は、③行政救済法の一例です。

この時点で既に分かりにくい法律なのが行政法です。
行政法は憲法や後述する労働法のように「最初から過去問を解く」、というのは絶対にやめた方がよいです。分野ごとに全体像をつかんだうえで、過去問を問いていくことが必要になります。

予備校利用者は基本的に講義で利用している予備校のテキスト・レジュメで概要をつかめばよいです。講義→テキストで復習→該当分野の過去問を解く、というオーソドックスな学習法をくりかえして、とりあえず全講義野インプットを終わらせます。

独学者や予備校で理解できなかった人は、公務員受験生がよく利用している「新谷一郎の行政法まるごと講義生中継 第3版 (公務員試験 まるごと講義生中継シリーズ)」をざっくりと読み通して全体像をイメージすることもよいでしょう。(第3版は2016/4/11出版。※法律書は必ず最新版を購入しましょう。)

◼︎「新谷一郎の行政法まるごと講義生中継 第3版
新谷一郎の行政法まるごと講義生中継 第3版 (公務員試験 まるごと講義生中継シリーズ)
新谷一郎の行政法まるごと講義生中継 第3版 (公務員試験 まるごと講義生中継シリーズ)

ただ法学部生や、文字を読むことにあまり抵抗がない人であれば、司法試験受験生の基本書である「行政法 第4版 単行本 櫻井 敬子 (著), 橋本 博之 (著)」がおすすめです。(通称サクハシの行政法と言われています。)

◼︎行政法 第4版
行政法読本 第4版
行政法読本 第4版

「公務員受験生は基本書は使うな!」が鉄則ですが、この基本書は、読みやすいのにコンパクトにまとまっています。

①まず、よく分からないな、と思ったところは読み飛ばして、とりあえず1度ざっくりと読んでみてください(他の科目の合間に読み進めれば10日前後で読み終えられます)。

②そのあと、分野ごとに読んで→該当分野の過去問題を解く、を繰り返して過去問を一通り解いてみましょう。

③次は過去問を中心に勉強をすすめて、分からないところは基本書に戻って確認してみる。
これでかなり力がつくと思います。もちろん、この基本書に書いていないことが過去問では出題されますが、それは知識問題として割り切って過去問で暗記してしまってください。

行政法は、憲法と同様に判例が多く出題されます。といっても主要・頻出判例は決まっていますので、繰り返して出題される判例は、基本書や過去問の解説をしっかり読み込みポイントをおさえていきましょう。

行政法では憲法と異なり、日常では使わない専門用語の意味も暗記しなければなりません。これが1番の苦痛という人も多いと思いますが、覚えにくい用語はノートにメモする、テキストにラインを引くなどして、繰り返し確認して知識を定着させてください。

行政法では、ある行為を「しなければならない」のか「することができる」のかを問う問題があります。これは知っているか知らないか、です。条文の文末までしっかりと確認しましょう。適当に暗記する、のが一番の害悪になります。予備校の講義では特にこの点は注意して講義してくれるハズです。

行政法は憲法と異なり、特に最初が苦痛です。でも、この苦痛をなんとか乗り切ると、あとは一気に得点が伸びる科目です。それを信じて、最初が肝心だということを意識して学習していってください。

4 民法は頻出分野からつぶしていく

民法はどんなに得意な人でも満点をとることが難しい科目です。司法試験に合格した人でも公務員試験(地上レベル)の民法で満点をとれないこともしばしば。とにかく範囲が広いうえ、重箱の隅をつついたような条文を出題することもあります。特別区などでも、「え?こんな条文あったっけ?」というのが1、2題出題されたりします。

なので、民法では絶対に満点を目指さないこと。民法には頻出分野があります。それを順番にまず基本事項を理解しながらつぶしていくことになります。
具体的な勉強方法については、公務員試験の民法を得点するために押さえておくべきことで確認してください。

5 マイナー法律科目にも手をつける

一部の試験で、しかも2〜3題しか出題されない科目は捨ててしまいたいところですが、完全に捨てるのはもったいないです。各科目の特徴を紹介するので、各自の併願先を考えながら、ぜひ手をつけてみてください。

5−1 労働法は費用対効果が高いので捨てない

労働法が出題される地方自治体を受験する場合、たった2〜3題ですが是非基礎は押さえてください。なぜなら、条文がそのまま出るとか、過去問とほぼ同じ問題が出るとか、イメージがしやすいなど、費用対効果が高い科目だからです。

ではどうやって勉強するか。マイナー科目・刑法と異なり、体系的に学習する必要はありません。
とにかく「過去問」だけの学習でも十分に得点できます!
受験生におなじみの「新スーパー過去問ゼミ 労働法」、これ1冊でのりきれるでしょう。

◼︎新スーパー過去問ゼミ 労働法
公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 労働法
公務員試験 新スーパー過去問ゼミ4 労働法

その際、各分野の「重要ポイント」というページをしっかり読み込む。解説で何度も出てくる条文や知識は、ノートにメモをして復習しやすいようにしておく。
ボリュームが多いので、計画的に少しずつ、気分転換という感じで学習をすすめればいつのまにか実力がついています。

※注意:労働基準監督官の試験では記述試験もあり高度な理解が求められることもあるので、大学で使用する基本書や、予備校などのテキストで体系的に理解する必要があります。

5−2 商法は分野をしぼるor捨てる

国税専門官では必須問題として例年2題出題されています。併願先の1つとして国税専門官を受験する場合が多いと思いますが、他の行政職試験では出ない商法をたった2題のために勉強するのか、という問題が出てきます。

結論としては、この2題を捨てても他の選択科目でしっかり得点できていれば合格します。
しかし必須問題なのに捨てるのは不安な人、みんなが捨てる商法で差をつけたいという人は、まず「会社法」を学習しましょう。

そもそも商法は、①商法総則・商行為、②会社法、③手形・小切手法に分かれます。
国税では2題とも②会社法から出題されることもあれば、①商法総則・商行為+②会社法、②会社法+③手形・小切手法と組み合わされることもあります。※2題とも手形法ということもありました。
ただ、比較的②会社法から1題出題されることが多いので、まずとりかかるなら、会社法です。

しかし、会社法は非常に範囲が広いです。なので全部を完璧に、というのは公務員受験生にはムリがあります。したがって、出題頻度の高い分野から手を出していってください。
具体的には、①株式→②会社の機関(株主総会・取締役・監査役)→③設立を丁寧に学習して下さい。

なお、①商法総則・商行為と、③手形・小切手法は、会社法に比べて範囲が狭いので、過去問や模試に出てきたものだけは暗記しておくとよいでしょう。

※国家総合職を受験する場合は、捨て問にはせずしっかりと時間をかけて学習してください。

5−3 刑法を勉強すべき人、捨てるべき人

公務員受験で刑法を勉強し選択すべき人は次の人です。
「大学で刑法(総論+各論)を履修しており、裁判所事務官を受験する人」

刑法は学説も多く、理解が求められる科目です。出題分野も広く、公務員受験でも万遍なく出題されます。費用対効果の悪い科目なので、裁判所事務官を志望する人でも、刑法の学習をしたことのない人は経済で受験した方がよいでしょう。

刑法が出題される地方上級を受験する人は、捨て問にしてしまってもよいでしょう。そのかわり、4−1で前述したように、労働法で得点できるようにしてほしいと思います。

いや、それでも刑法も勉強したい!1題はとりたい!という人は、イメージしやすい刑法各論に手をつけてみてください。詐欺罪、窃盗罪、強盗、傷害罪などは頻出度が高く、過去問の解説程度の理解+暗記で得点できることも十分あります。また各論の場合は、判例を素材にした事例問題も多く(しかもお同じ事例がよく出題されます)、イメージがしやすく楽しく学習できるような科目になります。

裁判所事務官・総合職以外では、「基本書」なるものは手にとらないようにしてください。

6 まとめ

公務員試験(行政・事務)では法律科目も経済科目も勉強する必要があり、科目数が多いうえに難易度も大学の学部試験より高いことがあります。受験生にとってかなり負担になるのは間違いなく、途中で挫折をして民間の就活に切り替えてしまう人もたくさんいます。まずは、その長い受験生活を耐えることが合格への第一歩です。

さらに、完璧を目指すと自滅します。だからといって、やみくもに捨て科目・捨て分野を作っても合格できません。
これまで述べてきたように、それぞれの科目の特徴を知ってメリハリをつけて学習をすすめていきましょう。

資料解釈で確実に得点するための戦略について徹底解説

資料解釈は勉強のしにくい科目であるがゆえ、解き方やコツについてよくわからず何となく学習を進めている受験生が多いのではないでしょうか。

資料解釈は、教養(基礎能力)試験の知能ジャンルである数的処理に属する科目ですが、受験生にとってどうしても注目が行くのは、「数的推理」や「判断推理」であり、「資料解釈」という科目の性質や対策については、ヴェールに包まれているのが実感でしょう。
また、出題数が数的処理全般からみると多くないので、軽視されている点も否めません。

しかし、ケースによっては(特に数的処理全般が苦手な人にとっては)、「資料解釈」が合否を分けるいわば「キャスティングボート」の存在になるのです。

この記事では、資料解釈の出題数や取り組み方、具体的問題な解き方までお伝えします。数的推理や判断推理が苦手だけど、数的推理全体での得点を何とか高めたい人を中心に参考にしていただければ幸いです。

1 各試験種の資料解釈の出題数

国家公務員総合職 16問中2問
国家公務員一般職 16問中3問
国家公務員専門職(国税・財務・労基・法務省専門職) 16問中3問
裁判所大卒一般 17問中1問
外務省専門職員 16問中3問
東京都一類B 16問中4問
東京都一類B新方式 20問中4問
地方上級(概ね) 12~15問中1~2問
市役所一般(概ね) 12~14問中1問
特別区 19問中4問

これをみると、国家系と東京都、そして特別区で複数問の出題がされている一方で、その他の地方公務員と裁判所一般職では1問ということが分かります。このように、差はありますが、資料解釈はどの試験種を受験する方にとっても取り組むことが望ましい科目です。

というのは、判断推理や数的推理を解く上で必要なのは決して数学ではなく「受験算数」ですから数学アレルギーでも大丈夫と言われる一方で、中学受験未経験者にとってはマスターには一定の時間がかかる上、いくら定石を身につけても太刀打ちできない問題が必ず出てくるからです。

これに対して、資料解釈は、正しく課題文を読み、計算の工夫などのテクニックさえ身につけてしまえば解けます。数的推理や判断推理が苦手な方には得点源となります。それ以外の方にとっても、正解をしやすい科目は大きな魅力でしょう。

2 資料解釈の性質

資料解釈とはどのような科目なのかをつかんでいただくために、次の事例を考えてみて下さい。

ある年のパシフィックリーグの8月終了時点でファイターズとマリーンズが首位争いを演じていた。成績はファイターズが67勝48敗、マリーンズが68勝49敗だった。8月終了時点の首位はどちらか。なお、勝率が上回っているチームが上位となる。

これは試験問題ではありませんが、資料解釈の本質の1つである「スピード事務処理能力」を理解するために分かりやすい例かと思います。

もちろん、67÷(67+48)と68÷(68+49)をそれぞれ計算して勝率を比較すれば答えは出せますが、資料解釈で求めていることはこれではありません。その計算をしっかりやらなくても、どちらが首位かを見抜くことです。

解きなれると、正解がファイターズとすぐに分かり、受験生の方にはそれを目指して欲しいのです(このやり方は、後述します)。

つまり、資料解釈は、まともに計算していたら試験時間を大いにロスしてしまいますので、なるべく計算をせずに正解を求める必要がある科目といえます。その他に、学習を進める上で知っておいていただきたいことが2点あります。

2−1 1問の解答時間が長くなるが問題の質そのものは難しくない

さきほど、計算をしっかりやらなくてもとは述べましたが、法律科目等のように肢を読めば即正誤判断できるわけではありません。必ず「ある程度の」計算処理で検証する必要があります。このため、資料解釈1問を解くのに時間がかかるのは否めません。

とはいえ、先ほどの計算だって根性でやりきれば、すなわち、時間さえあれば、ほとんどの人が解答できます。これは、判断推理や数的推理における問題の解法がわからず歯が立たない事態とは大きく異なります。資料解釈は確実に遠回りすれば正解に至れるものの、なるべく早く問題を処理できるといいよねという科目なのです。

2-2 テクニックを自力で習得しにくく慣れるまで時間がかかる

繰り返しますが、1問の解答時間が他の科目より長くなりがちです。そして、まともに計算していては教養試験全体を通じて、他の科目を解答する時間が激減してしまいます。これでは、教養試験の得点が満足なものにならない事態を引き起こす蓋然性が高まります。

そのため、計算の工夫などテクニックの習得が肝要となるわけです。ただ、これを知って、自分のものにするとなると、大変です。

予備校などで指導を受けるか、参考書を読むかすれば、このテクニック自体を知ることはできます。他方、使いこなすまでには練習が必要です。特に、様々な異なったデータに出くわすので、瞬時に表やグラフの見方をつかみ、肢ごとにデータを見ながらの作業になるので、かなりの慣れが必要となるでしょう。

ただ、一度テクニックを身につければ(要するにコツを飲みこめば)、一気に得点力やスピードは上がってきます。その意味で、前述の通り、数的推理や判断推理と違い努力が報われやすい科目と言えます。

3 資料解釈の対策

3−1 学習開始タイミングについて

予備校に通っている人であれば、そのスケジュールに合わせれば良いでしょう。注意点としては数的推理や判断推理に比べて、資料解釈の授業の回数は極めて少ない傾向にあります。

このため、必要な問題量やテクニックの習得を予備校の期間だけで知るのは難しく、授業で触れられていない箇所もテキストを読み込む必要があります。もちろん、問題演習をさらに行うわけなので、地道な家庭学習で積み上げる必要があります。

独学の方は、少なくとも数的推理は習い終えてからにして下さい。「まともに計算はしない」とはいえ、算数の熟練をしておく必要があるからです。判断推理については必ずしも終了していなくてもかまいません。

3−2 資料解釈はブランクを空けてはいけない

資料解釈に関しては「練習は裏切らない」科目といえます。ただ、「サボればすぐに力は落ちる」科目でもあります。まるで、筋トレ科目です。

大学生の場合ですと、12月に大学の試験があるので、終わってからだと1月スタートになり遅くなると考え、11月に一通り習得して1月に再開しよう(12月は休むという意味)とした人がいます。

しかし、1ヶ月ものブランクがあると、11月に時間をかけてやっとことがほぼムダになります。資料解釈は、学習を開始したらできれば毎日(空けても3日ほど)やるべきです。この場合、11月は別の科目に力を入れ、1月スタートしたほうが効率的となります。

3-3 資料解釈の学習について

資料解釈を学習する上で以下の2点を守っていただくことでかなり力がつくようになります。

①過去問1問単位ではなく、肢別に正誤とその理由が言えるまで練習しましょう。

正解が3と判っても、4はなぜ違うのかを根拠となるテクニックが言えるまで習得します。

②使ったテクニックを自分のものとするために、資料解釈ノートを作り、過去問の肢ごとに正誤とその理由、使ったテクニックを記入していきましょう。過去問1回目は時間がかかりますが、かなり力がつきます。

以上を今後の参考にしてみて下さい。

4 資料解釈の解き方

ここでテクニックのすべてを述べることはできませんが、テクニックのイメージをつかんでもらうために「打率理論」を述べてみます。次の事例で理解して下さい。

あるバッターは前日まで10打数2安打で打率2割
本日は2打数1安打の成績だった
打率は上がったか下がったか

この程度の問いなら成績を合算して本日終了時点でで通算12打数3安打だから打率は2割5分(3÷12=0.25)と計算しても時間はかかりません。

問題は瞬時に見抜く方法です。
本日だけの打率を考えると2打数1安打ですから打率5割(1÷2=0.5)となります。

つまり、前日までこのバッターは2割のペースでヒットを打ってきて、本日5割と今までよりハイペースで打ったわけです。すると通算のペースは必ず上がることになります。

打率をテストの平均点に置き換えるとよくわかるでしょう。今まで受けたテストの平均点が20点だった人が、本日50点取ったわけです。テストの平均点が上がったか下がったか計算する必要がありますか。

このケースを例にとると「打率はいくらになったか」とは一切聞いていません。
ただ「打率は上がったか下がったか」と聞いているだけです。

これが資料解釈なのです。数的推理なら正確な打率を求めなければならないでしょう。
「大局観掌握能力」により、瞬時に(実際の試験なら簡単なメモ程度で)アウトラインをつかむことが必要となります。

では、前述したパシフィックリーグの首位争いの事例を説明してみましょう。

ある年のパシフィックリーグの8月終了時点でファイターズとマリーンズが首位争いを演じていた。成績はファイターズが67勝48敗、マリーンズが68勝49敗だった。8月終了時点の首位はどちらか。なお、勝率が上回っているチームが上位となる。

勝率はどちらが高いかですね。勝ち越しの数は共に19でいわゆるゲーム差なしの状態です。

仮にファイターズだけが今2試合戦って1勝1敗なら、マリーンズと全く同一になります。ところで1勝1敗は勝率5割のペースです。ファイターズの今までの成績は勝ち越しているわけだから当然勝率は5割を超えています。

ファイターズが今までより悪いペース(5割)で戦えば、勝率は当然下がります。その下がった勝率が現在のマリーンズの勝率なのですから、現在はファイターズの方が勝率が上ということです。

お分かりの通り、何の計算もしておりません。それで答えを出せるのです。
最後に実際の過去問(国家専門職)の問題の一部抜粋から「打率理論」を使ってみます。

問:国民総支出に占める民間最終消費支出の構成比は、昭和62年度から平成2年度まで毎年上昇している。正しいか否か。

昭和62年 昭和63年 平成元年 平成2年
国民総支出 (単位:兆円)  350 370 388 408
 民間最終消費支出(単位:兆円)  206 217 225 233

206÷350、217÷370、225÷388、233÷408を全て計算して比較することは時間の無駄であることはもうお分りかと思います。

<解法>まず「毎年上昇」とあるから1か所でも下降していれば間違っている部分が明らかとなります。

「打率理論」で考えると、国民総支出と民間最終消費支出の各年度の増加数は以下のように考えることができます。

各年度はすべて打率5割を超えている。

S62~S63:(370-350=20、217-206 =11)→20打数11安打
S63~H元:(388-370=18、225-217=8)→18打数 8安打
H元~H2:(408-388=20、233-225=8)→20打数 8安打

18打数8安打と20打数8安打は打率5割未満であり、前年度までが5割超の打率なので、悪いペースとなり明らかに下降しているのが分ります。したがって、この問いは×となります。

このように簡単な計算をするだけで資料解釈は正解を導くことができるのです。
ただし、前述のようにテクニックを身につけるには時間がかかりことや量をこなさなければいけないことが条件となるため、得点できる科目ではありますが、決して「簡単に」得点できるものではないということを知っておいてください。

5 資料解釈のおススメ参考書

資料解釈は、テクニックを学ぶ参考書と練習ができるもの(演習本)を併用することがおススメです。もちろん、予備校に通っている方は、テキストと問題集があるので、それに励めば大丈夫です。以下では、独学の方にその2種類に分けておススメの参考書を紹介します。

5-1 テクニックを学べる本

テクニックが学べる本としては、次の2冊のいずれかです。

① 実務教育出版『公務員試験 集中講義! 資料解釈の過去問』

この本は、計算方法を分かりやすく説明したページが付録としてあり、解法がジャンルごとにまとめられています。また、問題ページと解説ページが分かれているのでレイアウト的にもみやすくなっています。

国家総合職などの難関公務員を目指す方には物足りないかもしれませんが、国家一般職・専門職、地方上級、特別区、市町村などが第一志望ならば問題ない水準です。

これで土台を固めて演習に入れば資料解釈の得点源化は達成するでしょう。

②畑中敦子の資料解釈の最前線

大手予備校のLECさんと、数的処理科目の出版女王の畑中氏がタッグを組んだ本です。令和版となって、近年の問題の収録もなされています。

同書は、テクニック集が付録となっており、早く解くための工夫が問題を通じて分かりやすく解説してくれています。レイアウトが見にくいところが難点ですが、すいすい読んでいく形で解法テクニックを理解する意味では有意義な本です。

①と②は本屋などで実物を眺めて決めていけば良いでしょう。

5-2 演習本のおススメ

演習に取り掛かる時に大事なのは、解説の丁寧さもさることながら、収録している問題数です。なぜなら、毎日のように解くことを勉強法として推奨しているからです。

例えば、受験年1月に資料解釈のテクニックを知識として注入したとして、2月から5月くらいまでの4か月(=120日ほど)が国家系や地方上級を受ける場合の日数です。この辺りを志望している受験生は、この期間内、毎日のように行えるボリュームの本を選んだ方が良いことになります。

この観点でいくと、実務教育出版の『スーパー過去問 文章理解・資料解釈』がおススメとなります。同書は120問が収録されています。解説はやや硬いですが、上記のテクニックを注入する本を経由しているので大丈夫かと思います。他の本に手を出す場合、必ずどのくらいの問題数があるかを確認してください。

6 まとめ

資料解釈は数的処理が苦手な人は必ず得点して欲しい科目です。

あまり対策をせずに試験に挑む人やましてや捨てる人を多く見かけます。ただ、これはとても勿体ないことです。

ここで紹介した資料解釈への取り組み方を参考に、得点できるよう練習を繰り返してみてください。応援しています。

公務員試験 財政学の勉強法とおすすめ参考書ー捨てるのはもったいない!

公務員試験種の中には、専門科目として、財政学の出題がみられるところがあります。また、裁判所一般職と、国家公務員専門職の労働基準監督官試験においては、財政学と科目名を謳っていなくても、経済学などの中にこの科目の知識が組み込まれています

この記事では、どの試験種に出るのか、難易度はどのくらいか、そもそも財政学はどのような学習をするのかなどについてお伝えします。

その上で、有益な学習方法を紹介していきますので、この記事を通じて、捨てずに学習をした方が良いということに気づいていただき、自身の受験戦術に組み入れていただければ幸いです。

 

1.財政学の出題状況

財政学は専門科目です。したがって、教養試験のみの試験種では出題はみられません。主な試験種においての出題状況は、下記の通りです。

試験種 選択か必須か 難易度 出題数
国家一般職 選択 普通 5
地方上級 必須が多い 3
特別区 選択 普通 5
市役所 必須が多い 3

なお、国家専門職は、職種によって出題のされ方が違います。

まず、国税専門官は選択科目として6題出題されます。次に、財務専門官は必須科目です。経済学 ・財政学・経済事情という科目構成で毎年概ね14問出題されます。最後に、労働基準監督官は、経済学の中で聞かれることがある程度です。

ちなみに、国家専門職における財政学の問題が一番難しく感じるかもしれません。しかし、それでも国家一般職程度です。

以上から、財政学の難易度があまり高くないことがお分かり頂けるかなと思います。このことは、後述しますが、財政学を捨てない方が良い大きな理由となります。

2.財政学の出題分野と科目特性

財政学は、①「国・地方の税や財政の制度と事情に関する分野」と、②「財政理論」に分かれます。

①は、経済主体の1つである政府部門が、どのようにお金を得て、どのような目的でどこにどのくらいお金を使用しているかという実態を知ると共に、それを根拠づける制度を知るという極めて現実的なことを学びます。

例えば、政府は、消費税という税を設けて徴収することで、様々な活動にこのお金を用いています。この消費税が、数回の増税を経て2022年現在、基本的には10%を課していることはご存知でしょう。では、この10%分のうち、7.8%が「消費税」で、2.2%が「地方消費税」となっていることは知っていましたか。財政学の制度を学ぶとは、こうした制度内容を学ぶわけです

それから、消費税は、2022年現在、国税の中で最大の徴収額となっています。所得税や法人税より多いということです。その額は21兆8886億円です。財政学では、このような実態もおさえます。必然的に、時事的なデータを覚えていくことになります。(とはいえ、数字は大まかで構いません。約22兆円とか、20兆円を上回っているとかです)。

制度と実態をおさえるのが①ということです。実態の部分は、時事的な数字を覚えるので大変に感じるかもしれませんね。しかし、教養試験の時事科目でも似たような数字は覚えます。財政学だけに使うわけではない点をモチベーションにしましょう

②の財政理論は、大きく3つに分かれます。具体的には、(ⅰ)予算の組み方はどうするべきか、ひいては政府の経済活動自体の考え方に関するもの、(ⅱ)課税の仕方はどうあるべきかという税制のこと、(ⅲ)いわゆる「借金」にあたる公債に関しての考え方です。そして、誰がその考え方(理論)を主張したかを覚える面もあります。
②の財政理論は、課税の仕方はどうあるべきか、予算の組み方はどうするべきか、いわゆる「借金」にあたる公債に関しての考え方は……など多岐に渡ります。また、誰がその理論を主張したかを覚える面もあります。

(ⅱ)の内容例として、先の消費税をもう一度例にとりましょう。これは、どのような所得の方にも現行は原則10%を課税しています。このような課税は、水平的公平を実現するものです。一方、所得税は多く稼いでいる分には高い税率が掛けられるという累進課税制度となっています。これは、垂直的公平の実現が目指されていることになります。

ここから、税の徴収には公平性がいるのだなと感じることでしょう。こういう税徴収に対する考えが課税理論なわけですが、②はこうした理論を学びます。このとき、課税には4大原則・9原則があるといったワグナーや、アダム・スミスの4原則において、公平性というのが取り上げられているので、こうした人名も覚えることになります。

他にも、(ⅲ)公債の発行は、将来世代に負担を残すと考える学者と、残らないと考える学者がいるのですが、それぞれの考え方と人名を覚えることになります。あるいは、公債には、長期債と短期債、中期債など種類があるのですが、どういう時にどの考えだと、どの種類を買うのかなども出題されます。

話題が多岐に渡り人名も覚えなくてはならないとなると、あるいは、単なる制度や実態の暗記と違うとなると難しく感じるかもしれません。しかし、教養経済の延長範囲であることが多いです。また、ミクロ・マクロで学んだことで対応できる部分も多いので恐れる必要はありません。

人名数も政治学や社会学に比べれば随分少ないです。しかも、これらの科目は初見の人物が出てくる年があります。つまり、得点の安定化が難しいわけです。しかし、財政学の人名出題において、そのような珍しいことは滅多に起こりません。

以上から、財政学という科目は、皆が学習しなければならない教養の経済や時事、専門をやる方が外せないミクロ・マクロを活かせます。また、科目難易度は高くありません。安定もしています。捨てない方が良い科目といえるでしょう。

3.財政学の攻略法

それでは、どのように学習していけば良いでしょうか。勉強法と参考書を紹介します。

(1)勉強法=学習順番と時期にこだわる

公務員試験の財政学を攻略する上で大切なのは、学習する順番と時期です。結論からいいますと、財政学はミクロ・マクロ経済学の学習後とし、学習実施時期は受験年の1〜3月くらいとなります。

まず、学習順番についてです。これは、財政理論を学習するときに、ミクロ・マクロの知識が必要だからです。もしも、ミクロ・マクロを学習してから財政学に取り組むまでに時間が空いてしまった方は、ミクロ経済学の市場の失敗関連、マクロ経済学の経済安定化関連の議論は復習してから臨みましょう(どのみち、本試験前にはこの知識が必要なので、よき復習タイミングと捉えましょう)。

次に、学習実施時期は、受験前年の補正予算(大抵、秋の臨時国会などで成立しがち)までは時事的に押さえた方がいいからです。もちろん、例えば、2025(令和7)年度に受験をするとしたとき、2024年度当初予算が一番問われます。これは、2024年1月から始まる通常国会で決まっています。ですから、2024年度から学習した場合、どういった予算なのかの情報はどの時期でも手に入ります。

ただ、その後の経済情勢を踏まえた補正予算が臨時国会で成立することが多いのです。この内容までは教養の時事としても、財政学の時事的な知識としてもおさえた方が望ましいわけですね。

したがいまして、時事と同時に勉強してしまうという感覚で、財政学は受験年の1〜3月に学習しましょう

 (2)参考書とお奨めの使い方

ここまでお読みいただければ、ご理解いただけると思いますが、財政学の参考書は、時事的に新しいものを必ず用意しましょう。例えば、公務員試験受験者に定番の新スーパー過去問(以下、『スー過去』)の財政学は最新版が「財政学7改訂版」です。それ以前のは絶対止めておいて欲しいということです。

それで、財政学の参考書は、『スー過去』がベストなのでしょうか。私は、きちんとミクロ・マクロの学習をしている状況においては、必ずしもそうではないと考えています。

もちろん、『スー過去』もよい参考書です。ただ、財政学は、どうしても最新性が優先されます。

例えば、2025年2月現在、最も直近に編纂された財政学の過去問は、LECの『2025-26 大卒程度公務員 本気で合格! 過去問解きまくり 18 財政学』の2025年1月です(以下、『LEC解きまくり』)。『LEC解きまくり』は毎年12~1月に安定的に最新版を出してくれます。
対して、上の『スー過去』は、『スー過去6」が2021年の2月で、『スー過去7』が2024年1月でした。その間の2022年12月にスー過去6の改訂版が出ていました。そして、7の改訂版は2024年12月でました。これは、出る時期が不安定で、受験年度によっては最新版がないかもしれないという危険があります。

そのため、最新を安定的に得られるのは『LEC解きまくり』かなと考えてます。また、同書は140問を超える問題数に対し、『スー過去』は100問程度です。他方、両書とも、問題だけでなく、ポイントがレジュメ風に良い出来にまとまっている点は甲乙つけがたいといえます。確かに、『LEC解きまくり』の方が、この部分が薄いといえます。ただ、問題の解説を通じて覚える仕様になっていると割り切れば問題がありません。

このように考えると、最新年度をぱっと買って、ミクロ・マクロの既習を踏まえ、どんどん問題を説いて、分からないときは解説をすぐ読んで覚えていく学習が向いている方には、『LEC解きまくり』が良いと捉えています。

他方、自身の受験年度に最新の改訂がなされた本を手にできる状況の年に受験する方で、問題を通じてよりもレジュメでしっかり覚えてから問題に取り組みたい方には、『スー過去』が望ましいと思います。

ということで、個性に応じて参考書を選んでもらえれば幸いです。

2025-2026年合格目標 公務員試験 本気で合格!過去問解きまくり! 【18】財政学(最新 ! 24年度問題収録)(専門試験対策)

公務員試験 新スーパー過去問ゼミ7 財政学 (新スーパー過去問ゼミ7)

なお、この両書にプラスして、経済時事をおさえておくのは、財政学だけでなく公務員試験全体に有益です。

時事については、こちらの記事をご確認ください。

公務員試験の時事問題を突破するためのおススメ時事本を紹介します!

 まとめ~財政学は捨てずに学習しよう~

財政学について、「捨ててもいいですか」と聞かれることが指導上、多々あります。そうした受験生には、「ミクロ・マクロをしっかり学習して、経済時事をおさえた状態なら半分の問題は得点できるよ。だから捨てるのは勿体ないなぁ」と伝えています。 

そうすると、あと半分は何ですかと聞かれるので、「上2冊(注)のどちらかの問題集を回すうちに覚えられちゃうことだよ」とアドバイスします。最初は、半信半疑なのですが、受験後に「先生の言った通りでした!」とよく言ってもらえました。

もちろん、合格していった方とのやりとりです。ということで、是非、捨てずに得点化するつもりで準備をしましょう。 

この情報をもとに、ご自身の受験戦術を考えていただければ幸いです。

 

(注)『LEC解きまくり』『スー過去』のことです。

公務員試験の民法を得点するために押さえておくべきこと

公務員試験の主要科目である民法ですが、内容は難しく範囲も広いため苦手としている受験生は多いのではないでしょうか。
他の科目に比べて圧倒的にボリュームがあるだけにほとんどの受験生は勉強時間の大半を民法に費やしています。
それでも苦手意識がなくならないのは、「闇雲に勉強している」からに過ぎません。

公務員試験で出題される民法は他の科目と同じように基本を確実に抑えることで十分得点できるものであり、効率的に勉強することが必要となります。

もし民法の苦手意識がなくならないという方や勉強の仕方がわからないという方は参考にしていただき、得点アップにつなげてください。

1 公務員試験における民法の重要性

主要5科目の一つと言われている民法ですが、各試験での出題数は以下の通りになります。なお、ここでの民法は民法1(総則・物権)と民法2(債権総論各論・親族相続)の両方を指します。

国家公務員試験
・国家総合職(法律区分)・・・12点/40点中(必須回答)
・国家一般職・・・10点/80点中(8科目40点分選択)
・裁判所職員・・・13点/30点中(必須回答)
・財務専門官・・・6/40点中(選択。商法含む)
・国税専門官・・・5点/40点中(選択)

地上公務員試験
・地方上級(全国型)・・・4点/40点中(必須回答)
・東京都特別区・・・10点/55点(40点分選択)
・東京都庁・・・記述試験で出題(選択)

選択回答のところも多いですが、専門科目全体に対する出題数が多いため、おそらく民法を全く勉強しない受験生は少ないでしょう。

しかし、どうしても民法を克服できず、民法を全捨てする人もいますが、そのような受験生の合格率は決して高くありません。
また、民法は総則・物権・債権総論・債権各論・相続親族と覚えることが非常に多く、内容も難しいことから苦手とする受験生が多い科目でもあります。

覚えることが多いため、とにかく日々根気強く、そして繰り返し取り組んでいかなければ、すぐに知識が頭から抜けていってしまいます。
法学部出身でも民法を苦手な人が周りに少なくなかったため、法学部出身でない受験生は、特に学説の部分などはとっつきにくく感じると思います。

しかし、苦手とする受験生が多いということは、逆に言えば民法を得意にできれば、他の受験生と大きく差をつけることができます。また、民法を得意とまでは言えなくても、足を引っ張らないレベルまでもってくることはとても大切なのです。

2 民法の勉強方法

前述のとおり、民法は範囲が広く、苦手とする受験生が多い科目です。
しかし、基本的な勉強方法を知った上で学習を進めることで苦手意識をなくすことができる科目でもあります。
ここでは、民法の基本的な勉強方法をお伝えしますので、これから学習を始める方やどうしても苦手と感じる人は参考にしてみてください。

2−1 まずは頻出分野から取り組もう

再三お伝えしているとおり、民法の最大の特徴はとにかく範囲が広い(勉強しなければならない量が多い)ということであり、主要5科目の中でも圧倒的に学習量が多い科目です。

特に完璧主義の人に多いのですが、民法の参考書を全て理解しようとする人がいます。
中には内田の民法のような基本書を読み込むような人もいますが、公務員試験においては全く必要ありません。

民法はすべての範囲(分野)を「完璧に」学習しようとすると、おそらく最低でも数年かかり、とてもではないですが公務員試験に間に合わせることはできないでしょう。

公務員試験の受験生は決して法曹になるために法律を勉強しているわけではないので、「あくまで公務員の筆記試験の通過のために勉強にしている」ということを頭に置いておきましょう。この認識が深入りしすぎてしまうことを防ぎます。

民法を「効率よく」攻略していくために、まずは頻出分野から取り組んでいきましょう。
例年、各試験でかなりマイナーな(たとえば譲渡担保など)分野から出題されることもありますが、まず「頻出分野=どの受験生もしっかりと勉強してくる分野」をおさえていきましょう。
逆に頻出分野を落としてしまうことで他の受験生と差をつけられてしまうということも認識しておきましょう。

各試験ごとに傾向があるかとは思いますが、ここだけは最低限おさえなければならないという分野は以下のとおりです。

・総則・・・制限行為能力者、意思表示、詐欺、代理、時効
・物権・・・即時取得、占有権、共有、抵当権
・債権総論・各論・・・債権者代位権、詐害行為取消権、連帯債務、保証、相殺、担保責任、賃貸借、不法行為

出題数が5問の場合、この分野をしっかりとおさえることができれば、少なくとも3点は確保できるでしょう。
そのため、時間がない方や民法を苦手としている方は、まずはこうした頻出分野だけでも標準レベルの問題を解けるようになるよう努めてください。

なお、裁判所職員試験のような民法の出題数が多い試験は頻出分野の学習だけでカバーすることは難しいでしょう。

裁判所職員試験の民法は難易度は高いものの、まず基本をきっちりおさえていけば、大失点することはありませんが、傾向として、質権や留置権、譲渡担保など、物権は細かい知識まで問われることが多いです。
そして出題数が多いため、受験生が手薄になりがちな分野(たとえば請負・委任といった分野、学説問題など)が出題されることがあります。

一方で過去に一度も親族・相続が出題されていないなど、裁判所職員試験は民法の出題傾向が比較的はっきりしており、合否のポイントとなります。そのため、裁判所職員を第一志望とされている方は自分なりに分析し、他科目との折り合いも考えて戦略を立ててみると良いでしょう。

2−2 民法は単純暗記ではなく理解することを努めよう

公務員試験の受験生は年明けまでは主要5科目に集中して取り組み、年が明けてからは学系やその他の教養科目も並行して取り組んでいく、というスケジュールで勉強を進めていく方が多いかと思います。
学系や教養科目は、知識の暗記をひたすら行っていくだけなので、追い込みが効き、直前に取り組んでもなんとか間に合うことも多いです。

しかし、そのように単純に暗記をするだけで乗り越えられないのが民法です。
民法はただでさえ覚えるべき内容が多いので、知識をそのまま単純に暗記していこうとすると論点がごっちゃになり、理解することができず挫折する原因となります。

たとえば、瑕疵担保責任は全部他人物、一部他人物の善意の時と悪意の時など、表を丸覚えするとなると、暗記が得意という人以外は、なかなか覚えることは難しいかと思います。

民法に限らず法律は、私達の生活を規律しているものである以上、常識や一般的な感覚が根底にあり制定されています。なぜそのように民法で定められているのか、なぜそのように決まっているのか、ということを意識して一つ一つの条文や知識、判例を見ていくことが一つのポイントです。
予備校等で講義を聞く時も、ただ講義を聞くのではなく、講師が「なぜこのような結論になるのか」という部分を説明している時に、自分の頭でも考えながら聞いてみましょう。

2−3 基本を大事にする

民法を勉強する上では、もう一つポイントとして、原則や基本となる知識や条文を常に頭に置く、という点が挙げられます。

原則とは、たとえば私的自治の原則や公平の原則、契約自由の原則といったものです。民法は私人間の規定を定めたものであるため、原則的に私人間で合意すれば法律行為(契約)は自由なのですが、それが公序良俗や公平に反する場合は無効となったり、損害賠償の規定が用いられたりするのです。

意外と、このような民法の根底にある考え方が、試験で本当に分からない問題に出会った時に役に立つので、だいたいでも良いので理解するようにしてください。

基本をおさえるだけでも6割は得点できます。細かいところに取り組んでいくのは、全体を把握してからで十分です。
そして、民法にどれくらい力を入れるかは、他教科の得意不得意にもよるし、勉強の進み具合によります。
たとえば、特別区などが第一志望で、経済原論や暗記(学系)が大得意で確実に得点できる、数的処理が得意で教養で稼げるのであまり専門試験にとらわれすぎる必要はないかも、という方は、民法に力を入れすぎる必要はないかもしれません。
一方で、裁判所職員や国家総合職等の、民法が厚めに出題される試験を第一志望にしている方は、しっかりと勉強する必要があるでしょう。

2−4 学説問題と家族法分野への取り組み方について

民法の学説問題を苦手とする人が多いですが、学説問題は理解する上で少し複雑な問題も多いですが、それほど恐れる必要はないでしょう。

なぜなら、学説問題は出題パターンが決まっているからです(占有改定、瑕疵担保責任と債務不履行などは頻出です)。
このような、よく出題される学説問題については、問題とその解答をコピーし、ノートに貼ってまとめるという方法により、頭が整理されるので効果的です。

学説問題については、過去出題されたことがない問題(見たことない問題)が本試験で出題されたら、潔く捨てましょう。このような問題は他の受験生も解けないため、捨ててしまっても問題ありません。
学説問題はほとんどが過去問と似たような問題だであるため、パターン問題のみをしっかり取り組むことで十分得点することができます。

また、家族法(親族相続)に取り組むべきか悩んでいる方もいるかと思います。私は、受験生の時にはほとんどやりませんでした。なぜなら、多くの試験では出題されない、もしくは出題されても一問なので、それよりもほかの分野を手厚く演習する方が効率が良いと考えたためです。

もちろん、時間があればやるに越したことはないですが、進度が遅れている方や勉強時間を多く確保できない受験生は捨ててしまっても他の分野をしっかりと勉強することで十分合格点に達することができます。

2−5 民法の記述試験対策について

民法の記述試験は、国家総合職二次試験、国税・財務専門官試験、東京都で出題されますが、全て複数科目の中から選択する形にとなっています。

国家総合職試験では、憲法、民法、行政法、国際法、公共政策から3題選択するかたちとなっているため選択する受験生は多いと思われますが、その他の試験を第一志望とする受験生で、民法を記述試験で選択するために民法記述をしっかりと勉強している受験生はそれほど多くないでしょう。

なぜなら、民法は何度も述べているようにとにかく範囲が広いため、記述問題のテーマとして出題が予想される問題パターンが広くならざるを得ません。
また、憲法は一行問題(たとえば、○○について論ぜよ。といった問題文が一行のパターン)が多いのに対し、民法は事例問題として出題せねば問題として成り立たない場合が多いため、答案の組み立てが複雑になりがちです。

以上のことから、国家総合職を第一志望とする方以外は、憲法や経済原論等を記述試験では選択する方が無難だと言えます。

国家総合職が第一志望の方は、まず記述試験用の参考書を一冊手元に置いておき、さらに、試験委員(教授や研究機関の方)の本に目を通しておきましょう。
例年、国家総合職の二次試験はこの試験委員の方々が専門とする分野からの出題が多いと言われています。勿論例外もありますが、このような傾向がこれまでの試験で見られている以上、入門書や薄めの本でも良いので、試験委員の方の本には目を通しておくべきです。試験委員は、官報で公開されていますし、官報を見なくても今はインターネットで検索すれば分かると思いますので、是非試験委員について確認しておきましょう。

3 まとめ

民法はあまり手を広げすぎず、まずは頻出分野を確実に理解するようになることが重要です。
公務員試験はどの科目でも頻出かつ標準レベルの問題を得点することができれば合格することができる試験です。
最初から民法は無理だと諦めず、この記事を参考に足を引っ張らないレベルまで持っていくことを目指してください。